日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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ISSN-L : 0385-7883
38 巻, 6 号
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原著
  • 高橋 祐輔, 小田切 範晃, 岸本 浩史, 笹原 孝太郎, 吉福 清二郎, 大森 隼人
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1141-1146
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    【目的】外傷性鈍的小腸損傷では,受傷直後には症状が表面化せず,腹部CT検査でも明らかな異常を呈さないことがある.当院で経験した外傷性鈍的小腸損傷症例の臨床的特徴について検討したので報告する.【対象】2005年1月1日から2012年8月31日までに当科で手術を施行した外傷性鈍的小腸損傷13例.【結果】受傷時の平均年齢は61.8歳で全例が男性であった.交通外傷が8例と,最も多い受傷機転であった.13例中12例に初診時の腹部CT検査にて腹水を認めた.初診時の腹部CT検査で腹腔内遊離ガス像(free air)を指摘できなかった症例でも,12時間以内の再検査で全例にfree airが認められた.【結語】腹部鈍的外傷で腹水を認める症例では腸管損傷の可能性を念頭に置くことが重要である.初診時に消化管穿孔の確定診断が得られない症例でも厳重に経過観察し,症状の変化があればCT検査を再検するべきである.
  • Sho Sawazaki, Manabu Shiozawa, Yusuke Katayama, Koji Numata, Masakatsu ...
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1147-1151
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    Introduction: The use of adjuvant chemotherapy in stage Ⅱ colorectal cancer patients remains controversial. However, patients with specific clinicopathological features are thought to have a high risk for recurrence. The aim of this study was to identify the subgroup of patients at the greatest risk by investigating the clinicopathological features associated with a poor survival in patients with stageⅡ disease.Patients & Methods: A total of 414 patients with stageⅡ colorectal cancer who underwent curative resection between January 1990 and September 2007 at Kanagawa Cancer Center were enrolled. The clinicopathological data of the patients were retrospectively evaluated.
    Results: The median follow-up period was 62.5 months. The 5-year disease-free survival rate was 89.6% in the study group as a whole. A univariate analysis of 5-year disease-free survival identified three factors: lymphatic invasion (p=0.001), the preoperative serum CEA level (>5 ng/ml) (p=0.005) and the CA19-9 level (>37 U/ml) (p=0.006). A multivariate analysis of 5-year disease-free survival identified one independent factor: lymphatic invasion (HR: 1.89; 95% CI: 1.02-3.50; p=0.044).Conclusions: Patients with stage Ⅱ colorectal cancer who exhibit lymphatic invasion are at a high risk for recurrence.
臨床経験
  • 後藤 裕信, 谷澤 豊, 三木 友一朗, 幕内 梨恵, 杉沢 徳彦, 徳永 正則, 坂東 悦郎, 川村 泰一, 絹笠 祐介, 寺島 雅典
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1152-1158
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    胃癌・大腸癌重複症例に対する一期的腹腔鏡下切除術の安全性並びに至適術式を検索することを目的に,腹腔鏡下胃大腸同時切除例の術式,短期成績に関して検討した.
    胃癌・大腸癌の同時性重複癌に対し,一期的に腹腔鏡下手術を施行した6例を対象とした.
    施行された術式は幽門側胃切除術3例,幽門保存胃切除術3例,S状結腸切除術3例,右結腸切除術1例,高位前方切除術1例,低位前方切除術1例であった.胃癌と上行結腸癌の重複例では,ポート,小開腹創の追加を要しなかったが,胃癌とS状結腸癌・直腸癌の重複例では,腸管の挙上性に応じて,下腹部にポート,小開腹創を追加した.手術時間の中央値は382分,出血量の中央値は79mlであった.Clavien-Dindo分類でGrade Ⅱ以上の術後合併症は認めず,術後在院日数の中央値は8日であった.
    胃癌・大腸癌の同時性重複癌に対して一期的な腹腔鏡下切除術は,症例毎にポートや小開腹創の位置を工夫することによって安全に施行可能であった.
  • 村上 耕一郎, 清水 智治, 園田 寛道, 目片 英治, 赤堀 浩也, 山口 剛, 森 毅, 仲 成幸, 村田 聡, 谷 徹
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1159-1165
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌周術期におけるエノキサパリンを用いた静脈血栓塞栓症予防の導入につき安全性について検討する.
    方法:大腸癌待機手術症例でエノキサパリン投与40例(抗凝固群)と非投与40例(対照群)を後方視的に各種臨床病理学因子を検討した.対照群は硬膜外麻酔カテーテル(Epi)と経静脈的自己調節鎮痛法(IV-PCA)を併用し,抗凝固群では術翌日夕方にEpiを抜去しIV-PCA単独で管理し術後2日目朝よりエノキサパリンを投与した.
    結果:2群間の背景因子,経口摂取開始や離床までの日数,在院日数など術後経過に有意差を認めず,静脈血栓塞栓症発症はなく,抗凝固剤投与に伴う肝機能障害や出血性有害事象などは認めなかった.
    結語:大腸癌周術期においてエノキサパリンによる静脈血栓塞栓症予防を安全に導入できた.エノキサパリン併用時の疼痛管理法としてEpiを早期抜去しIV-PCAを用いることも有用である可能性が示唆された.
  • 榎本 俊行, 斉田 芳久, 高林 一浩, 大辻 絢子, 桐林 孝治, 浅井 浩司, 中村 陽一, 渡邉 学, 長尾 二郎, 草地 信也
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1166-1169
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,Surgical Site Infection(以下SSI)発生率に関して,術野消毒薬としてクロルヘキシジンアルコールのポピドンヨード液への優位性が報告された.今回,術野における1%クロルヘキシジンアルコールの安全性などを検証したので報告する.対象は待機手術を受ける患者で,乾燥時間および執刀までの時間,有害事象,SSI発生率について検討した.症例は117例,男性50例女性67例,平均62歳であった.対象臓器は大腸29,乳腺23,胆囊21,虫垂13,鼠径ヘルニア12,肺11,胃5,その他3例であった.乾燥するまでの時間は平均131±105秒であった.また執刀までの時間は平均12±5分であった.観察内での合併症は,接触性皮膚炎が1例のみであった.SSIは創感染のみで大腸癌,膵腫瘍,肺腫瘍の各々1例であった.スタッフからも好評であり,1%クロルヘキシジンアルコールは安全に使用可能であった.
症例報告
  • 柏木 伸一郎, 浅野 有香, 野田 諭, 高島 勉, 小野田 尚佳, 平川 弘聖
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1170-1173
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    乳腺紡錘細胞癌は稀な特殊型浸潤癌の亜型であり,病理学的な鑑別診断が重要となる.今回,われわれは腺筋上皮腫の術前診断にて手術を行い,最終診断では乳腺紡錘細胞癌との診断に至った1例を経験した.68歳の女性が左乳房にしこりを自覚し近医を受診し,当院紹介となった.乳腺超音波検査にて左乳腺AC領域に約2.5cm大の低エコー腫瘤を認め,同部位の針生検にて腺筋上皮腫が強く疑われた.悪性に準じた手術が望ましいために,乳腺部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行し,最終病理診断にて乳腺紡錘細胞癌と診断された.紡錘細胞癌の診断には,肉芽腫様の紡錘形細胞が上皮性であることを証明しなくてはならない.針生検による少量の採取組織から正確な診断をつけることは困難だと考えられる.腺筋上皮腫の診断においては針生検だけでなく,摘出生検にて腫瘤全体の病理学的診断を行うことが望まれる.
  • Miki Miyazawa, Takeshi Shimakawa, Shinichi Asaka, Atsuko Usuda, Kentar ...
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1174-1179
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    A 78-year-old female patient on anticoagulant therapy for paroxysmal atrial fibrillation and ventricular septal defect received emergency treatment at our hospital for the chief complaint of pain from the pharynx to the upper epigastrium after taking a bath. She was directly admitted on that day. Following admission, the patient vomited a small amount of blood and upper gastrointestinal endoscopy was performed. A giant hematoma covered by esophageal epithelium was observed extending from the esophageal orifice to directly above the esophagogastric junction, and a diagnosis of giant esophageal submucosal hematoma was made. The patient was given conservative treatment consisting of a nil-by-mouth regime, total parenteral nutrition (TPN) management and administration of a proton pump inhibitor (PPI) and vitamin K during which no hemorrhage was observed. After verifying the disappearance of the hematoma, the patient began eating again and was discharged without complications.
  • Takeshi Shimakawa, Shinichi Asaka, Atsuko Usuda, Kentaro Yamaguchi, Sh ...
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1180-1185
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    Cases of so-called “upside down stomach”, or volvulus of the stomach prolapsing into the mediastinum, are rare. We encountered a patient of advanced age who developed a large esophageal hiatus hernia with an upside down stomach, which was surgically treated. An 89-year-old female patient had repeated vomiting and hematemesis requiring emergency hospital admission. Upper gastrointestinal contrast study revealed severe esophageal hiatus hernia and gastric volvulus resulting in the stomach turning upside down. Computed tomography showed prolapse of the large portion of the stomach into the mediastinum. Because the patient had undergone epigastric laparotomy, surgery was initiated with opening the upper abdomen followed by returning the stomach into the peritoneal cavity. The hiatus hernia was sutured, and floppy Nissen fundoplication was performed as well as stomach fixation under the diaphragm. The patientʼs food intake was favorable postoperatively, and she was discharged.
  • 出口 幸一, 西川 和宏, 岩瀬 和裕, 川田 純司, 吉田 洋, 野村 昌哉, 玉川 浩司, 松田 宙, 出口 貴司, 田中 康博
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1186-1190
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,男性.2006年に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行された.術後補助療法としてUFTを1年間施行した.2009年7月に左副腎転移,傍大動脈リンパ節転移が判明し,化学療法を開始し一旦は腫瘍縮小を認めた.しかし徐々に腫瘍が進行し2011年7月には右副腎転移が出現した.2012年1月に誤嚥性肺炎を発症し入院した.入院後倦怠感悪化,食欲不振,難治性低Na血症,高K血症,好酸球増多症を認めた.当初癌性悪液質による症状を疑ったが,副腎不全も疑われたため,迅速ACTH負荷試験を施行し,Addison病と診断した.hydrocortisonの投与を開始したところ,症状の著明な改善を認めた.癌末期に副腎不全が発症した場合,症状が癌性悪液質によるものと酷似するため鑑別が困難である.両側副腎転移を有する担癌症例では,副腎不全を念頭におき,積極的に内分泌的検索を行うことが重要である.
  • 木暮 憲道, 芳賀 紀裕, 桑原 公亀, 石畝 亨, 傍島 潤, 隈元 謙介, 熊谷 洋一, 馬場 裕之, 石橋 敬一郎, 石田 秀行
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1191-1195
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.胃癌に対して胃全摘・Roux-en-Y再建術を施行した.Y脚吻合はcircular stapler(21mm)を用いて側々吻合で行った.診断はU,Ant,Type 0-Ⅱc,pT1b(SM)N0 H0 P0 M0,Stage ⅠAであった.再発や腸閉塞などなく経過したが,術後2年4カ月,腹痛出現し当院救急外来受診した.腹部CTにて,Y脚吻合部の狭窄による輸入脚症候群の診断となり,同日,緊急手術を施行した.開腹所見はY脚吻合部までの輸入脚の拡張があり,吻合部近傍を切開すると,吻合部に膜様狭窄を認め,吻合部形成術を施行した.Y脚の癒着や内ヘルニアによる輸入脚閉塞の報告は多いが,器械吻合によるY脚吻合部狭窄の報告は少ない.Circular staplerによる器械吻合は簡便で有用な方法だが,輸入脚の閉塞をきたすことがあることを念頭に置く必要がある.
  • 中川 智彦
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1196-1201
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で,16年前に胃癌による幽門側胃切除術の既往歴を有していた.嘔吐を伴う上腹部痛が突然に生じ,近医で腸閉塞を疑われて当科を紹介された.腹部CT検査で胃内に層状構造を呈した腫瘤を,上部消化管内視鏡検査で胃内に蛇腹状の腸管を認め,空腸残胃重積症と診断した.内視鏡的に整復が困難なため手術を施行した.手術所見では横行結腸後経路,BillrothⅡ法で再建されていた.また輸出脚空腸が胃空腸吻合部を介して胃内に嵌入し,腸重積をきたしていた.約30cmにわたり空腸が重積していたが,用手整復にて容易に整復できた.重積していた腸管に腫瘤は触知せず,血流状態も良好であった.空腸残胃重積症は胃切除後の合併症としては稀であるが,術後に腸閉塞症状を示した場合には,本症を念頭に置いて早期診断や早期治療を行う必要がある.
  • 宮内 竜臣, 勝部 隆男, 木下 淳, 臼田 敦子, 山口 健太郎, 浅香 晋一, 吉松 和彦, 塩澤 俊一, 島川 武, 成高 義彦
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1202-1206
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    胃癌術後の腹膜播種による腸管閉塞に対し,経皮内視鏡的胃瘻腸瘻造設術(PEG-J)を施行し,QOLの改善をみた1例を経験したので報告する.
    症例は,57歳,女性.2010年11月,Stage Ⅳ[T4b(SI),M1(OVA),P1,CY1]の進行胃癌に対して,幽門側胃切除(Roux en Y法再建)+両側Krukenberg腫瘍摘出術を施行した.術後,外来にて全身化学療法を施行していたが,2011年4月,腹水を伴った腸管閉塞の診断にて緊急入院となった.イレウス管による減圧で小腸の拡張は改善したが,残胃の著明な拡張を認めたため,PEG-J施行の方針とした.腹腔穿刺による腹水除去後,PEGを施行し,その後,PEG-Jカテーテルへ変換した.小腸と残胃の減圧に成功し,症状の改善および疼痛のコントロールを得られた.患者,家族の希望があり,退院し,在宅生活となった.
    胃癌術後の腹膜播種による腸管閉塞に対する治療は,終末期医療のひとつであるが,PEG-Jカテーテルによる減圧は,治療とQOLのバランスに優れた有用な手技と考えられる.
  • 森 隆太郎, 上田 倫夫, 國崎 主税, 遠藤 格
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1207-1213
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性.健診で十二指腸壁の変形と膵頭部の腫瘤を指摘され,精査加療目的で当院を紹介された.腹部造影CT検査では膵頭部,十二指腸下行脚,水平脚に囲まれる領域に径4cmの腫瘤を認め,上部消化管内視鏡検査では十二指腸乳頭部肛門側に粘膜下腫瘍として認めた.生検で紡錘形細胞の集塊を認め,免疫染色でc-kit(+)であり十二指腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.局所切除は困難と判断し,小開腹下に腹腔鏡補助下膵頭十二指腸切除術(LAPD)を施行しChild変法で再建を行った.膵,胆管切離はともにLigaSure Advance®を用い,手術時間507分,出血量565mlだった.LAPDは鏡視下手術に熟練した術者ならば安全に施行可能で通常の開腹下手術と同様の手技で再建が可能である.今後,さらなる症例の蓄積と手術手技,器具の改良が必要である.
  • 豊岡 晃輔, 塩路 康信
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1214-1217
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    80歳男性.持続する腹痛と下痢を主訴に受診し,精査加療目的に入院した.注腸検査,下部消化管内視鏡検査では直腸の瘻孔から通じる骨盤膿瘍を認めた.注腸後腹部CT検査では骨盤の膿瘍形成,および小腸への造影剤の流入を認めた.骨盤膿瘍,小腸直腸瘻の診断で手術を施行した.回腸壁に腫瘍性変化を認め,穿孔し膿瘍形成したものが直腸に瘻孔形成していた.病理組織学的に小腸原発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断した.術後経過は良好で退院したが,病状は急速に進行し,術後5カ月で死亡した.
  • 西口 遼平, 松尾 亮太, 宮澤 美季, 河野 鉄平, 宮木 陽, 大谷 泰介, 熊沢 健一, 成高 義彦
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1218-1223
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.上腹部痛を認めたため近医を受診した.胃薬を処方されたが症状が増悪したため3日後に当院消化器科を受診した.来院時,発熱,右下腹部の圧痛,および反跳痛を認めたものの筋性防御は認めなかった.血液検査所見では炎症反応の上昇を認めた.腹部CT検査では回腸末端部と思われる部位の著しい浮腫を認め,回腸炎と診断した.保存的治療にて経過観察していたが,翌日に腹膜刺激症状を伴う腹痛の増強が認められたため,再度腹部造影CT検査を施行した.回腸末端に穿孔部と思われる壁の欠損部と連続するairを含んだ膿瘍腔を認めた.回腸穿孔と診断し,回盲部切除術を施行した.摘出標本では回盲弁から約3cm口側の回腸に腸間膜内への穿通を認め,病理組織学的所見とあわせ回腸憩室穿通による腸間膜膿瘍と診断した.術後経過は良好で術後第9病日に軽快退院した.
  • 呉林 秀崇, 森川 充洋, 澤井 利次, 小練 研司, 村上 真, 廣野 靖夫, 五井 孝憲, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1224-1228
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例1は32歳,女性.脳性麻痺で前医入院中であった.腹部膨満を主訴に当院を受診した.腹部X線検査,multidetector row computed tomography(MDCT)にて盲腸軸捻転症と診断した.内視鏡による整復術を行ったが,翌日再発を認めたために,腹腔鏡補助下右結腸切除術を施行した.術中所見では,卵巣と結腸間膜が癒着し,その部位を軸に遊離盲腸が捻転していた.症例2は90歳,女性.腹痛と下腹部膨隆を主訴に,当院を紹介受診した.来院時,腹膜刺激徴候を認め,MDCTと併せ盲腸軸捻転症による絞扼性イレウスと診断し,緊急開腹手術を行った.術中所見では,移動盲腸が捻転し,拡張した盲腸に多発性の縦走漿膜損傷を認めた.捻転解除後,右結腸切除術を施行した.盲腸軸捻転症は結腸捻転症の約5.4%と比較的稀な疾患であり,状況に応じて腹腔鏡手術を含めた治療選択が必要と考えられた.
  • 大橋 裕介, 中鉢 誠司, 高橋 宏和, 名久井 雅樹
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1229-1233
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    十二指腸球部粘膜下腫瘍(消化管間質腫瘍:GIST)に対し幽門側胃切除術(後結腸Billroth Ⅱ法再建)を行った.術後,胃空腸吻合部の通過障害により,長期間におよび経口摂取が不可能であった.癒着剝離術,吻合部に対する内視鏡的バルーン拡張,エリスロマイシン投与,漢方薬投与などがいずれも無効であったが,ステロイドの投与にて著明に改善し,経口摂取が可能となった1例を経験した.吻合部狭窄は,横行結腸間膜の腸間膜脂肪織炎に起因したと推測された.
  • 石橋 敬一郎, 幡野 哲, 岡田 典倫, 隈元 謙介, 松澤 岳晃, 石畝 亨, 熊谷 洋一, 馬場 裕之, 芳賀 紀裕, 石田 秀行
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1234-1239
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    若年女性の家族性大腸腺腫症に対する予防的大腸切除術では,本疾患に関連した心理状態を考慮して整容性の優れた術式を選択することが重要である.このような患者には,近年急速に普及している単孔式腹腔鏡下手術の適応と考えられるが,その報告例は少ない.今回,若年女性の非密生型大腸腺腫症に対し,当科で独自に考案した単孔式腹腔鏡下結腸全摘・回腸直腸吻合術を行った.症例は25歳,女性の非密生型家族性大腸腺腫症患者.臍縁に沿って3/4周の弧状切開を置き,5mm長さの放射状切開を3カ所に追加した.グローブ法による単孔式腹腔鏡下結腸全摘・回腸直腸吻合術を施行した.皮膚切開部はトリミングの後,縫合閉鎖した.手術時間360分,出血量は少量であった.術後合併症なく第10病日に退院した.われわれの考案した単孔式腹腔鏡下結腸全摘・回腸直腸吻合術は,安全に施行可能で整容にも優れ,若年女性のFAP患者には受け入れ安い術式と考えられる.
  • 鈴木 俊亮, 小川 匡市, 大熊 誠尚, 阿南 匡, 衛藤 謙, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1240-1244
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは左乳癌術後経過中,転移精査のために施行したPET-CTにより横行結腸に早期大腸癌を認め,内視鏡下にポリペクトミーした1例を経験したので報告する.症例は67歳,女性.2006年,61歳時に左乳癌に対して左乳腺部分切除,腋窩リンパ節郭清を施行した.術後病理はStage Ⅰ,ER(-),PgR0(-),Her2(-)であり,術後補助化学療法を施行したが,経過中,右腸骨転移,右仙腸関節転移,左肺上葉転移を認めた.2011年12月の腹部CTで膵周囲の脂肪織濃度上昇,十二指腸壁肥厚を認め,EUSにて膵頭部に造影領域を認めた.新たな転移が示唆されPET-CTを施行したところ同部位に集積なく,横行結腸部にFDG集積像を認めた.2012年2月,CF施行し横行結腸右側に20mmのIpポリープが認められ,同年5月,ポリペクトミーを施行,病理結果は,Tubular adenocarcinoma,well-moderately differentiated type in tubulovillous adenoma,深達度M,脈管侵襲ly0,v0,断端はpHM0/pVM0であった.本症例のような大腸早期癌に対してPET-CTを診断に用いた報告は稀であるため,文献的考察を加え報告する.
  • 中原 健太, 遠藤 俊吾, 高柳 大輔, 竹原 雄介, 大本 智勝, 向井 俊平, 日高 英二, 石田 文生, 田中 淳一, 工藤 進英
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1245-1250
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    大腸癌異時性卵巣転移は比較的稀で,予後は不良である.今回,当科で経験した大腸癌異時性卵巣転移の4例を報告し,最近12年間の本邦報告例を加えて,臨床病理学的特徴と診断,治療について検討した.4例とも術前の腫瘍マーカーを含めた血液生化学検査や画像所見,さらには術中迅速組織診でも原発性卵巣癌との鑑別は困難で,4例中3例で確定診断のために切除標本のCytokeratin 7,Cytokeratin 20による免疫組織学的検査が必要であった.原発巣の病理組織学的因子では全例で漿膜浸潤を認め,3例は治癒切除後の再発であった.卵巣転移の転移経路をその予後からみると,卵巣転移切除後に高頻度に腹膜転移をきたすことより,異時性卵巣転移の多くは腹膜再発の部分所見とも考えられた.予後は不良であるが,原発性卵巣癌との鑑別が困難であること,腫瘍の増大による腹部症状をきたすことから,外科的切除は容認されるものと考える.
  • Youhei Kimura, Takanori Goi, Akio Yamaguchi
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1251-1254
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    A rare case of rectal leiomyosarcoma originating in the muscularis mucosae is reported. A 72-year-old man was admitted to the urology department for a tumor of the right epididymis. A pedunculated tumor was then found in the rectum on abdominal computed tomography. After surgery for the right epididymal tumor, rectal amputation was performed for the rectal tumor. Histopathologically, the rectal tumor was diagnosed as early stage leiomyosarcoma that arose from the muscularis mucosae. Rectal leiomyosarcoma is a relatively unusual rectal tumor. In addition, most rectal leiomyosarcomas arise from the external muscular layer or the muscularis propria. Rectal leiomyosarcoma originating in the muscularis mucosae is extremely rare.
  • 廣田 昌紀, 長谷川 順一, 三方 彰喜, 清水 潤三, 池永 雅一, 三輪 秀明, 根津 理一郎
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1255-1259
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は88歳の男性で,30歳頃より繰り返す痔瘻の再燃にて当科を受診した.二次口よりムチン様排液を認め,腰椎麻酔下生検にて痔瘻癌と診断した.骨盤T2強調MRIにて高信号の多房性腫瘍が左坐骨直腸窩に限局しており,リンパ節転移は認めず腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.最終診断はmuc,A,ly0,v0,pN0,fStage Ⅱで,術後3年再発を認めていない.MRIで腫瘍進展範囲を評価することで,腹腔鏡下直腸切断術で治癒切除可能であった.
  • 小澤 修太郎, 狩野 契, 藤内 伸子, 鋤柄 稔
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1260-1264
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.15年前に下部進行直腸癌の診断にて腹会陰式直腸切断術を受けている.以降,人工肛門の自己管理を継続していた.2012年10月,便秘のため人工肛門周囲を指で圧迫し摘便を施行.その後,人工肛門周囲痛が出現し近医受診.人工肛門周囲皮膚炎の診断にて当院紹介となる.初診時,人工肛門周囲の発赤腫脹著明.圧迫にて人工肛門周囲より膿の排出を認めた.人工肛門部の結腸穿孔に伴う腹壁膿瘍と診断.入院後,横行結腸による双孔式人工肛門を造設.その後,人工肛門周囲の炎症が改善し退院.2013年2月,横行結腸人工肛門閉鎖術およびS状結腸人工肛門再造設を施行した.自己管理中の人工肛門損傷は稀で本邦では3例の報告例のみである.摘便操作に伴う人工肛門損傷のメカニズムは不明である.自験例では傍ストーマヘルニアが存在していたため,人工肛門の腹壁貫通部分の組織が弱く,用手圧迫により同部結腸に圧が加わり穿孔したものと思われた.
  • 鈴村 和大, 麻野 泰包, 黒田 暢一, 飯室 勇二, 平野 公通, 岡田 敏弘, 鳥井 郁子, 藤元 治朗
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1265-1269
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で,全身倦怠感にて近医受診.精査にて胆囊底部から肝内にかけての腫瘍性病変を認めたため,精査加療目的で当科入院となった.腫瘍マーカーはCA19-9の上昇を認め,CT検査では胆囊底部から肝内側区域,前区域にかけて存在する腫瘍性病変を認めた.FDG-PET検査では腫瘍部にFDGの集積(standard uptake value:SUVmax早期像6.96,後期像9.35)を認めた.以上の所見より肝浸潤を伴う胆囊癌と診断し,肝左3区域切除術+胆囊摘出術+リンパ節廓清を施行した.病理組織学的検査では低分化型扁平上皮癌であった.術後第36病日に退院となったが,その後残肝再発をきたし術後4カ月で死亡した.稀な疾患である胆囊扁平上皮癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 大島 祐二, 小池 直人, 河上 牧夫
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1270-1274
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    膵体尾部の良性腫瘍や低悪性度腫瘍に対しては近年では脾温存手術が選択される症例が増えている.脾臓摘出によって脾摘後敗血症や血小板増加に伴う血栓症の発症のリスクが高くなることが知られているからである.今回われわれは膵体部の囊胞性腫瘤に対してHALSを用いた脾温存膵体尾部切除術を行った症例を経験したためここに報告する.症例は67歳女性.2008年に膵体部の囊胞性腫瘤を指摘され,その後増大傾向があるため手術を希望され当院受診された.腫瘍性病変が否定しえず,HALSを用いた脾温存膵体尾部切除術が行われた.術後経過は良好であり,第18病日に退院となった.HALSを用いた本手術は低侵襲で有用な治療法と思われた.
  • 湯川 寛夫, 利野 靖, 玉川 洋, 佐藤 勉, 山本 直人, 山本 健嗣, 長谷川 慎一, 大島 貴, 吉川 貴己, 森永 聡一郎, 益田 ...
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1275-1280
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    傍神経節腫(paraganglioma)は発生学的には副腎髄質と同じ神経冠(neural crest)に由来し,副腎原発のものを褐色細胞腫,副腎外原発のものを傍神経節腫と総称されている.後腹膜に原発する傍神経節腫は稀な腫瘍であり,後腹膜腫瘍の1.8%を占める.そのうち悪性の頻度は他の部位の傍神経節腫に比べ後腹膜原発では高く29~50%である.
    症例は42歳男性.2009年5月他前医泌尿器科で後腹膜腫瘍切除,左腎・副腎,脾臓合併切除を受け,病理検査で傍神経節腫と診断された.2010年4月胸骨剣状突起部再発に対し同院形成外科で切除術を施行.2010年6月剣状突起部再々発をきたし腹膜,胸膜,肋骨,横隔膜に浸潤が疑われ,同月当院受診.2010年8月形成外科と合同で胸壁腫瘤摘出,胸骨,肋軟骨,肝臓,横隔膜合併切除のうえ左大腿筋膜を採取し胸腹壁を再建した.2012年4月CT,5月PETで肝左葉外側区域(S3)に肝転移を認めた.前回手術で再建した胸腹壁を温存するため,腹腔鏡下での切除を施行した.臍部カメラポート,左右上/中腹部の計5ポートで施行した.肝左葉外側区域の前面は再建した腹壁に癒着しており,気腹とともに腹側に挙上された.腫瘍は肝S3被膜面に一部露出しており,術中USでマージンを設定しマイクロウェーブ凝固し,肝切離をハーモニックスカルペルで行った.術後経過は順調で術後9日目に退院となった.
    悪性傍神経節腫は稀な疾患であり,検索しえた限りでは同腫瘍の肝転移に腹腔鏡下切除を行った報告は確認できず,文献的考察を加え報告する.
  • 呉林 秀崇, 小練 研司, 五井 孝憲, 山口 明夫
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1281-1285
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性で,検診の腹部超音波検査で腹部腫瘤を指摘され,当院を受診した.腹部computed tomography(CT)で右後腹膜に隔壁を有する7.0cm大の囊胞性病変を認め,一部隔壁に石灰化所見を認めた.Macnetic resonance imaging(MRI)では内部に粘液を有した囊胞性病変として描出され,周囲組織への浸潤や充実性成分を認めないことから,後腹膜原発粘液性囊胞腺腫と診断し,後腹膜腫瘤摘出術を行った.腫瘍は後腹膜の脂肪織内に孤立性に存在し,被膜損傷なく切除を行いえた.病理組織学的検査では卵巣の囊胞腺腫に類似しており,悪性所見は認めず,後腹膜原発粘液性囊胞腺腫と診断した.後腹膜原発腫瘍は稀な疾患であり,良悪性の鑑別も含め術前診断には難渋することが多い.今回われわれは術前診断しえた後腹膜原発粘液性囊胞腺腫の1例を経験したため若干の文献的考察を含めて報告する.
  • Tomoichiro Hirosawa, Michio Itabashi, Mamiko Ubukata, Shigetomo Suzuki ...
    2013 年 38 巻 6 号 p. 1286-1290
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    A 65-year-old male. One year following abdominoperineal rectal resection due to rectal cancer in 2010, parastomal hernia was observed and laparoscopic parastomal hernioplasty was carried out by the sugarbaker method using dual mesh two years postoperatively. Because swelling was observed around the stoma two months following the repair similarly as in the preoperational state and the small intestine was found to have penetrated into the hernia orifice upon CT scan, we made a diagnosis of recurrence of the hernia and carried out surgery once again. Due to this recurrence, surgery was carried out laparotomically and it was found that the mesh used for repairing outward from the head side of the soma was everted, with the hernia orifice observed at the same site. Because the mesh showed strong adhesion, the sandwich method, wherein the keyhole method is used in combination with the sugarbaker method, was carried out for repair with mesh. It has been reported that the recurrence of laparoscopic repair is often observed outside the stoma and thus it is believed that it is necessary to pay special attention to fixing the mesh and especially reinforcing it on the outside.
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