日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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45 巻, 4 号
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原著
  • Hiroyuki Ohta, Toru Miyake, Tomoyuki Ueki, Masatsugu Kojima, Eiji Meka ...
    2020 年 45 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    Introduction: Despite the remarkable improvements in surgical techniques and technological advancements in the medical instruments used, anastomotic leakage (AL) still remains a serious complication after laparoscopic low anterior resection (Lap-LAR) of the rectum. The definitive mechanism underlying the occurrence of AL remains unclear, and the relationship between postoperative diarrhea and AL is still unknown.

    Methods: This study was a retrospective study performed at a single institution in 65 consecutive patients with rectal cancer who underwent Lap-LAR by the double-stapling technique (DST) for anastomosis between January 2011 and April 2015. Various candidate factors associated with symptomatic AL were examined by univariate analyses. Furthermore, an additional analysis was also conducted to investigate the relation between diarrhea developing in the early phase after operation and the occurrence of AL.

    Results: The rate of occurrence of symptomatic AL was 7.7% (5/65 cases). Univariate analysis only identified undoing of a diverting ileostomy creation as tending to be associated with the risk of development of AL (p = 0.07). Further analysis revealed a strong association between early postoperative diarrhea and the risk of AL in patients without a diverting stoma (p < 0.01).

    Conclusions: Postoperative diarrhea occurring in the early phase after Lap-LAR may be a notable risk factor for symptomatic AL, especially in patients without a diverting stoma.

  • 須藤 隆之, 藤原 久貴, 梅邑 晃, 天野 怜, 佐々木 章
    2020 年 45 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    目的:腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)においてトロッカー数削減による疼痛軽減効果と安全性を検証する目的で,3孔式と4孔式LCの短期治療成績の前向き研究を行った.方法:LC患者370例中除外例65例を除いた305例を単純ランダム割り付けにて3孔式群と4孔式群に分けて検討した.創部痛と患者満足度をvisual analog scale(VAS)で評価した.結果:両群間の創部痛VASスコア,鎮痛剤使用回数,満足度VASスコア,手術時間,出血量,術後在院日数いずれも有意差を認めなかった.開腹移行と胆管損傷はなかったが,3孔式群の153例中3例で4孔式に移行し,3孔式の完遂率は,98%であった.結論:3孔式は,4孔式に比べて疼痛の軽減はみられなかったが,同等の安全性を認めた.3孔式は,LCの経験豊かな施設において,手術困難例に躊躇せずポートの追加を行うならば,LCの標準術式となりえる可能性があると思われた.

手技・機器の開発
  • 舘野 佑樹, 玉置 秀司, 石井 雅之, 林 隆広, 岡本 史樹, 手塚 徹
    2020 年 45 巻 4 号 p. 307-314
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    【目的】腹腔鏡下直腸前方切除術中に吻合予定腸管の切離部位を決定するための血流評価法としてサーモグラフィー法は使用可能か.

    【方法】対象は直腸癌に腹腔鏡下直腸前方切除術を施行した30例.術中に吻合予定部腸管の温度測定をサーモグラフィーにて行い,その10cm口側腸管との温度差が2度以内となる部位で腸管を切離した.本法を用いた症例の術後縫合不全発生率を含む諸因子について検討した.

    【結果】本法を用いた30例の背景因子は,平均年齢63.7歳,男女比は16:14であった.腫瘍部位は,RSは16例,Raは9例,Rbは5例であり,手術はすべて腹腔鏡手術で高位前方切除が16例(53.3%),低位前方切除が9例(30.0%),超低位前方切除が15例(16.7%)に施行されていた.全例サーモグラフィー評価で腸管切離部位を決定し切離・吻合を行った.症例毎の測定温度の最高値は32.5,最低値は28.8で,差は3.7であった.切離部位の変更は4例で要し,最終的な吻合部の腸管温度(30.5±2.02)は10cm口側の腸管温度(30.6±0.97)と比較して全例2度以内の差に収まっていた.術後縫合不全は認めなかった.

    【結語】直腸癌に対する腹腔鏡下直腸前方切除術中のサーモグラフィーによる腸管血流評価法は,客観的・低侵襲・低コストに行うことが可能である.縫合不全予防効果に関してはさらなる検討が必要である.

症例報告
  • 古川 潤二, 篠﨑 浩治, 松本 健司, 寺内 寿彰, 木全 大
    2020 年 45 巻 4 号 p. 315-322
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,女性.3週間前より右乳房腫瘤を自覚しており血縁家族が若年性大腸癌を発症したことをきっかけに検査を受けたところ右乳腺血管肉腫,乳癌,子宮体癌,盲腸癌の合併が判明した.今回の11年前に右乳癌と診断され抗癌剤治療と放射線治療のみで手術は行わなかったという既往があった.子宮体癌と盲腸癌に対しては子宮・附属器全摘と回盲部切除を施行した.1カ月後に右乳腺血管肉腫・乳癌に対し乳房全摘・腋窩郭清・植皮術を施行した.乳腺の術後病理診断では血管肉腫と浸潤性乳管癌の衝突癌と診断された.ご本人の遺伝学的検査を行いLi-Fraumeni症候群(以下,LFS)と診断された.術後補助療法としてpaclitaxelを6カ月間行ったが術後1年後に血管肉腫が局所再発しpazopanibの治療を行った.放射線治療後に乳腺血管肉腫と浸潤性乳管癌を合併したLFSの1例を経験したので報告する.

  • 今村 宏輝, 遠藤 俊治, 竹田 雅司
    2020 年 45 巻 4 号 p. 323-329
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は73歳男性で,嚥下困難に対する精査にて食道癌を指摘された.術前の生検標本では神経内分泌癌と扁平上皮癌の混合型と診断された.術前診断Mt,cT3N0M0,cStage Ⅱに対して食道亜全摘術,2領域リンパ節郭清を施行した.切除標本の病理結果はpT2N0であり,腫瘍は生検標本と同様に神経内分泌癌と扁平上皮癌の混合型であった.神経内分泌癌と扁平上皮癌が混合した症例に対する治療戦略は複雑であり,定まったものがない.われわれは今回,過去の報告を踏まえながら,食道神経内分泌癌と扁平上皮癌の混合型に対する治療戦略を考察し,ここに報告する.

  • 郡司 崇裕, 清水 芳政, 立川 伸雄, 堀 眞佐男
    2020 年 45 巻 4 号 p. 330-337
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,女性.健診で胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)を指摘され受診した.上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部にDelleを伴うSMTを認めた.生検にてCD34陽性,c-kit陽性でgastrointestinal stromal tumor(以下GIST)と診断した.CT上胃穹窿部に67mm大の軟部腫瘍を認め,根治切除を考慮したが,横隔膜および左副腎への浸潤が疑われたことと,患者の手術希望が得られず,イマチニブ400mg/日を3カ月間投与した.腫瘍は34mmまで縮小し,患者の手術希望も得られ手術の方針となった.画像検査上,局所切除は不能と判断し,ロボット支援下噴門側胃切除術・観音開き法再建を施行した.病理検査では免疫染色上GIST関連抗体すべて陰性で病理学的完全奏効(pathological complete response: pCR)と診断した.現在14カ月間再発なく経過している.今回われわれは,胃GISTに対して術前イマチニブ投与を行い,腫瘍縮小により低侵襲手術を可能にし,切除標本にてpCRを得た症例を経験したので報告する.

  • 正見 勇太, 加藤 憲治, 中橋 央棋, 春木 祐司, 藤永 和寿, 谷口 健太郎
    2020 年 45 巻 4 号 p. 338-344
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    胃軸捻転症は胃の捻転により通過障害をきたす稀な疾患である.今回われわれは食道裂孔ヘルニアを合併し繰り返す胃軸捻転症に対し腹腔鏡下胃固定術が有効であった1例を経験したので報告する.患者は84歳女性.ここ半年間で3回胃軸捻転症を発症し,保存的治療にて軽快している.今回嘔吐を主訴に来院し,CTにて食道裂孔ヘルニア,短軸性胃軸捻転を認めた.内視鏡的に捻転を整復後一旦退院するも,その3日後に胃軸捻転が再燃したため,腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア根治術,胃固定術を施行した.混合型食道裂孔ヘルニアに対し,開大した食道裂孔を縫縮し,さらにToupet法(後方約3/4周性)にて噴門を形成した.胃体上部大彎から噴門形成部左側を左横隔膜下に4箇所,噴門形成部右側を右横隔膜脚に1箇所結紮縫合し,胃を固定した.合併症はなく術後14日目に退院し,術後7カ月で再発は認めていない.胃軸捻転症に対する腹腔鏡下胃固定術は低侵襲で有効な治療法と考えられた.

  • 森岡 広嗣, 大井田 奈穂, 栄永 直樹, 藤野 一厳, 萩原 俊昭, 青木 順, 織畑 道宏, 五藤 倫敏, 小林 滋, 山崎 滋孝, 神 ...
    2020 年 45 巻 4 号 p. 345-355
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,男性.体下部3型胃癌に対して幽門側胃切除術(D2郭清)を施行.病理組織診断はL,Post,Type3,70×60mm,por2,pT4a,int,INFc,ly3,v1,pN3a(8/20),pPM0(25mm),pDM(50mm),CY0のStage ⅢCで術後補助化学療法(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム;TS-1®)を1年間行った.Surveillanceで明らかな再発は認められなかったが,術後1年8カ月より頭痛・眩暈・嘔気・嘔吐・右眼に一過性ブラックアウト・複視の症状が出現した.頭部CT・MRIでは明らかな異常所見は認められなかったが,髄液検査を行ったところ胃癌による髄膜癌腫症の診断に至り,脳室腹腔短絡術(Ventriculo-Peritoneal Shunt;以下VPシャント)およびMethotrexate(以下MTX)髄腔内投与を開始した.症状は緩和され,職場復帰まで可能となった.髄腔内化学療法はWeekly投与で計17回施行した.胃癌の髄膜癌腫症は稀であり,極めて予後不良とされるが,頭蓋内圧亢進症状出現時より11カ月と癌性髄膜癌腫症の中では比較的長期生存が得られた1例を経験したので文献学的考察を加え報告する.

  • 河原 慎之輔, 佐藤 勉, 白井 順也, 沼田 幸司, 羽鳥 慎祐, 谷 和行, 玉川 洋, 湯川 寛夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    2020 年 45 巻 4 号 p. 356-362
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は80歳女性.腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腸炎の診断で腸管安静を指示され帰宅した.その後嘔吐・腹部膨満も自覚したため再度受診した.再受診時の腹部CTで腹水・腸管浮腫が出現しており,虫垂炎手術の既往もあるため癒着による絞扼性腸閉塞の可能性も考え,緊急開腹術を施行した.術中所見では回腸末端より10cm口側部に固い腸管内容物を触知し腸閉塞の原因となっていた.内容物はバウヒン弁を通過できなかったため小切開にて摘出すると線維性食塊であった.口側腸管にも同様の食物残渣を多量に認め可及的に排出し,切開創を縫合し終了とした.術後の問診でドライフルーツのリンゴを摂取したことを確認した.ドライフルーツが原因となった食餌性腸閉塞の症例は,本邦では自験例のほかに2例の報告を認めるのみと非常に稀であるが,食餌性腸閉塞の鑑別としてドライフルーツも念頭に置く必要があると考えられた.

  • 白川 智沙斗, 今 裕史
    2020 年 45 巻 4 号 p. 363-366
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は63歳女性.当院心臓血管外科にて解離性大動脈瘤に対し3度のステントグラフト挿入術の既往がある.ステントグラフトのEndo-leakに対する人工血管置換術後の造影CTで上腸間膜動脈(以下,SMA)解離および上行結腸の造影不良,胆囊炎の所見を認め,同日に緊急開腹手術を施行した.肉眼的には上行結腸壊死所見を認めず,右後腹膜血腫による色調変化のみを認めた.インドシアニングリーン(以下,ICG)蛍光法を使用した腸管血流評価では上行結腸の血流は良好であり,腸管切除は行わず胆囊摘出術のみ施行した.術後ICUに入室したが術後2日目に抜管,ICU退室となり術後71日目に転院となった.ICG蛍光法では術中に簡便且つ客観的な血流評価を行うことが可能であり,虚血性腸疾患に対する緊急手術時に虚血領域を同定する上で有用であると考えられる.

  • 沖本 隆司, 中村 賢二, 又吉 信貴, 中本 充洋, 永松 伊織, 尾立 西市, 荻野 利達, 中島 洋, 八谷 泰孝, 福山 時彦
    2020 年 45 巻 4 号 p. 367-373
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は80歳女性.黒色便を自覚し受診され,血液検査で貧血を認めた.上下部消化管内視鏡検査で出血源は同定できず,カプセル内視鏡検査を施行し上部空腸内に出血所見を認めた.小腸内視鏡検査でTreitz靭帯より5cm肛門側に20mm大の腫瘍を認め組織生検でGroup5,Adenocarcinomaの結果であった.胸腹部造影CTではリンパ節転移や遠隔転移の所見は認めなかった.以上より,原発性空腸癌に対して腹腔鏡補助下小腸部分切除術,リンパ節郭清術を施行した.腫瘍はTreitz靭帯から肛門側5cmの部位に同定した.腹腔鏡下に十二指腸第4部を授動した後,小開腹下に切除・吻合を行った.病理結果はpStage Ⅰ(pT2(MP),pN0)であった.術後3カ月現在無再発生存中である.

    高齢者に発生したTreitz靭帯近傍の原発性空腸癌に対し,腹腔鏡補助下に切除した1例を経験したので報告する.

  • 藤田 翔平, 篠﨑 浩治, 松本 健司, 笹倉 勇一, 寺内 寿彰, 木全 大, 古川 潤二
    2020 年 45 巻 4 号 p. 374-378
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    今回,肝周囲膿瘍を伴う急性胆囊炎に対し腹腔鏡下胆囊摘出術を施行後,肝表の仮性動脈瘤形成および出血をきたした1例を経験した.症例は75歳,男性.入院4日前から発熱,右季肋部痛があり近医で抗菌薬加療をされていたが,症状の改善を認めず当院を受診となった.造影CTで胆囊腫大,肝表の低吸収域を認め,肝周囲膿瘍形成を伴う急性胆囊炎と診断した.入院後保存的加療を施行し,入院6日目に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術後2日目に血圧低下,貧血,肝機能異常を認め,腹部CTで肝表面の仮性動脈瘤形成と診断し,緊急で経皮的動脈塞栓術を施行し,右肝動脈の末梢と,左胃動脈からreplaceした左肝動脈の末梢に多数の仮性動脈瘤を認め塞栓した.その後軽快し,術後62日目に退院となった.肝表の仮性動脈瘤形成は,肝周囲膿瘍の炎症の波及による可能性を考える.手術前および手術時の肝周囲膿瘍の適切なドレナージが必要と考える.

  • 船水 尚武, 峯田 章, 尾崎 貴洋, 五十嵐 一晴, 大村 健二, 若林 剛
    2020 年 45 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例はHuntingtonʼs disease(HD)を併存する介護老人保健施設入所中の79歳,男性.3日間続く発熱に黄疸も伴ってきたため近医を受診したところ,胆囊炎が疑われ治療目的に当科へ紹介となった.腹部CTで腫大した胆囊と肥厚した胆囊壁を認め,急性胆囊炎(Grade Ⅱ)と診断した.黄疸,およびHDの進行に伴う認知症もみられ,経皮経肝的胆囊ドレナージ(PTGBD)を選択した.不随意運動と認知症により体動・呼吸の静止ができず穿刺時に難渋したが施行可能であった.PTGBDと抗菌薬で炎症反応,黄疸ともに改善した.外瘻チューブをクランプし,留置したまま退院となった.その後経過は良好であったが,HDに伴う不随意運動によりドレナージチューブの固定性が保たれないため手術を行う方針とした.腹腔鏡下胆囊摘出術を施行し,術後5日目に合併症なく退院となった.日常診療において頻度が少ないとはいえHD患者が消化器疾患を併発し,消化器外科医が診療にあたることはありうる.HDは不随意運動を伴うものの通常の麻酔管理が可能で,かつ周術期管理においても不随意運動によるチューブ類の事故抜去のリスクがある程度あった.従って,急性胆囊炎発症に際しては,Tokyo Guideline 18に準拠して早期に手術をするべきであったと思われた.

  • 關口 奈緒子, 池永 雅一, 加藤 亮, 家出 清継, 上田 正射, 津田 雄二郎, 中島 慎介, 太田 勝也, 松山 仁, 山田 晃正
    2020 年 45 巻 4 号 p. 384-391
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,女性.13年前に右腎細胞癌の既往がある.嘔気の精査目的に施行した腹部CTで膵腫瘤を指摘された.造影CTでは膵体尾部に早期濃染される多血性腫瘤を2箇所認めた(40mm/9mm).40mmの腫瘤内部は不均一で内部壊死が疑われた.MRIでは被膜様構造を有し,T1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈していた.他臓器転移を疑う所見は認めなかった.腎癌の既往があり画像所見から腎細胞癌膵転移が疑われた.年齢と術後のQOLを考慮し脾合併膵体尾部切除術を施行した.術後はISGPF Grade Aの膵液漏と残膵膵炎を併発したが,30日目に退院を許可した.病理所見では淡明細胞型腎細胞癌の膵転移と診断した.また術前画像で指摘されていた病変の他に2mm大の微小転移巣も有していた.腎癌の転移巣としては膵転移は稀である.今回腎細胞癌摘出後13年目に膵転移をきたした症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 藤田 翔平, 二渡 信江, 前原 淳治, 長尾 さやか, 榎本 俊行, 斉田 芳久
    2020 年 45 巻 4 号 p. 392-397
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は83歳女性.2年前から食事摂取時のつかえ感あり,検診の胸部レントゲン検査で異常影を指摘され紹介受診となった.CT検査で滑脱型の食道裂孔ヘルニアがあり,腹直筋左外縁に筋膜欠損部および皮下に脱出する脂肪組織を認めた.食道裂孔ヘルニア,Spigelianヘルニアの診断で腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術,噴門形成術(Toupet法),腹腔鏡下Spigelianヘルニア修復術を施行した.医学中央雑誌で食道裂孔ヘルニアとSpigelianヘルニアが併存した症例の報告はなく,同時に腹腔鏡下に修復したことからも,稀な症例であると考えた.

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