昭和37年5月から7月にかけて, 東京都内中野区及び埼玉県下農村の小学生の身体計測及び筋力測定を行うと共に, 東京都練馬区, 港区の小学校学童の, 昭和15年から昭和37年までの間の身体検査表資料を集計解析して比較検討を行つた結果次のような成績を得た。
1) 昭和37年度都内小学校の身体発育諸係数は, 同年度の埼玉県下農村学童よりも, 優れている。
2) 昭和37年都内学童の背筋力は同年度埼玉県下農村学童及び昭和26年度都内学童のそれより大きい。
3) 握力の差は背筋力の差よりは少いが, 昭和26年都内学童が最も大きく, ついで37年度農村学童であり, 昭和37年都内学童が最小である。
4) 都内学童の平均身長は昭和17年から低下, 昭和22年を最低として以後漸増している, 昭和17年から昭和28年までの平均体重の動態は不定である。
5) 男子学童の身長増加率は9, 10才を底とし, 13, 14才を山とする標準傾向曲線が見られるが, 栄養状態を良好にするとその曲線は若年側に移動し, 不良にすると高年側に移動する。女子では8, 9才が谷, 10, 11才が山となるが, 男子に比較して動揺が少ない。栄養条件との関係は男子と同じである。
6) 体重増加率は, 男子は13, 14才時, 女子では9, 10才時に見られるが, 栄養状態との関係は身長の場合に等しい。
7) 身長増加率に対する低栄養の抑制効果は女子より男子に強く現われ, また8才前後の時の影響が最大である。
8) 体重増加率に対する低栄養の抑制効果は8才時の影響が最大であるが, 7才時以下の年令時の低栄養は, 後効果が認められ, 10才ぐらいまで認められる。
9) 栄養状態改善時の増育効果は, 男子より女子の方に強い影響が現われる。
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