ヒトの身体空間知覚能力に検索を加えるために, 男女60名の左右腕について, 閉眼で上腕を体前部矢状面あるいは体側部前額面において水平位に固定した肢位で肘関節について体前部鉛直面, 体前部水平面, 体側部鉛直面及び体側部水平面における関節可動範囲の二等分と知覚される点の指示を各10回行なった。また, 身体空間知覚能力に影響を及ぼす要因に若干の検討を加えた。
その結果, 肘関節における二等分指示平均値 (%) は個人差が大きいが, 左右腕とも伸展側に偏倚し, 水平面において鉛直面よりも偏倚が大である傾向が認められた。特に, 体側部鉛直面において偏倚が小であった。種々の条件を加えても二等分指示に大きい変化は見られなかった。
得られた成績より, 身体空間知覚の利得について若干の考察を加え, 肘関節の伸展側においては屈曲側におけるよりもその利得の歪が大であることが考えられた。また, 肘関節における身体空間知覚においては個人差が大きく, 種々の条件を加えても二等分指示に大きな変化は見られないことから, その神経機序に個人による大きな差違があり, それが強固に固定されているものと考えられた。
擱筆にあたり, 測定に御協力いただいた慈恵第三分院長, 慈恵第三看護専門学校長根本泰昌教授に衷心より感謝する。また, 測定を快く引き受けていただいた第三看護専門学校生徒の諸君に深謝する。
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