日本外科系連合学会誌
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原著
  • 峯田 修明, 遠藤 俊治, 東田 正陽, 窪田 寿子, 田中 宏典, 伊藤 嘉智, 岡田 敏正, 吉松 和彦, 藤原 由規, 上野 富雄
    2023 年 48 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    【背景】近年,薬剤包装容器(press-through-package,以下PTPと略記)誤飲による消化管異物の報告は増加し,診断に時間を費やした症例は重篤な合併症を引き起こすと報告されている.今回われわれは,過去13年間に経験したPTP誤飲症例の診断と治療や経過について若干の文献的考察を加え報告する.【方法】2010年~2022年で,25例(16%)がPTP誤飲であった.その25症例を後方視的に検討した.【結果】誤飲の原因は,肝性脳症による意識障害が1例,睡眠導入剤の影響が1例,注意力の低下が23例であった.発症から診断までの時間中央値(範囲)は4時間(1~36時間)で,診断根拠は,病歴のみが6例,単純X線検査が1例,CTが18例であった.治療は内視鏡的摘出が23例,その他が2例(自然排泄/吐き出し)で,全症例合併症なく経過した.【結論】当院において,PTP誤飲に対する早期診断が良好な経過につながったと考える.

症例報告
  • 船水 尚武, 小川 晃平, 浦岡 未央, 本庄 真彦, 田村 圭, 坂元 克考, 北澤 理子, 高田 泰次
    2023 年 48 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は76歳の女性で,検診の腹部超音波検査で後腹膜腫瘍を指摘され,前医を受診した.造影CTで膵頭部背側に5cm大の腫瘤を認め,精査加療目的で当科へ紹介となった.超音波内視鏡検査により下大静脈が原発と思われ,生検により,平滑筋肉腫の診断となった.下大静脈造影では同部位に欠損像を認め,両側の腎静脈は造影されなかった.しかし,右腎静脈への選択的カニュレーションは可能であった.術前に右腎摘,または右腎自家移植を含めた腫瘍摘出術を考慮したが,術中超音波検査で下大静脈前壁の腫瘍が右腎静脈内に突出しているだけであったことから右腎を温存,かつ下大静脈の半周性の切除により腫瘤を摘出できたため,下大静脈をポリテトラフルオロエチレンパッチで再建した.合併症なく術後13日目に退院となった.今回,われわれは稀な下大静脈原発平滑筋肉腫の1切除例を経験した.腎静脈分岐部の下大静脈腫瘍には術中超音波検査による腫瘍の位置,および腎静脈内への浸潤の有無を把握することが肝要であると思われた.

  • 伊藤 一樹, 桐林 孝治, 西牟田 浩伸, 萩原 令彦, 新妻 徹, 渡邉 学, 斉田 芳久
    2023 年 48 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    月経随伴性気胸の3例を経験した.症例1:46歳女性.1年前より月経時の右胸痛を認め,1カ月前に右気胸発症し保存的治療施行.今回,月経開始時の右気胸再発にて手術施行し,病理検査にて横隔膜に子宮内膜間質組織を認め月経随伴性気胸と診断した.症例2:41歳女性.1年前より計6回,月経開始数日後発症の右気胸に対して保存的治療施行.今回,7回目の気胸発症にて手術施行.病理検査にて子宮内膜組織は同定されず,臨床的に月経随伴性気胸と診断した.症例3:46歳女性.1年前に右気胸にて保存的治療施行.今回月経開始2日前発症の右気胸にて入院し,保存加療で改善認めず手術施行.病理検査にて横隔膜に子宮内膜間質組織を認め月経随伴性気胸と診断した.当院で経験した月経随伴性気胸の3例を文献的な考察を加えて報告する.

  • 兼定 弦, 野崎 功雄, 大澤 真那人, 羽藤 慎二, 高畑 浩之
    2023 年 48 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    胃憩室は他の消化管憩室と比較して稀である.今回,われわれは胃憩室と胸部食道癌の同切除症例を経験したので報告する.症例は53歳女性.咽頭痛とつかえ感を主訴に前医を受診し胸部食道癌と診断され,精査加療目的に当科に紹介された.精査の結果MtLt,2型,扁平上皮癌,cT3N2M0,cStage Ⅲ(規約第11版)と診断された.精査中に胃穹窿部後壁に直径約10cmの胃憩室も指摘された.術前化学療法としてcisplatin+5-FU療法を2コース施行後に胸腔鏡下食道亜全摘術,3領域リンパ節郭清を行った.腹部操作は開腹で行い,胃憩室が切除側に含まれるよう胃管を作製し後縦隔経路再建術を行った.病理組織学的検査で胃憩室は粘膜から粘膜下層までは認めたが固有筋層は認めず仮性憩室と診断された.術後に合併症は認めず,術後22日目に退院した.

  • 地主 皓一, 鈴木 陽三, 小田切 数基, 柳本 喜智, 竹山 廣志, 池永 雅一, 清水 潤三, 川瀬 朋乃, 今村 博司, 堂野 恵三
    2023 年 48 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,男性.14年前に胃癌に対して開腹幽門側胃切除術・D2郭清,Roux-en-Y再建を施行され,5年間無再発で終診となっていた.食欲不振と突然の嘔吐を主訴に当院の救急外来を受診され,CTで内ヘルニアと診断し解除術を行った.開腹時,挙上空腸が空腸間膜間隙に約20cm嵌頓していた.用手的に嵌頓を解除し,腸管血流障害のないことを確認した後に再発予防目的で空腸間膜間隙を非吸収糸で縫合閉鎖した.開腹幽門側胃切除Roux-en-Y再建後の内ヘルニアは比較的稀な病態で,空腸間隙に挙上空腸が嵌頓する例はさらに稀である.Roux-en-Y再建時は挙上空腸が過長とならないように留意し,Petersenʼs defectおよび空腸間膜間隙を非吸収糸で確実に閉鎖することが重要であると考えられた.

  • 内田 真太郎, 岡田 拓久, 宗田 真, 小川 博臣, 調 憲, 佐伯 浩司
    2023 年 48 巻 2 号 p. 122-129
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性.食道アカラシア術後で経過観察中であった.フォローアップの採血で貧血を認めたため消化管精査を行い,回腸末端に10mm大の粘膜下腫瘍を認めた.生検結果は小腸神経内分泌腫瘍(NET)G1であった.画像上はリンパ節転移を認めず,腹腔鏡下回盲部切除術D3郭清を施行し,術後7日目に退院となった.術後病理診断でリンパ節転移を認め,NET G1,T1N1M0 Stage Ⅲであった.小腸NETは微小な病変であってもリンパ節転移や遠隔転移をきたす頻度が高いため,腫瘍径に関わらずリンパ節郭清を伴う外科手術が必要である.今回,10mm大の小腸NETに対してD3郭清を伴う腹腔鏡手術を施行し,術後病理診断でリンパ節転移を認めた1例を経験したため,報告する.

  • 浦野 尚美, 土田 泰昭, 宮本 誠
    2023 年 48 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    虫垂杯細胞型カルチノイド(goblet cell carcinoid,以下GCC)は虫垂に発生する稀な腫瘍である.今回,虫垂GCCの2症例を経験したので報告する.症例1は,88歳女性.右下腹部腫瘤触知とるい痩を主訴に紹介され,内視鏡検査の生検でカルチノイドと診断された.本人は手術を希望されず,超高齢でもあり,放射線療法の方針となった.腫瘍は縮小し,症状の改善もみられ,約2年間は良好な生活の質が保てた.その後腸閉塞症状で緊急入院となり,回盲部切除術・D3郭清を行い,虫垂杯細胞型カルチノイド由来腺癌と診断された,術後5カ月目に局所再発し,13カ月目に原病死された.症例2は57歳男性.急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術後に虫垂GCCと診断された.2期的に腹腔鏡下回盲部切除術・D3郭清を施行し,術後3年8カ月の現在無再発生存中である.

  • 青木 茂雄, 酒向 晃弘, 荒川 敬一, 丸山 岳人, 三島 英行
    2023 年 48 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は59歳女性.便柱狭小を主訴に受診した.下部消化管内視鏡検査にて下行結腸癌を認め,腹部CTで肝S1,S2,S4に計4個の肝転移を認めた.下行結腸癌の多発肝転移と診断し,根治切除を施行した.(SS,N1,P0,H1,fStage Ⅳ)補助療法として,XELOXを行っていたが,7コース終了した時点で肝障害があり以降中止した.術後1年4カ月の胸部CTで下縦隔リンパ節腫大を認め,PET/CTで集積増加を認めた.他に再発を疑う所見がないため,摘出術を施行した.病理結果は大腸癌のリンパ節転移であった.大動脈周囲リンパ節に転移を疑う所見を認めず,肝転移巣からの孤立性転移と考えられた.本人の希望で補助療法は施行せず,再発手術から8年間無再発生存中である.大腸癌肝転移が孤立性に縦隔リンパ節へ転移することは稀であり,明確な治療方針は示されていない.本症例の経験より,外科的切除が予後延長に寄与する可能性がある.

  • 松井 雄基, 小坂 久, 松島 英之, 石崎 守彦, 松井 康輔, 水田 昇, 長尾 泰孝, 狩谷 秀治, 関本 貢嗣, 海堀 昌樹
    2023 年 48 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    肝腎機能低下を認め,大量の難治性腹水を生じるarterioportal shunt(動脈門脈シャント:以下,A-P shunt)を伴う超巨大肝血管腫に対し,Transcatheter Arterial Embolization(肝動脈塞栓療法:以下,TAE)を3回にわたり施行して,A-P shuntを改善させることにより門脈圧低下,肝・腎機能を改善させ,腹腔鏡下肝切除を行い治癒に至った症例を経験した.症例は79歳女性,心窩部痛,腹部膨満を主訴に近医受診され,自己免疫性肝炎と肝外側区域にA-P shuntを伴う超巨大肝血管腫の診断を受けた.利尿剤内服に加え,腹水穿刺を施行するも腹水コントロール不良であり,当院へ紹介受診となった.TAEを3回施行した後,A-P shuntの血流量が減少し,肝・腎機能が改善し腹水も消失した.その後,腹腔鏡下肝外側区域切除を行い,術後10日目に,術後合併症なく退院した.術後15カ月後の観察にて,腹水の再燃や血管腫の再発,また肝腎機能の低下なく経過している.

  • 斉藤 剛太, 片桐 敏雄, 吉野 めぐみ, 大野 浩平, 山田 英樹, 武智 晶彦
    2023 年 48 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は70歳の男性.転倒から約1カ月後に腹部症状が増悪し救急搬送された.腹部造影CTにて肝右葉の大部分を占めるような巨大肝囊胞と肝周囲に腹水貯留を認めた.腹膜刺激症状を呈していたことから,破裂巨大肝囊胞による腹膜炎の診断のもと,緊急腹腔鏡下肝囊胞天蓋切除術を施行した.術後経過は良好であり,術後8日目に退院した.緊急手術が必要となる破裂巨大肝囊胞においても,通常の巨大肝囊胞に対する腹腔鏡下天蓋切除術と同様に,安全で低侵襲な術式選択が可能であると考えられた.

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