人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
18 巻, 2 号
選択された号の論文の180件中1~50を表示しています
  • 尾本 良三
    1989 年 18 巻 2 号 p. 429
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 古謝 景春, 国吉 幸男, 伊波 潔, 赤崎 満, 久貝 忠男, 島袋 正勝, 山内 米邦, 喜名 盛夫, 草場 昭, 神里 隆
    1989 年 18 巻 2 号 p. 431-434
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心バイパスにおける脱血部位として、肺動脈使用の有用性を動物実験にてこれを確認し、臨床応用を試み検討を行なった。
    実験方法は5頭の雑種成犬を用いて、左開胸下に3本の同一サイズのカニューレを(1)FV、(2)LA、(3)PAにそれぞれ押入し、各々を連結管にて1本へ接続して人工肺を経て大腿動脈(FA)送血とする回路を作成した。3ケ所の脱血部位を別々に開閉させ、下行大動脈遮断下にFV、LA、PAの脱血の良否を、規定のバイパス流量(1.2l/m)を得るのに必要な落差をもってこれを判定した。
    3群中必要な落差はPAが有意に少なく、次いでLAが有利であり、FV脱血が最も大きな落差を必要とした。
    本PA脱血によるバイパスを補助手段とした胸部大動脈手術症例は8例であり、要した大動脈遮断時間は24~207分であったが、手術死亡はなく、良好な結果を得た。
  • 高野 弘志, 松田 暉, 中埜 粛, 酒井 敬, 大谷 正勝, 川口 章, 大竹 重彰, 松若 良介, 宮川 周士, 新谷 英夫, 井上 智 ...
    1989 年 18 巻 2 号 p. 435-439
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助循環施行時における肝静脈血酸素飽和度モニタリングの有用性について検討した。補助循環施行症例4例(IABP2例, V-Aバイパス1例, 左心バイパス1例)において、肝静脈血酸素飽和度(ShvO2)のモニタリングを行った。IABPの1例とV-Aバイパス症例ではShvO2は65%以上の高値をとり、肝障害を認めなかった。左心バイパス症例では、ShvO2は肺高血圧発作時に一過性に低下した以外は40~70%で推移し、術直後にみとめた肝障害は改善した。術後2~3日目以降ShvO2が低値(30%以下)を持続した他のIABP症例では、肝障害が遷延し、その後多臓器不全を発生した。動脈血一肝静脈血間で求めた過剰乳酸(splanchnic excess lactate)とShvO2との間に相関を認め、ShvO2が低下した状態においては、肝の乳酸代謝機能の障害が生じていることが示唆された。肝の循環維持からみた補助循環適用の決定ならびにその管理を行うことは重要と考えられ、このためにShvO2のモニタリングは有用となり得ると考えられる。
  • 正井 崇史, 松田 暉, 中埜 粛, 大谷 正勝, 笹子 佳門, 松若 良介, 阪越 信雄, 加藤 雅明, 川島 康生
    1989 年 18 巻 2 号 p. 440-443
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心ポンプ(Bio-Pump)と外部潅流型膜型肺(Sarns16310)を用いて、リザーバーを省いたsimblified veno-arterial bypass systemの有用性を実験的に検討した。ポンプとしてBP-50を用いると、総充填量は400mlであった。開胸雑種成犬5頭(平均体重9.4kg)を用いた。本システムで、バイパス率30~70%、流量23~65ml/kg/minのVABを維持することが可能であった。またこの際はsonomicrometryにて求めた両心室の仕事量は、施行前に比し有意に減少した。mock circulationを用いた流量特性試験の結果、ポンプをBP-80とし、16Fr送血管、20Fr thin wall脱血管を使用した場合、2.0~2.5l/minの流量が得られると考えられた。本システムは総充填量が少ないこと、air抜きが容易なこと、大腿動静脈からのアプローチが可能であること等から、緊急時の循環補助法として有用であると考えられた。
  • 岡田 昌義, 久保田 真毅, 今井 雅尚, 安宅 啓二, 太田 稔明, 久野 克也, 山下 長司郎, 小澤 修一, 中村 和夫
    1989 年 18 巻 2 号 p. 444-447
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去10年間に教室では胸部並びに胸腹部大動脈瘤67症例に対して外科治療を実施し, 満足すべき結果をえた。これらの臨床経験からみて, 本症の手術成績を向上させるための重要なポイントは, 急性期例も多いことから手術時期の適切な決定と, 術中の補助手段の選択であった。とくに, 術前から腎機能障害を有する症例においては術中大動脈遮断時における下半身の循環維持は極めて重要である。かかる観点を重視し, 最近, 著者らは脳循環並びに下半身の循環あるいは尿量を十分にコントロールしうるBio-pumpを術中の補助手段として応用し満足すべき成績をえている。現在までに本症の6例にBio-pumpを応用したが, 本法の実施により全身の循環維持を安全かっ確実に行うことができ, これによる合併症は全く認めていない。本法は簡便な操作で, 上・下半身の血行動態を十分にコントロールしうるので胸部並びに胸腹部大動脈瘤の手術においては非常に有用である。
  • ―コンダクタンスカテーテルを用いた圧容積関係からの検討―
    松若 良介, 松田 暉, 中埜 粛, 大谷 正勝, 笹子 佳門, 高見 宏, 松木 修, 加藤 雅明, 正井 崇史, 川島 康生
    1989 年 18 巻 2 号 p. 448-451
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助循環施行中の減負荷心に応用しうる心機能評価法に関する基礎的検討を試みた。実験I(雑種成犬4頭)では常温体外循環下で、一時的に急性の容量負荷を繰り返し行い、この過程でmicromanometerとconductance ca-theterを用い左室圧容積曲線(P-Vcurve)を連続的に記録した。P-Vcurveより求めたend diastolic volumeとst-roke workはいずれの測定においても高度の直線性を示した(r=0.967~0.991)。実験II(雑種成犬3頭)では遠心ポンプを用いた左心バイパス(LHB)施行中に一時的にweaningを行い、この過程でSWとEDVの関係を検討した。この結果、実験1と同様に両者は高度の直線性を示し、かっその回帰直線の傾き(slope)は、冠動脈結紮により低下した。またその低下の程度は、LHB off時の他の血行動態の変動と関連することが示唆された。よって、SWとEDVのslopeを指標とする心機能評価法(linearized Frank-Starling relationship)をconductance catheterとmicromanometerを用いて応用することにより、過大な負荷をかけることなく補助循環施行中の減負荷心の左心機能ないしその変動を評価することが可能であると考えられる。
  • 北村 惣一郎
    1989 年 18 巻 2 号 p. 452
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 斉藤 憲, 諸 久永, 江口 昭治, 横沢 忠夫
    1989 年 18 巻 2 号 p. 453-456
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    タンパク分解酵素阻害剤であるメシル酸ナファモスタット(FUT)を用い左心バイパス実験を行ない補助循環時の抗凝固薬としての有用性を検討した。体重9~11kgの雑種成犬7頭を用い左房脱血, 左頸動脈送血の左心バイパスを4時間行なった。補助流量は心拍出量の20%に当たる200ml/minとし, 脱血カニューラよりFUTを持続注入し, ACT, 血小板数, APTT, FDPを測定した。結果は回路内濃度1.5~2.0μg/mlで充分な抗凝固作用が得られた。全身血の血液凝固系の検討でも18mg/hr(1.8mg/kg/hr)で必要かつ充分なACT, APTTの延長を示した。出血などの副作用も見られずヘパリンに代わる有力な補助循環時の抗凝固薬と思われた。
  • 尾本 良三
    1989 年 18 巻 2 号 p. 457
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―補助循環モデルを用いて―
    水口 一三, 北村 惣一郎, 高 義昭, 河内 寛治, 小林 博徳, 森田 隆一, 西井 勤, 谷口 繁樹, 小林 修一, 福富 正明, 湯 ...
    1989 年 18 巻 2 号 p. 458-461
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助循環モデルを用いて肺血管抵抗(PAR)が正常範囲(48±21 dynes・sec・cm-5)の両心不全モデル(BVF-I)と, PARが高値(277±113 dynes・sec・cm-5)を示すBVFモデル(BVF-II)とを作成し, これらに対する左心補助装置(LVAD)単独の補助効果と, 両心補助装置(BVAD)の補助効果とを比較検討した。BVF-Iに対しLVADのみでも総心拍出量(CO)は50%, 動脈平均圧(AoP-m)は61%増加, 左房圧(LAP)は38%低下し有意(P<0.001と0.05)に改善した。又右房圧(RAP)も低下傾向を示し, LVADの汲み上げ効果と思われた6次にBVADとすると, RAPは55%と有意(P<0.001)に低下したが, AoP-mとCOは変化がなかった。又LAPは110%, 肺動脈平均圧は73%増加し, ともに病的な値となった。一方BVF-nでもLVADのみでCOは37%, AoP-mは58%増加し有意(P<0.001)に改善した。しかしRAPは27%上昇し右心不全が増強するように思われた。又LAPは86%低下した。BVADでは先の様にRAPは低下し, LAPは上昇したが正常範囲であった。又COは14%増加し有意(P<0.001)な改善を認めた。以上よりPARが高い場合はBVADが適切と考えられ, PARが正常の場合はLVADで対応し得るものと考えられた。
  • 塩野 元美, 長谷川 隆光, 北村 信三, 大平 政人, 陸川 秀智, 進藤 正二, 折目 由紀彦, 畑 博明, 瀬在 幸安
    1989 年 18 巻 2 号 p. 462-466
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本邦における補助人工心臓の臨床応用は, 現在までに百数十例に及び急速な症例数の増加が認められている。しかしながら離脱率は比較的良好にもかかわらず, 長期生存率は低く, 臨床的問題を数多く有している。今回, 自験例13例中左心補助を行った11例に対し, 問題点とその対策および限界について検討を行った。
    うち重要と思われる結論として, ポンプ・カニューレは現在ほぼ満足しうるレベルまできたが, ポンプサイズ, カニューレ形態, 太さ, 内蔵人工弁などについては今後の改善に期待されると考えられた。また適応については可及的速かに行うが, VADの効果の限界を越える症例が少なからず存在し, 厳重な注意を要する。またVAD適応の周辺の時期のすべてにわたり感染やMOFの予防に常に努力が必要であるなどの結語を得た。
  • 松川 哲之助, 橋本 良一, 保坂 茂, 上野 明
    1989 年 18 巻 2 号 p. 467-470
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    78歳, 急性心筋梗塞後心室中隔穿孔閉鎖術後LVADを23日間使用し, 死亡に至る術後26日間に亘り血行動態と血管作動物質および各臓器障害の関係を検討した。
    血漿レニン活性およびアンジオテンシンI値は術後2日, 6日, 11~14日および20日以降にピークを示したが, アンジオテンシンII値は術後2日, 14日および20日以降の3峰性ピークを示しこの傾向はノルアドレナリン値の変動とほぼ一致した。アルドステロン値は術後12日目以降死亡に至るまで漸増した。術後23日目にLVADを離脱したがこの間のLVADを含む体灌流量は1.8~27L/分/m2であった。術後経過中急性腎不全発生はみられなかったが, 術後15日頃より高ビリルビン血症を呈し, さらに20日以降急激なGOT, LDH, アミラーゼ, CK-BB値の上昇がみられAH離脱3日後の術後26日目肝不全にて死亡。剖検により, 中心性肝壊死, 出血性膵炎および十二指腸の限局性壊死がみられた。
  • 許 俊鋭, 尾本 良三, 井上 正, 四津 良平, 小柳 仁, 井野 隆史, 榊原 高之, 細田 泰之, 弘岡 泰正, 鈴木 章夫, 松本 ...
    1989 年 18 巻 2 号 p. 471-475
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去11ケ月間に, 関東地方の心臓外科15施設において, 東洋紡社製(国立循環器病センター型)補助人工心臓(VAD)の臨床治験を行い, 従来の方法では救命が不能と考えられた11例の高度心不全症例にVAD補助を実施し, その有効性と安全性に関し評価した。1) 使用期間は平均6日8時間で, 7例(64%)が高度心不全より回復してVADを離脱し2例(18%)が長期生存した。2) 血液ポンプは耐久性, 抗血栓性ともに優れ, 駆動装置の故障もみられず, 効果的に循環を管理し得たことより本システムは臨床的に安全かつ有効に使用し得, 臨床例への使用が可能と結論する。3) VADを常備しない, あるいは使用経験の殆どない施設においても, 迅速なシステムの移送体制と必要に応じての技術援助チーム(医師1~2名, ME技術員1名)の参加により優れた臨床成績をあげ得る事が期待され, 今後より多くの高度心不全患者が救命されるものと確信する。
  • 筒井 達夫, 村井 正, 厚美 直孝, 中島 英洋, 朝倉 利, 久井 島宏, 三井 利夫, 堀原 一
    1989 年 18 巻 2 号 p. 476-479
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓などの人工循環において, 至適体血流量を知るためのパラメータとして大動脈特性インピーダンスに着目し, 拍動流ポンプを用いて実験を行なった。雑種成犬を用い, 左心バイパスとしてポンプを駆動し体血流量を変化させて特性インピーダンスの変動を検討した。体血流量がコントロール値よりも過大である場合は特性インピーダンスは一定値をとり, 過小である場合には体血流量の減少と共に増加した。
    循環調節系は体血流量需要に応じて血管系特性を設定しており, その設定点が特性インピーダンス変化曲線の変曲点として示されたものであると考えられる。したがって, 人工心臓などにより生体の循環を制御する場合, その至適血流量を特性インピーダンスの変化から知ることが可能であると言える。
  • 香川 謙
    1989 年 18 巻 2 号 p. 480
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 今西 薫, 井街 宏, 阿部 裕輔, 満渕 邦彦, 前田 潔, 渥美 和彦, 鎮西 恒雄, 藤正 巌, 須磨 幸蔵
    1989 年 18 巻 2 号 p. 481-483
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは急性心筋梗塞などの発症急性期の循環不全に対して経皮的にアプローチできて、IABPの補助効果を増強する補助循環方法について検討し、上腕動脈あるいは鎖骨下動脈より一本の送脱血管を上行大動脈起始部に挿入しこれを弁のない小さな血液ポンプに繋ぎIABPとともに駆動するという方法を考案した。模擬循環回路による実験では本法が原理的にも十分実現可能であることが証明された。動物実験においてはIABPと血液ポンプを同期駆動することにより大動脈圧波形上diastolic augmentation効果がIABP単独の場合より増強して得られ、冠血流が増加することが確認された。本法は非開胸で経皮的に装着でき、IABPの補助効果を増強する新しい補助循環法として臨床応用が可能と考えられた。
  • 荒井 裕国, 吉田 哲矢, 丸山 俊之, 天野 純, 坂本 徹, 鈴木 章夫, 芝本 隆
    1989 年 18 巻 2 号 p. 484-486
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後IABP駆動中に血小板数は減少し時に大量の血小板輸血を必要とするが、その原因としてバルーンによる血球破壊が考えられる。当教室で昭和59年1月以降の開心術施行例中72時間以上IABPを使用した28例を対象とし、バルーン(B)と駆動装置(D)の組合せによりA群: Kontron-(B)-外科式40cc+Kontron-(D)-Model-10、B群: Aries-(B)-40cc or 30cc+Kontron-(D)-Model-10、C群: Aries-(B)-40cc or 30cc+Aries-(D)-M-700の3群に分け比較検討した。血小板輸血により駆動中の血小板数は各群とも9万/μl台に維持されたが、単位駆動時間当りの血小板輸血量はC群で最も多量を要し、この組合せで血小板破壊が強いと考えられた。またIABP駆動中より離脱後数日間、血小板分布幅は各群で拡大し血小板の形態的変化が示唆された。
  • 吉岡 行雄, 西田 博, 秋山 一也, 遠藤 真弘, 小柳 仁, 筒井 宣政
    1989 年 18 巻 2 号 p. 487-490
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    カテーテルの開口部分を変化させた以下の4種類のバルーンを作成し検討した。A:カテーテルがバルーン基部に開口している。B:バルーンの先端付近に開口している。C:バルーンの中央部分に開口している。D:カテーテルに多数の穴があり、バルーン全体に開口している。人工心臓を用いて拍動流を発生させ、透明なアクリル管の中で4種類のバルーンを駆動させて駆動形態を16mmシネフイルムで観察した。バルーンAでは、先端から拡張し先端から収縮する現象が見られた。圧測定では、拡張期において18%バルーン基部側が高った。駆動回数を増加させると、バルーン先端を中心に運動し基部では十分な運動が見られなかった。Bではバルーン基部より収縮拡張し、Aと逆の結果であった。Cでは、バルーン先端と基部の両方から収縮拡張した。Dではほぼ全体的に駆動した。雑種成犬に4本のバルーンを挿入駆動した結果、B, Dのバルーンで良好なdiastolic augmentation効果が得られた。
  • 福富 正明, 北村 惣一郎, 河内 寛治, 西井 勤, 谷口 繁樹, 小林 修一, 水口 一三, 小林 博徳, 森田 隆一
    1989 年 18 巻 2 号 p. 491-494
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術時にIABPを使用した62例について早期および遠隔成績を因子別に検討した。62例中早期死16例(26%), 退院後の遠隔死8例(13%), 生存例38例であり, Kaplan-Meier法による生存率は56.3%(平均追跡期間19ケ月)であった。早期死の死因はLOS, MOFであり, 遠隔死例でも心臓死が75%を占めていた。65才以上の高齢者群では遠隔期の生存率が有意に低く長期生存に不利な因子であった。他に統計学的に有意ではなかったが, 術前心機能低下例, NYHA III, IV度例, 弁膜疾患例, 術前Shock例, 術後LOS例, 女性, IABP長期使用例などが不利な因子であった。長期生存例では術後NYHAはI度またはII度に改善し, 心機能は術前と比較して差はなかった。
  • 岡林 均, 廣瀬 光, 荻野 均, 神野 君夫, 西村 和修, 松本 雅彦, 野本 慎一, 岡本 好史, 伴 敏彦, 福増 廣幸
    1989 年 18 巻 2 号 p. 495-498
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    当教室で施行した小児開心術症例133例のうちIABPを術前, 術中, 術後のいずれかの時期に使用した8例を対象として小児に対するIABPの適応とその問題点につき検討した. 使用したバルーンカテーテルは東レ社製5例, SMEC社製3例, 容量は4mlから40mlであった. 圧波形上suprasystolic diastolic augmentationを認めたものは3例であり, うち2例はIABPからの離脱に成功した. 離脱不能例は右心系の術前評価に問題があったものが2例であり, 他の4例は積極的な流量補助が必要と思われた症例であった. 小児にIABPを施行する際には, 小児の大動脈の形状にあったバルーンカテーテルを用いること, IABP施行中の管理に際してはalphaadrenergic agonistの併用が重要と思われる. IABPの適応は成人例と同じく圧補助が原則であり, 流量補助を必要とする症例に対しては積極的に何らかの流量補助を早期に導入すべきと考えられた.
  • 杉本 忠彦, 加治 正弘, 佐々木 建志, 浅野 哲雄, 池下 正敏, 田中 茂夫, 庄司 佑, 高野 照夫
    1989 年 18 巻 2 号 p. 499-502
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、Buckbergの提唱するdiastolic pressure time index(DPTI)をtension time index(TTI)で除したsupply dewand ratio(SDR)を自動的に測定する装置を開発し、心筋の酸素需要供給のバランスを、ベッドサイドで瞬時に測定できるように改良を加えてきた。今回、不整脈や、大動脈バルーンパンピング(IABP)使用時のSDRも測定可能となり、IABP使用の6例の開心術後症例、2例の急性心筋梗塞症例のSDRを測定した。その結果、IABP作動時ではSDR=1.64±0.22、IABP停止時はSDR=1.06±0.20であった。また、IABP離脱不成功例では、SDRの低下傾向がみられた。
  • 禰屋 和雄, 高本 真一, 仲野 孝, 許 俊鋭, 横手 祐二, 尾本 良三
    1989 年 18 巻 2 号 p. 503-506
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)とIABP併用症例に対し経食道ドプラ断層を施行し両補助循環の冠動脈血流速度に対する効果を検討した。両補助循環を種々の駆動条件で作動させ拡張期冠動脈血流速度を計測、同時に記録した大動脈圧波形より拡張期平均血圧(MDP)、EVR(Endocardial Viability Ratio)を求めた。一心拍毎の拡張期Peak血流速度(PV)はBeat I(LVAD on IABP on)64.6±4.3cm/sec、Beat II(LVAD on IABP off)48.8±1.7cm/sec、Beat III(LVAP off IABP on)40.4±8.0cm/sec、Beat IV(LVAD off IABP off)29.2±3.8cm/secで、血流速度の増加率はLVAD単独67.5%、IABP単独38.4%、両者併用時は両者の和に等しい121.2%であった。PVとMDP、PVとEVRの間には高い正の相関がみられ、補助循環による拡張期augmentationが冠動脈血流速度を上げ、EVRの改善に連なっていることが示唆された。
  • 諸 久永, 富樫 賢一, 土田 昌一, 藤田 康雄, 小管 敏夫, 大関 一, 林 純一, 斉藤 憲, 山崎 芳彦, 江口 昭治
    1989 年 18 巻 2 号 p. 507-510
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABPの腎血行動態に及ぼす効果について、腎交感神経切除を施行して、腎血流と腎交感神経トーヌスの関係を中心に、検討した。雑種成犬10頭を用い、熱希釈法にて腎血流量、心拍出量を測定し、腎血流量分配率、腎血管抵抗および末梢血管抵抗を算出し、次の結果を得た。1. IABP作動時の腎血流量の増加は、主として腎血管抵抗の低下によりもたらされた。2. denervation後では、IABP作動の有無に拘らず、腎血管抵抗は低値を維持し、腎血流量は変化しなかった。3. 腎血管抵抗は交感神経トーヌスにより影響されているが、IABPは、かかる交感神経支配下でも、血管抵抗の低下をもたらした。
  • 岡田 昌義
    1989 年 18 巻 2 号 p. 511-512
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 高木 啓之, 岡本 晃〓, 高松 幹夫, 高木 登志子
    1989 年 18 巻 2 号 p. 513-516
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小流量の抗血栓性を具備した血液ポンプを開発することを目的として、まず小口径の弁を開発した。それらは、成人用補助心臓に使用したmodified duct valveを改良縮小したもので、弁口径は4mm、3mm、2mmであった。これらの弁を使用し、chamber容積を6ml、5ml、4ml、3mlに4φ弁を、3mlに3φ弁を、2mlに2φ弁をつないで小流量ポンプを試作した。これらのポンプを我々の自動制御方式で模式循環回路でパンピングし、その性能を検討した。その結果、流量400ml/min前後の新生児用補助心臓としては4φの弁と5~3mlのchamberの組合せが優れているが、chamberが小さくなると復元性が強くなるのでtube-typeの方が望ましい。猶、他のサイズのポンプ及び弁もよく機能して、小流量ポンプとして有望であると考えられる。
  • 山田 一, 川勝 浩司, 苅田 充二, 福増 廣幸, 湯浅 貞雄, 阿久津 哲造
    1989 年 18 巻 2 号 p. 517-520
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    リニアモータの一種であるリニアパルスモータを血液ポンプと機械的に連結させて、人工心臓を構成し、そのモック試験特性について述べた。リニアパルスモータの駆動に用いられる3種類の市販ドライバの電圧・電流一時間特性によって、リニアパルスモータの入力電力が50%以上も変化することを実験から示し、人工心臓用のドライバが新たに必要なことが分った。リニアパルスモータで駆動されるダイアフラム式人工心臓は、拍動数113bpmにおいて最大圧/最低圧は103/69mmHgであり、またプッシャカップ式人工心臓は拍動数130bpmにおいて最大圧/最低圧は97/53mmHgであった。両者のモック試験から、リニアパルスモータの若干の推力不足が確認された。LPMが必要とする推力および出力を計算から求めた結果、80Nおよび5Wとなった。
  • 矢倉 明彦, 妙中 義之, 高野 久輝, 野田 裕幸, 木下 正之, 巽 英介, 関井 浩義, 高谷 節雄, 阿久津 哲造, 大海 武晴, ...
    1989 年 18 巻 2 号 p. 521-524
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全埋込み型人工心臓の開発が切望されている。今回、将来の埋込み型への発展を目的としたエレクトロバイドローリック方式の補助人工心臓システムを試作し、動物実験によりその基本性能を検討した。システムはリニア直流モータを用いたアクチュエータを使用し、シリコンオイルを媒体として容量60mlのプッシャープレート型血液ポンプの駆動を行うものである。試作したアクチュエータの重量は1.8kg, サイズは0.8Lである。体重57kgの成山羊による動物実験では、最大拍出量は3.9L/分で、ポンプ拍動数では120bpmあるいは110bpmが、%sysでは40%がポンプの最大流量を拍出しうる駆動条件であり、低前負荷時においても流量維持能力は優れていると考えられた。試作したシステムは、性能の向上、エネルギー効率の向上を図る必要はあるが、埋め込み型への発展の容易さ、制御性の良さ、という点で今後極めて有力な駆動システムになりうるものと考えられる。
  • 壁井 信之, 津留 亮介, 桜井 靖久, 土屋 喜一
    1989 年 18 巻 2 号 p. 525-528
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究は携帯型補助人工心臓システムを開発することを目的とした。アクチュエータとして電磁石を採用し, 携帯用の二次電池から, DC-ACコンバータ, 伝送コイル, AC-DCコンバータ, 電磁石駆動電子回路, ポンプ駆動機構および血液ポンプまでのシステム構成要素すべてを作製し, 携帯用システムとしての総合評価をおこなった。試作した電磁石の質量は820〔g〕で, 駆動機構および血液ポンプを含む, 人工心臓本体の形状は縦160〔mm〕横101〔mm〕高さ60〔mm〕で, その質量は1.4〔kg〕となった。
    循環系シミュレータを用いた特性試験の結果では, 人工心臓本体のエネルギー変換効率は10〔%〕であった。質量530〔g〕, 容量1.5〔Ah〕のNi-Cd電池を携帯用電源として, 拍動数100〔bpm〕, 平均大動脈圧100〔mmHg〕の条件下でシステムを駆動したところ, 52分間にわたって安定に動作した。システム全体の総エネルギー変換効率は, 平均で6.0〔%〕であった。
  • 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 石原 浩, 末田 泰二郎, 金広 啓一, 松島 毅, 村上 博宣, 松浦 雄一郎
    1989 年 18 巻 2 号 p. 529-532
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    超音波モータを利用してプツシヤープレート型人工心臓を試作し、駆動テストを行なつた。回転運動から往復運動への変換機構としてクランクを用いるものと板カムを用いるものとの2タイブ作製した。クランクを用いた場合はプツシヤープレートの行程はサインカーブに類似であり、%systoleは左右とも50%固定になつたが、板カムを用いるものでは行程は直線状(三角波状)で%systoleを40%とした。血液ポンプはポリウレタン製で、Björk-Shiley弁を用いており、容量は51mL(左心)および44mL(右心)である。駆動装置本体にはアルミ合金と炭素鋼を使用し、人工心臓の重量はおよそ800gであつた。モツクテストの結果、拍動数が毎分57回から95回の範囲で毎分2.3Lから4.1Lの流量が得られた。また動物実験において、良好な循環代行が観察された。
  • 越地 耕二, 増田 幸一郎, 周 英明, 宇都宮 敏男, 高谷 節雄, 高野 久輝, 阿久津 哲造
    1989 年 18 巻 2 号 p. 533-536
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    拍動型人工心臓を駆動するための経皮エネルギー伝送系について、拍動による負荷変化を考慮した設計を行うと同時に、拍動による出力電圧変動の安定化も従来の方式を改善し、応答速度を高めた。また、体内バッテリの急速充電時のように大電力を伝送する場合を想定して、エネルギー伝送コイルを2組使用した場合の効率の解析・測定およびコイルの温度上昇の測定を行い、1組のコイルの場合に比べて、高効率で動作し、大幅に温度上昇が小さいことがわかった。また、体内バッテリを速やかに、かつ安全に充電するために、ここでは、定電流充電とトリクル充電とを組み合わせた方式を試み、良好に動作することを確認した。
  • ―小型・高効率化と耐久性の向上―
    岡本 英治, 細岡 浩司, 山口 亨, 三田村 好矩, 三上 智久
    1989 年 18 巻 2 号 p. 537-540
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は従来よりモータ駆動型人工心臓の開発を行なってきたが、今回さらにシステムの効率と耐久性の向上を図るため機械的改良と、小型で消費電力の少ない駆動制御装置を開発した。機械的改良は、プッシャープレート回転禁止機構としてポリイミド樹脂を用いたプッシャープレート回転禁止用ブシュを開発し、リニアボールベアリングと交換した。開発した駆動制御装置は大ぎさ350cc、消費電力2Wであり、経皮的エネルギー伝送装置の二次側エネルギー受信回路を内蔵している。In-vitro実験で、拍動数100bpm、後負荷130mmHgの駆動条件で改良前と改良後のシステムの機能を比較すると、機械的損失トルクが0.16kg・cm減少し、それにともない効率が8.3%から10.8%に向上した。体外模擬循環回路内の水温を40℃にしてアクチュエータの発熱を測定したところ、4時間連続駆動で42℃まで上昇した。またポンプ内血液とアクチュエータの熱伝導を調べた結果、その熱伝導はさほど大きくないことがわかった。
  • 仁田 新一
    1989 年 18 巻 2 号 p. 541-542
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 相澤 猛, 二宮 淳一, 庄司 佑, 能勢 之彦
    1989 年 18 巻 2 号 p. 543-546
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助循環用超小型ポータブル遠心ポンプを開発し、実用化のための性能評価および動物実験を行った。シール方式として、インペラ裏面にシールノーズを適当な荷重で押しあてる回転シール方式の採用により、in vitro試験において、ポンプ回転数5,000rpm、全揚程120mmHgの条件下で、200時間の無リーク運転を確認できた。また、同条件下での牛血を用いた溶血試験において、ポンプ吐出量100lあたりの遊離ヘモグロビン量は0.048gと許容値の半分以下の値となった。ただし、成犬を用いた左心バイパス実験では、特にポンプの前後差圧条件により十分な吐出量が得られない場合に許容値を上回る溶血が発生し、今後の検討課題となった。一方、LAP、CVP、APおよび赤血球数、白血球数、血小板数、ヘマトクリット値、赤血球抵抗は、左心バイパス実験中ほぼ一定値を維持した。
    今後、問題点をクリアした後、長時間の動物実験による性能評価が必要である。
  • 遠藤 真弘, 青見 茂之, 土田 弘毅, 橋本 明政, 小柳 仁, 日下部 正宏
    1989 年 18 巻 2 号 p. 547-550
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ICU等で、緊急に補助心臓を心要とする場合、従来の空気駆動型の補助心臓では体外循環の組立等に時間を要し、救命することは難しい。そこで、我々は、遠心ポンプを用いた簡単な左心バイパス用セットを用意した。すべてヘパリンコーティングによる送・脱血カニューレ、延長チューブ、コネクター、遠心ポンプでセットされている。拍動はIABPによって施行した。
  • 城山 友廣, 赤松 映明, 福増 廣幸
    1989 年 18 巻 2 号 p. 551-554
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小型の遠心ポンプ羽根車の回転軸シールの問題点を解消した歳差式遠心血液ポンプ(ティースプーン・血液ポンプ)の開発を行ってきた。これまで、ポンプケーシング及び羽根形状とポンプ特性との関係について実験・検討を行ってきたが、新たにポンプの流入口・流出口形状ならびに羽根ロッド形状を改良することによってポンプの圧力-流量特性ならびにポンプ効率の著しい改善がみられ、本血液ポンプの設計点(流量6L/min., 圧力100mmHg.)におけるポンプ回転数を従来型の3000rpmから2500rpmに下げることができ、さらに、ポンプ効率もこれまでの35%程度から50%に近ずけることができた。また、工業用感圧紙として開発されたマイクロ色素カプセルを代用赤血球にみたてた模擬溶血実験を行い、血液ポンプ内流れ場におけるせん断応力と遊離色素濃度との間に一定の相関関係があり、血液ポンプの溶血比較試験に利用できることがわかった。
  • 野田 裕幸, 妙中 義之, 高野 久輝, 本下 正之, 巽 英介, 矢倉 明彦, 関井 浩義, 佐々木 栄作, 阿久津 哲造
    1989 年 18 巻 2 号 p. 555-559
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体形状に応じた補助人工心臓用脱血コンデュィットを作成するため、核磁気共鳴診断法(MRI)を用いて正常人(急性心筋梗塞患者想定;n=3)、僧帽弁狭窄症患者(n=2)、拡張型心筋症患者(n=1)、肥大型心筋症患者(n=2)での心臓周囲形状を計測し、各脱血部位別にコンデュイットの適正形状を検討した。その結果、疾患別にコンデュィットを作成する必要はないと判断された。右側左房脱血では鈎型の基本形状を右房外側周囲に合わせて曲率(=60度)を持たせたものが適当であり、心房挿入部より曲がりまでの距離(C)は80mmであった。心尖脱血では二重に曲がった形状をとり、その曲間距離は110mmが適当であった。左心耳、経心房中隔的左房、経左胸腔的左房および右房脱血の場合はほぼ基本の鈎型の形状で適用でき、Cはそれぞれ45mm、50mm、160mm、10mmであった。今回の検討を基に作成したコンデュィットの使用により機械的要因による脱血障害は予防可能であり術後管理改善に寄与し得ると考える。
  • 浜中 喜晴, 福永 信太郎, 石原 浩, 末田 泰二郎, 松浦 雄一郎
    1989 年 18 巻 2 号 p. 560-563
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全植込型人工心臓の開発のために、軽量、小型化を目的に超音波モータを使用した駆動装置を試作し、その効率評価を行つているが、体内植込用としてのデザインの改良点について検討した。使用した超音波モータは新生工業USR-60-4-100型で、外部からの制御電圧によつて40-120rpmの回転数で運転し、超音波モータの回転運動をクランクによつて行程が18mmの往復運動にして、その両端にあるプッシャープレートとケーシングとの間にある左右の人工心室を交互に収縮させる。人工心室はポリウレタン製で、流入部および流出部にはBjörk-Shiley弁(25mm)を使用した。仔牛の人工心臓置換模型を用いて、心房カフ、動脈側グラフトとの適含状態を検討した。両心房間の距離、流出口の位置に問題があり、超音波モータを外部に取り付けるために、充分な幅をとることが困難であり、ケーシングそのものの形状も変更する必要があることが明らかになつた。
  • 矢田 公
    1989 年 18 巻 2 号 p. 564
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 久保田 真毅, 岡田 昌義, 今井 雅尚, 中村 和夫
    1989 年 18 巻 2 号 p. 565-570
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    21頭の豚を用いて冠動脈のmultiple ligationにて心筋梗塞後の心不全モデルを作成し, 補助人工心臓(Ventricular assist device)による左心バイパスを施行し, 早期の血行動態, EVR, LV max dp/dt, TTI, PVR等に検討を加えた。その結果, 21頭中11頭に心室細動が発生したがNBT染色による梗塞巣の範囲は左室自由壁重量の63%であった。また, LVAD駆動によるLV max dp/dtやTTIの有意な減少およびEVRの著明な上昇が確認され, これらの事実は左室の前負荷および後負荷の軽減, ひいては心仕事量の減少や冠血流量の増加が示された。一方, 平均大動脈圧は90mmHg以上に維持され, 全身循環は良好に維持されたが, 右心系の血行動態には変化は認められなかった。また, LVAD駆動のみによる左心補助の限界は肺血管抵抗の面からみて, およそ1800dyne sec cm-5にあると考えられた。
  • ―補助流量・左右冠血流量・左室仕事量の実験的検討―
    深町 清孝, 中村 祐一郎, 岸崎 邦昭, 麻生 俊英, 戸嶋 良博, 小江 雅弘, 三谷 淳夫, 坂本 真人, 田中 二郎, 徳永 皓一
    1989 年 18 巻 2 号 p. 571-574
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓の駆動方法として、これまで行われていなかった収縮期駆動法に着目し、その有用性を検討した。雑種成犬7頭に対し、空気圧駆動型LVADにて左房脱血、上行大動脈送血の左心補助を行い、収縮期駆動法(S群)と拡張期駆動法(D群)とで順不同に駆動させ、非駆動時(C群)を合せた3群間で、補助流量・左右冠血流量・左室仕事量を比較検討した。補助流量はS群1020±180ml/min、D群860±300ml/minであり、S群で有意に(p<0.05)増加した。左室仕事量はD群5.6±3.4gm・mに比し、S群3.6±3.4gm・mとS群で有意に低下した(p<0.01)。左右冠血流量は3群間に有意差を認あなかった。収縮期駆動法により、充分な補助流量と左室仕事量の減少が得られ、同法の有用性が示された。
  • 西村 和修, 廣瀬 光, 荻野 均, 神野 君夫, 岡林 均, 野本 慎一, 岡本 好史, 福増 廣幸, 山里 有男, 伴 敏彦
    1989 年 18 巻 2 号 p. 575-578
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    これまでに経験した12例の左心補助臨床例を再検討し、左房脱血と左室脱血の利点欠点にっき考察を加えた。左房脱血を9例(右側左房8例、左心耳1例)に、左室脱血を3例に施行した。左房脱血9例中2例、左室脱血3例中3例が左心補助よりの離脱に成功し、左室脱血の1例が長期生存した。左室脱血法の利点としては1) 左室後負荷軽減効果が大きい、2) 血流のうっ滞による血栓発生の可能性が少ない、3) 脱血管が胸骨閉鎖の障害となりにくい、4) 少量のAR合併例でも使用可能、5) 卵円孔開存による右-左シャントが生じない、等があげられ、心拡大を伴った最重症心不全患者における有用性が示唆された。一方、欠点として1) 左室心尖部の追加心筋障害、2) 脱血管挿入部の出血、3) 脱血管が心室中隔や乳頭筋に接触することにより生じる脱血障害、等がありこれらを回避する工夫によって、左室脱血法のより積極的な試みが可能となると考えられた。
  • ―機械側, 生体側からみた駆動条件について―
    折目 由紀彦, 長谷川 隆光, 北村 信三, 陸川 秀智, 進藤 正二, 塩野 元美, 畑 博明, 瀬在 幸安
    1989 年 18 巻 2 号 p. 579-582
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    当施設の左心補助人工心臓(LVAD)の11例の臨床例からポンプ流量を増加させるための条件を機械側, 生体側から検討し, ポンプ流量低下時の対策について考察した。
    その結果, LVADのポンプ流量を増加させるための機械的駆動条件としては, 駆動陽圧を200~250mmHg, 陰圧を20~40mmHgまで上げ, S/D比を30~40%, 収縮時間を200~250wsecの間に設定することが必要で, 生体側因子としては末梢血管抵抗の低下, 循環血流量の負荷, 右心不全の防止, 治療などがあげられ, とくにポンプ流量低下の原因として右心不全が疑われる場合には積極的にRVADを併用する必要があると思われた。
    また, カニューVの選択, 位置などにも留意することも大切で, LVAD駆動中はポンプ流量低下の原因を常に多方面から把握し, それについて1つ1つ対策を立てることが管理上の重要なポイントであると思われた。
  • 遠藤 真弘
    1989 年 18 巻 2 号 p. 583
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 山家 智之, 仁田 新一, 片平 美明, 薗部 太郎, 田中 元直, 佐藤 尚, 三浦 誠, 本郷 忠敬, 渡辺 孝, 毛利 平, 吉沢 誠
    1989 年 18 巻 2 号 p. 584-587
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    VAD臨床例における長期生存を妨げる大きな要因の一つとして多臓器不全(MOF)の存在が注目されている。MOFの原因についてVAD駆動下の液性因子の研究は数多く行なわれているが, 神経学的な検討は殆ど行なわれていない。そこで今回我々はMOFの一環をなす急性腎不全に着目し, 腎前性腎不全の発生を予防するために, 腎血管抵抗に注目したVADの駆動条件設定について, 腎交感神経活動(RSNA)を直接計測して検討した。雑種成犬にLVADを装着し, 腎交感神経に電極を装着し, 様々な駆動条件下でのRSNAを比較した。RSNAはLVADの駆動開始とともに著しく抑制され, その後徐々に復帰したが駆動前よりは低値に安定した。駆動条件を変更して比較すると, co-pulsation mode (CoP) に比してcounter-pulsation mode (CP) にてRSNAが大きく抑制されていた。従つて, CPにてのLVAD駆動は腎血管抵抗を減少させ, 腎前性腎不全の予防に効果がある駆動法と推測された。
  • 岡本 晃榿, 間瀬 武則, 高木 啓之, 高木 登志子
    1989 年 18 巻 2 号 p. 588-591
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々が開発した小流量用ポンプ系の中で、弁口径4mm、chamber容積6ml、5ml、3mlのものを選び、新生児用補助心臓としての抗血栓性について、成犬13頭を使用して検討を加えた。パンピングは、我々の自動制御方式により、落差約25-35cmで維持し、バイパス流量として大体200-500ml/minを維持した。パンピング中は、静脈ラインの確保以外には一切抗凝固剤は使用しなかった。その結果は、成人用補助心臓と全く同じ材質、同型のデザインでありながら、成人用に比べて遥かに血栓ができ易かった。特に、左房内の流入導管開口部、metal connectorの両端部、flow probeの両端部で著しかった。これは、多分導管内の血流速度が成人用に比べて比較的早いために起るのかも知れない。また、パンピング中の貧血傾向も成人用に比べ甚だしかった。
  • 大滝 憲二, 酒井 圭輔, 田辺 達三, 細岡 浩司, 松本 健郎, 三田村 好矩
    1989 年 18 巻 2 号 p. 592-595
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓使用時の抗凝固療法として, 合成抗トロンビン薬MD805の有用性について検討した。羊2頭に対して補助人工心臓駆動中MD805をそれぞれ20mg/day, 50mg/dayの速度で24時間連続静脈内投与し, 抗凝固療法を行なわなかった3頭と比較した。
    MD805投与例では, プロトロンビン時間と部分トロンポプラスチン時間が, より延長する傾向がみられた。血小板数, フィブリノーゲン量, アンチトロンビンIII量およびFDP量の変化に差は認められなかった。腎の肉眼所見では, 梗塞巣の減少を認めた。走査電顕像では, ポンプ内の血液接触面において, 血小板粘着の減少を認めた。以上より, 少量のMD805投与で抗凝作用が認められたことから, 少量のヘパリンと併用することにより, より効果的な抗凝固療法が可能と考えられた。
  • ―拍動型非同期駆動, 拍動型同期駆動及び, 定常流補助循環の比較検討―
    金森 由朗, 田辺 一, 下野 高嗣, 矢田 公, 草川 實
    1989 年 18 巻 2 号 p. 596-600
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    拍動型非同期駆動人工心臓, 拍動型同期駆動人工心臓(サック型血液ポンプ), 定常流人工心臓(遠心ポンプ)により, 雑種成犬正常心に対し左心補助を行い, それぞれの心補助効果を検討した。拍動流では非同期駆動では固定レート, 同期駆動では1対1でのcounterpulsationとしそれぞれ低流量(COの25%程度), 中流量(COの50%程度), 高流量(COの75%程度の最大流量)と流量を変化させ, 大動脈圧, 左室圧, 左房圧, 右心系心拍出量, バイパス流量, PTB, EVR, LVWを測定した。その結果, 拍動型非同期駆動, 拍動型同期駆動及び, 定常流補助循環を比較すると低流量及び中流量においてはPTB, LVWの軽減, EVRの増加などの心補助効果に差はないが, 高流量においてはバイパス流量の容易に得られた遠心ポンプによる定常流補助循環が最も効果的と考えられた。しかし他の方法においてもバイパス流量が充分に得られる際には同様の心補助効果が得られると考えられた。
  • 前田 肇
    1989 年 18 巻 2 号 p. 601
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 阿部 裕輔, 井街 宏, 鎮西 恒雄, 満渕 邦彦, 前田 潔, 今西 薫, 米沢 卓実, 浅野 雅広, 藤正 巌, 渥美 和彦
    1989 年 18 巻 2 号 p. 602-606
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    上半身を自然心臓(NH)で、下半身を人工心臓(AH)で循環する上下の分離人工心臓循環を作成し、AHの駆動条件をコンピュータにより自動的に変化させた際の循環系の応答(心拍数、中心静脈圧(CVP)もしくは右房圧(RAP)、上下の動脈圧・血流量など)を自動的にコンピュータに取り込み解析を行なった。このモデルでは低流量から高流量までの心拍出量を覚醒状態にて強制的に作り得た。本実験にて、1) 総流量とCVP(もしくはRAP)との相関を認めなかった、2) 心拍数と総拍出量との相関を認めなかった、3) 上半身においては、動脈圧および血流量は一定範囲内に保たれ、末梢抵抗も一定の曲線を描くが、下半身では駆動条件によってそれぞれ別々の圧―流量関係および末梢抵抗―流量関係を示し、全体的にも相関関係が認められたなどの結果を得、AHにおいては末梢抵抗を制御関数として設定すれば動脈圧および血流量の変動範囲がより生体の条件に近い制御ができる可能性が示された。
  • 下岡 聡行, 木目 沢司, 三田村 好矩, 勇田 敏夫
    1989 年 18 巻 2 号 p. 607-610
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体循環系のパラメータ変動に対応し、左房圧、動脈圧等、複数の制御指標を扱うことのできる補助心臓システムを開発している。時系列モデルと最小自乗推定を用いたパラメータ同定とそれに基づく駆動陰圧制御則を導入した。同期駆動を想定して計算機シミュレーションにより生体パラメータの変化に対する制御システムの対応を検討した。一入力―出力モデルを用いた定値制御は良好な結果を示し、評価指数を導入して拡張した2個の制御指標を扱う一入力二出力モデルを用いたシミュレーションを行ない検討した。適切な評価指数を導入すれば、多制御指数を用いることのできる有用なシステムが設計できると思われる。
feedback
Top