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須磨 久善, 武内 敦郎, 阪本 泉
1986 年15 巻1 号 p.
171-173
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
血液凝固第XIII因子(F XIII)とThrombin(T)をGelatin sponge(G)に固定した新しい止血材料“GT XIII”を心臓血管手術症例20例に使用しその効果を検討した。対象は冠動脈バイパス手術14例、弁膜症手術6例で、用いた出血部位は冠動脈―伏在静脈グラフト吻合部7例、大動脈―伏在静脈グラフト吻合部3例、大動脈切開創縫合部2例、再手術時の心表面癒着剥離部からの出血2例、右室表面のペースメーカーリード刺入部3例、内胸動脈剥離後の胸骨裏面からの出血3例であった。出血の状態は線状噴出3例、放置出来ない程度の滲み出し17例で、前者に対しては“GT XIII”の止血効果は認められなかっだが、後者では完全止血6例(35%)、滲み出し量の明らかな減少9例(53%)、無効2例(12%)であった。今回の検討から“GT XIII”の心臓血管外科領域における有用性を認め、今後の問題点についても言及した。
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松田 武久, 富野 哲夫, 伊藤 哲雄, 山口 敏広, 山形 専, 岩田 博夫, 笹木 秀幹, 中島 伸之, 高野 久輝, 阿久津 哲造
1986 年15 巻1 号 p.
174-177
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
従来の医用瞬間接着剤 (シアノアクリレート) の速硬性を維持したまま, 弾性体を与える接着剤の分子設計の基本概念と基本的性質について報告した. 新しく開発された弾性接着剤 (プロトタイプ) は液状反応性ポリウレタンプレポリマーで, 親水性のポリオールの両末端がジイソシァネートでcappingされた構造を有する. 水と接触することにより炭酸ガスを放出しつつ高分子化する. 得られた硬化物は多孔質構造を有する弾性体である. 生体内では, 数分以内に拍動流ストレスに充分耐える力学的性質を示し, 心臓血管外科, 脳外科への応用の可能性が大きいことが示された.
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松田 武久
1986 年15 巻1 号 p.
178
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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中島 育昌
1986 年15 巻1 号 p.
179-182
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
骨セメントを使用しない人工骨や人工関節が最近盛んに用いられてきているが、その際問題となるのは骨との固定性である。この点に関して今回fibermetal型人工骨を用いて検討をおこなった。今回は荷重によりこのimplantの固定性がいかに影響するかを検索した。雑種成犬を用いfibermetal人工骨を両側大腿骨骨幹部に同時に挿入し、一側には術後3週創外固定器を用い大腿骨を固定して、他側は創外固定を用いず荷重させ、この両群を比較検討した。その結果、術後3か月における所見では、1) fibermetal型人工骨においては、術後早期に強固な固定を得るために、下肢の安静と免荷が重要であり、2) 骨と人工骨表面との固定性をよくするためには、術後早期には荷重を少なくし、porousな間隙に進入する骨組織の量を増加せしめ、3) conical coupling joint周辺では時間の経過とともに強力な骨性の固定が得られ、looseningもみられず、その役割は有効であった。
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加藤 弘文, 中村 達雄, 渡部 智, 清水 慶彦, 玄 丞烋, 筏 義人
1986 年15 巻1 号 p.
183-185
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
成犬に肋骨骨折を作成した。Poly-L-lactic acid (P-L-LA) 製肋骨接合ピンを髄内挿入固定に使用した。短期間の成績は以下の通りである。
(1) 9本中3本は早期に折損し, 肋骨接合部は位置が少しずれていた。
(2) P-L-LAは2~3ヶ月にわたり, 走査電顕上でも有意な形態的変化はみられなかった。
(3) P-L-LAの分子量は次第に低下し, 2ヶ月の時点で50%に低下していた。
(4) 肋骨の組織はP-L-LA挿入部には健常な骨梁を伴う海綿骨があり, 界面にはほとんど炎症細胞もなく, 膠原線維の増生は全くなかった。切断面では骨膜からの硝子軟骨の増生がみられ, 順調な骨修復がおこなわれていた。
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永井 勲, 東権 広, 藤石 秀三, 藤原 志郎, 木村 茂, 植田 規史
1986 年15 巻1 号 p.
186-189
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
胸壁腫瘍を摘出した欠損部の肋骨を補填する目的で, 残存肋骨との接合部にセラミック接合ピンを用いたプラスチック製人工肋骨を作製し, 犬に移植した。移植後12ヵ月の時点でX線写真で, 固定・接合状態を調べ, その後移植部位を摘出して, 肉眼的, 組織学的に観察したが, 固定・接合状態は良好であり, 移植されたセラミック, プラスチックの両材質ともに組織親和性は良好であった。次いで同様のデザインであり, 本体を超高分子ポリエチレンを用いた人工肋骨を, 甲状腺癌の胸壁転移症例である69才の女性の胸壁切除後に使用した。切除された第V, VI, VII肋骨の残存肋骨部に, 切除したものと同じ長さの人工肋骨を移植した。患者は, 手術後胸廓の変形もなく, 呼吸機能低下も来さず, 術後8ヵ月の現在良好の状態である。
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赤松 功也
1986 年15 巻1 号 p.
190
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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坂本 滋, 清水 健, 松原 純一, 岩波 洋, 会田 博, 安西 吉行, 湯浅 幸吉, 保坂 浩史, 白川 尚哉, 金戸 善之, 長末 正 ...
1986 年15 巻1 号 p.
191-194
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
胸部下行大動脈瘤の手術に際し多くの場合, 左鎖骨下動脈以下の大動脈遮断が必要となる。この手術を安全に行うためには, 大動脈遮断時に部分体外循環法あるいは一時的大動脈バイパス法を行う必要があるが, 現在では後者が多用されている。一時的大動脈バイパス法としては, 人工血管を用いる方法とShunt tubeを用いる方法があるが, 人工血管を用いた場合, 血管吻合という繁雑さがあり, 手術時間がかかるので, Shunt tubeの使用が優れている。われわれは本邦で開発した抗血栓性TM3ユーティングシヤントチューブ (TOYOBO) を用いて胸部下行大動脈瘤の手術を行ったので報告する。
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―比較試験の成績―
大城 孟, 劉懋 忠, 金鐸 東, 上林 純一, 田根 叡, 城戸 良弘, 小川 嘉誉, 森 武貞
1986 年15 巻1 号 p.
195-200
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
われわれはウロキナーゼ固定化エバテートカテーチルと非固定化塩化ビニルカテーテルをTPN静脈内留置カテーテルに用い, 両者の優劣を比較検討した。調査方法は関連病院26施設の参加を得, 計27施設で臨床治験を行い, その成績を回収し集計した. 使用カテーテルの内訳けはUK固定化エバテート群71本, 非固定化塩化ビニル群80本であった, 各群の背景因子は両群で大差なく統計学上問題とはならなかった. その成績はUK固定化エバテート群でおおむね勝れているというものであった. すなわち血栓形成有りは前者では11/71 (15.5%), 後者では28/80 (28.8%)(p<0.1), 閉塞までの期間は前者では27.4±15.4日, 後者では8.8±46日(P<0.01), 細菌培養陽性は前者では0/64, 後者では4/63 (6.3%)(P<0.05) であった.
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田中 勧, 吉津 博, 後藤 正幸, 加瀬 勝一, 志水 正史, 安倍 次郎, 草間 良昌, 藤田 高行, 奥田 恵理哉, 尾形 利郎, 西 ...
1986 年15 巻1 号 p.
201-204
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
大動脈遮断時の大動脈一時的バイパスに用いる側枝付チューブを試作した。側枝は3本、開口部は中央と両端にある。中央の側枝はバイパス設置時に管内に残存する空気除去用であり、両端の側枝は動脈内圧測定用である。成犬にバイパスチューブを挿入し得られた中枢側圧はその近くの大動脈への直接穿刺で得られた圧とほぼ同値であった。チューブ末梢側圧は大腿動脈と同様の圧が得られた。さらにチューブの抗血栓性を得るために被覆するポリエーテル型セグメント化ポリウレタン (PEUU) の効果について検討した。in vitro試験におけるClotting Time Indexは4.61±0.22であり、Biomer (3.20±0.21) より良好な抗凝固性が認められた。成犬における動脈-静脈シャント実験ではPEUU被覆チューブの走査電顕上の血小板の内面付着は、塩化ビニールチューブに比べはるかに少なかった。PEUU被覆の側枝付バイパスチューブの有用性が示唆された。
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内藤 千秋, 川田 光三, 鈴木 孝明, 梅津 泰洋, 今村 洋二, 井上 正, 宮原 将, 宮田 伸一
1986 年15 巻1 号 p.
205-208
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
大動脈用一時的バイパスチューブとしてCardiothane coated PVC tubeを作製し, その抗血栓性およびtube designについて動物実験(雑種成犬15頭, 左鎖骨下動脈・左大腿動脈間バイパス3時間) 論よびmock ciraulationにて検討した。抗血栓性はバイパスチューブ最大内径部の勇断速度(r)とチューブ内面の走査電子顕微鏡像で比較検討したところ, r=255,5±50,7sec
-1で良好な抗血栓性が得られた。又, チューブデザイン上は, 中央部のチューブ最大内径(IDmax)・先端挿入部の最少内径(IDmin)でバイパス流量を検討したところ, IDmax 9.5mm・IDmin 5.0mmチューブでは, %COが46.5±12.7%と良好な流量が得られた。又, mock circulation上チューブ流量は, ほぼIDminに規定された。従って, IDmax 9.5mm・IDmin 5.0mmのCardiothane coated PVC tubeでは有効な流量と抗血栓性が得られることとなり, 臨床使用可能と思われた。
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森 有一
1986 年15 巻1 号 p.
209
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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嘉悦 勲, 吉田 勝, 浅野 雅春, 久保 長生, 嘉 多村孝一, 大川 智彦, 牧田 登之, 今井 強一, 真下 透, 湯浅 久子, 山中 ...
1986 年15 巻1 号 p.
210-213
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
制癌剤を〔Ala/Asp(OEt)〕n担体中に加圧―加熱溶融処理によって包含し、高密度・高剛性の性質をもつ1.6mm径の徐放性針状複合体を調製した。担体自体をウィスター系ラットの背中皮下、肝臓、腎臓および脳に埋入した場合、埋入から7日目でのin vivo分解率は各々100%、70%、100%および50%であった。この複合体からのシスプラチンのin vivo放出は、肝臓に埋入した時、埋入から4日目で見掛け上完結することが分った。シスプラチン複合体を背中皮下、腎臓、肝臓そして脳に埋入留置(7日)した時の組織壊死の範囲は21mm、18mm、14mmそして25mm径となった。一方、シスプラチン以外の制癌剤、例えばACNU、MMCおよびADM含有複合体を脳組織内に埋入(7日)した場合、これらの制癌剤の中で最大壊死はACNU含有系を用いた時に観察された(12mm径)。この場合、MMCおよびADMの各複合体による壊死範囲はいずれも28mm径でしかなかった。従って、脳に対する有効な壊死作用はACNUを用いた複合体系でのみ可能であると結論した。また、本研究で用いた複合体による壊死作用は、挿入から3日目でほぼ飽和状態を呈し、それ以後の壊死作用が著明でないことも判明した。
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嘉悦 勲, 吉田 勝, 浅野 雅春, 久保 長生, 喜多村 孝一, 今井 強一, 真下 透, 湯浅 久子, 山中 英寿, 鈴木 慶二
1986 年15 巻1 号 p.
214-217
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
低温放射線重合法によってnonbiodegradable vinyl copolymer中に制癌剤を包含し、徐放性針状複合体(1.6mm径、5mm長)を調製した。cisplatinを含む複合体針をウイスター系ラットの腎臓に7日間にわたって埋入留置した時。制癌剤のin vivo累積放出量は仕込みの12%であった。この値は複合体針の埋入箇所の違いによって著明に異なった。例えば、cisplatinのin vivo累積放出量は皮下埋入に対し38%、肝臓埋入に対し21%そして脳埋入に対し7%を示した。一方、徐放性制癌剤による組織壊死範囲は制癌剤の種類によって著るしく異なり、例えば腎臓に対する壊死の場合、その作用はcisplatin>MMC>ADM>ACNU>5-FUの順に減少した。しかし、脳の場合、組織の壊死作用はACNUの方がcisplatinより顕著に有効であった。従って、組織の違いによっても、徐放性制癌剤の壊死作用が異なることが結論できた。これらの結果に基ずいて、ACNU含有複合体針を中心に脳腫瘍領域に適用を試みた。
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山下 良平, 酒徳 光明, 平野 誠, 岩 喬
1986 年15 巻1 号 p.
218-221
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
癌組織内へ直接刺入投与することをねらった徐放性抗癌製剤5-FU・ポリ乳酸複合体針(F-PLA針)を開発し, 実験的検討を行なった。F-PLA針は, 生体内で分解吸収される高分子ポリL-乳酸を基剤に5-FUを重量比で50%含有し, 生体組織内へ刺入できるだけの十分な強靱さを有している。5-FUの徐放期間は, ラットの皮下で約1か月間, ラットの肝内および腫瘍内で約2週間と, 部位によりF-PLA針の徐放性に差がみられた。F-PLA針をラットの肝および腫瘍内へ埋え込んだ後の局所の組織内5-FU濃度は長時間高値を維持し, 腫瘍内でより高値を示した。F-PLA針投与による全身的な副作用は, ほとんど認めなかった。AH130腹水肝癌腫瘍を用いた抗腫瘍実験では, F-PLA針投与群で腫瘍の増殖が著しく抑制された。今回の検討より, F-PLA針の徐放性抗癌製剤として有効性が示された。
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山田 明夫, 片岡 一則, 岡野 光夫, 由井 伸彦, 桜井 靖久, 村山 健, 田中 昌和, 加藤 利佳, 近藤 保, 讃井 浩平, 緒方 ...
1986 年15 巻1 号 p.
222-225
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
本研究においては, 抗血栓性を有するセグメント化ポリウレタンウレア(PEUU)の錯長を変化させることにより, マイトマイシンC(MCC)の放出速度を制御し, 膜厚差により拡散係数を変えたり, 長期持続放出を可能にしている。このモノシリツク型のデバイス中の薬剤は分子レベルでマトリツクス中に分散している溶解型である。温度をパラメータとしたMMCの放出挙動では, PTMGが2000~3000附近で極大値を示し, 30℃のDに比較して40℃のDは, TM-1では4倍となる。平均分子量の増加にともない, ガラス転移度Tgは低下し, ミクロ相分離構造は良くなり, 膨潤率も大きくなり, 拡散係数は大きくなるはずであるが, かならずしもDが大きくならないのは, ポリマー内の分子が拡散するholesやloosenessが少ないと, 活性化エネルギーが低くくとも, 分子は拡散しにくいし, 融点が増加すると結晶性が強くなるので薬剤が動きにくくなり, Dが大きくならない。以上のことから, PTMG鎖長を変えることにより長期間にわたる放出制御が可能で, しかも抗血栓性を有し, 薬剤透過性, 良好な力学特性を兼備した, 制癌剤を複合する担体としてPEUUは有用な材料と考える。
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遠藤 善裕, 花沢 一芳, 岡 藤太郎, 吉岡 豊一, 松田 孝一, 谷 徹, 小玉 正智, 立脇 憲一, 寺本 和雄, 小路 久敬
1986 年15 巻1 号 p.
226-229
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
生体よりのエンドトキシン(Et)除去を目的に開発されたポリミキシンB固定化繊維(PMX-F)は、Et血症の原因となるグラム陰性菌に強い抗菌活性を有している。この非溶出性抗菌材料であるPMX-Fの抗菌機序にっき検討した。
32P-大腸菌とPMX-Fを振盪後、上清を採取し生菌数、
32P活性を測定した。生菌数が対照の5%以下となるのに比べ、
32Pは23~53%の低下であり、生菌数の低下は菌の繊維への吸着のみによるものではなく、死菌もしくは菌体成分が遊離状態にあると考えられた。
一方、走査電顕にて繊維表面に菌体は確認出来ず、菌体の形状をなさず吸着していると考えられた。
PMX-Fの抗菌機序は、生菌のPMX-F表面への吸着によるものではなく、菌は破壊された後、一部がPMX-Fに吸着されずに存在しているものの、エンドトキシンを含む細菌成分の多くが、PMX-Fに吸着されていると考えられた。
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中井 克幸, 真下 透, 湯浅 久子, 山中 英寿, 吉田 勝, 浅野 雅春, 嘉悦 勲
1986 年15 巻1 号 p.
230-233
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
機能的義睾丸を低温放射線重合法にて作製した。In vitro, では, 機能的義睾丸より500日以上にわたり一定のテストステロンが放出されていた。機能的義睾丸を3名のHypogonadismの患者の陰嚢に移植した。症例1は, 30歳, 46 XY, のHypogonadotropic hypogonadismである。症例2は, 29歳, 46XY, のHypertropic hypogonadismである。症例3は, 27歳の時に結核性副睾丸炎のため両側の除睾術を受けていた54歳の男性である。3名とも, 血清テストステロン濃度は, 1年間正常範囲に保たれていた。
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山田 明夫
1986 年15 巻1 号 p.
234
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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鈴木 嘉昭, 日下部 正宏, 日下部 きよ子, 秋庭 弘道, 佐藤 昌六
1986 年15 巻1 号 p.
235-238
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
タングステンカーバイド微粉末を混合したシリコーンゴム, PVC, およびガラス等への生理的濃度比血漿タンパク質混合溶液中でのアルブミン, フィブリノーゲンの吸着量の測定を,
131Iにより標識されたアルブミン, フィブリノーゲンを用い行った。高分子系材料へのアルブミン, フィブリノーゲンの吸着量は, ほぼタンパク質溶液の濃度比に従った吸着量を示したのに対し, ガラスへのアルブミンの吸着量は, 他の血液成分の影響をさほど受けず, 高分子系材料の数倍の値を示した。シリコーンゴムヘのタングステンカーバイド微粉末を混合したことによるタンパク質混合溶液中でのアルブミン, フィブリノーゲンの吸着量の顕著な差は見られず, 比較として用いたPVC, Silastic®とも大きな差は見られなかつた。高分子系材料およびガラスへのフィブリノーゲンの吸着量は, 特にアルブミンの存在下で, 大きく減少した。
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小平 和彦, 宮田 暉夫, 古瀬 正康, 野一色 泰晴
1986 年15 巻1 号 p.
239-242
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
生物系材料は, 最近, 医用材料としての応用研究が盛んに行われている。特に, コラーゲンは哺乳類の結合組織に普遍的に分布しており, 細胞の基質として多彩な役割を担っているので, 医用材料として期待されている。しかし, コラーゲンを医用材料として応用する場合, 成型加工性が合成高分子に比べ劣っている。生体内での安定性向上の観点から, コラーゲンを主体とした材料には, 架橋処理が行われることが多い。そして架橋剤としてグルタルアルデヒドが最も広く使われているが, 材料の柔軟性の維持・強度の向上という面からはあまり好ましくない。グルタルアルデヒドの欠点を補う架橋剤として, ポリエポキシ化合物が優れた特徴を持つことを見出した。すなわち, ポリエポキシ化合物で架橋を導入した材料は, 柔軟性を失わずに強度が向上し, 生体内で比較的長期間安定に存在するが, いずれ吸収されてしまうことがわかった。
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渡部 智, 五十部 潤, 清水 慶彦, 田畑 泰彦, 筏 義人
1986 年15 巻1 号 p.
243-246
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
生体内における諸反応は, 酵素系を触媒として行なわれている。この観点より, 我々は, これまで, 高分子材料の表面に酵素を固定化し, 酵素反応を応用して表面性状に生理活性機能を付加した医用生体材料を開発し, また, その埋植実験を行ない組織内反応を検討してきた。今回は, 更に, 複合酵素系反応をバイオリアクター, 人工臓器として応用すべく, 酵素を含有したマイクロカプセルの開発を試みた。界面沈殿法により, 酵素ウレアーゼ, グルタミン酸デヒドロゲナーゼを含有したトリアセチルセルロース・マイクロカプセル(直径平均100μm)を作製した。更に, 補酵素NADPHの透過可能な或いはNADPHをも包括した酵素含有マイクロカプセルを作製中である。このようなマイクロカプセルの開発は, 人工細胞膜の開発, 即ち人工赤血球を初め, 細胞成分, オルガネラを含有し高度の細胞機能を保持した人工細胞の開発へと発展するものである。
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野一色 泰晴
1986 年15 巻1 号 p.
247
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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―セルロース素材抽出物の作用について―
衣笠 えり子, 関口 孝, 秋沢 忠男, 北岡 建樹, 越川 昭三, 中林 宜男, 山本 正秀, 瓜生 敏之
1986 年15 巻1 号 p.
248-251
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
N社透析器使用により発生した眼障害の原因物質は, ヘミセルロース由来のアセチル化多糖類またはこれとウレタンの反応物と推定される。今回, 針葉樹パルプを原料とするセルロースアセテート(CA)を部分ケン化により脱アセチル化し, EtOH不溶部分を試料として点滴静注により生物学的活性を検討した。家ウサギでは, 用量依存性に虹彩・強膜炎様症状が出現した。雑種成犬においては, 同様の強膜充血に加え, 咳嗽・鼻汁・気道分泌増加などの呼吸器症状や, 大量投与時の血圧低下が認められた。点滴静注後5~15分をピークに一過性の白血球・血小板減少を生じ, 一例では高度の低酸素血症が出現した。
13CNMR分析から, 今回針葉樹パルプ原料より抽出した物質は, 大場らがN社透析器より抽出分離した眼障害誘起物質と類似の基本構造を有する部分的アセチル化多糖類で, パルプ由来のキシランとセルロースを含むオリゴマーと推定された。
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―インプラントの大きさと動物種の影響について
今井 庸二, 渡辺 昭彦
1986 年15 巻1 号 p.
252-255
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
埋植物による腫瘍形成性の問題と関連して, 埋植物の大きさ, 動物の種類が埋植物の周囲に形成される線維性被膜の厚さにどのような影響を及ぼすかを検討し, さらに腫瘍形成との関連性について考察を加えた。一辺が5・10・15・20mmのシリコーンゴムシートをマウス, ハムスター, ラットの皮下に埋植し, 4週~12月の組織反応や被膜厚さを調べた。細胞性の組織反応は, 埋植物の大きさ, 動物の種類によってあまり差は認められなかったが, 被膜の厚さにはいろいろな違いが認められた。ラットでは埋植物の大きさの影響を最も強く受け, また最も厚い被膜を形成し, 埋植物に対する感受性が大きかった。ハムスターは大きさの影響も弱く, また薄い被膜を形成した。マウスは両者の中間で, 埋植物が大きくなると被膜も厚くなったが, ラットほど厚くはならなかった。このような結果は, ラット, マウス, ハムスターとなるにしたがって腫瘍が発生しにくくなることと一致しているように思われる。
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三宅 仁
1986 年15 巻1 号 p.
256-259
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
代謝・内分泌機能をもつハイブリッド型人工臓器開発の基礎的検討として, 親水一疎水のミクロ相分離構造とさまざまな表面荷電を合わせもつことができるマルチブロック共重合体を細胞基質として応用すべく実験を行なった結果と考察について述べる。新たにフィルム短冊法と呼ぶべき回転培養法の変法を考案し, 培養実験を行なった。その結果, 表面荷電のない未処理材料およびプラス荷電材料において良好な細胞付着・増殖が位相差顕微鏡および走査型電子顕微鏡観察によって認められ, 短期(2日目)では未処理材料が, 長期(5日目)ではプラス荷電材料が優れていた。プラス・マイナス両荷電をもつモザイク荷電材料はいずれも不良であった。これらの結果から, フィルム短冊法により、壁面付着型の細胞も浮遊状態として培養可能であることが明らかとなり, マイクロキャリア法など従来の手法との比較検討の結果, 同等の成績が得られる可能性が示唆されたと考える。
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―生体内埋植後の変化および腸管癒着防止膜としての応用―
田村 康一, 中村 達雄, 池 修, 水野 浩, 岡田 賢二, 人見 滋樹, 清水 慶彦, 南部 昌生, 寺松 孝
1986 年15 巻1 号 p.
260-263
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
化学試薬や放射線照射装置などを用いないポリビニルアルコール(以下PVAと略)水溶液の新しいゲル化法を開発した。このPVAゲルは水とPVA以外のものは含まず, 水分量は80~90wt%であり生体組織のそれに匹敵する。高含水であるにもかかわらず, ゴム状弾性を有し, 機械的強度に優れている。本材料の医用材料としての可能性を検討するため, 生体内に埋植し, また心膜補填用癒着防止膜としての応用を考え実験をおこなってきた。今回は, 1年半の長期間生体内埋植した場合の弾性・機械的強度の変化について測定した。その結果, 埋植前のPVAゲルに比べ形体上若干の縮小をみとめるものの, 弾性などにはほとんど差がみられなかった。応用の一環として, 腸管の癒着防止膜として使用したものでは, PVAで被覆した場所には癒着をみとめず, 組織の修復は良好であった。材料自体の弾力性が腸管の蠕動運動をさまたげず, 利点があると考えられた。
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中村 達雄, 水野 浩, 田村 康一, 加藤 弘文, 人見 滋樹, 渡部 智, 清水 慶彦, K. JAMSHIDI, 玄 丞烋, 筏 義人
1986 年15 巻1 号 p.
264-267
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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ポリラクタイドの生体内分解速度を規定する因子として重合組成、分子量、重合収率、分子配列の規則性が考えられる。各因子の分解速度に与える影響を調べるために、種々の乳酸(LA)ポリマー、乳酸ーグリコール酸(LA-GA)共重合体の標準プレート(20×10×2mm
3)を用いて家兎皮下筋肉でin vivoの実験を行なった。重合組成ではLAの比率の大きいほど分解が遅く、P-LAの中ではD, L体に比べL体の分解が遅かった。重合収率に関しては残在モノマーが多い材料の分解は早く、分子量の低下も急激におこった。精製PLAの分解はきわめておそく、埋入6ケ月後に分子量は50%以下に低下したが重量減少はなかった。SEMを用いた観察でも、残存モノマーを含む材料は分解初期にφ10μ程度のmicro porous構造になり分解が進んでいくが、精製した材料は長期埋入後も表面から内部に進むmioro porous構造は生じなかった。
以上より生体内分解材料としてポリラクタイドを用いるときは、含有低分子物の分解速度に及ぼす影響の重要性が示唆された。
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今井 庸二
1986 年15 巻1 号 p.
268
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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山本 一英, 竹沢 真吾, 酒井 清孝, 板垣 一郎, 森 有一
1986 年15 巻1 号 p.
269-272
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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血液と接触する人工材料表面における血栓の形成は、材料の性質と血液の流動状態に左右される。
本報では、血液の流動状態が内因系凝固因子、血小板の凝固系に与える影響についての基礎的検討と材質についての比較検討を行った。実験には、円錐―平板型回転粘度計を用い、セル材質はポリカーボネートおよびPVC/PEOを使用した。shear rateが上昇すると凝固時間が延長し、血小板のADP、Collagen凝集能の低下や血小板からのLDHの放出が観察され、凝固因子、血小板が損傷をうけているものと推察された。血小板数はshear rateをかけた後に、その減少が認められた。PVC/PEOポリマーをコーティングしたセル中では、凝集が抑制され、抗血栓性材料として有用であることがうかがえた。
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渡辺 昭彦, 今井 庸二
1986 年15 巻1 号 p.
273-276
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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in vitroにおける血小板と高分子材料の反応を調べるため, 多血小板血漿 (PRP) にCaイオンを添加して血小板の粘着性, 形態変化を検討した。PRPを生理食塩液やHEPES緩衝液で希釈することは好ましくなく, PRPにCa
++を1~2mM添加する方法がよいように思われた。Ca
++の添加効果は, 血小板の粘着数よりも, 形態的変化の方により強く影響が現われた。Silastic, Biomer, Cadiothane, テフロン, エチレンービニルアルコール共重合体など18種の高分子材料について血小板の粘着数と形態変化を調べた。粘着血小板数には材料によってあまり大きな違いは認められなかったが, フッ素系の高分子やBiomer, シリコーンゴムなどの粘着血小板数がやや小さかった。これに対して, 血小板の形態にはかなりの違いが認められ, 比較的正常な円盤状をしたものから, それが扁平につぶれたもの, 偽足様突起を出したものなどいろいろな形態の血小板が存在した。
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松下 昌之助, 森本 保, 原崎 弘章, 能勢 之彦
1986 年15 巻1 号 p.
277-281
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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Cleveland Clinicで開発中の熱駆動および電気流体駆動型左心補助心臓は, 発生した熱を血中に放散しつつ駆動している。ポンプ内を通過する血液とポンプ近傍の組織は熱にさらされるが, 特に血液接触面の加熱による影響を知ることは, ポンプの安定した作動を保障する上で, 重要である。今回, PNI生成にかかわる血小板と血液凝固系について加熱の影響を調べた。In vitroのデータでは, 加熱により血小板, 凝固機能とも抑制された。とくに血小板では凝集機能が, また凝固系ではフィブリノーゲンが加熱による抑制をうけやすかった。これは仔ウシに植込まれたボンプの加熱部分のPNIの菲薄化傾向と符合する。これらの知見により, 熱エンジン使用中でも, 熱によりPNIが増大したり, 血栓形成を助長したりする可能性は示唆されなかった。
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―その医療器具への応用―
野田 裕幸, 松田 武久, 岩田 博夫, 中谷 武嗣, 福田 幸人, 高野 久輝, 阿久津 哲造
1986 年15 巻1 号 p.
282-285
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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親水性のセグメント化ポリウレタンと強力な抗トロンビン剤MD-805を組み合わせた医用弾性体を開発し, その医療器具への応用を検討する為にex-vivoでの基礎評価を肉眼的及び電顕的におこなった. その結果, MD-805を徐放するこのシステムでは, 電顕的にfibrin netやthrombusを認めず, 付着した血小板の数, 形態も対照としたMD-805を含まない親水性セグメント化ポリウレタン及び疎水性セグメント化ポリウレタンに比し優れ, 本システムが抗血栓性を獲得する有効な手段の一つである事が示された. しかし, 本システムに於いても頻回のコーティングにより材料表面がroughな場合には血小板の凝集した像も所々に見られ, 医療器具に応用する場合, fabricationの重要性を示した。
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大久保 修和, 広瀬 一, 松田 暉, 中埜 粛, 白倉 良太, 大谷 正勝, 笹子 佳門, 松若 良介, 宮田 伸一, 飯田 和利, 川島 ...
1986 年15 巻1 号 p.
286-289
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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IPN手法を用いて作られたポリウレタン・シリコーンポリマー複合体KIIIにおいて, 組成変化と抗血栓性の関係を実験的に検討した。KIIIの添加シリコーン量と架橋剤量を段階的に変化させ, 5種類の組合せを作製した。これらでコーティシグしたチューブを用い, 実験犬で4時間の一時的体外バイパスを作製した。肉眼的・電顕的に血栓・血小板形態を観察し比較検討した。シリコーン中の架橋剤重量%を70%に固定し, KIII中のシリコーン重量%を2, 8, 14%と変化させた3者においては, 2, 8%のものが抗血栓性を有しており, 特に2%は優れていた。次にシリコーン重量%を8%に固定し, 架橋剤重量%を40, 70, 100%と変化させた3者においては, 40, 70%のものが抗血栓性を有していたが, 両者に差はなかった。組成変化による抗血栓性の相違は, シリコーンポリマーの総量変化, シリコーンポリマーの疎水性の変化, ポリウレタンの水素結合性の変化によるものと考えられた。
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―ハードセグメントへのアミド基導入効果―
廼島 和彦, 緒方 直哉, 由井 伸彦, 片岡 一則, 桜井 靖久
1986 年15 巻1 号 p.
290-293
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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アミド結合を有する芳香族ジアミンで鎖延長したポリエーテルセグメント化ポリウレタンの相分離構造, 力学的挙動及び血小板との相互作用について検討した。各材料ともソフトセグメントとハードセグメントから成るミクロ相分離構造を形成し, アミド結合を導入することにより弾性率が低下しハードセグメントの分子間相互作用の低下が認められた。また, カラム法による血小板粘着の解析を行なった場合, カラム内流速の増大に伴なう粘着血小板数の低下傾向はアミド結合を導入した材料でより顕著となり, こうした材料表面における血小板活性化の抑制が示唆された。このことからハードセグメントの官能基の種類やその配列を変化させることにより, 材料物性を効果的に変化させ, かつ血小板の活性化を抑制し得ることが明らかとなった。
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明見 仁, 青柳 隆夫, 篠原 功, 岡野 光夫, 片岡 一則, 桜井 靖久
1986 年15 巻1 号 p.
294-297
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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ウサギ頸部動静脈間シャントを用いて、抗血栓性を有するブロックコポリマーが循環する血液に与える影響について検討した。具体的には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)-スチレン(St)、パーフルオロアルキルアクリレート(FAA)-St、エチレオキサイド(EO)-St、HEMAEOの4つのミクロ相分離構造表面を有するブロックコポリマーとホモポリマーを用いてA.-Vシャントを形成し、血流中の血小板数、血小板粘着能、血小板凝集能の経時変化について検討した。その結果ホモポリマーを用いた場合には血小板数、粘着能、凝集能共に急激に低下した。また、EO連鎖を有するブロックコポリマーを用いた場合には、血小板数と粘着能のゆっくりとした低下が認められた。一方HEMA-St、FAA-Stブロックコポリマーを用いた場合には、このような現象は認められず、優れた血液適合性を発現することが明らかとなった。
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桜井 靖久
1986 年15 巻1 号 p.
298
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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―気管モデルによる観察―
清水 慶彦, 渡部 智, 五十部 潤, 日野 常稔, 平井 圭一
1986 年15 巻1 号 p.
299-302
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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埋植用材料の置かれる場としては, 外界と接しているために不利とされる気管壁にbioactiveな材料であるコラーゲン合成高分子複合体を埋植し, その創傷治癒過程を観察して, コラーゲン複合化の意味について検討した。雑種成犬の頸部気管に1×2cmの窓状欠損を作成し, コラーゲン複合化ポリプロピレンメッシュを補填した。埋植後1, 3, 6週後に摘出して光顕的, 電顕的に観察した。メッシュ部分の炎症が消褪すると共に結合組織が成熟し, 周辺から基底細胞が増殖して基底膜を形成し, その後に増殖してきた基底細胞が線毛上皮や線上皮に分化し, 6週間後にはメッシュ全体を正常な上皮層が被覆した。一方, 無処理のポリプロピレンメッシュ群では扁平上皮がメッシュの一部を被うに留まった。以上の結果から, 軟組織用埋植材料は単にinertなだけでなく, 間葉系細胞に対してbioresponsableな材料が必要であり, 真の組織親和性材料を得るための方向であろうと考えられた。
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―強度を高めたアパタイトTubeの検討―
大西 清, 高浜 龍彦, 平石 守, 金井 福栄, 出月 康夫, 浅野 献一, 吉竹 毅, 中林 宣男, 市塚 健司
1986 年15 巻1 号 p.
303-305
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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従来の多孔質ハイドロキシアパタイトからmicroporeをなくし, 100~300μmのmacropore. を有するより強度を高めた材料から長さ2~3cmのTubeを作成し, 雑種成犬9頭の頸部気管輪を切除, 気管内挿入固定を試みた。Tubeの内面にPMMA系レジンを被覆した群にTubeと気管壁との接着が向上した。しかしアパタイトの剛管をそのまま人工気管として使用するには, Tubeの縫合固定の問題, 上皮化の遷延などから限界があると考えられた。アパタイトと他の材料の複合化によって, 気管軟骨に対しても良好な組織親和性を有するアパタイトの特性を活かした人工気管の開発が望れる。
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大西 清, 高浜 龍彦, 金井 福栄, 平石 守, 出月 康夫, 松本 博志, 浅野 献一, 吉竹 毅
1986 年15 巻1 号 p.
306-308
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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雑種成犬を用いて胸腔内気管膜様部の欠損に対するE-PTFEパッチ修復を試みた. 欠損孔の大きさによって3群に分けI群径1cmの欠損でパッチ上の気管粘膜上皮の伸展を経時的に観察することができた. 上皮の伸展の速さは1ケ月で3~5mmと考えられた. II群(欠損長径2cm), III群(欠損長径3cm)ではパッチに感染がおこり上皮化の遅延したものは, パッチ周囲の搬痕組織の増生, パッチの脱落がみられた. しかし, すみやかな上皮化がみられたパッチは, 周囲の反応も軽微でinertであった. E-PTFEパッチは容易に気密化が得られ, 抗生剤非投与下でも比較的感染に強いと考えられた. E-PTFEパッチは気管軟骨にかかる1~2cm程度の欠損で, 直接縫合が困難な場合には有用であろうと考えられた.
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前田 富與, 久保 良彦, 中島 進, 林 秀雄, 鮫島 夏樹, 竹内 克彦
1986 年15 巻1 号 p.
309-312
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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著者らは、polypropylene meshをpolyethylene stringsにて補強したアーチ型人工気管を作製し、雑種成犬25頭にて、頸部気管置換実験を施行した。気密性を保持する為、2種類の修飾フイブリン(Glutar aldehyde処理、加圧・加熱処理)を採用した。吻合部形状による吻合部狭窄の発生頻度に関し、端々吻合、外挿吻合にて検討した。
結果:加圧・加熱処理フイブリンは、移植後11ケ月以前に完全に結合組織と置換されていた。それに対し、Glutar aldehyde処理フイブリンは、meshにフイブリンが部分的に残存し、結合組織の侵入は認められなかつた。
2ケ月以上の生存犬に関し狭窄の発生頻度を検討するに、端々吻合施行例では100%(3/3)、外挿吻合では18%(2/11)であつた。
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鮫島 夏樹
1986 年15 巻1 号 p.
313
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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山中 英雄, 許 俊鋭, 安達 秀雄, 高本 真一, 横手 祐二, 尾本 良三
1986 年15 巻1 号 p.
314-317
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
広範な左室硬塞のため心原性ショックに陥った患者は, Paradoxical movementにより左室機能に重篤な障害が生じる。このような患者に対し, 硬塞壊死部を切除し, Akinetic patchにて補墳することは, 現在行なわれている。今回我々は, このような患者に対して, 左室補助を目的としたDynamic patch人工心筋縫着後の内面材料の慢性期の変化に対する検討の一つとして右心房縫着後のヘパリン化親水性材料, ポリエチレンオキサイド鎖を有するハイドロゲルおよび従来より使用されていたポリウレタンにつき, 電顕的に, 内面変化につき検討した。
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井村 正史, 魏 啓明, 服部 良二, 斎藤 圭治, 福山 守, 森本 保, 矢田 公, 湯浅 浩, 草川 實
1986 年15 巻1 号 p.
318-321
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
新しい心膜補填材料であるMitrathane microporous polyrethane cardiac patchを実験的に雑種成犬17頭に対し, 代用心膜及び肺動脈形成用パッチとして使用し, 術後早期より1年3ケ月までの長期成績について検討した。また, 2例については代用心膜としてGore-Tex sheet(0.1mm)を用い, Mitrathaneと比較した。その結果, 代用心膜としてMitrathaneは長期例においても心外膜との癒着は軽度に保たれ, 心外膜の変化も長期例になるほど結合織化がやや増加する傾向は認められるものの, 冠状動脈の走行を容易に確認できる程度であった。また, Gore-Tex sheetと術後1ケ月において比較したが, ほぼ同程度の変化を示しており, Mitrathaneは生体適合性に優れ, 代用心膜として充分臨床応用可能と考えられた。肺動脈形成用パッチとして用いた結果では, 新生内膜形成は良好であり, 血液適合性の面でもとくに問題はないものと思われた。
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橋本 和弘, 中村 譲, 松井 道彦
1986 年15 巻1 号 p.
322-325
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
心内パッチとしてゴアテックス(E-PTFE)を用いた症例における術後の生体反応の経過を血液・免疫学的に検討を行なった。対象はA群:non-prothesis群(n=26), B群:E-PTFEパッチ使用群(n=21), C群:人工弁挿入群(n=7)である。生体防御反応を示す指標として, 発熱期間, 白血球数, 血液像, 血沈, CRP値, 血清免疫グロブリン・補体値を用い, 術後1カ月間の経過を涛って検討した。E-PTFEパッチの挿入は術後感染症の発生頻度を高めなかった。今回用いた全ての指標において, 術後1カ月の経過を通してA群, B群間に有意な相異は認められなかった。C群では, 白血球数, 桿状核球比を除き, 明らかにA群と異なる異常値を示した。
心内パッチとしてのE-PTFEは, 参考に上げた人工弁群と異なり, 生体防御による異物反応が少ないと考えられ, より安全に使用でさると考えられた。
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松本 博志, 宮脇 富士夫, 井手 博文, 斉藤 寛文, 柳生 邦良, 田中 公啓, 田中 修, 松永 仁, 古田 直樹, 浅野 献一
1986 年15 巻1 号 p.
326-329
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
著者らは開発したEPTFE patchを1976年9月より1985年10月までにTF76例, ASD32例, ECD13例, TCRV10例, LA Myxoma 8例, TGA7例, DORV6例, PAPVRcASD5例, AS4例, PAPVR3例, TAPVR3例, TAcASD2例など総計179例に臨床応用した. 臨床応用症例は平均年令14才(0~68才)であった. 死亡は12例(6.7%)にみられたが, その多くは複雑心奇形に多く, patchそのものよりは手術時期を含めた手術適応に関係したものと考えられた. 中でも右室流出路, 左室流出路での使用では圧較差の解除は十分であった. 心房位, 心室位での使用を含めて長期遠隔成績でも血栓塞栓症の発生, 動脈瘤様の拡張, patchに起因する溶血などは認められず, 長期遠隔での死亡例はみていない. 開発したEPTFE patchはその成形性, 縫着を含めた操作性においても優れた補填材料と考えられ, 実地臨床での有用性が確認された.
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松本 博志
1986 年15 巻1 号 p.
330
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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野一色 泰晴, 山根 義久, 森 有一
1986 年15 巻1 号 p.
331-334
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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低有孔性であるが柔軟性に富み, しかも植え込み後形成される新生内膜の治癒が急速で良好であるという人工血管を開発し, その特徴を動物実験で明らかにした。超極細ポリエステル繊維(0.12デニール, 繊維断面直径3.0ミクロン, 東レ開発の鹿革感触の人工皮革, エクセーヌ用原糸)で内面を覆った内径7mm, 長さ5.7cmの管を作成し, 布製人工血管(有孔性:200c.c./cm
2, 120mmHg, H
2O)を作った。対照群には市販のダクロン製人工血管(2.0デニール, 20ミクロン, 有孔性:200)を採用した。12頭の成犬胸部下行大動脈に作成した人工血管6本および対照群6本を植え込み, 植え込み2日目より99日に至るまでの試料を採取した。作成した人工血管はしなやかで軟かく, 縫合針の通りも抵抗が少なく, 宿主血管壁への縫縮が容易であった。植え込み後の新生内膜形成は対照群に比べ急速かっ安定していた。光顕的観察によって新生血管壁を形成する諸細胞と超極細ポリエステル繊維との親和性の良さが, 急速治癒をもたらしていると判明した。すなわち, 細胞は超極細ポリエステル繊維間隙に侵入しやすく, かつ増殖しやすいことがわかった。また, フィブリン層の薄さも, 超極細繊維の軟かい起毛によると思われた。このような現象が安定した新生内膜を得ることになったが, 特にこの人工血管のしなやかさは, 従来の低有孔性人工血管にない優れたものでもあった。
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野一色 泰晴, 山根 義久, 宮田 暉夫
1986 年15 巻1 号 p.
335-338
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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生体組織を主構築とし, ヘパリン徐放性の小口径代用血管の開発に成功し, 内径3mm管を用いて動物実験した結果, 開存率100%を得た。方法として, 成犬頚動脈を採取し, 0.01%フィシン処理後, 10%プロタミン水溶液を注入しつつ管腔を膨らませながら, 外側から1%グルタールアルデヒドで架橋した。次に1%ヘパリン液中で, 代用血管と結合したプロタミンとヘパリンとをイオン結合させた。体重10kg前後の成犬30頭の大腿動脈, 頚動脈に内径2.5~3mm, 長さ6cmの代用血管120本を植え込み, 植え込み直後より155日に至るまでの観察の結果, 全例が開存した。対照群のヘパリン化していない代用血管は全例1週間以内に閉塞した。ヘパリンは植え込み後2カ月で95%以上が徐放し, 45日目には内皮細胞の出現がみられた。ヘパリン完全徐放後は内皮細胞が内面を覆って天然の抗血栓性を代用血管内面に発揮させ得た。
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吉田 博希, 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 西岡 洋, 小窪 正樹, 稲葉 雅史, 森本 典雄, 佐藤 綾子, 境 普子, 鮫島 夏樹
1986 年15 巻1 号 p.
339-342
発行日: 1986/02/15
公開日: 2011/10/07
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新しく開発されたbovine graftであるSolcograft-Pは仔牛頸動脈をadipic acid, ficin, glutaraldehydeで処理し、抗原性蛋白を除き、安定化したコラーゲン代用血管である。従来のSolcograftとは化学処理法が異なるため、しなやかで弾力性に富み、吻合操作が容易である。また滅菌生食に保存されているため、ただちに使用できる利点がある。雑犬腎動脈下腹部大動脈への移植成績は最長1年までの観察で、9頭中8頭開存、開存率89%と比較的良好であった。移植11カ月後の摘出標本では吻合部にパンヌス形成が認められ、グラフト中央部はフィブリン網で覆われていた。一部赤色血栓が付着していたが、良好な内面性状を呈していた。またComplianceは0.121でイヌ腹部大動脈の0.491には及ばないまでも他の代用血管に比し、大きな値が得られた。今後さらに検討が必要であるが、有用な小口径代用血管となりうる可能性がうかがわれた。
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