日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
19 巻, 7 号
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論文
  • 早水 彦, 森崎 裕磨, 南 貴大, 藤生 慎, 髙山 純一
    2019 年 19 巻 7 号 p. 7_1-7_13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/29
    ジャーナル フリー

    2018年9月6日3時7分頃に平成30年北海道胆振東部地震が発生した.厚真町では最大震度7が観測され,北海道では初めて震度7が観測された非常に強い地震であった.この地震の影響により,地震発生当日は北海道全域が停電し,震度6強に見舞われた新千歳空港では全便欠航となった.本研究では,地震発生時の新千歳空港利用者の中でも,道外の居住者を対象とし,発災後の交通行動,情報収集の方法等に関するWebアンケート調査を実施した.本稿における分析から,新千歳空港の全便欠航した情報を入手した状況について把握を行った.また,大規模なブラックアウト及び交通マヒが生じていた被災直後の北海道から,どのような交通手段を用いて道外の自宅へ帰宅したのか実態把握を行った.

  • 松本 俊明, 植竹 富一, 色摩 康弘, 中村 孝明
    2019 年 19 巻 7 号 p. 7_14-7_26
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/29
    ジャーナル フリー

    再生可能エネルギーの固定費買取り制度により,配電設備に接続される太陽光発電などの小規模電源設備が増加している.このような分散型電源は,送配電線の事故や災害時の電力供給支障を改善する効果が期待されている.一方,地震災害時には需要家も損傷する可能性が高く,これに伴い常時に比べ需要電力は低下する.需要と供給の差を供給支障と考えれば,分散型電源の供給力や需要家損傷による需要電力低下が,供給支障電力にどのような影響を与えるか,これを把握することは,配電網の防災対策や災害対応を検討する上で必要な課題である.本論では分散型電源が配置された配電網において,需要家損傷を考慮した地震時の供給支障電力の評価方法を提案する.また,発災初動期の電圧変動による配電線の解列を考慮するとともに,配電線のFragility Curveを被災事例に基づき統計的に評価する.提案手法の適用性の検討として,JST-CREST126系統モデルを取上げ,需要家損傷や分散型電源による供給支障への影響を考察する.

  • 前田 典昭, 河村 圭
    2019 年 19 巻 7 号 p. 7_27-7_40
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/29
    ジャーナル フリー

    現在の社会基盤施設の維持管理において,アセットマネジメントシステムが有効であるが,経年劣化に地震等のイベント・リスクを加味したものはあまり検討されていないのが実態である.過去に著者らが提案した簡易動的マクロモデルは,トンネル照明設備において,トンネル単位系で動的変化する状態確率から劣化予測するものである.本論文では,簡易動的マクロモデルに実際の地震被害率を加味して被害後の健全度予測可能なモデル拡張をした.また,早期復旧時の想定復旧額と想定回復健全度を算出し,コスト有効度の指標を用いてコストマネジメントを行った.これらから,経年劣化にイベント・リスクを加味したトンネル照明設備における新たなアセットマネジメントモデルの有用性を示す.

  • 西川 隼人, 野口 竜也, 宮島 昌克, 香川 敬生
    2019 年 19 巻 7 号 p. 7_41-7_55
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/29
    ジャーナル フリー

    本研究では微動H/Vにより簡便かつ精度良く最大地動速度の地盤増幅度を評価することを目的として,基盤への入射スペクトルの特性を考慮した経験的な地盤増幅度評価式を求めた.まず,著者らの提案した理論地盤増幅度評価式をもとにサイト増幅特性の1次ピーク振動数と振幅をパラメータとする経験式を導き,地盤増幅度を精度良く評価できることを示した.続いて,地震観測記録から評価した地盤増幅度を対象にサイト増幅特性のパラメータを用い地盤増幅度評価式を求めた結果,地盤増幅度の観測値と評価値の間に高い相関が得られた.最後にサイト増幅特性の代わりに微動H/Vを用い経験的な地盤増幅度評価式を求めたところ,既往研究で用いられているタイプの経験式に比べて,高い精度で地盤増幅度を評価できることを明らかにした.

  • —高加速度を実現する駆動機構—
    加藤 恵輔, 広瀬 茂男, 吉田 稔
    2019 年 19 巻 7 号 p. 7_56-7_66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/29
    ジャーナル フリー

    地震防災意識の涵養のためには,避難訓練に加え,地震を体感できる教育用の装置を利用することが有用である.我々はこれまでに人が乗ることができる自走式地震動発生装置を開発してきた経緯があるが,今回の開発では,振動実験を簡単に行うことや,建物の固有振動数の違いによる揺れの視覚化などを目指した新しい可搬型地震動シミュレータを開発した.本機では従来の装置よりも軽い積載質量10kg程度を目標として設計することで,小型軽量化を行うとともに,従来では実現が難しかった3~10Hzの周波数領域での水平2成分の振動を生成させるものである.今回はその実現を目指し,床面のグリップ力を強化するブレード型オムニホイル車輪と,全方向に機敏に動くために車輪を捩じり放射に配置した全方向加速度発生機構という2つの新しいメカニズムを採用した.本論文では,その設計要件と機能,試作機の構成,実験結果を報告する.

報告
  • 中澤 駿佑, 境 有紀, 汐満 将史, 三木 彩加, 新井 蒼太
    2019 年 19 巻 7 号 p. 7_67-7_104
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/29
    ジャーナル フリー

    2018年に発生した北海道胆振東部地震を対象として,震度6弱以上を観測した強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,震度6強を観測したK-NET鵡川周辺で木造全壊率6.3%の被害が生じていたが,その他の観測点周辺では全壊・大破といった大きな被害を受けた建物は見られなかった.観測された強震記録の性質を分析した結果,K-NET鵡川では建物の大きな被害と相関のある周期1-1.5秒の応答が大きく,このことが木造建物に全壊といった大きな被害を引き起こしたと考えられる.その他の強震記録では,1秒以下の短周期が卓越した一方で周期1-1.5秒の応答は小さく,このことが大きな震度を観測したにも関わらず,建物に全壊・大破といった大きな被害が生じなかった原因と考えられる.

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