日本外科系連合学会誌
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39 巻, 6 号
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原著
  • 村上 智洋, 東 幸宏, 丸尾 啓敏
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1033-1038
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌前方切除後縫合不全に術後早期の水様便が及ぼす影響を検討した.対象と方法:当院のRS,Ra,Rb大腸癌手術症例90例をCovering stoma造設の有無に分けて縫合不全のリスク因子を解析した.結果:[Covering stoma無し(n=80)]:縫合不全は16例(20%)に生じ,リスク因子の単変量解析ではBrinkman index高値,糖尿病あり,肛門縁に近い腫瘍,術中出血多量,初回排便が水様便,初回排便が早期の症例において有意に縫合不全が多かった.多変量解析においては初回排便までの日数に有意差を認めた.[Covering stoma造設(n=10)]:複数の縫合不全リスク因子を有する2例(20%)に縫合不全が生じた.結語:術後早期の水様便は縫合不全のリスクとなっている.
  • 石橋 敬一郎, 石畝 亨, 幡野 哲, 傍島 潤, 大澤 智徳, 岡田 典倫, 隈元 謙介, 横山 勝, 中田 博, 石田 秀行
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1039-1048
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    1997年1月から2012年3月の間に,直腸癌に対し骨盤内臓全摘術(total pelvic exenteration,TPE)を施行した12例の手術部位感染(surgical site infection,SSI)因子の頻度について,同時期の前方・後方PE19例,腹会陰式直腸切断術(abdomino-perineal resection,APR)79例を対照に後方視的に検討した.また全症例を対象にSSI発生の危険因子について解析した.SSI全体の頻度はTPE58.3%,前方・後方PE52.6%,APR39.2%で術式間に有意差はなかった(p=0.32).切開創感染(incision site infection,IS)の頻度はAPR19.0%に対し,TPE41.7%,前方・後方PE42.1%であり,APRが最も低かったが(p=0.05),臓器・腔感染(organ/space infection,OS)の頻度は,TPE33.3%,前方・後方PE31.6%,APR20.3%と差はなかった(p=0.41).ロジスティック回帰による多変量解析では,SSI全体では出血量75percentile以上(p=0.04),ISではpassive drainage(p<0.01),OSでは出血量75percentile以上(p=0.02)および術当日のみの予防的抗菌薬使用(p=0.03)がSSI発生の独立危険因子であった.TPEは前方・後方PEあるいはAPRと比較してSSIのリスクは増加しないが,TPEを含めた骨盤腔に広範な死腔が生じる術式に共通したSSI対策を講じる必要がある.
臨床経験
  • 竹内 大輔, 小出 直彦, 奥村 征大, 鈴木 彰, 宮川 眞一
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1049-1056
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    「目的」食道胃接合部における表在型バレット腺癌と扁平上皮癌の差異を明らかにする.「方法」下部食道噴門切除・食道胃管吻合術を施行されたAeおよびAe/Gの表在型バレット腺癌11例,扁平上皮癌7例の臨床病理学的因子を検討した.「結果」表在型バレット腺癌では全例に胃食道逆流症を認め,糖尿病や高血圧の併存が比較的多く認められた.リンパ節転移はバレット腺癌の3例に認められた.表在型扁平上皮癌ではしばしば慢性肺疾患を併存し,他臓器重複癌も多く認められた.術後は全例PPIの内服を行い,自覚症状とLos Angeles分類の内視鏡所見に差を認めなかった.術後に新たなバレット腺癌の発生は認められていない.「結語」食道胃接合部の表在型バレット腺癌と扁平上皮癌の間にはいくつかの差が認められ,その診療にあたって留意すべきである.表在型バレット腺癌切除例の27.3%にリンパ節転移を有し,手術や内視鏡的治療の術前評価において注意が必要である.
  • 園原 史訓
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1057-1061
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    緒言:ステロイド無効および副作用が顕著な特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)は脾摘の適応である.対象と方法:2002年1月から2013年12月までのITPに対する腹腔鏡下脾臓摘出術15例を対象として,手術の安全性と治療効果を検討した.結果:手術時間中央値179分,術中出血量中央値20g,開腹移行例はなかった.合併症は1例(6.7%)で胃穿孔を認めた.当科初診時と術後1カ月の血小板数中央値はそれぞれ4.5万/μl(0.1~32.5万/μl),17.0万/μl(3.2~50.2万/μl)で脾摘後に有意な上昇を認めた(p<0.01).その後の経過観察中,2例(13%)が血小板数3万/μl未満となり,再発と診断された.結語:ITPに対する腹腔鏡下脾臓摘出術はほぼ安全に施行可能であった.脾摘後1カ月では全例で血小板の増加を認めたが,その後に低下する例もあるため長期的な経過観察を要すると思われた.
症例報告
  • 佐藤 耕一郎, 山口 正明, 斎藤 俊夫, 福島 大造, 阿部 隆之
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1062-1069
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例1はTSH高値で某医より紹介され,超音波検査(US)上甲状腺両葉に腫瘤が認められた.穿刺吸引細胞診(FNA)上,右葉腫瘤の濾胞上皮細胞の核形が不整で核腫大・核溝・核内封入体を認め,悪性(乳頭癌疑い)と診断された.入院の上,甲状腺全摘を行ったところ,術中迅速診にて細胞診で悪性と診断されていた腫瘤は硝子化索状腫瘍と診断され,頸部郭清は行わなかった.永久標本でも同様の結果であり,約2年経過した現在,再発を認めていない.症例2は人間ドッグで甲状腺右葉に腫瘍を指摘され,当院紹介された.US上,甲状腺右葉に2個,左葉に1個の腫瘤が認められ,FNA上,一つの右葉腫瘤濾胞上皮の核形が不整で核内封入体が認められ,悪性疑いとされた.入院の上,甲状腺全摘を行い,術中迅速診で細胞診上悪性疑いとされた腫瘍は,硝子化索状腫瘍と診断され,頸部郭清は行わなかった.永久標本でも同様の結果であり,3カ月たった現在,再発を認めない.
  • 浅野 有香, 柏木 伸一郎, 小野田 尚佳, 野田 諭, 田中 さやか, 大杉 治司, 平川 弘聖
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1070-1075
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    食道癌の甲状腺転移は剖検例においては3%程度に確認されるものの,発見時には既に多臓器転移を伴うなど癌が高度に進行した状態であることが多いため,治療対象となる症例は稀である.今回われわれは治癒的切除が可能であった食道癌孤立性甲状腺転移の1例を経験した.症例は57歳の男性.53歳時に胸部食道癌(pT1N0M0 Stage Ⅰ)にて手術(胸腔鏡下食道亜全摘)を施行され,術後フォローアップのCTにて甲状腺腫瘍が認められた.同部位の細胞診にて扁平上皮癌が検出され,臨床経過から食道癌甲状腺転移と診断し,甲状腺右葉切除術を行った.自験例は,食道癌術後4年目に孤立性甲状腺転移をきたしており切除が可能であった.極めて稀な症例であると思われ,文献的考察を加えて報告する.
  • 南 盛一, 長嶋 和郎
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1076-1080
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は84歳男性.約2年前より左乳房腫瘤を自覚していたが放置.吐血のため当院に救急搬送され,上部消化管出血の精査目的に上部消化管内視鏡検査を行った.胃噴門部に約5cm大のBorrmann2型の腫瘍を認め,生検にてtub2の結果であり胃癌の診断となった.また,入院後の胸部CTで左乳房に3.5cm大の腫瘤を認め,乳房超音波検査で低エコー腫瘤として描出され乳癌を否定できなかったため針生検を施行した.病理学的に浸潤性乳管癌と診断され,各々の転移ではなく左乳癌,胃癌の同時性重複癌と判断した.手術は乳癌,胃癌の順に逐次行い,術後補助療法は,乳癌に対してはタモキシフェン内服によるホルモン療法を行っているが,認知症のため胃癌に対する補助化学療法は行わず経過観察中である.
    男性乳癌は全乳癌の約1%とされ比較的稀で,同時性に胃癌と重複した報告例は本症例が8例目と稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 荒瀬 光一, 渡邉 哲也, 森木 康之, 浜田 史洋
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1081-1087
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    胃癌化学療法中にニューモシスチス肺炎(pneumocystis pneumonia:以下PCP)発症を疑った1例を経験したので報告する.症例は60歳男性,切除不能胃癌(T4a,N3,M1:Stage Ⅳ)に対する化学療法としてS-1+CDDP,PTX,S-1+TXTを投与した.休薬中に呼吸困難が出現し,胸部単純X線および胸部CT検査で両肺野にびまん性すりガラス陰影を認め,同時にβ-D-glucan高値を認めたためPCPと診断した.人工呼吸器管理並びにST合剤,ステロイドを投与し病態や画像所見は改善した.PCPは致死的な日和見感染症であり,一般的には免疫抑制療法時やHuman immunodeficiency virus(以下HIV)感染者に発症するリスクが高い.消化器癌においても,化学療法並びにステロイド投与中の患者は,PCP発症の可能性を十分念頭に置く必要があると考えられた.
  • 寺島 雅典, 田中 雅樹, 杉野 隆, 三木 友一朗, 幕内 梨恵, 徳永 正則, 谷澤 豊, 坂東 悦郎, 川村 泰一, 小野 裕之
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1088-1093
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性,健康診断にて胃の異常を指摘され,近医にて精査の結果胃GIST疑いとの診断で当科に紹介となった.上部消化管内視鏡検査では胃体中部大彎前壁側に管内に発育する20mm大の胃粘膜下腫瘍を認めた.腹部造影CT検査では,胃体中部に内腔に突出する14mmの隆起性病変を認め,経時的に辺縁から内部へと造影効果が進み血管腫様の造影パターンを呈していた.以上より,胃粘膜下腫瘍(GIST疑い)の診断にて腹腔鏡・内視鏡合同手術を施行した.切除標本の病理検査では腫瘍血管網が発達し,小型で類円形~多角形の腫瘍細胞が充実性に増殖していた.免疫組織化学的にはaSMA,Collagen-Ⅳが強発現し,c-kit,CD34,Desmin,S100が陰性で,MIB1 indexが低く(1~2%),良性グロームス腫瘍と診断された.術後経過は良好で第6病日に退院.術後1年経過したが再発の徴候は認めていない.
  • 澤井 利次, 飯田 敦, 五井 孝憲, 片山 寛次, 山口 明夫
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1094-1099
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    胃軸捻転症は胃が生理的範囲を越えて捻転する比較的稀な疾患であり,症例によっては手術が必要となる.胃軸捻転症に対し,腹腔鏡下胃固定術を行い良好な経過を認めた症例を経験したため報告する.
    症例は75歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に当院受診.腹部CT検査,上部消化管造影検査で胃軸捻転症と診断.内視鏡的捻転解除が施行されたが胃軸捻転の再発を認め,腹腔鏡下胃固定術を施行した.術後良好に経過.翌日より食事開始,術後4日目には退院となった.胃軸捻転症に対する腹腔鏡下胃固定術は低侵襲で有効な治療法と考えられた.
  • 紙谷 直毅, 頼木 領, 大住 周司, 吉村 淳, 島田 啓司
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1100-1104
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.S状結腸癌の肝転移巣に対し肝後区域切除術,S3,S4部分切除術を施行,術後15日目に退院となった.しかし術後20日目に高度の発熱と下痢が出現し,また末梢血好酸球数の著明な増多と胸腹水貯留を認めたため再入院となった.胸水,腹水穿刺を施行したところ穿刺液中にも好酸球の増多を認めたため,好酸球性胃腸炎と診断しprednisoloneの静脈投与を開始した.症状は劇的に改善し再入院後17日目に退院となった.術後に末梢血液中や腹水に好酸球分画の増多を認め何らかの消化器症状を呈する症例では,本疾患を念頭に置き遅滞なく薬物治療を開始する必要があると考えられる.
  • 高梨 裕典, 礒垣 淳, 川辺 昭浩
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1105-1109
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    胃空腸横行結腸瘻は,胃切除後の吻合部潰瘍によって引き起こされる比較的稀な合併症である.症例は74歳男性.昭和42年,十二指腸潰瘍に対し幽門側胃切除・BillrothⅡ法再建術(結腸後)を施行された.平成25年1月よりタール便を自覚し,上部消化管内視鏡で残胃空腸吻合部の潰瘍からの出血を認め,PPIを内服し経過観察されていた.同年6月より未消化の食物残渣を含む頻回の下痢,体重減少を自覚した.上部および下部消化管内視鏡検査が施行され,残胃空腸吻合部と横行結腸を交通する瘻孔を認めた.上部消化管造影でも交通が確認され胃空腸横行結腸瘻と診断し,手術目的に当科紹介となった.開腹下に瘻孔を含めた残胃幽門側胃切除,空腸部分切除,横行結腸部分切除,Roux-en Y再建を実施した.術後は下痢症状が消失し,栄養改善を認めた.下痢や体重減少で発症し,手術で根治した胃空腸横行結腸瘻の1例を経験したので報告する.
  • 鈴村 和大, 近藤 祐一, 飯室 勇二, 黒田 暢一, 平野 公通, 岡田 敏弘, 麻野 泰包, 田中 肖吾, 中正 恵二, 藤元 治朗
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1110-1115
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性で,近医での上部消化管内視鏡検査にて十二指腸の多発潰瘍瘢痕を指摘され,また血清ガストリン値の上昇も認められたため,精査加療目的に当院紹介入院となった.当院で施行した上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に粘膜下腫瘍を認め,造影CTおよび選択的動脈内カルシウム注入試験にて十二指腸下行脚にガストリノーマが局在すると判断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後は問題なく経過し,第34病日に退院.血清ガストリン値も正常範囲となった.術後約3年の現在,無再発生存中である.術前に十二指腸ガストリノーマと局在診断し,手術治療を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 蔵谷 大輔, 柴田 賢吾, 菊地 健, 植村 一仁, 髙橋 宏明, 伊藤 美夫
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1116-1121
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性.腹部膨満および食欲不振の精査加療目的に当院転院した.身長155cm,体重33.7kg,BMI 14.0.上腹部の著明な膨隆を認めた.腹部X線で胃および十二指腸の著明な拡張を認めた.腹部エコーでは,大動脈とSMAのなす角は24度であった.CTにて,十二指腸を挟む部位での大動脈とSMAの距離は6mmであった.以上よりSMA症候群と診断した.以前にも本症の既往があり,患者本人が手術による根治を選択したため,手術を施行した.臍部に12mmのカメラポート,左下腹部に12mm,左上腹部に5mmのポートを挿入.腹腔鏡下に十二指腸水平脚を露出し,Treitz靱帯から約30cmの空腸とENDO-GIAトライステープル60キャメル(コヴィディエン社)を用いて逆蠕動に側々吻合した.術後9日目に食事摂取可能となり,20日目に紹介元の病院に転院した.
  • 藤田 文彦, 松島 肇, 井上 悠介, 川原 大輔, 虎島 泰洋, 金高 賢悟, 高槻 光寿, 南 恵樹, 黒木 保, 江口 晋
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1122-1126
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.黒色便を主訴に近医を受診した.進行する貧血を伴っていたため消化管出血が疑われ,精査加療目的に当院紹介となった.ダブルバルーン小腸内視鏡検査にて,回腸に潰瘍を伴った隆起性病変を認め,生検の結果高分化腺癌の診断となった.CT検査にて他の部位に転移性病変を認めなかったため,原発性小腸癌の診断で手術適応と判断された.手術は腹腔鏡下にリンパ節郭清を伴う小腸の切除を行い,吻合は体腔内で行った.切除した標本は臍部のポート創より回収した.病理組織学検査では,tubular adenocarcinoma,pMP,ly0,v0,pN0という結果であった.近年,単孔式など新たな低侵襲手術が報告されているが,吻合を体内で行った本術式においても皮膚切開を最小限に抑えることができ,整容性にも優れた術式である.
  • 國重 智裕, 池田 直也, 上野 正闘, 金村 哲宏, 榎本 浩士
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1127-1131
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    餅による食餌性イレウスに対し,腹腔鏡補助下除去術を施行した1例を経験した.症例は68歳男性.早朝より腹痛が出現し,当院救急外来を受診.腹部造影CT検査にて小腸異物による腸閉塞が疑われた.入院の上,絶飲食とし保存的加療が行われたが,翌日になって症状の増悪と再度撮影したCT画像上の悪化を認めたため緊急手術を施行した.腹腔鏡補助下にて異物を除去し,餅による食餌性イレウスと診断した.手術が必要となった食餌性イレウスに対して腹腔鏡補助下除去術は第1選択となりえる可能性が示唆された.
  • 池永 雅一, 人羅 俊貴, 西垣 貴彦, 金 浩敏, 廣田 昌紀, 村上 昌裕, 吉川 正人, 清水 潤三, 三方 彰喜, 長谷川 順一
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1132-1137
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.下痢,嘔吐,腹痛を主訴に当院を緊急受診した.感染性腸炎の診断で緊急入院した.腹部X線検査,CT検査で腸閉塞所見を認め,胃管による減圧術と絶食,補液療法を開始した.腹痛は改善傾向であったが,腹満感は持続していた.腹部造影CT検査で,索状物による小腸閉塞が疑われ,イレウスチューブ挿入し,腸管内減圧を図った.チューブ造影検査を施行すると小腸の完全閉塞を認めたため,外科紹介された.腹腔鏡での観察を行うと,横行結腸から伸びる脂肪組織先端が小腸間膜に癒着しており,それが索状になり,小腸を圧迫し閉塞起点となっていた.鋭的剝離を行い,脂肪組織を臍部創部より体外に導出し,横行結腸腹膜垂であることを確認し切除した.術後は経過順調で退院された.開腹歴のない,腸閉塞症例で腹膜垂が原因となっていた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 石塚 満, 永田 仁, 高木 和俊, 岩崎 喜実, 田中 元樹, 窪田 敬一
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1138-1145
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は35歳女性.子宮内膜症で当院婦人科にて加療中に腸閉塞による突然の腹痛で入院となった.CT上,閉塞起点は回腸末端の壁肥厚であり,下部内視鏡観察では,同部位に圧排による腸管内腔の狭小化を認め,生検を行ったが確定診断はできなかった.悪性腫瘍の可能性も否定できないため,D3リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下回盲部切除術並びに両側チョコレート囊胞摘出術を施行した.術中観察ではダグラス窩に子宮内膜症に特徴的な肉眼所見であるblue berry spotを多数認め,電気メスにて焼灼した.病理組織学的診断は,回腸粘膜下異所性子宮内膜症であり,リンパ節中にも同様の子宮内膜組織を認める他,腸管粘膜面にもblue berry spotが散見された.今回,腹腔鏡下手術により,異所性子宮内膜症による腸閉塞のみならず,多数の内膜症病変に対しても同時に加療を行った症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 筋師 健, 山田 貴允, 山本 裕司
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1146-1149
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.2012年12月,月経終了後より便秘傾向となり,嘔吐・腹痛のため当院内科外来を受診した.腹部CT検査よりS状結腸に高度狭窄を認めたため,経肛門的にイレウス管の挿入を試みるも,施行困難と判断し,外科紹介となった.同日,緊急手術を施行した.回腸および全結腸が著明に拡張しており,S状結腸に腫瘤を触れ,直腸および子宮に強度に癒着していた.S状結腸切除,D2郭清を施行した.術後,病理組織学的診断により腸管子宮内膜症と診断された.腸管子宮内膜症は,全子宮内膜症の10%程度を占め,S状結腸・直腸での発生頻度が高い.しかし,同部位でのイレウスの発症は比較的稀と報告されている.今回,S状結腸に発症しイレウスをきたした腸管子宮内膜症の1例を経験したので報告する.
  • 河内 順, 荻野 秀光, 下山 ライ, 磯貝 尚子, 渡部 和巨, 寺島 孝宏, 三浦 一郎
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1150-1154
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性.近医でS状結腸憩室炎の診断で入院加療した.退院後4日で腹痛が再燃し当院受診.外来で内服抗生剤を処方され経過観察となったが腹痛は持続し排尿時痛,気尿も認めたため外科紹介,緊急入院となった.尿検査で膿尿を認め,腹部CTで膀胱内に空気貯留を認めた.骨盤単純MRIで瘻孔が描出されS状結腸膀胱瘻と診断された.膀胱鏡で膀胱三角部付近に強い炎症性変化を認め瘻孔や尿管口ははっきりしなかったため一期的手術とせず,横行結腸人工肛門を造設し,6カ月後に膀胱鏡を併用して腹腔鏡下S状結腸切除,膀胱瘻孔部閉鎖術を行った.更に1カ月後人工肛門を閉鎖し,術後4カ月で再燃などを認めない.
  • 濱元 宏喜, 奥田 準二, 田中 慶太朗, 山本 誠士, 大関 舞子, 芥川 寛, 江頭 由太郎, 内山 和久
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1155-1160
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性,血便を自覚し,近医を受診.下部消化管内視鏡検査にて直腸に2型の進行癌認め,手術目的に当院紹介.直腸癌RS,2,SS,N1,H0,P0の術前診断で腹腔鏡下に手術を開始.腹腔内を観察すると,直腸前壁側と子宮が広範囲に癒着しており直接浸潤が考えられた.腹腔鏡下に中枢側郭清と直腸背側の剝離授動を行った後に,術中内視鏡にて確認すると,子宮癒着部は腫瘍の主座よりやや肛門側に位置していた.炎症性の癒着の可能性を考え,開腹移行し子宮と直腸を丁寧に剝離した.剝離した子宮壁の一部を術中迅速組織診へ提出したところ,悪性所見は認めず,子宮内膜症と診断された.以上より腸管子宮内膜症による炎症性の癒着と診断し,子宮を温存しつつ適切な手術が可能であった.子宮への直接浸潤が疑われたが,術中迅速組織診断と術中内視鏡にて子宮を温存しえた直腸子宮内膜症の1例を経験したので文献的考察を含めて報告する.
  • 池田 匡宏, 金子 哲也, 所 隆昌
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1161-1168
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    非アルコール性脂肪肝炎から発生した原発性肝細胞癌に対し,右肝切除施行術後,術後Wernicke脳症を発生した症例を経験した.症例は62歳男性で糖尿病,睡眠時無呼吸症候群で治療中であった.術後呼吸不全に陥り気管切開を施行した.術後高カリウム血症,高血糖のため1号輸液を中心に輸液を行った.術後33病日より経口摂取を開始したが,第43病日より失見当識障害,運動失調をきたした.頭部MRI T2拡散画像で中脳水道,第3脳室に沿った視床内側に左右対称性に高信号領域を認め,Wernicke脳症と診断した.直ちにビタミンB1を投与し速やかに改善した.術後ビタミンB1補充不足に加え,糖尿病,高血糖に対するインスリン負荷が糖代謝を亢進しWernicke脳症をきたしたと考えられ教訓的な症例であった.
  • 湯川 寛夫, 利野 靖, 玉川 洋, 山本 直人, 長谷川 慎一, 林 勉, 大島 貴, 吉川 貴己, 森永 聡一郎, 益田 宗孝
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1169-1174
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは高齢,高リスク症例に対しMCT併用HALS肝部分切除術を行い良好な結果を得たため考察を加え報告する.
    症例は81歳男性.既往として狭心症に対し2008年冠動脈ステント(BMS)留置,AVブロックに対しペースメーカー埋め込み.ほか高血圧,脳梗塞,S状結腸癌既往あり,ASA-PS:3.近医で肝機能障害を指摘され肝右葉に腫瘍が疑われ,2012年8月当科初診.CTでは肝辺縁鈍で表面不整,左葉は腫大し右葉は萎縮した肝硬変の像を呈しており,これを背景肝とするS8肝細胞癌と診断された.術前ICGR15は47%と高値(アシアロシンチでのICGR15換算では16%).2012年8月MCT併用HALS肝部分切除術施行.肝S8表面に一部露出する径3cmの結節を視認,腫瘍周囲をMCTで凝固した後,超音波切開凝固装置(ハーモニックスカルペル)を用いて肝切除した.出血量は少量で手術時間は2時間34分であった.経過は良好で術後12日目に退院となった.
  • 村上 剛平, 森本 芳和, 弓場 健義, 藤井 眞, 赤丸 祐介, 山崎 芳郎
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1175-1180
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.発熱を主訴に受診され胆囊腫瘍の診断で当科紹介となった.腹部CTにて胆囊壁肥厚と肝および大腸への浸潤像を,FDG-PETにて胆囊を中心にFDGの異常集積を認めた.進行胆囊癌の術前診断のもと開腹手術を施行した.術中所見からは術前診断とは異なり,進行胆囊癌を疑う所見に乏しく,肝床部切除術,結腸部分切除術により腫瘍を一塊にして摘出した後に,術中迅速病理診断を行う方針とした.迅速診断では悪性所見を認めず,肝外胆管切除やリンパ節郭清は不要と判断した.術後病理組織学的検査は黄色肉芽腫性胆囊炎(Xantogranulomatous cholecystitis,以下XGC)であった.XGCは亜急性の胆囊炎の1型であり,炎症が高度な場合は,FDG-PETでFDG集積を認め,胆囊癌との鑑別に苦慮する.そのため良性疾患にもかかわらず,過侵襲な術式が選択されることがある.胆囊癌と診断した症例でも,XGCを念頭に置き,迅速病理診断も含めた術中診断に努めることが過侵襲手術を回避する一助になると考えられた.
  • 清水 康博, 菅野 伸洋, 牧野 洋知, 大島 貴, 國崎 主税, 遠藤 格
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1181-1186
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,男性.右上腹部痛,嘔吐を主訴に当院外来受診した.来院時,右季肋部を中心に強い圧痛と筋性防御を認め,Murphy徴候は陽性であった.腹部超音波検査では胆囊腫大と壁肥厚を認めたが,胆囊管の描出は困難であった.腹部造影CTでは胆囊の尾側偏位と腫大および胆囊頸部に渦巻き像を認めたため,胆囊捻転症による急性胆囊炎と診断し,同日開腹胆囊摘出術を施行した.胆囊は胆囊床との間に間膜を有さないGrossⅡ型の遊走胆囊で,胆囊底部と周囲の大網の間に索状の癒着を認め,この癒着部と胆囊頸部を軸に反時計回りに720度捻転を起こしていた.癒着部を切離し,捻転を解除し胆囊を摘出した.術後経過は良好で第13病日に退院となった.胆囊捻転症は比較的稀な疾患であり,今回われわれは癒着による720度捻転の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 辻田 英司, 池田 泰治, 金城 直, 南 一仁, 山本 学, 田口 健一, 齋藤 俊章, 森田 勝, 藤 也寸志, 岡村 健
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1187-1191
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    子宮癌からの膵転移症例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.9年前に当院にて子宮体癌にて腹式単純子宮全摘+両側附属器切除+骨盤内リンパ節郭清+傍大動脈リンパ節郭清術を施行した.今回,上腹部痛を認め,画像にて膵尾部にφ10cmの腫瘍を指摘された.原発性膵腫瘍または子宮癌からの転移性膵腫瘍と診断したが,他に転移巣を認めなかったため手術適応と考え,膵体尾部切除を施行した.術後補助化学療法を施行され,2年無再発生存中である.
  • 村上 弘城, 藤竹 信一
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1192-1196
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性.薬局での処方待ち中に冷汗を伴った気分不良があり当院へ救急搬送となった.救急隊接触時には軽度の気分不良と嘔気を認めたが,当院搬送時には腹痛などの症状は認めなかった.胸腹部CT検査を施行したところ腹腔内遊離ガス像を認め,消化管穿孔の可能性を否定できず当科紹介となった.腹部CT検査にて腸管,脾臓周囲などに遊離ガス像が散見されるも腹部症状を全く認めず,血液検査でも炎症反応上昇も認めなかったため特発性気腹症の可能性を考え,入院の上で保存的治療の方針とした.入院後も腹部症状はなく,血液生化学検査や上部消化管内視鏡検査では異常所見を認めないため経口摂取を再開し,その後も症状の増悪を認めず第14病日に退院となった.画像検査において腹腔内遊離ガス像を認めるものの,腹部症状や炎症反応などの所見に乏しい場合は本疾患の可能性を念頭に置いて,外科的治療の適応は慎重に行う必要があると考える.
  • 大東 雄一郎, 薮内 裕也, 松本 宗明, 北東 大督, 中島 祥介
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1197-1201
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は87歳の女性で,左臀部,左大腿部痛を主訴に他院を受診した.腹部CTで左閉鎖孔ヘルニアと診断され,当院紹介となった.腹部CT所見では左閉鎖孔ヘルニアを認めるが,腸管の脱出は認めなかった.また,過去にイレウスと思われるような腹部症状を認めた様子はなかった.左臀部,左大腿部痛はHowship-Romberg徴候と考えられた.イレウスを伴わずにHowship-Romberg徴候のみで発症した閉鎖孔ヘルニアと診断し,待機的に腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った.良好な視野で腹腔内を観察し,腸管の嵌頓や他のヘルニアの合併がないことを確認した.ヘルニア門はMesh sheetを用いて閉鎖した.術後経過は良好で,左臀部,左大腿部痛は完全に消失した.イレウスを伴わずにHowship-Romberg徴候のみで発症したきわめて稀な閉鎖孔ヘルニアに対し,腹腔鏡下手術を行った症例を経験したので報告する.
  • 村田 知洋, 福地 稔, 幡野 哲, 天野 邦彦, 松澤 岳晃, 馬場 裕之, 熊谷 洋一, 石橋 敬一郎, 持木 彫人, 石田 秀行
    2014 年 39 巻 6 号 p. 1202-1207
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
    血清CA19-9が高値を呈した骨盤内mesothelial cystの稀な1例を経験したので報告する.症例は19歳,男性で2カ月前から持続する下腹部痛を訴えていた.CT検査でダグラス窩に径2.5cm大の囊胞性腫瘤と液体貯留を認めた.血液生化学検査ではCA19-9が1,844U/mlと高値であった.骨盤内囊胞性腫瘤の診断で摘出術を施行した.病理診断は中皮細胞で被覆されたmesothelial cystで,一部に扁平上皮化生を伴っていたが,悪性像は認めなかった.囊胞の中皮細胞(扁平上皮化生の部位を含め)はCA19-9免疫染色陽性であった.術後,血清CA19-9は正常化した.本邦における1985年以降の文献検索で血清CA19-9が上昇した同様の症例は報告されていない.さらに,mesothelial cystは発生頻度が低いが,骨盤内に認めることもあり,骨盤内囊胞性腫瘤の鑑別診断として念頭に置くべき疾患である.
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