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鈴木 温, 吉川 涼介, 平沼 克, 青木 俊明
2021 年76 巻5 号 p.
I_557-I_567
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
我が国の地方部では,人口減少地域が多数存在し,その中には限界集落と呼ばれる存続が危ぶまれる地域も存在する.そのため,現在,地方創生が推進されており,地域の持続可能性を高めることが重要な課題となっている.そこで,本研究では,特に,地縁や地域の歴史的要因に着目し,人口減少地域における居住継続性に影響を与える要因を明らかにすることを目的とする.本研究では,中部地方と三重県の市町村の中から51市町村を対象地域と選定し,対象地域のWebアンケート調査から得られたデータを基に因子分析,共分散構造分析を行った.分析の結果,人口減少地域では,歴史・地縁に対する評価が居住継続性に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった.
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小川 直史, 羽鳥 剛史, 片岡 由香, 尾﨑 信
2021 年76 巻5 号 p.
I_569-I_588
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
本研究では,まちづくりに関わる人材育成の取り組みとして,愛媛県松山市の「松山アーバンデザインスクール」を取り上げ,本プログラムの受講者の観点から,まちづくりの学習過程とそこで形成されるまちづくり主体としての担い手像を明らかにすることを目的とする.この目的の下,受講者の学習経験を調査し,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて,まちづくり活動の実践に向けてその目的・方法・地域ニーズとの間で逡巡する過程を中心とする学習プロセスモデルを作成した.その上で,本プログラムを通じて形成される担い手像として,受講者の自由記述から8つのタイプを抽出すると共に,学習プロセスモデルにおける学習経験との関連性を検証した.最後に,本研究の知見がまちづくり人材育成のあり方に示唆する点について考察した.
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清水 美朗, 羽鳥 剛史
2021 年76 巻5 号 p.
I_589-I_602
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
多くの中山間地域において,地域の暮らしを維持していく上で,住民の主体的な参画に基づく地域運営組織の役割に大きな期待が集まっている.本研究では,愛媛県内の西予市地域づくり交付金事業を対象として,メンバー,組織体制,他組織との連携の観点から,地域づくり組織を比較・類型化すると共に,その活動成果との関連性を検討した.その結果,地域づくり組織にはその地域の実情に応じて様々な形態が存在すると共に,特に本制度に合わせて自律的な組織体制を構築した組織は,地域づくり事業を主体的に推進する一方,従来の自治会を中心とした地区主体に基づく組織に比べると,当該事業が地域全体を巻き込んで継続的に展開するとは限らない可能性も示された.最後に,持続的な地域づくりの促進に向けた交付金事業の制度的課題について考察した.
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竹内 岳, 高橋 貴生, 佐野 可寸志, 鳩山 紀一郎, 松田 曜子
2021 年76 巻5 号 p.
I_603-I_608
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
道の駅は本来の3つの機能に加え,地域交流の促進としての役割が求められている.近年,道の駅はそれ自体が目的地となるように魅力度を高める傾向にあるが,地域交流の促進の観点からは,利用者が道の駅で情報提供を受け,その後に周辺地域へ立ち寄る周遊行動が重要であると考える.本研究では,道の駅利用後の周遊行動に着目するため,個人トリップの走行軌跡が把握可能であるETC2.0より得た道の駅利用者の周遊行動の軌跡を分析し,周遊行動をしたサンプルの比率を周遊率と定義して,道の駅から周辺への立ち寄りやすさを指標化し,道の駅の立地及び施設特性とのロジスティック回帰分析を行った.分析結果より,道の駅のある市町村内の観光スポットの観光入込客数・数・近さや,飲食店事業所数,電子掲示板が周遊率に影響を与えていることが分かった.
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長谷川 歩, 松田 曜子, 諸橋 和行, 樋口 勲, 上米良 秀行, 佐野 可寸志, 鳩山 紀一郎
2021 年76 巻5 号 p.
I_609-I_619
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
現在,河川防災情報(河川水位・河川監視カメラ画像や雨量情報)をインターネットで公開する動きが進んでいるが,それらを住民の視点から評価を行った例は少ない.本研究では河川防災情報表示のエンドユーザーである住民のユーザビリティ評価にもとづいた表示コンテンツの試作と評価を行う.本研究には,工業デザイン等の分野で用いられる人間中心設計(HCD)の概念を援用した.HCDサイクルの手順に従い,全国の河川管理事務所や都道府県が提供する表示における各コンテンツの掲載状況,コンテンツ表示に対する住民の要求の明確化のためのヒアリング調査を実施した.これらの結果を基に,コンテンツ表示の改良型を作成し既存型と比較評価を行ったところ,ユーザー要求をもとに改善した項目が限定的ながら高い評価を得た.
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鳩山 紀一郎, 渡邉 靖之, 佐野 可寸志, 松田 曜子
2021 年76 巻5 号 p.
I_621-I_630
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
わが国では政府開発援助(ODA)等を通じたインフラ整備技術の一層の海外展開が期待されている.一方で,海外展開の推進は建設企業にとって厳しい場合もあることも指摘されており,政府にも建設企業のニーズや見通しに合った的確な支援が求められる.本研究では,わが国の建設企業の海外進出状況を整理した上で,インタビュー調査およびアンケート調査を通じてインフラ建設事業の海外展開に対する建設企業の意識と政府機関等の見解を把握し,今後の政府支援のあり方を検討する.結果として,苦労して海外展開している企業も見られ,企業が負担の少ない形で海外進出できる環境づくりには,各企業が持つ強みを組み合わせて海外事業を受注できる仕組みを確立することが有効である可能性などが示唆された.
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嶋本 寛, 平井 一成
2021 年76 巻5 号 p.
I_631-I_638
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
近年,環境問題抑制や都市活性化から公共交通の利用促進が叫ばれているが,利用促進のための適切な対策をとるためには乗客のトリップパターンの把握が必要である.筆者らは先行研究で,複雑な路線網が形成され,高頻度のバスサービスが提供されているような都市圏公共交通への適用を念頭に置き,乗客のトリップパターンを2段階にわけて推定する手法論を提案している.本研究では,先行研究で構築した推定モデルを実規模ネットワークに適用し,入力データの精度と推定精度の関係を明らかにすることを目的とする.実規模ネットワークにおける推定精度検証の結果,乗客のトリップパターンの推定精度に大きな影響を及ぼす入力データを明らかにし,その誤差水準と推定精度の関係性についても考察した.
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森本 瑛士, 下山 悠, 滝澤 善史, 谷口 守
2021 年76 巻5 号 p.
I_639-I_647
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
人口減少に対応して,拠点に都市機能を集約したコンパクトシティの形成が目指されている.近年ではコンパクト+ネットワークの重要性が挙げられており,都市と交通の両分野の視点から拠点形成を図ることが望まれている.しかし拠点設定の基準値は存在せず,市町村によって拠点設定の基準が異なるのが現状である.そこで本研究では,群馬県を対象に施設集積に交通利便性の観点を加えた拠点階層設定方法を提案し,現状の拠点計画と比較することを通じて,今後の拠点計画策定の一助となることを目的とする.分析の結果,1)現状の拠点計画は施設集積が重視されており交通の視点が欠けていること,2)公共交通型の拠点数と同程度の自動車型の拠点が存在すること,3)都市部において自動車型の拠点が多くみられる傾向にあること,が示唆された.
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郭 雪松, 掛井 孝俊, 川瀬 晴香, 小林 寛
2021 年76 巻5 号 p.
I_649-I_656
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
国土交通省では,交通安全を守る施策の一環として,ETC2.0プローブ情報から得られる急減速データ等を道路施策で活用する取組みを進めている.一方,急減速データには,衝突を回避するための減速行動と非危険な減速行動の両方が含まれている.そのため,急減速データの活用により,正確な交通安全施策を導くためには,真の潜在的な危険事象を対象にすることが肝要である.そこで本研究では,ETC2.0プローブ情報から得られる急減速データから,効率的に優先的に対策すべき箇所を抽出するために,ドライブレコーダデータを利用して,交差点流入部に発生する急減速事象と道路構造等との関連性を照合して,危険事象が発生する特徴を整理した.その結果と先行研究を併せて,ETC2.0プローブ情報の急減速データの見極め方法を提案した.
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御手洗 陽, 小松崎 諒子, 谷口 守
2021 年76 巻5 号 p.
I_657-I_666
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
近年,完全自動運転の実現へ期待が高まっており,それに合わせて新たな交通サービスの開発が進められている.ここでは,その一つに挙げられる機能搭載型自動運転車“ADVUS”に着目し,その利用に影響を与える要因を独自に実施したアンケート調査の分析を通じて明らかにした.なお,本稿では,「病院での診察」及び「趣味活動の実施」を対象とし,ADVUSの利用選好に関する共分散構造モデルを提示した.得られた結果として「いつでも利用できる」「好きな時に利用できる」などのADVUSの時間的な柔軟性は,いずれの活動においてもADVUSの利用促進要因となっていた.一方で,両活動の利用意向に対し,現在利用している施設へのアクセシビリティや施設への信頼度等,影響を与える要因が異なることも示された.
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河上 翔太, 杉田 浩, 森尾 淳, 森田 哲夫
2021 年76 巻5 号 p.
I_667-I_678
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
我が国では,この50年の間にライフスタイルが大きく変化しており,交通行動にも影響を与えている.本研究では,1968 年から 10 年毎に大規模な調査が継続的に実施されてきた東京都市圏 PT 調査データに基づき,30 歳代を中心とした若い女性に着目し,子育て世帯の交通行動実態及び社会状況変化に対応した女性の交通行動変化を分析した.その結果,子育てをしながら就業を続ける若い女性は子育てと仕事に時間が取られ,社交娯楽などの自由な動きが制約を受けていることを明らかにした.更に,家族形態毎の交通行動実態,特性を踏まえて,子育てをしている女性の生活環境改善のための方向性を考察した.
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山木 聡一郎, 中西 航, 杉浦 聡志
2021 年76 巻5 号 p.
I_679-I_688
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
観光都市である京都は,国内外からの多くの観光客により賑わう一方で,公共交通機関や道路の混雑・渋滞が問題化している.改善に向けた施策立案を行うには現状の観光流動の把握がまず必要だが,従来主流であったアンケート調査やプローブパーソン調査による把握は長期継続性や近年の回収率低下など課題がある.一方で,近年ではスマートフォン等の各種サービス提供者によって位置情報履歴データが大量に蓄積されており,そのデータの活用法が注目されている.本研究では,京都市内向けの乗り換え検索アプリによって蓄積された半年間のデータを用い,京都を訪れる観光客の属性毎の観光流動の傾向や,1 日の周遊行動すなわちトリップチェインの傾向を示した.
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柴山 多佳児, 藤田 知也, 宇都宮 浄人
2021 年76 巻5 号 p.
I_689-I_698
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
本研究では東日本大震災の被災地における被災状況および自動車の保有状況を比較し,宮城県・岩手県沿岸の被災地で,人口当たりの自家用車保有率が被災の規模に比例し増加する傾向があること,この地域はもともと軽自動車の割合が高い地域であったが,震災の後に軽自動車へのシフトが一段と進んだことを明らかにした.また,同地域の高速道路の震災後の復旧・整備状況と在来線鉄道路線のそれを比較し,さらに市町村道密度の変化を比較することで,同地域では震災復興に伴い道路整備が著しく進み,被災の規模に比例し道路密度が増加する傾向があることを示した.これらの結果から,東日本大震災からの復興過程で交通インフラが変化する中,宮城県と岩手県の沿岸の被災地では地域交通体系における自家用車への依存の度合いが高まっていることが示唆される.
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柴田 立, 室町 泰徳
2021 年76 巻5 号 p.
I_699-I_707
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
本研究は,訪問先の国や訪問回数が異なる外国人観光客を対象に訪問パターンと訪問先観光地イメージの関係を把握することを目的とし,TripAdvisorに投稿された口コミの言語解析を行った.具体的には,日本と中国の観光地に関する外国人の口コミを収集し,訪問年や居住地等によるクリーニングを経た215,012件の口コミデータを分析した.訪問パターンの分析,及び口コミを用いた観光地のクラスター分析,さらに訪問パターンと観光地イメージの対応分析を行ったところ,日本においては複数回訪問者はスキーや食事買物,快適な観光地を推薦する一方で,訪問地域数による違いはあまりないことが示された.
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種崎 夏帆, 有吉 亮, 中村 文彦, 田中 伸治, 高野 茂, 堀 磨伊也, 三浦 詩乃
2021 年76 巻5 号 p.
I_709-I_717
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
日本各地において,「居心地が良く歩きたくなるまちなか」を目指した街路運用の検討が進んでいる.本来は車を締め出し歩行者専用空間にすることが理想だが,反対の声も強く実現しにくいのが現状である.よって,車を締め出さずとも歩きやすい街路空間を形成する必要がある.そこで,本研究では,現存する商業地区内街路のうち歩車混合空間に着目し,すれ違い時の回避行動において歩車間に発生している相互作用を明らかにすることを目的とする.歩車混合空間にてビデオを撮影し,両者の1/30秒ごとの座標から回避行動に至るまでの位置関係や速度,車種などを記録した.それらのデータを分析した結果,歩車は互いの回避行動の様子を見ながら最低限必要な側方距離を確保することが明らかとなった.
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吉田 愼也, 薄井 智貴, 山本 俊行, 森川 高行
2021 年76 巻5 号 p.
I_719-I_727
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
2011 年の東日本大震災では,首都圏を中心に広範囲で公共交通機関がマヒし,多くの帰宅困難者が発生した.中京都市圏においても,東海・東南海・南海トラフ地震の発生により,同様の問題が懸念される.本研究では,昨今の変動性の高い人口流動を把握可能な流動人口統計を用いて災害時の帰宅困難者数及び避難施設や駅の滞留者数の推定を目的とする.流動人口統計の居住エリアデータを,住宅地図データ等を用いて細分化し,交通手段や移動滞留属性を付加した任意の時刻における詳細な OD データを生成するとともに,時空間内挿法を用いたシミュレーションを行った.その結果,既存手法と比較し,より詳細な人口流動を把握できるようになった.また,滞留者の移動抑制が避難施設への収容人数,駅滞留者の削減へ一定の効果があることを示した.
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小松﨑 諒子, 御手洗 陽, 谷口 守
2021 年76 巻5 号 p.
I_729-I_737
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
近年完全自動運転の実現に向け自動運転の実用化が進んでいる.自動運転車内でドライバーは運転行為から解放され多様な活動が可能になるが,車内での活動がどのように変化するのかについては明らかになっていない.そこで本研究は,自動運転車内の活動意向とその要因を明らかにしニーズに対応したモビリティ設計について検討することを目的に,アンケート調査により自動運転化後の活動意向の構造的な把握を行った.調査は,自動運転化後の移動中の活動意向を各活動時間の割合として問う設問を含んでいる.調査結果を用い共分散構造分析によってモデルを作成した結果,時間を重視し効率的な移動を志向する個人が活動意向が高いこと,男性は業務活動意向が高いことなど自動運転化後の活動意向は個人属性・内面的属性に影響されることが示された.
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多田 昌裕, 小出 瑞, 西田 将之, 飯田 克弘, 澤田 英郎
2021 年76 巻5 号 p.
I_739-I_746
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
本研究では近年普及が進む SAE レベル 1 の自動運転技術である ACC (Adaptive Cruise Control) に着目し,ACC 機能使用時と非使用時で運転にどのような変化が生じるか,心電図データや視線データをもとに把握を試みた.ドライビングシミュレータを用いた実験の結果,ACC 機能使用時には運転中のわき見が増加したほか,リラックス度を示す生理指標が増加した.一方で眠気の主観評価値は ACC 機能使用の有無で差は認められなかった.ヒアリングデータに着目すると,ACC 機能使用時には時間経過に伴い周辺車両に対する注意の発話が有意に減少した.このことから,ドライバーが眠気の症状を訴えていない場合であっても,わき見の増加や周辺への注意が低下し注意散漫状態を誘発するリスクがあることを示唆する結果が得られた.
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栗原 剛, 西井 和夫, 日比野 直彦, 岸野 啓一
2021 年76 巻5 号 p.
I_747-I_756
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
2000 年代以降日本での『観光まちづくり』に関連して観光地活性化や観光振興に資する「需要創造型」交通施策検討が数多い.一方,欧米の都市交通分野では,MaaS (Mobility-as-a Service)に代表される統合型モビリティ・サービスによる都市交通マネジメントが検討されている.本論文では,まず MaaS 関連研究レビューから観光目的地への統合型モビリティ・サービスの導入要件を示す.次に,訪日中国人旅行客行動調査を実施し,空港アクセス・周遊交通のための移動サービス利用実態・ニーズに関する諸特性を把握する.次に,SEM(構造方程式モデリング)を構築し,訪日再訪意向と移動サービス構成項目との因果構造の仮説検証を行い,最後にこれらの結果を踏まえ,観光地の需要創造に資する統合型モビリティ・サービス提供のあり方についても言及する.
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安田 昌平, 池田 賢史, 井料 隆雅, 石原 雅晃
2021 年76 巻5 号 p.
I_757-I_766
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
都市高速道路の需要変動に影響を与える要因を定量的に分析することは,適切な道路マネジメントを行うために重要である.これまで,高速道路上で得られた観測データを用いて需要変動を記述するモデルが開発されてきた.近年,一般道の情報を含めた多様な観測データが取得可能となったことから,これらを組み込むことによりモデルの精度向上が期待できる.本研究では,都市高速道路を一つの財とみなした需要・供給曲線を考え,観測データから需要曲線を推定する方法論を提案する.需要曲線の推定において一般に課題となる需要曲線の位置のシフトについて,一般道の観測データを追加する影響を評価する.実観測データを用いた検証では,一般道で得られた情報を説明変数に追加したモデルは,高速道路の情報のみを用いたモデルと比較して精度が向上した.
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吉羽 崇, 小林 亮博, 中管 章浩, 南川 敦宣, 冨岡 秀虎, 森本 章倫
2021 年76 巻5 号 p.
I_767-I_775
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
我が国では,人口減少社会の進行に伴い路線バス事業の維持が困難な状況にある.一般的に交通需要推定の基礎情報にはPT調査が用いられるが,PT調査は調査頻度が低く,逐次変化する乗車需要の把握が困難である.そこで本研究では,逐次データが更新されるスマートフォン位置情報及びバス運行情報からバス需要を把握する手法を提案する.具体的には,スマートフォン位置情報から推定したOD表及び位置情報のマッチング分析により,PT調査と同等の精度でバス需要を把握することが可能であることを示した.また,それらの結果をもとに路線バス選択モデルを提案し,平日休日別に現況・将来バス分担率を把握することができることを示した.
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海野 遥香, 橋本 成仁
2021 年76 巻5 号 p.
I_777-I_784
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
近年,一人ひとりの人生の内容の質や社会的に見た生活の質を指す QOL が重要視されており,子どもの QOL に関する研究も進んでいる.より子どもの QOL 向上を目指すためには親子での子どもの QOL 認識が一致していることが望ましいと考え,本研究では,対象となる小学校高学年の子ども自身が評価する子どもの QOL と,親が認識する子どもの QOL の差の有無を明らかにする.また,認識の差を生む項目と子どもの生活環境や学外での行動との関連分析も行う.結果として,QOL 尺度 24 項目中 18 項目で親子の得点の平均値の差が見られ,親子ペアで詳細に見ると,友達関係,身体の不調に関して特に親子で QOL の認識に差が生まれていることが示された.また,それらの項目と関連がみられる,遊び・学外活動の特徴も把握した.
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大竹 司真, 稲村 肇, 菊池 輝
2021 年76 巻5 号 p.
I_785-I_792
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
地方都市圏において,鉄道ネットワークが充実していないことから,鉄道駅へのアクセス手段は徒歩のみではなく,バスや自家用車が大きな役割を果たしている.本研究では仙台市営地下鉄南北線を対象に,開業直後と10年後のデータを用いて,バスを重視した需要予測モデルを提案した.主たる結論は,以下の通りである.1. バスアクセスを考慮する重要性が示された.2. Home Based,Non-Home Based別の鉄道旅客予測モデルを提案し,そのモデルの有効性が示された.
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冨岡 秀虎, 村上 僚祐, 高山 宇宙, 森本 章倫
2021 年76 巻5 号 p.
I_793-I_801
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
情報端末や自動運転技術の進歩により,交通環境は大きく変化しつつある.近年ではMaaS(Mobility as a Service)という概念が生まれ,デマンド交通が二次交通として積極的に活用されることが期待されているが,過度なデマンド交通利用による渋滞悪化も懸念される.しかし,現在の公共交通網形成計画では,デマンド交通は最小限のサービスしか想定していない.そこで本研究ではMaaSが普及した社会を想定し,運行費用と所要時間を用いて最適なデマンド交通の運行と人口分布について検証した.その結果,一定の人口集積がある地区ではマストラの端末交通としてデマンド交通を活用する階層化で運行効率の向上が図れること,デマンド交通の運行効率を考えると中心市街地では同心円状,郊外ではコリドー状の人口集約が望ましいことが明らかとなった.
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森下 恵介, 中村 文彦, 三浦 詩乃, 田中 伸治, 有吉 亮, Pattamaporn WONGWIRIYA
2021 年76 巻5 号 p.
I_803-I_812
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
更なる自家用車依存が見込まれるタイの中規模都市郊外では,車両の保有状況や身体能力の程度により,モビリティに個人差が生じている状況が推察される.本研究では,コンケン市の郊外居住地を対象として,個人差を考慮した居住者のモビリティ評価を行った.まず,対象地に存在する全交通手段を把握し,次にCapability Approachに基づき,財・変換能力の保有状況から各交通手段の利用可能性を明らかにした.更に各交通手段の利用可能性を変数としたクラスター分析によりモビリティを類型化した.その結果,郊外居住者のモビリティは多種の交通手段が利用可能な共助型,自家用車のみ利用可能な自家用車依存型,タクシー等の輸送サービスと自動二輪を利用可能な公助・自動二輪型の3類型に分けられ,郊外居住者のモビリティの多様性及び個人差が実証された.
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小林 信介, 宇野 伸宏
2021 年76 巻5 号 p.
I_813-I_822
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
本研究では,京都でのP&R駐車場の利用促進に向け,P&R利用に肯定的な人の特性を検証した上で,観光客視点に着目し,AHP手法を用いてP&R利用時の駐車場評価指標を提案し,駐車場のP&Rとしてのポテンシャル評価を行った.京都観光客の特性分析では,数量化理論II類を用いて,P&R利用に肯定的な層として,P&R利用経験がある層,環境意識が高めである層,年齢が30代以下である層,自動車運転頻度が週3日以上である層が挙げられた.AHPによるP&R駐車場評価では,P&R利用に肯定的な層の評価基準の重みを算出し,評価値をGIS上にカラーマップとして落とし込むことで,P&R駐車場の評価をターゲットを絞り,定量的に行うことができることに加え,P&R利用を想定した場合の駐車場ポテンシャルを視覚的に表現できた.
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立松 和憲, 日比野 直彦
2021 年76 巻5 号 p.
I_823-I_836
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
訪日外国人のレンタカー利用を促進する上で,国籍・地域別の利用実態を把握することは重要である.本研究の目的は,訪日外国人のレンタカー利用による地方観光地への観光客誘致を促進するために,個人属性の特徴を示した上で,それらに基づいた訪問地の違いを明らかにすることである.具体的には,訪日外国人消費動向調査の個票データを用い,訪問地域割合から国籍・地域を類型化し,さらにETCデータを用い,国籍・地域別の訪問地パターンを類型化することで,訪問地の違いを明らかにする.分析結果より,訪問地域が経年で変化している国籍・地域があること,マレーシア,タイ,シンガポール,アメリカは高速道路の平均走行距離が長く,広範囲を訪問する訪問地パターンの利用が多いことを明らかにした.
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茂木 渉
2021 年76 巻5 号 p.
I_837-I_846
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
既存の OD 交通量データと起終点間の経路選択確率が先験値として得られているときに,道路ネットワーク上の観測リンク交通量から OD 表を逆推定する手法として,残差平方和最小化モデルやエントロピー最大化モデルなどが開発されている.これらの手法のうち,エントロピー最大化モデルについては,制約条件付き非線形計画問題もしくはその最適性条件である非線形連立方程式を数値的に解く必要があり,解法アルゴリズムによっては発散することや精度の低い解しか得られず,実務適用の難易度が高い.そこで,本稿では,非線形連立方程式に対する有効な解法として知られているホモトピー法を用いて,モデル構造を活用したホモトピーパスを追跡することにより,エントロピー最大化モデルの高精度な数値解を安定して求めるアルゴリズムを提案する.
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城間 洋也, 福田 大輔
2021 年76 巻5 号 p.
I_847-I_858
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
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電気自動車(EV)の普及において,航続距離の短さや充電施設の不足等の充電特性は普及を促進する上で解決すべき課題であり,充電施設の配置計画においては,利用者(消費者)の戦略的な行動を考慮した包括的な評価が行われる必要がある.本研究では,複数種類の充電施設が配置された混雑した道路ネットワークにおける EV の経路選択行動(短期的意思決定)と消費者の車種選択行動(長期的意思決定)の相互依存関係について,静的な交通ネットワーク均衡分析に基づいた評価モデルを構築した.簡単な数値計算を通じて,構築したモデルの基本的な挙動を確認し,充電施設の不足した状況において,ネットワークの混雑や EV の長期的な需要変化等を包括的に考慮した評価を行うことができることを示した.
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八木 雅大, 高橋 翔, 萩原 亨
2021 年76 巻5 号 p.
I_859-I_867
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
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現在,CCTV や車載カメラにより取得された多くの道路映像が,道路管理者の元に集積されている.しかしながら,その多くは取得された画像や映像がそのまま集積されており,ネットワークを介した伝送や保存のための容量が膨大となっている.また,変状や障害物が存在する道路状況では,自転車は通常の走行が困難となり,それらを回避する走行を強いられる.したがって,そのような道路状況にあることを把握可能とすることは,より適切な道路管理につながる.そこで,本稿では,自転車の回避行動に関するデータをエッジコンピューティングによって,データ量を削減しながら集積するシステムを提案する.本稿の最後では,実験によって,搭載するアルゴリズムの有効性およびシステムの有用性について確認する.
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上野 優太, 八戸 龍馬, 溝上 章志
2021 年76 巻5 号 p.
I_869-I_878
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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近年,移動全体をサービスとして同一プラットフォーム上で検索,予約,決済を可能にするMaaSに注目が集まっている.MaaSでは公共交通を組み合わせて最適な移動手段を提供することでマイカーより快適なサービス提供を目指すが,地方都市ではモビリティ水準が低いためにファースト・ラストワンマイル問題が生じる.そのため,アクセス・イグレス区間にシェアモビリティを提供することは重要である.本研究では,公共交通にシェアモビリティを組み合わせたことによって公共交通の選好に与える影響をSP調査,移動手段選択モデルによって分析する.
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大川 貴祥, 金 利昭
2021 年76 巻5 号 p.
I_879-I_887
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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国土交通省と警察庁により自転車施策に関するガイドラインが発出された2012年以降,自転車専用通行帯や車道混在といった車道通行を基本とした自転車通行空間の整備が進められており,車道を通行する自転車が増加している.自転車の車道通行では,限られた空間での自転車同士の追い越しや駐車車両の回避のための進路変更が発生するため,安全を確保するためには追い越される自転車や後方を走る自動車への意思表示(交通コミュニケーション)が重要と考えられる.そこで本研究では自転車利用者と自動車ドライバーにアンケート調査を実施し,自転車の追い越し・進路変更時における両者の交通コミュニケーションに関する意識を把握した.その結果,交通コミュニケーションの必要性が明らかとなり,その方法や実行可能性についての知見が得られた.
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光澤 駿治, 中山 晶一朗, 小林 俊一, 山口 裕通
2021 年76 巻5 号 p.
I_889-I_897
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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我が国では大規模な地震や豪雨等の自然災害が多発するため,緊急時における道路の接続性の確保は極めて重要である.本研究では,行列木定理を用いて石川県の緊急輸送道路ネットワークにおける接続が脆弱なリンクの算出方法を提案する.本研究では脆弱性評価の新たな指標としてネットワークのスパニングツリーの減少率を採用している.この指標ではラプラシアン行列を用いて,ネットワークのスパニングツリーの数を計算し,各リンクを切断した際のネットワークのスパニングツリーの数の減少量を用いる.この指標の特徴として,計算コストが小さい,ネットワークの拡張に対するロバスト性が高い,OD の設定をしないことが挙げられる.この提案手法を石川県の緊急輸送道路ネットワークを対象に分析し,手法の妥当性等について検討する.
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Masahiro YAGI, Sho TAKAHASHI, Toru HAGIWARA
2021 年76 巻5 号 p.
I_899-I_907
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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In the research field of video processing, various methods for detecting damaged parts of roads and objects have been developed. However, it is difficult to define all of the obstacles on roads due to the wide variety of obstacles. Therefore, a novel multimodal method for detecting cyclists' avoidance behavior caused by the presence of obstacles using dashcam videos is proposed in this paper. The proposed detection method focuses on cyclist behavior and bicycle motions. The proposed method consists of three stages. In the first stage, features of cyclist behavior and bicycle motions are extracted. In the second stage, the proposed method performs tentative recognition. Specifically, the proposed method recognizes cyclists' avoidance behavior using features of cyclist behavior. Recognition using features of bicycle motions is also performed. Thus, the proposed method obtains two recognized labels. Finally, by integrating the two recognized labels using the corresponding attribution probabilities, the proposed method obtains final detection results. Experimental results show the effectiveness of the proposed method.
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高草木 祥, 大森 宣暁, 長田 哲平
2021 年76 巻5 号 p.
I_909-I_917
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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近年,子供の習い事の多様化と,習い事をする子供の増加により,子育て世帯の親の送迎の時間的制約は増している.特に,送迎手段を自動車に依存する地方都市では,居住地の公共交通サービスレベルにより差が生じていると考えられる.本研究は,宇都宮市をケーススタディとして,子供の習い事と親の食料品の買い物に着目し,道路ネットワークと施設の立地データを用いて,トリップチェインおよび時空間プリズム制約も考慮した子育て世帯の居住地のアクセシビリティの分析を行った.その結果,習い事施設の種類や,習い事施設と買い物施設の立地関係に依存してアクセシビリティが異なるが,居住誘導区域のアクセシビリティが高いこと,LRT導入により所要時間が短縮される地域や,送迎の必要がなくなり親の移動時間の削減に寄与すること等を明らかにした.
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奥村 航太, 有村 幹治, 浅田 拓海
2021 年76 巻5 号 p.
I_919-I_926
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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我が国におけるコンパクト・プラス・ネットワーク施策の展開においては,建物立地状況や移動環境の変化に伴う人流の変化をより簡便に観測,予測しつつ,都市施設誘導や交通整備を進める必要がある.本研究の目的は,近年整備が進む各種のマイクロジオデータを用いて,メッシュ間OD交通量を推定することにある.本研究では,都市計画基礎調査からメッシュ毎の建物用途別延床面積データ,携帯電話網の運用データであるモバイル空間統計からメッシュ滞在人口データ及びメッシュ間OD交通量データ,また各種オープンデータからメッシュ間移動時間データを取得した.そのうえで,ランダムフォレスト法を用いて,各説明変数の寄与度を確認し,ニューラルネットワークを用いたOD交通量の推定を試み,推定精度の検証した.
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長谷川 裕修, 葛西 誠, 田村 亨
2021 年76 巻5 号 p.
I_927-I_936
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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本研究では通学路歩行時の安全性に関わる行動として注視行動に着目し,通学生の属性による違いを把握することを目的として研究を行った.具体的には,1) 道路環境に対する慣れ・不慣れ,2) 普通自動車運転免許保有の有無の 2 要因によって注視行動を含む歩行挙動が変化するという仮説のもと,眼鏡型視線計測装置を使用して測定したデータを分析した.分析の結果,注視行動の類似度を表現する指標のうち,全体的な注視の傾向を表すベクトル (形状),注視対象の探索が大域的か局所的かを表す長さ,情報を入手するのに要する時間を表す継続時間の 3 つの指標において 2 つの要因の交互作用が有意な影響を与えることが明らかとなった.
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西堀 泰英, 嚴 先鏞
2021 年76 巻5 号 p.
I_937-I_944
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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自動運転は,公共交通が不便な中山間地での移動手段確保方策等として期待されている.中山間地では人口密度が低いため,自動運転に対応した道路空間(自動運転対応道路)の効率的な整備が求められる.本稿では,自動運転対応道路の整備優先順位の設定手法を提案し,愛知県豊田市の中山間地に位置する旭地区を対象に,実際の人口分布と道路網を用いて,複数の道路網パターンと優先度指標の分析を行った.その結果,全住民が自動運転を利用可能とするための必要整備延長は最大156km(全道路の約半分)だった.拠点や優先順位の設定方法により同じ人口をカバーするための要整備延長が異なり,整備量の制約を考慮した拠点と指標設定が必要であることを示した.提案した手法により,自動運転の実現に向けた効率的な整備区間の提案に寄与できると期待できる.
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相馬 佑成, 森本 瑛士, 谷口 守
2021 年76 巻5 号 p.
I_945-I_955
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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近年,患者の通院に対する負担軽減を目的に,先進技術やMaaSの考えを取り入れた医療MaaS等の新たな医療サービスとして,コネクティッド・メディスンの導入検討がなされている.さらに,昨今の新型コロナウイルス感染症の影響により診療形態の変革が予想される.本研究では,コネクティッド・メディスンに対する利用意向を医療サービスに関わる複数指標を用いた都市類型化や独自のアンケート調査から得た通院行動・意識,コロナ禍の影響の観点から考察した.結果として,コネクティッド・メディスンに対する利用意向については,医療サービスに基づく都市類型の違いより,通院行動・意識やコロナ禍の影響の方が顕著であることが示された.コネクティッド・メディスンの導入に際し,通院頻度や交通手段に基づく検討の重要性が示唆されたといえる.
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細江 美欧, 桑野 将司, 森山 卓, 宮崎 耕輔, 伊藤 昌毅
2021 年76 巻5 号 p.
I_957-I_966
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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近年,グラフクラスタリング手法としてグラフ研磨が提案されている.本研究では交通系ICカードデータからカード利用者間の類似した行動パターンを把握するために,グラフ研磨を用いた新たな分析手法を提案する.使用データには,2013年12月1日から2015年2月28日までの15ヶ月間に収集された香川県の交通系ICカード「IruCa」の利用履歴9,008,709件を用いる.データに含まれる曜日,時間帯,利用者区分,乗車駅,降車駅の5項目の組合せで構成されるグラフに対して,グラフ研磨を応用した提案手法を適用した結果,141個の特徴的な行動パターンの抽出に成功した.分析結果から,カード利用者間でどの曜日のどの時間帯での利用が類似しているのか,さらにどの駅からどの駅へ移動する傾向にあるのかが明らかとなった.
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須ヶ間 淳, 奥村 誠
2021 年76 巻5 号 p.
I_967-I_976
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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近年,持続可能かつ効率的なモビリティを維持する手段としてMaaSが注目されている.乗り換えの存在は公共交通の弱みであり,MaaSによる乗り換え抵抗削減が期待される.その際,乗り換え抵抗の削減は公共交通ネットワークの在り方に影響を及ぼし,ネットワーク改変が必要となる可能性がある.本研究では,大都市圏郊外部に既存の都市間マルチモードネットワーク最適化モデルを適用し,乗り換え抵抗の削減が最適ネットワーク構成と地域の総消費者余剰に与える影響を分析する方法を示す.また,簡単な計算例を用いて分析・考察を行う.それにより,消費者余剰の拡大には,乗り換え抵抗の削減だけでなく併せて適切なネットワーク改変が必要であること,乗り換え抵抗の削減が特定モードの拡大または縮小を意味せず複雑に作用すること,を明らかにした.
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吉田 智貴, 奥村 誠
2021 年76 巻5 号 p.
I_977-I_986
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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都市間旅客交通サービスの提供には,インフラや基礎的な資材・人員調達のための多額の固定費用が必要であり,需要規模を見通して持続可能なネットワークを計画することが必要である.その際,リンク毎に速度や基本的な費用が異なるサービスが提供され,各OD間の旅客はそれらを適宜組み合わせて移動を行うことに注意する必要がある.本研究は,複数交通モードの統合利用を前提としてネットワーク構造と費用負担の同時最適化を行う先行研究の二次錐計画モデルを出発点として,ネットワークの固定費用を運賃によって負担させるスキームを複数設定できるように拡張し,最適ネットワーク構造の違いを分析する方法を提案した.また,2つのケースに対して仮想ネットワークを設定し,費用負担スキームによる最適ネットワーク形状の違いを分析した.
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河瀬 理貴, 浦田 淳司, 井料 隆雅
2021 年76 巻5 号 p.
I_987-I_999
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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災害時の人道支援ロジスティクス(HL: Humanitarian Logistics)は,被害を最小限に抑えるために重要な役割を果たす.未曾有の大災害となった東日本大震災では,初めて国による物資支援が実施されたものの,様々な問題が発生した.これ機に物資支援に関する法律が改正され,我が国の HL 体制は大きく変化した.2016 年に発生した熊本地震では,法律が改正されて以降,初めて国主導の物資支援が実施されたが,多くの課題が報告されている.本研究では,東日本大震災と熊本地震における物資支援活動を比較することにより,現行の HL 体制の特徴を明らかにし,目指すべき HL の在り方及び今後の研究ニーズを示す.
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早内 玄, 中村 文彦, 有吉 亮, 田中 伸治, 三浦 詩乃
2021 年76 巻5 号 p.
I_1001-I_1011
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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都市交通計画における地形条件評価手法の確立に向け,本研究では国内の現行交通計画における地形条件の評価状況,評価手法,根拠指標,および施策との関連と課題を明らかにすることを目的とする.文献調査を通じ,9 市の 12 交通計画において地形条件の定量評価実績のあることが明らかとなった.各計画の文献調査,ヒアリング調査を通じ,評価手法は 3 分類に大別されること,根拠指標の多くにバリアフリー指標が採用されていること,および手法と指標に関する課題などがそれぞれ明らかとなった.加えて,地形条件評価を行った自治体に関する GIS を用いた地形状況評価を通じ,起伏の大きい自治体での実績が卓越する一方,小さい自治体にも実績があること,および施策との関係などが明らかとなった.
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加藤 慶太, 田中 伸治, 中村 文彦, 有吉 亮, 三浦 詩乃
2021 年76 巻5 号 p.
I_1013-I_1021
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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1963年に英国で,居住環境の向上などを目的として道路網の段階構成が提案された.この考え方は日本をはじめとした世界の道路政策に影響を与えているが,バスが通るべき道路の基準が明示されていない.また,わが国におけるバス路線の決定方法は沿線の需要に基づいており,道路網の段階構成については検討されていない.本研究ではバスはどの段階の道路を通るべきかを明らかにすることを目的として,段階的な道路網を持つ多摩ニュータウンを対象に,バスの走行経路に関して事業者・利用者の観点から評価を行った.バスの走行距離,系統数や利用者の歩行距離,所要時間のトレードオフの関係を示し,バスは事業者の観点では制限速度50km/hの道路を走行すること,利用者の観点では40km/hの道路を走行することが望ましいことを明らかにした.
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鈴木 雄, 日野 智, 茂木 侑生
2021 年76 巻5 号 p.
I_1023-I_1033
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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本研究では,秋田県秋田市を対象に月額の料金でタクシーが乗り放題となる,月額制タクシー定期券の導入の検討を行った.月額制タクシー定期券の購入条件として「適用範囲」「適用時間」「待ち時間」「購入金額」の水準の設定を行い,購入意向のモデル化を行った.その結果,購入意向に対し「購入金額」が大きく寄与している結果となった.分析の結果,適用範囲 2km,適用時間 6 時間(10 時~16 時),待ち時間 30 分の月額制タクシー定期券を 2 万円/月で販売した場合,25.8%の購入意向があることが推計された.本研究では,施策の導入による必要タクシー台数の推計も行っている.仮に対象人口 30,000 人のエリアに対し,上記の条件の月額制タクシー定期券の導入を行った場合,現行のタクシーで 1 台あたり 1 日 10 回の運行増やせば対応可能であることが示された.
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竹内 龍介, 吉田 樹, 猪井 博登
2021 年76 巻5 号 p.
I_1035-I_1045
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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高齢者における免許自主返納者等の増加等に伴い,外出が困難な高齢者に対し,従来の公共交通を補完する自家用有償旅客運送の活用及び,ボランティア団体や地域の助け合いによる「互助」による,買物・通院等外出支援が今後重要性を増すと考えられる.本研究では,自家用有償旅客運送及び許可登録を要しない運送の実態調査により,運送形態別の採算性,生産性,運行費用構造の観点から考察することを目的とした.その結果,生産性は,有償運送と許可又は登録を要しない運送の双方ともに運転手と車両と,生産物である走行台キロや利用者数との相関がわかった運行費用構造は,需要等生産性に対する費用の弾性値,規模の経済で傾向が異なる傾向があり,費用関数も異なる傾向があり,団体の自己負担の費用に関係する人件費や車両費が影響することがわかった.
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越後 紘志, 岸 邦宏
2021 年76 巻5 号 p.
I_1047-I_1059
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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JR北海道は2016年に「単独では維持することが困難な線区」を公表した.公表された線区の多くは行政の支援による維持を目指している.道内の地方自治体の財政状況は厳しく国からの支援を求めているが,地方自治体も路線の支援をしなければならない状況である.現在,沿線自治体による費用負担を基本として議論されているが,鉄道路線の恩恵を受けるのは必ずしも沿線自治体だけでない.対象路線には,札幌市を発着する特急列車が運行されている路線があり,札幌市が受ける経済効果も小さくない.本研究では,鉄道路線による効果・影響を地域ごとに算出した.沿線自治体だけでなく,鉄道路線による恩恵を受けている自治体も費用を負担するべきという考え方に基づき費用負担割合を決定すると,札幌市も鉄道路線維持のために費用負担をするべきと示された.
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鈴木 崇正, 渡邉 拓也, 松本 涼佑, 深澤 紀子
2021 年76 巻5 号 p.
I_1061-I_1071
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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特急列車には,長距離利用のほか県内など比較的近距離の利用需要も存在するが,それら県内需要を推計するための手法やデータの蓄積は十分になされていない.そこで本研究では,地方における特急列車の県内利用の需要を推計する手法の確立を目指して,その県内利用を対象とした駅勢圏を定量的に推定するモデルを構築した.モデル構築には戸別訪問形式のアンケート調査により収集された交通行動データや交通機関サービスレベル,地理空間情報などを活用し,モデル構造として混合ロジットモデルを採用した.パラメータ推定の結果,十分な説明力を有するモデルが構築された.同時に,通常のロジットモデルと比較して混合ロジットモデルが優位であることを示した.また仮想的な地方都市空間における駅勢圏の推定例を示した.
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川地 遼佳, 吉田 長裕
2021 年76 巻5 号 p.
I_1073-I_1079
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
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近年,都市交通手段として歩行や自転車の活用に注目が集まっている.大阪御堂筋では,道路空間を再配分するモデル整備事業が行われ,さらに滞留空間を設置する等の社会実験を実施することで快適な道路空間を模索中である.交通空間の快適性を表す指標にはLOSが挙げられるが,既存LOSでは通行者の快適性を十分に表現できていない.本研究では滞留空間に焦点を当て,滞留空間設置は通行者の快適性及び交通流,滞留行動にどのような影響を与えるのかを明らかにした.結論として,通行空間が狭まったとしても滞留空間設置により通行者の快適性は低下せず,かつ,滞留アクティビティが充実し,建物寄り歩道や車道寄り歩道のような歩道部では通行速度も速くなることから,滞留空間の設置はより快適な道路空間を目指す一つの方法として有効であると考える.
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