本研究では, 過去の運動歴と骨密度を調査することにより, 運動歴の相違が骨密度の獲得にどのような影響を及ぼすかという点について検討した.被験者は男子大学生51名, 女子大学生29名を対象者とし, 大腿骨頸部, Ward三角, 大転子部および腰椎2-4の骨密度をDPA法により測定した.
大学で運動競技を実施している大学競技者群と大学で運動競技に参加していない大学非競技者群の過去の運動の実施状況を小学・中学・高校生の期間に分けて調査し, 各期間において2年間以上にわたり週3日以上運動を継続したものをそれぞれ小学・中学・高校運動群, それ以外のものは小学・中学・高校対照群に分類し, 性別, 群別に比較検討した.また, 被験者の年齢と骨密度の相関を求めた.得られた結果は以下のとおりである.
1) 男女間の骨密度の比較においてすべて男子は女子に比べ高い値を獲得しており, 大腿骨頸部, 大転子部, 腰椎2-4において有意な差異が認められた.また, 男女ともに大腿骨中枢端における骨密度は年齢によってあまり変化していなかった.
2) 男女共通に各部位の骨密度は大学競技者群が大学非競技者群に比して有意に高い値を示した.
3) 小学運動群と小学対照群の骨密度は男女共通して有意な差があるとは認められなかった.
4) 中学運動群と中学対照群の骨密度を比較すると, 男子は中学運動群が中学対照群よりも大腿骨頸部および大転子部に有意に高値を示し, 女子の場合には大腿骨頸部において中学運動群が有意に高い値を示した.
5) 高校運動群と高校対照群の骨密度を比較すると, 女子の場合のみに高校運動群が高校対照群よりも高い骨密度の獲得を示し大腿骨中枢端 (大腿骨頸部, Ward三角, 大転子部) および腰椎2-4で有意な差が認められた.
6) 中学生時代と高校生時代を含めた運動経験年数と骨密度の関係をみると, 女子の大腿骨中枢端 (大腿骨頸部, Ward三角, 大転子部) の骨密度は運動の継続年数との関連が高く有意差が認められた.
以上のことから, 骨粗霧症の予防のためには, 成長期に大腿骨部の骨密度を高めておく必要がありJこの時期の運動は骨密度を増加させる手段として有効であると推測される.高校生時代に運動を習慣的に実施した女子における骨密度が高値を示したのはカルシウム代謝を促すエストロゲンの分泌が大人型に近づいて多くなったことと運動による刺激に骨形成が活性化されたこととの相乗効果が作用し骨のモデリングが促進されたことを示唆している.
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