1) ヒトの瞬発的な筋活動能の指標として利用しうる張力, 時間関係を検討した。
2) 握力, 屈腕力, 示指屈力について最大努力等尺性収縮の張力曲線を記録し, 最大張力をP
maxとして (P
max-P) と張力発生の時間経過log tの関係を求めると, 多くの例で直線関係が成立ち, これがP
0 (log t
0) →P
1 (log t
1) , P
1 (log t
1) →P
2 (log t
2) , P
2 (log t
2) →P
max (log t
max) の3直線に分かれる。
3) P
1 (log t
1) →P
2 (log t
2) は収縮しはじめの弱い張力から速かに張力が高まりP
maxに近づく部分であり, 瞬発的な筋力の実効に最も大きな関係を示す。
4) P
1 (t
1) →P
2 (t
2) を延長して基線となす角θおよびP
1 (log t
1) →P
2 (log t
2) を延長して基線となす角ψを求めると, これらが瞬発筋活動の指数として利用できる。
5) 同一被検者では30秒間隔で3~5回張力曲線を記録すると, それらは類同する張力曲線を示すことが多い。実用的には2回記録して両者の間の差違が小さければ, 何れか一方を張力曲線として採用し, もし, 両者間に差異が著しい場合はさらに一回記録し, 類同する2っの曲線の一つを選べばよい。
6) 同一年令でP
maxが大なる者はP
maxとP
2との差が小さくtan ψの値が大きい。中高年者は青年に比してtanc ψあるいはθ値が小さい。
7) 3秒間隔で1secづつ2分間全力収縮をおこなわせると, 時間経過にともなってP
maxは減じる。tan ψが大きくなる例もあるが, 変化しないこともある。また, t
1がP
maxの減衰にかかわらず変わらぬ例もある。中高年者では, P
1とともにt
1が早くなることが多い。すなわち疲労による張力曲線の特性変化には個人差がみられる。
8) 44秒の最大努力持続収縮をおこなわせると, P
maxの減衰は上記の反復収縮の場合より著しい。しかし, 指数値の変化は類同している。
9) 血圧計の圧迫帯を用い, 最大血圧条件で前腕の血流を阻止して, 持続収縮をおこなわせ, その直後の張力時間関係を求めると, 握力, 示指屈力ではP
maxが稍々急速に減じる。各指数の値の変化は無圧迫条件のものと大差ないが, P
1 (log t
1) に相当する部分が直線の交叉からはなれる例がみられ, また, 数回張力曲線を記録すると, 毎回異なる経過を示す場合がある。
10) 以上より (P
max-P) -log t関係から得られるP
max, P
2, tanψなどを瞬発的な筋活動の実用的な指標として利用しうるものと考える。
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