老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
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24 巻, 3 号
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総説
臨床報告
  • -新しいコンセプトに基づく咬合・嚥下床ならびに咀嚼・嚥下床を適用した一症例-
    皆木 省吾, 柴田 豊文, 森本 寿代, 曽我 恵子, 新谷 雅美, 中村 文, 河原 哲子, 西川 悟郎
    原稿種別: 臨床報告
    2009 年 24 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    高齢者における総義歯の使用に際しては種々の口腔関連機能の適応能力低下等が問題となる。これまでにも高齢者に対する総義歯作製については多くの優れた方法も報告されている。しかし, その一方で高齢者施設や在宅の患者の口腔内には依然として安定した咬合や咀嚼につながらない総義歯がしばしば見受けられる。このことから, 口腔関連適応能力が低下した患者に対して施術が容易な総義歯様装置が必要とされていることが容易に推測される。
    咬合・嚥下床は, 日常生活における動作時, 会話時ならびに摂食時に安定した下顎位を得ることを目的とした床装置であり, 咬合接触による床の動揺を回避することで痛みなく安定して機能・維持できるよう作製された。すなわち, 歯槽頂ならびに両側のレトロモラーパッドを最低限覆うものとし, 舌および唇頬側関連筋群の随意および不随意運動時にも床縁がこれらの運動を全く侵害しない大きさの床縁を有する形態とした。すなわち咬合・嚥下床の唇舌幅径および頬舌幅径は, 健常無歯顎者の口腔関連筋群の機能運動と「調和」するよう作製される通常の総義歯よりも狭小に設定された。また, 人工歯排列は基本的に両側の下顎第二小臼歯と下顎第一大臼歯程度とした。
    本症例は入院時には義歯装着を拒否する患者と理解されていたが, 疼痛なく安定する咬合・嚥下床ならびに咀嚼・嚥下床は装着直後から積極的に受け入れられ, 咬合・嚥下機能のリハビリテーションを円滑に進めることが可能であった。
調査報告
  • 花岡 弘二, 駒形 守俊, 長田 純一, 伊藤 勢津子, 櫻庭 ゆかり, 阿部 洋一郎
    原稿種別: 調査報告
    2009 年 24 巻 3 号 p. 300-305
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    近年, 在宅訪問歯科診療分野において, 嚥下機能障害, 口腔機能障害への認識が高まり, よりきめ細かい対応が重要視されるようになった。 (社) 仙台歯科医師会, 歯科福祉プラザでは休日夜間救急歯科診療, 障害者歯科診療, 在宅訪問歯科診療を主体とした地域歯科医療サービスの提供を行っているが, 在宅訪問歯科診療時における患者の嚥下機能障害, 口腔機能障害を十分把握しているとはいえない。そこで今回, われわれは患者の訪問歯科診療の依頼に対し, 術者, 患者の双方の安全, 安心の確保のために, 歯科診療の現場で行える簡便で, 有用な検査法による口腔機能障害の把握が急務と考え, 聖隷式嚥下質問紙と独自に組み合わせた口腔機能スクリーニングシートを使用し, 口腔機能検査を試みたのでその概要を報告する。対象は歯科福祉プラザ, 在宅訪問歯科診療受診希望者のうち事前に承認を得られた56名 (男性24名, 女性は32名) を対象者とした。平均年齢は81.3±7.6歳だった。本研究では聖隷式嚥下質問紙と発話明瞭度, RSST, 改訂水飲みテスト, 頸部聴診の4項目の結果を示す。各種口腔機能検査では在宅訪問歯科診療受診患者のおおむね半数前後の口腔機能に何らかの問題を生じていることが示唆された。聖隷式嚥下質問紙と種々の口腔機能検査との完全な一致はみられないが, 複数の口腔機能検査を組み合わせることにより, よりスクリーニングの精度が上がるものと推察された。
  • 梅本 丈二, 北嶋 哲郎, 坪井 義夫, 喜久田 利弘
    原稿種別: 調査報告
    2009 年 24 巻 3 号 p. 306-310
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病患者の流涎と摂食・嚥下障害との関係を評価する。対象は福岡大学病院歯科口腔外科で嚥下造影検査 (VF) を行ったパーキンソン病患者16名 (男性7名, 女性9名, 平均年齢67.3±8.0歳) とした。Hoehn & Yahrの重症度分類では, StageIIIが9名, IVが6名, Vが1名であった。患者への問診から流涎の重症度を5段階, 頻度を4段階にスコア化した。また, 側面VF画像から口腔咽頭通過時間, 舌運動速度, 下顎運動速度を解析し, さらに口腔期の嚥下障害を37点満点でスコア化した。流涎の重症度は, 口唇のみが7名 (44%), 衣服まで及ぶものは4名 (25%) であった。流涎の頻度は, 「ときどき」が8名 (50%), 「しばしば」という患者が4名 (25%) であった。流涎スコアと口腔咽頭通過時間の間に有意な相関関係を認めた (r=0.659, p=0.011)。また, 口腔期嚥下障害スコアと口腔咽頭通過時間 (r=0.540, p=0.037), 舌運動速度と口腔咽頭通過時間 (r=-0.522, p=0.046) の間には有意な相関関係が認められた。パーキンソン病患者の流涎は, 舌などの動作緩慢による唾液の送り込み障害が一因となっている可能性が示唆された。
教育ノート
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