足病医不在の本邦において,糖尿病性足病変の医学教育はない。その中で急増する糖尿病性足潰瘍に対して,何を最優先すべきかを潰瘍の病態別に治療の骨格を提唱したものが「神戸分類」である。しかし,高齢者,糖尿病,末梢動脈疾患(以下PAD)が急増する今日,全国の入院ベッド数が減少し,足に潰瘍を有する糖尿病患者が長期入院加療することが困難な状況になりつつある。創傷治療を目指す「神戸分類」の先にあるものは,患者の歩行を守りいかに社会復帰を目指すかにある。
大動脈解離を伴わない孤立性上腸間膜動脈解離(SMAD)の治療内容と遠隔成績について検討した。2005年から経験したSMAD例は30例で,腸管虚血が高度と診断した2例,瘤径拡大の1例に侵襲的治療を行った。他の27例では保存的に治療した。6~149(平均69)カ月の遠隔において,SMAD関連死,関連の血管合併症は認めなかった。SMADには,急性期に侵襲的治療が必要なる例が存在したが,大部分の例で保存的治療が可能であり,予後は良好であった。
上腸間膜動脈(SMA)解離は,まれに腸管虚血のため血行再建が必要となる。SMA解離に対し,逆行性ステント挿入術を行った2例を経験した。開腹して露出したSMAから解離部に逆行性にステントを挿入し,1例はSMA解離部の内膜固定術を追加した。2例とも,腸管血流は回復し,術後経過は良好であった。バイパス術や経皮的ステント挿入術よりも,成功率が高い方法と考えられた。
Trousseau症候群は悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により脳卒中を生じる病態とされ卵巣癌での発症は多いが,卵巣粘液性腺癌での発症報告はほとんどなく,今回経験したので報告する。症例は70歳女性。見当識障害で受診し多発性脳梗塞を認め,精査にて卵巣粘液性腺癌を認めた。粘液性腺癌の進行は緩徐だが進行例は予後不良とされ,今回も急激な経過を辿ったが,治療ではCA125などで病勢を予測しての抗凝固療法や原疾患の速やかな治療が肝要と思われる。
症例は50歳,男性。主訴は労作時息切れ。左前腕手関節付近に動静脈瘻を有していた。血管エコーではバスキュラーアクセス(VA)肢の上腕動脈で2600 mL/minを呈した。血流抑制手術として中枢の橈骨動脈に2 mm長の吻合口でVA再建術を施行した。術翌日から血流量250 mL/minでの透析が可能であった。息切れは消失,上腕動脈血流量は3カ月後で810 mL/minと改善した。小さい吻合孔のVA再建術は簡便かつ効果的に血流抑制できる可能性が示唆された。