土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
75 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第36巻(特集)
  • 藤田 素弘, 西田 竜之介
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_535-I_544
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,東海地方に大きな被害をもたらした平成23年台風第15号に伴う豪雨災害時の自動車での帰宅困難要因について分析し,広域ネットワークで適用可能な交通シミュレーションによって,各種対策案の評価を行った.まず当日の自動車交通状況より,高速道路と幹線国道が通行止めとなり,名古屋市北東 部に向かった自動車帰宅者は何度も迂回をして通常よりも3-5倍の所要時間をかけて帰宅したことがわか った.構築した交通シミュレーションを活用して,出発当初から通行止め情報を入手した場合や,宿泊者を増やした場合などの対策を行った場合の交通再現の結果,大きく帰宅困難度を減らすことができることが分かり,豪雨災害時には,適切な交通情報を入手して移動を取りやめるか,通行止め地点をできるだけ早く回避することなどの効果を把握できた.
  • 鎌田 佑太郎, 松中 亮治, 大庭 哲治, 後藤 正明, 辻堂 史子, 鈴木 義康, 中川 大
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_545-I_554
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は高齢者の中心市街地来訪日における詳細な行動を把握し,歩行量との関係を明らかにすることを目的として,富山市に居住する高齢者に携帯端末を配布し,1ヶ月間の位置情報データおよび歩数データを取得した.その結果,個人間の異質性を考慮した上で,中心市街地に来訪した日としなかった日を比較すると,来訪した日の歩数が多いことを明らかにした.さらに,公共交通による来訪時には回遊範囲が広い傾向にあることを把握し,自動車に対して公共交通による来訪の多い人は,中心市街地内の歩数さらには中心市街地に来訪した日における歩数が多いことを明らかにした.また,同一の交通手段による来訪においても,中心市街地内の広い範囲を回遊する人のほうが,その日の歩数が多いことを明らかにした.
  • 北川 大喜, 福手 亜弥, 関谷 浩孝, 糸氏 敏郎, 池田 大造, 永田 智大, 今井 龍一
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_555-I_563
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    携帯電話基地局の運用データを基にした人口流動統計(OD量)を用いて移動経路の推計手法を開発すれば,国内最大規模のサンプル数を基にした24時間365日ごとの出発エリア・到着エリア別移動経路を把握できる.本論文はその推計手法を提案および比較分析した.本論文では,人口流動統計を生成する過程で,位置登録信号が観測されたエリアを通過エリアとして出力し,移動経路を推計する手法を提案した.具体的には,出発エリアから到着エリアまでの移動中に観測された位置登録信号を通過エリアとして抽出し,通過エリアを地図情報と照らし合わせて,移動経路を推計する手法を考案した.比較分析として,既存調査と比較分析を行ったところ,高速道路の利用割合が整合する結果を得た.
  • 早内 玄, 中村 文彦, 有吉 亮, 田中 伸治, 三浦 詩乃
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_565-I_574
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    地形条件を考慮した交通計画手法の確立に向け,本研究は高低差や勾配の交通手段選択への影響を,空間的分解能の高い顕示選好データを用い,他の影響要因との相対的関係を含めて明らかにすることを目的とする.横浜市富岡地区において独自取得された行動データをもとに,分担率などに関する集計分析,ロジットモデル構築による非集計分析を行った.集計分析においては,同一距離帯においても上り高低差に伴い徒歩分担率の減少,バス・タクシー分担率の増加が生じることなどが明らかとなった.非集計分析においては,上り高低差が徒歩の効用に負に作用し,1m の上り高低差が 12m の歩行距離増加または 21.9 円の負担に相当すること,加えてバス停からの上り高低差がバスの効用に負に作用し,上り高低差 1m が10.4 円の負担に相当することなどが明らかとなった.
  • 布施 孝志, 原田 遼
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_575-I_583
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    個人移動の把握のため,パーソントリップ調査や非集計交通行動モデルの開発が行われてきた.本研究では,個人の1日の活動全体を詳細に表現できるアクティビティモデルと,動的な交通状況の再現が可能な交通データの両者を統合することにより,現況に即した個人の移動の再現を目的とする.状態空間モデルにおいて,個人位置を状態ベクトルとして表現し,観測データから得られるゾーン滞留人口を観測ベク トルとして定義する.システムモデルとして,アクティビティモデルPCATSを利用し,観測モデルを状態ベクトルと観測ベクトルの類似度として定式化する.フィルタリングにおいては,モデルの非線形性や非正規性を考慮し,パーティクルフィルタにより実装する.提案手法を東京都心三区に居住する個人に対して適用し,その有効性を確認した.
  • 金 利昭, 本田 慎弥
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_585-I_594
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    自転車の車道左側通行を徹底しようとすれば,必然的に自転車利用者には車道上での迂回や歩道上での押し歩きを選択してもらうことになる.しかし現状では自転車利用者が迂回や押し歩きを選択することは少なく,歩道上を違法に通行することが黙認されている.本研究の目的は,自転車の車道左側通行に伴う迂回・歩道押し歩き・歩道通行の発生構造を,主要因である発着地点間の位置関係に着目して解明するこ とである.そのため消費者行動分析で用いられるPSM分析を応用した意識調査分析手法を開発し,幹線道路をケーススタディとしたアンケート調査を実施することにより歩道通行の発生構造を分析した.結果, 交差点間隔が200mと500mの場合,迂回・歩道押し歩きを無理なく選択する発着地点間の位置関係は,出発地から50m以内であることが判明した.
  • 菱川 貴之, 井料 美帆, 長谷川 悠
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_595-I_605
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    セグウェイに代表されるパーソナルモビリティ(PMV)は,コンパクトで小回りが利き,環境性能に優れた手軽な交通手段として着目されている.普及には,客観的な安全性の確保のみならず,社会環境として PMV が歩行者の周りを走行する状況に対する歩行者の主観的な社会的受容性を検証すべきである.本研究では社会的受容の構成要因の 1 つであるリスク認知に着目し,歩行者と混在する PMV に対する,車種,歩行者属性に応じた歩行者のリスク認知特性を調べることを目的とする.形状の異なる PMV に対するリスクを尋ねるアンケート調査を実施した.因子分析の結果,座位タイプは立位タイプに比べて安全で信頼があり,リスクが小さく認知されることが明らかになった.歩行者の属性(PMV の認知度,普段の歩行頻度等)による違いも明らかになった.
  • 大竹 司真, 菊池 輝
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_607-I_613
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    交通需要予測手法に用いられている四段階推計法は,予測値の行動論の根拠が不透明であることや時間軸が無視されている問題から,それに代わる次世代の手法が必要とされてきた.一方近年では,ICT技術の発展により空間統計データ等のビックデータが利用可能となってきている.本研究では,従来より提案されていた,需要予測手法の1つである生活行動マイクロシミュレータPCATSと交通流シミュレータを組み合わせた手法に空間統計データを利用したデータ同化の適用を行い,都市圏規模での有効性と配分計算結果を分析することを目的とし,シミュレーションシステムの構築を行った.適用計算の結果から,都市圏規模でもデータ同化は有効であり,配分結果も改善されていることが示された

  • Tien Thiem BUI, Shoichiro NAKAYAMA, Hiromichi YAMAGUCHI, Kosuke KOIKE
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_615-I_625
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    While static traffic assignment model cannot adequately depict real network, dynamic traffic assignment model is too complex and requires detailed Origin-Destination (OD) data. As an effective combination, the semi-dynamic model with flow propagation is used. In semi-dynamic traffic assignment model with endogenous traffic congestion, not only is the static equilibrium reached in each period, but flow propagation also is considered. Some of the travellers cannot exit the link and are considered as residual flow of that link which is propagated to the next period. And, the present period experiences the remove of residual flow on subsequent links. The problem is that if the residual flow for flow propagation is eliminated, not only the travel cost changes but also the inflow changes via network equilibrium. Sensitivity analysis is used to solve this problem. The semi-dynamic traffic assignment model with flow propagation based on sensitivity analysis was proposed with route-based approach. However, because of route enumeration in the sensitivity analysis formulations, applying the proposed method to very large-scale network has been in difficulty. In fact, the extremely large alternative routes connecting an OD pair in a real network can cause overloaded calculation. In this study, thus, we will upgrade this method to solve this problem to increase the applicability of the semi-dynamic Stochastic User Equilibrium traffic assignment model. This research will apply, therefore, link-based procedures which perform only link and node variables. This method is developed from STOCH3 algorithm and Depth First Search (DFS) algorithm. The goal of our research not only reduces computation time but also reduces the need of computer memory and increases applicability of the semi-dynamic traffic assignment model. The effectiveness of the calculation method will be illustrated by an application to Kanazawa City road network.
  • 日比野 直彦, 坂本 雅彦, 奥ノ坊 直樹, 森地 茂
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_627-I_640
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    現在進められている働き方改革の取り組みの一つであるテレワークの普及推進は,通勤行動,余暇活動等のアクティビティ,ライフスタイル等に変化を及ぼす可能性が高く,鉄道事業者にとって,今後の鉄道サービスや沿線活性化に向けた施策にこれらの変化を反映することが重要である.しかし既存調査では働き方と行動の関係を捉えられておらず,具体的な施策の検討には不十分である.そこで本研究では,現在テレワークを実施している就業者に対する業務実態,通勤行動等に関するアンケート調査により,その特徴を明らかにする.分析より,テレワーク実施者の通勤日数,自宅出発時刻等の勤務実態の他,住替え意向と場所選択の関係,サテライトオフィスに求められる要件等を明らかにし,今後起こりうる生活行動の変化や居住地としての必要条件の考察を行った.
  • 銭 祺輝, TRONCOSO PARADY Giancarlos, 髙見 淳史, 原田 昇
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_641-I_650
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,同伴活動の既存研究レビューを基にその要因整理を行うとともに,統計調査に基づく全体像の把握が米国の一事例に限定されていることを整理した.次に,日本の統計調査である社会生活基本調査(平成13年調査と平成18年調査)の匿名データを活用し,同伴活動の実態と特徴を分析した.その結果,1) 日本における同伴活動の生成量は米国より少ないが活動時間で見ると平日の約4割,週末の約6割と重要であること,2) 同伴活動の活動時間は単独活動より長く,平日は昼前後と夕方に集中すること,3) レジャ ー活動の場合は非家族同伴の割合が最も高く,週末は家族と一緒に過ごす傾向があること,4) 二時点の変化に関しては,同伴活動は減少する傾向にあり,非家族同伴活動の減少が大きいことなどを明らかにした.
  • 山中 亮, 神谷 大介, 内藤 郁, 内海 泰輔, 多田 俊也, 新垣 康明
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_651-I_657
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,訪日外国人の増加とともに,訪日外国人のレンタカー事故が急増している.しかしながら,具体的な対策はほとんど行われておらず,早急な安全対策が必要とされているが,危険個所自体が明確ではな い.本稿では,沖縄本島を対象として,道路区間別交通事故件数と,ETC2.0プローブデータを用いて危険個所の比較を行った.県民ドライバーの急制動箇所は一般プローブとし,日本人及び訪日外国人レンタカ ードライバーの急制動箇所は特定プローブを用いることで比較を行った. 結果,訪日外国人ドライバーが運転している中で危険な区間が,事故件数が多い区間とは異なる区間にも存在することが明らかになった.特に,事故件数が相対的に少ないが急制動が多い区間では,訪日外国人ドライバー対策を優先的に行うことが効率的であると考えられる.
  • 瀬山 竣貴, 秋田 直也, 小谷 通泰
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_659-I_668
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトの必要性が叫ばれているが,その促進に向けては,オフレール部分の輸送を担う鉄道コンテナ集配トラックの運行の効率化が重要な課題となっている.そこで本研究は,デジタル式運行記録計による運行履歴データをもとに,鉄道コンテナ集配トラックの1日の運行特性をトリップチェインとして把握した上で,コンテナの配達地から集荷地へのコンテナラウンドユース輸送の運行形態の形成に寄与する要因を明らかにすることを目的としている.具体的には,コンテナの配達地において,ホームに帰着するかしないかの選択と次に向かう集荷地の選択の2段階からなる選択が行われていると捉え,ネスティッドロジットモデルを用いてモデル化する.
  • 寺部 慎太郎, 一井 啓介, 柳沼 秀樹, 小野 瑞樹, 田中 皓介, 康 楠
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_669-I_679
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    観光客の回遊行動の把握は,従来はアンケートによる調査やGPSを用いた調査に依っていたが,近年ではWi-Fiパケットセンサーを用いた調査がなされている.本論文の目的は,Wi-Fiパケットセンサーを用いて歩行者や観光客の行動を把握し分析した研究論文をレビューすることと,それを踏まえて筆者らの取り組みからまだ発表されていない分析例を提示することである.特に,歩行が主な交通手段である比較的狭い地域内での観光スポット間OD交通量は従来の手法ではなかなか得にくいものである.そこで,1年目から3年目における2日分の成果を比較する.3時点のセンサー設置地点間のODパターンを比較したところ,その相関係数は高いものの少数のOD交通量が多いため,当センサーで得られたデータの範囲内では必ずしも類似性があるとはいえないことが分かった.
  • 後藤 梓, 小木曽 俊夫, 牧野 浩志, 池田 裕二, 榊 真, 牧 佑奈
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_681-I_691
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    環状道路は,都心から通過交通を排除するという重要な機能を持つが,わが国の地方中核都市では,環の大きさや走行性能などの状況が様々であり,期待される機能を十分発揮できているか疑問が残る例もある.そこで本研究では,環状道路の効果や課題を把握するために有用な事例を提示することを目的として,地方中核都市の通過交通の実態分析を行った.まず環状道路による通過交通排除機能と分析手法の整理を 行った上で,ETC2.0プローブデータを活用して,実際の都市の都心通過交通の混入割合や環状道路経路分担率を分析した.その結果,環が大き過ぎると環状道路内部に起終点を持つ通過交通が起こりやすい傾向や,環状道路を利用する際の距離増や所要時間短縮の程度によって通過交通の経路分担率が左右される可能性が高いことが示された.
  • 小林 渉, 渡部 翔平, 岩倉 成志, 山下 良久
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_693-I_700
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    わが国の都市鉄道需要予測モデルの変数には乗車待ち時間が含まれているが,現行の方法では乗車待ち時間を運転間隔の半分と設定している.これは,運転間隔の長い駅の待ち時間を過大に与えている可能性がある.本研究では,大都市圏の駅における待ち時間の設定方法の提案を目的として,運転間隔が 2.5 分から 30 分の間で列車が等間隔に運転している 26 駅で実測調査を実施した.調査の結果,運転間隔が 7.5 分以上の路線では利用者の平均乗車待ち時間が運転間隔の半分より小さくなり,運転間隔が長くなると,かい離が大きくなった.この結果は,海外の既存研究の成果とも整合する.また,乗車待ち時間を改良した鉄道経路選択モデルのパラメータ推定の結果,乗車時間と乗車待ち時間のパラメータ比が増加することを確認した.
  • 平井 一成, 嶋本 寛
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_701-I_708
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,環境問題抑制や都市活性化から公共交通の利用促進が叫ばれており,利用促進のための適切な対策をとるためには乗客のトリップパターンの把握が必要である.本研究では乗客のトリップパターンを,系統単位における乗り換えを考慮しないレグODを推定する第1段階と,乗り換えを考慮したジャーニーODを第1段階で推定したレグODを用いて推定する第2段階からなる,2段階アプローチで推定するモデルを構築した.仮想ネットワークにおいて構築したモデルの推定精度を検証したところ,第1段階におけるレグODの推定精度は路線OD交通量の先験情報の精度の影響を受けることを確認した.さらに,第2段階のジャーニーODの推定精度は第1段階で推定されるレグODの推定精度の影響を受けることを確認した.
  • 越智 健吾, 関 信郎, 岩舘 慶多, 石神 孝裕, 若井 太亮, 石井 良治, 杉田 渓
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_709-I_717
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    パーソントリップ調査(PT調査)データは,人の移動を目的別手段別に捉えることができるデータであり,従来,都市圏の広域的な交通流動をとらえるように調査設計し活用されてきた.しかし,近年の自治 体の都市交通計画分野におけるニーズは,より詳細ゾーンレベルのものとなっている.本研究では,PT調 査データと入手可能な交通関連ビッグデータを組み合わせることにより,自治体担当者が実務において利用可能な,既存のPT調査データと整合的な詳細なゾーン間での目的別手段別OD表を簡易に作成する手法を開発した.ケーススタディとして高崎市を対象にPT調査データと携帯電話基地局データを用いてゾーンを詳細化した目的手段別OD表の推計を行った結果,手法の妥当性と実務においての実用可能性を示すことができた.
  • 家田 仁, 岩森 一貴
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_719-I_730
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    高速道路ネットワークが約1万kmにまで拡張され,高速バス輸送は今や年間1億人の輸送人員を担う重要な交通手段となっている.特に新幹線を持たない地域においては短距離から中長距離輸送まで,公共旅客輸送の主役の地位を占めるに到っている.この研究では,高速バス輸送における最も重要なインフラ施設ともいえる高速バスストップ(BS)に着目し,まず創始期の高速バス導入の意図とその後の変容経緯を歴史的に振り返り,それを踏まえてBSの設置タイプ別の整備状況と使用状況を調査し,その特性について交通学的見地から分析して一定の合理性を確認するとともに,地域的偏差特性に着目した考察を通じて,BSの整備と使用に関わる地域政治的もしくは意思決定論的性質の内在性を示唆したものである.
  • 波床 正敏, 中村 建世, 湯河 孝允
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_731-I_744
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    スペインでは標準軌新線の開通にあわせて1992年にAVEが運行開始され,広軌の在来線改良や軌間可変列車なども併用しながら,年間約125kmの高速新線建設が続けられてきた.本研究ではこの影響を分析するため,1963年以降概ね10年ごとに2015年までの6年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した. その結果,1985年以前は在来線改良等で改善が図られたが,1985年以降は運行頻度や乗継ぎ利便性向上にやや課題を残しながらも,乗車時間に加えて待ち時間や運行頻度を考慮した総合的な利便性の面で国内主要都市間の多くの区間で利便性が向上したことがわかった.これはフランスに関する研究結果と異なる傾向であり,年間の新線整備がスペインの方が大幅に多いことが関係していると考えられる.
  • 居駒 薫樹, 浅田 拓海, 有村 幹治, 亀山 修一
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_745-I_754
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    自転車走行時に路面凸凹による振動は,不快感の発生に大きく影響することが指摘されているが,これを定量的に評価する手法は確立されていない.本研究では,市販のアクションカメラで撮影した走行中の動画から,運転者が振動によって感じる不快の度合い(振動不快度)を定量的に評価する手法を開発した. 走行実験では,15m間隔での振動不快度の主観評価およびオプティカルフローと周波数解析を用いた動画解析による振動量計測を行った.次に,振動量から振動不快度を推定するサポートベクター回帰モデルを構築し,テスト走行からその汎化性能を検証した.本手法では,低コストかつ簡易な面から,高頻度な計測が可能となり,また,動画の活用によって評価結果の信頼性と透明性を確保できる.
  • 渡邉 亮
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_755-I_762
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    イギリスでは1960年代後半に大規模な鉄道路線の見直しが実施された.その根拠となったのが,ビーチングレポートである.このレポートでは,当時大幅な赤字であったイギリスの鉄道の収支改善のために15の提言が行われるとともに,各線区の存廃を厳密に収支に基づき決定することが盛り込まれていた.このレポートに基づき,イギリスでは「ビーチングカット」と呼ばれる路線の廃止が断行されたが,計画は完遂することなく,今日に至っている.本稿では,当時鉄道の存廃がどのような基準で検討されたのかや,なぜ計画が完遂することがなかったのかを紹介するとともに,1980年代に定義された日本の(特定)地方交通線に関する議論や経緯などとも比較しながら,鉄道の存廃基準について考察してみたい.
  • 石倉 智樹, 佐々木 武志
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_763-I_769
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    社会基盤政策による間接的な効果や地域別帰着便益の分析方法として,空間的応用一般均衡 (SCGE) モデルが発展している.近年,地域間交易のモデル化に logit モデルを適用し,柔軟な地域分割が可能な SCGE モデルの開発が進んでいるが,同時に,価格変数に関する 0 次同次性が満たされないという理論的課題も指摘されている.一方で,その理論的課題が実用面において,どれだけの影響を及ぼすのか,定量的な検討は十分に蓄積していない.本研究は,SCGE モデルの非 0 次同次性の影響を定量評価するため,基準財価格の選定による均衡解への影響について感度分析を行い,基準財の選択は分析結果の空間的分布にほとんど影響しないこと,基準財価格の水準を変化させると均衡解への影響が無視できないこと,などの特徴を示した.
  • 橋本 成仁, 恒藤 佑輔
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_771-I_778
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,地域住民の参加・参画による協働まちづくりが進展している.移動手段の確保に関して言えば,路線バス等の廃止代替交通として,自治体の支援のもと,地域住民が運営に対する参加や主体となる例がみられる.このような背景のもと,こうした住民組織によって運営されるケースにおいて,生活交通の利用による主観的幸福感向上効果について明らかにすることを目的とする.分析は高齢者を対象とし,共分散構造分析による分析を行った結果,こうした生活交通を必要としている高齢者による利用は,移動に関する満足度や地域とのつながりと関連することで,主観的幸福感向上に寄与する可能性を示した.
  • Ayiguli AINI, Hideo YAMANAKA, Megumi ISHIO, Nami SHIMADA
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_779-I_785
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    This paper focuses on the potential role of Flexible Transport Service (FTS) in low and dispersed demand area. In Japan, after the deregulation in 2002, some mass transit companies left from bus services in local areas. This causes problems to some older people and disabled people with difficulties on traveling in rural areas. To meet these needs, the term demand responsive transit (DRT) has been increasingly applied because it can provide passengers with alternative options on route, schedule, at a lower operating cost compared to the infrequent fixed route local public bus services. DRT needs, however, a quite large subsidy for the low density area and is not so popular for elderly people because of it’s level of service. On the other hand, Taxi Subsidy Scheme (TSS) that subsidizes on the taxi fare is being carried out widely by local authorities in Japan to support the special groups’ transport needs. In this research, we aimed to examine the role of taxi subsidy system from the relation with on demand ride-sharing taxi in depopulated area.
  • 吉城 秀治, 辰巳 浩, 堤 香代子, 永井 慎一郎, 太田 裕介, 柿本 悠佑
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_787-I_798
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    街なかにおける迷惑行為への対策を進めることは,快適な都市づくりの上でも防犯上も重要なことである.一方で,これら行為は交通事故や路上犯罪とは異なり発生位置情報が蓄積されないことに加え,一過性の事象である行為も多くその記録が困難であること等の特徴がある.そこで本研究では,迷惑行為の発生特性を理解するために「注意書き」に着目した.福岡市中央区の天神・大名地区を対象とし,街なかにおける掲示の実態を明らかにするとともに,注意書きによる迷惑行為の代替可能性について検討した.その結果,特に大名一丁目のような住商混在エリアでは,男性,中でも特に若年層の路上喫煙行為の発生位置情報は民間による注意書きによって代替できることを明らかにしたとともに,路上喫煙行為が発生しやすい空間の特性についても明らかにしている.
  • 大野 沙知子, 中村 俊之, 薄井 智貴, 手嶋 茂晴
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_799-I_807
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    Wi-Fi対応のスマートフォンなどの機器が発信しているProbe Requestを受信するWi-Fiパケットセンサーにより収集されるデータは,設置の高さや屋内外の設置位置,設置周辺の建物の密集度合,人や自動車の密度などにより影響を受けることが既往研究で報告されている.本研究は,Wi-Fiパケットセンサーにより収集されるデータの特徴をスマートフォンより収集されるGPS位置情報との同期により求めること目的としている.本稿では,街中に設置した13基のセンサーからデータを収集する実験を試みた.そして,設置条件を考慮し,捕捉率,カーネル密度推定ならびに受信距離について分析した.その結果,高い設置,屋外設置,道路幅員により広く受信すること,市町村道や生活道路におけるデータ収集には設置の工夫が必要であることを示した.
  • 西村 和記, 東 徹, 土井 勉, 喜多 秀行
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_809-I_820
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    利用者の減少等から地域公共交通の維持が困難な状況となっているため,行政から補助金等の財政支出がなされている.しかし,これまで企業として独立採算で運営されていた交通事業者に補助金を継続して投入することに対しては,行政側の財政難からの否定的な意見なども少なくない.一方,地域公共交通の価値や必要性を重要視する声も多数あるが,これまでは定性的に述べられていることが多く,収支率以外に定量的に評価されたものが残念ながら少ない状況である.そこで本研究では,クロスセクター効果の考え方から,地域公共交通の定量的な価値算定を試みるものである.このことを通じて「公共交通の赤字」という意味を改めて考え直し,地域公共交通への支援は赤字補填ではなく,地域を持続するための必要な支出であることを考察するものである.
  • 鈴木 雄, 日野 智, 小島 遼太郎
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_821-I_833
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,高齢者の外出行動における慣れや諦めに関する分析を行った.各種外出行動が希望未満の頻度であるにも関わらず,不満に感じていない高齢者の存在が明らかとなった.これは,不便な現状に慣れてしまうことや,自身の健康状態などから外出を諦めてしまうことが要因と考えられる.外出手段として家族の送迎を利用している人が,希望未満の頻度であるのに不満を感じない傾向にあった.高齢者の生活における慣れや諦めについて「活動能力に関する諦め」「活動欲求に関する慣れ」「生活の質に関する諦め」の因子で構成されていることが明らかとなった.「活動能力に関する諦め」が「活動欲求に関する慣れ」や「生活の質に関する諦め」に繋がり,そこからさらに「外出における重要度認識の低さ」に繋がる構造を示した.
  • 大室 ひな, 神田 佑亮
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_835-I_845
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    我が国の航空政策は1980年代から規制緩和として運賃設定の自由化等が進められてきた.2000年以降はLCCと呼ばれる新規航空会社の参入等が積極的に進められてきたが,その影響を定量的に評価した研究は少なく,特に2000年以降の影響は明らかとなっていない.本研究では2000年までの影響を評価した既往の研究をベースに,2000年以降の規制緩和の影響について,レガシーキャリアのネットワーク,正規運賃,路線距離と運賃の関係,モデル分析による実効運賃水準の時系列変化等に着眼点し,航空会社の収益状況 とあわせて定量的に分析することを目的とする.分析の結果,2000年以降,レガシーキャリアの正規運賃の上昇,地方路線網の衰退などの負の影響が明らかとなった.また,正規運賃の上昇に反し,実効運賃水準の上昇が確認されない結果も得られた.
  • 澤井 勇人, 四辻 裕文, 喜多 秀行
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_847-I_860
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    車を利用できない住民に対して活動機会を保障するためには公共交通サービスが不可欠である.限られた予算の下で効率的に公共交通サービスを提供するためには,住民の外出パターンの的確な把握と,それを踏まえてどこにどの程度のサービスを供給すべきかの指針が必要になる.本研究では,交通政策担当者が容易に入手できるデータから効用最大化行動仮説に基づいて住民の外出パターンを推計する「外出パタ ーン推計モデル」,および,外出パターン分布から最低限の活動機会を保障するためのバス運行便数を求める「運行ダイヤ設定モデル」を構築し,実証分析を通じてその有用性を確認した.
  • 西園 知哉, 轟 朝幸, 稲垣 具志
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_861-I_870
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    わが国最大の基幹空港である羽田空港は,発着回数を制限する容量制約が存在する.そのため,需要に応じた多頻度運航が行えているとは言い難い.仮に容量制約が撤廃され,本来提供される便数を運航できれば,旅客に大きな利用者便益が発生する可能性がある.そこで本研究では,羽田空港の容量制約撤廃を想定し,その際の運航便数を推計した上で,首都圏地方間旅客の利用者便益額を明らかにした.その結果,幹線や新幹線と競合するような路線で増便が見込まれることが分かった.また,総便益は幹線に関係する地域,1人当たり便益は首都圏から遠く,現状需要に合った便数が提供できていない地域で大きいことが分かった.さらに,容量制約が撤廃された場合,将来における全体の便益額は2015年よりも増大すること を示した.
  • 足立 国大, 鈴木 弘司
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_871-I_881
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    横断中の歩行者事故対策として,単路部二段階横断施設の活用が進められている.本研究では,2017年10月に岐阜県関市倉知の県道17号線で設置された食い違い二段階横断施設を中心に,愛知県内にいくつか存在する簡易的な二段階横断施設で運転調査,横断調査およびビデオ観測調査を行い,利用者挙動や意識の違いについて分析した.その結果,運転者の横断者認知時の車両速度の低下から二段階横断施設の安全性が示された.さらに,食い違い二段階横断施設と簡易な二段階横断施設を比較し,必要減速度から食い違い形式の優位性が示された.また,運転者の譲り挙動に及ぼす影響要因および道路交通環境と利用者挙動が利用者意識に与える影響について統計解析により明らかにした.
  • 南 貴大, 浦田 渡, 藤生 慎, 福岡 知隆, 須田 信也, 高山 純一
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_883-I_890
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    日本では,約73万橋の橋梁が存在しており,一斉に高齢化が進んでいる.予防保全的維持管理を行うために5年に1度の頻度で近接目視により点検・診断が行われているが,財源・人材が不足している地方公共団体にとって近接目視点検を継続的に行うことは困難である.そのような中,近年,維持管理の効率化に 向けて画像データの活用が期待されている.本研究では,超高解像度カメラで撮影した1億画素の画像を用いることで,人が実際の点検現場で行う近接目視点検とほぼ同様の点検環境の構築を図る.画像目視点検が近接目視点検をどの程度再現しているのかについて橋梁点検経験者にヒアリングを行い,有用性・課題について検証を行った.また,画像目視点検を行った場合,点検者による点検結果のばらつきがどの程度発生しているのかについて明らかにした.
  • 竹田 郁海, 平田 輝満, 阿部 柊人
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_891-I_899
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    貨物輸送においてトラックが未だに大部分を占めているが,ドライバー不足が深刻化していることから,トラックの効率化を図っていく必要があると考え,その一つとして隊列走行に着目した.隊列走行に関する研究として,日本で隊列走行を導入した際の効果について,現実の貨物流動状況と現実的な隊列組成プロセスを同時に考慮して明らかにしたものはないことから,本研究では,隊列走行の参加ポテンシャルや効果を推計する確率モデルを,現実的な隊列運用プロセスを考慮しながら構築した.また,東北自動車道での隊列参加ポテンシャルや燃費削減効果を,物流センサスを用いて現実の貨物流動から定量的に明らかにし,さらに隊列参加ポテンシャルや燃費削減効果を向上させる要因を明らかにした.
  • 山田 稔
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_901-I_910
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    大規模店舗の駐車マスのレイアウトの改善を考える際に,車と歩行者の交差に関する状況を評価するためには歩行者が選択する経路を適切に予測する必要があり,筆者らはそのための経路選択モデルの構築と検証を行い有用性を明らかにしてきた.本研究は,駐車場内における車の挙動を再現するシミュレータにこれらの歩行者挙動のモデルを取り入れることで,レイアウト変更に伴う歩行者の横断個所誘導の効果を推定し,それが車や歩行者の円滑性指標に及ぼす影響を評価できるようにしたものである.さらにこのシミュレータを用いることで,横断個所当たりの利用歩行者数が過大にならないように適切な数に分散させて誘導することで,車両の円滑性にも良い効果が生じる場合のあることを明らかにした.
  • 奥村 友利愛, 吉城 秀治, 辰巳 浩, 堤 香代子, 今里 鈴花
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_911-I_922
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    人々にとって身近な移動手段である路線バスは誰にでも使いやすいものであることが望まれる.しかし多くの場合,基本的な情報が利用者にわかりやすい形で提供されておらず,そのため乗る際の心理的抵抗が大きいと指摘されるような状況にある.そこで本研究では,バス利用に関わる案内の中でも路線図に着目し,デザインの観点からその実態を把握し,路線図のデザインと人々の「わかりやすさ」との関係を明らかにすることを目的とし評価実験を行った.そのためにまず全国に存在する241件の路線図に対してクラスター分析による類型化を行い6パターンに分類した.そして各パターンの路線図に対して経路探索による評価実験を行い,路線図を見る際の人の挙動と意識の面からわかりやすさに関する要因について明らかにした.
  • 鈴木 弘司, 粟田 恭太朗
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_923-I_932
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究ではラウンドアバウト(RAB)における自転車の通行安全性について,事故の原因となり得る,環道内で自動車が自転車を追従し,追い越す行為に着目した分析を行う.構造の異なる3か所の RAB での走行調査,観測調査に基づいて,環道内での自転車追越しの発生状況について,走行位置,追従行為の継続時間,走行速度の観点から比較した.その結果,自転車の走行位置が環道の中央に近いほど追越しは発生せず,また,エプロンによる段差がある場合に追越しが起こりにくいことがわかった.一方,左折 ODでは 3 秒程度,右折 OD では 4 秒程度の追従時間のときに追越しが発生しやすく,さらに,追従開始時の自動車の走行速度が自転車の速度よりも大きくなると追越しが発生しやすくなることがわかった.
  • 松本 育滉, 稲田 竜一, 小嶋 文, 久保田 尚
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_933-I_944
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    北米には,住宅地内の道路の交通静穏化を目指す対策の実施にあたって,予算的に地域からの希望の全てに応えられない場合を想定して,複数の候補から実施箇所を選定する優先順位付けシステムを備えている都市が多くある.こうしたシステムは,住民からのとめどない要望に行政が困惑する状況をなくすとともに,住民に地点選定の説明を効果的に果たせるものとなりうる.本研究は,日本においても,交通安全対策地点選定のための優先順位付けシステムの導入を目指すものである.そのため,どのような項目や重みを用いた点数付けをすべきか,生活道路の交通環境項目の抽出,及び重みづけについてアンケート調査結果の分析から設定し,構築した優先順位付けのための点数化システムに対する市民の受容性について,意識調査からその可能性を見出すことができた.
  • 石丸 達也, 水野 弘一, 喜多 秀行
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_945-I_955
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    人口減少とマイカー利用の拡大により商店や診療所などの生活に必要なサービスが地域から失われ,いわゆる「買い物難民」や「通院難民」と呼ばれる人々が増加している.徒歩圏内に日常生活に必要なひとまとまりのサービスを提供する「小さな拠点」と上位階層の拠点,および,それらを有機的に結ぶ公共交通サービスの計画的な整備はそのひとつの解決策であるが,それにより保障される活動機会の大きさを適切に計測・評価するための手法は必ずしも確立されていない.そこで本研究では,「食料品の買物」を例にとり,活動拠点への到達機会の大きさを定量化する既往のアクセシビリティモデルにサービスの多様性概念を組み込むことにより,各拠点に持たせるサービス機能とそこへのアクセスのしやすさを同時に考慮しうる活動機会の評価モデルを提案する.
  • 飯島 翼, 阿保谷 崇, 末木 祐多, 武藤 慎一, 佐々木 邦明
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_957-I_966
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    リニア中央新幹線は日本の三大都市圏を短時間で接続し,日本に多大な経済効果もたらすと期待されている.各県に設置される新駅においては,地域への経済効果を最大化するために,駅からのアクセシビリティを高めることが求められる.本研究では市街地から離れて設置される予定の山梨県駅を対象に,アクセシビリティを高めることが地域にどのような経済効果を与えるのかを計測する.具体的には,全国207の生活圏における現在のアクセシビリティと経済状況の関係性から,リニア開通による全国の経済効果を推定する.さらに山梨県駅と現在のJR甲府駅までを繋ぐ都市内交通を整備した場合の市町村に与える経済効果とともに,税収,労働人口,地価の変化も推定し,都市内交通の整備の重要性を明らかにした.
  • 平田 将大, 川端 祐一郎, 藤井 聡
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_967-I_978
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    我が国における東京圏への人口一極集中は,世界的に見ても類を見ないほどに進行している.人口の一極集中については長年にわたり是正の必要性が唱えられてきた.一極集中の是正を図るためには,一極集中が生じる要因に関する実証的知見が必要である.国際比較に基づく既往の研究から,一極集中の一要因として「インフラ整備水準の低さ」が挙げられており,また国内ではインフラ整備の東京圏への集中が一極集中を招いているとの指摘があるものの,前者は全般的な整備水準を扱うのみで,また後者は定量的分析が不十分という問題がある.そこで本研究では,道路インフラ整備の空間的分布の偏りが,人口の一極集中を引き起こしているか否かを定量的に検証する.結果,国内外のデータから,インフラ整備の集中が人口集中を引き起こす可能性が示唆された.
  • 平田 輝満, 久保 思温, 蒔田 良知, 二見 康友
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_979-I_987
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    羽田空港では到着滑走路と2本の離陸滑走路が相互従属運用となっており,離着陸の順序付けにより滑走路全体の処理効率が変化する.本研究ではこの離着陸従属運用滑走路において,離陸時刻・離陸機数予測をもとに到着間隔制御を行うアルゴリズムを検討し,実際の到着間隔制御の方法と処理効率を考慮した容量・遅延評価シミュレーションを開発した.さらに,複数滑走路の需要バランスを考慮した動的な離陸滑走路決定による滑走路の運用効率改善と航空機遅延の軽減方策について検討し,シミュレーションによりその効果を定量評価した.その結果,動的に離陸滑走路を決定し滑走路ごとの需要バランスを確保することで滑走路全体の処理効率が向上し,遅延軽減が可能となることを示した.
  • 萩田 賢司, 横関 俊也
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_989-I_998
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    車道を左側通行しない自転車の問題点を明確にするために,静岡県の自転車事故と先行研究の他地域の自転車交通量調査を,車道の通行場所別に比較した.単路における自転車事故の右側通行自転車の割合は,自転車交通量調査の右側通行割合より高い傾向にあることが窺え,交差点では,このような傾向が明確に示せなかった.事故類型や属性別に自転車事故を集計した結果,右側通行自転車の関与事故は,出会い頭事故の割合が高く,右側通行自転車は自動車と反対方向に走行しているため,交差側車両に見落とされや すいと推察された.左側通行していない自転車運転者は,運転免許取得時の講習を受講していない15歳以下や運転免許非保有者の割合が高かった.自転車の通行方向別に,同一地域で自転車交通量と自転車事故を調査する必要がある.
  • 齊田 光, 徳永 ロベルト, 高橋 尚人, 渡部 武朗, 高野 伸栄
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_999-I_1008
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年の冬期歩行者転倒事故の増加により,冬期歩行空間の転倒危険度を把握することの重要性は増しつつある.一方で,冬期歩行空間の転倒危険度を定量的,リアルタイムかつ広域にわたり簡便に評価する手法は確立されていない.本研究では上記課題を解決するために,スマートフォン搭載加速度センサにより歩行挙動を計測し転倒の危険性を定量的に示す指標(歩行安定度)を求める手法を開発した.また,様々な路面状態下で被験者実験を行い,歩行安定度と路面状態およびスリップ発生状況の関係について検証した. 検証の結果,歩行安定度は路面状態の悪化およびスリップ発生回数の増加に伴い低下し,この傾向は被験者の年齢や性別などの属性によらず現れたことから本手法による冬期歩行空間の転倒危険度を定量的に評価できる可能性があることが示された.
  • 谷田 英駿, 奥嶋 政嗣
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_1009-I_1019
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    橋梁の長期補修計画では補修費用だけでなく,その残存価値に加え,補修工事によって生じる交通流動の変化を考慮する必要がある.本研究では,交通流動変化による道路利用者負担のみならず,橋梁劣化に対応した残存価値を考慮した複数主要橋梁における長期補修計画案の方法論の確立を目的とする.そのため,複数主要橋梁を対象として,橋梁劣化モデルと交通量配分モデルを組み合わせた橋梁補修シミュレーションによりライフサイクルコスト(LCC)を推計し,各種補修シナリオを比較評価した.その結果,橋梁の供用予定年数に関わらず予防的補修による費用削減効果を実証した.さらに,補修費用と道路利用者負担を合わせたLCCについて,残存価値を考慮することにより計画期間の長さに関わらず適切な長期補修計画案の立案が可能であることを実証した.

  • 横関 俊也, 森 健二, 矢野 伸裕, 萩田 賢司
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_1021-I_1028
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    平成29年より高速道路における規制速度110km/hの試験的運用が開始された.規制速度の引き上げは,走行車両の速度上昇や,車線変更挙動の増加等,車両挙動に変化を与える可能性が考えられる.国内の高速道路における規制速度110km/hの導入は初めての試みであるため,今後,同様の施策を実施する際の知見を蓄積することを目的に,東北自動車道の規制速度引き上げ試行区間において,平均速度や車線変更挙動,交通事故発生状況を比較した.その結果,引き上げ実施前後での平均速度の大幅な上昇や交通事故等の危険な事象の増加は確認されなかった.このような結果になった要因としては,施策を実施する区間を設定する際に実勢速度の状況を考慮していることや,取締りや啓発活動により,必要以上の速度上昇が抑制されたこと等が考えられた.

  • 壇辻 貴生, 福田 大輔, ZHENG Nan
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_1029-I_1038
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    都市部の交通渋滞の削減を検討するに当たり,複数の交通モードが存在するシステムにおいては,それらの相互作用を考慮した上で施策を検討することが重要である.本研究では,自動車とバス混在のバイモーダルシステムにおける動的エリア混雑課金の設定手法を検討する.バイモーダルネットワークの交通状態を表現する指標として Three-dimensional Macroscopic Fundamental Diagram を用いた課金額の設定手法を提案し,シミュレーションベースでの課金設定フレームワークについて検討する.課金による旅行者の出発時刻・交通手段選択行動の変化を集計ネスティッドロジットモデルにより記述し,道路交通流シミュレーションとの統合を行った.ケーススタデイとして東京都心部を対象とした分析を行い,フレームワークの検証を行った.

  • 金 進英, 岩里 泰幸, 宇野 巧, 福士 達央, 太田 恒平, 大藤 武彦
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_1039-I_1048
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    本研究は,交通事故リスク情報を活用した交通安全マネジメントの一環として,カーナビゲーションを用いた交通事故リスクの低い経路を案内することにより,広域的に道路ネットワークにおける交通事故の削減を図ることを目的とする.高速道路・一般道路を含めた交通事故データとその他の様々な関連データを整備し,道路通行時の交通事故リスクを算定する方法を構築する.その方法を基に,カーナビゲーションの経路案内アプリケーションで内生化して,低事故リスク経路案内機能を実現し,平成29年12月から民間ナビ媒体での試験的な低事故リスク経路案内情報提供を開始した.本研究では,低事故リスク経路案内の実現に向けた検討過程と,より安全な経路への転換を促すことで道路ネットワークの交通事故リスクの低減を定量的に検証して,その有効性を示す.

  • 横関 俊也
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_1049-I_1057
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,搭乗型移動支援ロボットに近いモビリティとして電動車いすを想定し,電動車いすの交通事故を分析することにより,搭乗型移動支援ロボットの安全性を検証することとした.その結果,電動車いすが車道を走行中(横断中を除く)に重傷以上の事故にあいやすいことがわかった.また,歩道があるにもかかわらず,電動車いすが車道を走行して発生している事故については,現地の歩道の幅員が狭い,段差や障害物がある等のやむをえない事情により車道を走行して事故に至っていると想定できるケースがあった.そのため,搭乗型移動支援ロボットを安全な状況で普及させていくには,段差のない幅広な歩道網を整備していくとともに,やむを得ず車道を走行するときに備えた車体整備や操作技術の習得等が重要であると考えられた.

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