東京オリンピックで上位に入賞した選手, 及び第20回の国体で上位に入賞した一般, 高校の選手について, 16mm側面64コマ撮影法によつて得られた資料を, 公式競技記録, 挙上点数と対比して, 動作分析的に最も合理的であると考えられる三種目の動作パターンを追究し, 次のような結果を得た。
1) プレスのためのクリーンでは優秀選手ほど, クリーン開始の初期即ちデツドリフトに相当する時期の加速性がすぐれており, その後の速度増加は著明でない。バーが膝関節前方を通過する時のバーの移動方向はオリンピツク選手が最も前傾している。しかし前傾度が強すぎると失敗する例が多い。
2) プレス開始時の初速は, 優秀選手ほど屈曲した躯幹を伸展する時の力を有効に活用して大きくなつている。未熟な選手はプレス開始時, バーが前方に出, 或いは再び下り等して, 躯幹伸展力がプレスに結び付かない。膝関節が屈するものもある。
3) スナツチでは優秀選手ほどバーの高さが膝関節部より下方にある時点バーの上昇速度が速い。その後の加速度は優秀選手ほど少い。同一選手でも後の加速度が強すぎる場合は失敗することが多い。スナッチでも下半身の力を有効にしかも適時に利用することが大切である。
4) バーの矢状投影面上の軌跡では垂直又は垂直に近い上昇を行う場合, スクワットスタイルでは必然的に中等度のジヤンプバックが必要となる。ジヤンプバツクせずに行なう場合はバーベルの前後移動が甚しい。ジヤンプバックの大きすぎる例では失敗が多い。
5) ジヤークのためのクリーンでもデツドリフトの加速性が優秀選手の必要条件であると言うことができ, 膝関節相当の高さまでのバーの移動速度にはできるだけ下半身の力を結集させることが必要である。膝関節の高さをこえてからは肩腕中心の上半身的牽引力の積極的参加が優秀選手ほど強くなる。クリーンの上死点からのバーベル落下は適当に支えて落下速度が巨大にならないように注意すべきである。
6) ジヤーク開始時早期に肩腕に力が入りすぎ, バーベルの沈下が, 躯幹の沈下に追従し得ない場合失敗することが多い。
7) ジヤークの第1段として行われる, 反動のためのバーベル低下速度は第1期より第2期の方がより注意を要するのであつて, この期に大きな速度増加が観察される場合失敗例が多い。
8) ジヤークによるバーの上昇速度における選手群間の差は, 特に上昇開始直後の速度差として現れ優秀選手ほど速くなるが, その後の速度には大差がみられない。
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