日本臨床外科医学会雑誌
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54 巻, 3 号
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  • 岩垣 博巳, 日伝 晶夫, 木村 臣一, 野中 泰幸, 根津 真司, 折田 薫三, 米山 勝, 万代 隆彦, 阿賀 創, 藤井 和子, 堺 ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 553-558
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ビフィズス菌増殖因子である難消化性糖質lactosucroseを大腸疾患患者に対して,術前連続一週間経口投与し,糞便性状 (pH, 有機酸,腸内細菌叢)の変化,並びに術前・術後の血中エンドトキシン・アンモニア値を非投与群と比較検討した.その結果, lactosucrose投与群において,糞便pHは低下,有機酸は増加傾向にあった.また腸内腐敗産物産生菌として知られているBacteroidaceaeで代表されるグラム陰性桿菌の菌数並びに占有率の減少は,非投与群と比較して有意であった.このような, lactosucrose投与による術前の腸内環境改善の結果は,術前の血中エンドトキシン・アンモニア値の低下,術後の血中エンドトキシン値の上昇抑制と術前レベルへの速やかな回復として反映された.
  • 田中 規文, 小林 哲郎, 檜垣 直純, 宮内 啓輔, 芝 英一, 森 武貞, 真下 一彦, 藤田 典彦, 高井 新一郎, 松塚 文夫
    1993 年 54 巻 3 号 p. 559-563
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    甲状腺未分化癌3症例において胸部レントゲン写真から肺転移巣の増殖曲線を作製し,検討を行った.症例1, 2は化学療法を行っておらず,観察範囲内での肺転移巣は指数関数的増殖を示した.そのダブリングタイムは9.2~25.0日であった.症例3のダブリングタイムは6.2~7.6日と極めて短かく,強力な抗癌剤(主にADM,CDDP)投与により増殖曲線はその治療効果をよく反映して変化した.そしてこの曲線から肺転移発生時期を推測すると,手術時既に肺転移が起きていたと考えられた.従って,切除可能な症例では術後化学療法を頻回分割照射に優先させるべきであることが示唆された.
  • 神崎 正夫, 中谷 雄三, 町田 浩道, 鳥羽山 滋生, 戸田 央, 小島 幸次郎, 小助川 克次, 清水 進一, 小林 寛
    1993 年 54 巻 3 号 p. 564-569
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1986年1月より1991年9月までに当院で手術した乳癌例で,術前に穿刺吸引細胞診 (ABC) を行った303例において, ABC診断偽陰性(疑陽性,陰性,判定不能)発生の腫瘍側因子を検索し,ABC診断の問題点を検討した.
    ABC診断の成績は陽性82%,疑陽性12.3%,陰性1.4%,判定不能4.3%であった.腫瘤径2cm以下,非浸潤癌,組織学的悪性度,脂肪浸潤,脈管侵襲の5つの腫瘍側因子において陽性例と比較して疑陽性例の発生頻度が有意に高かった.つまり小腫瘤では技術的因子と腫瘍側因子とにより偽陰性が発生しやすいといえ,また腫瘤径に関係なく,組織学的悪性度,脂肪浸潤,脈管侵襲の腫瘍側因子によっても疑陽性が発生する可能性があることが示された.
    この偽陰性率を低下させABC診断限界を補う工夫として,異型性の低い細胞の判定には油浸検鏡による核所見の観察が有用であり,またABCと超音波検査の組合わせが補助診断法として最も診断率が高いと思われた.
  • 草島 義徳, 広野 禎介, 中村 裕行, 杉原 政美, 高柳 尹立
    1993 年 54 巻 3 号 p. 570-576
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性肺気腫合併肺癌切除例の術前のrisk評価を行った.対象は原発性肺癌切除136例のうち,肺気腫研究会の肺気腫診断基準である術前FEV1.0%70%以下, RV/TLC35%以上,気拡剤投与後の1秒量改善度500ml以下の条件を満足し切除肺非癌部肺組織の病理学的所見を参考にして決定した42例である. 42例のうち15例 (35.7%) に重篤な術後合併症の発生をみ, 5例が手術死亡, 5例が入院死亡であった.合併症発生群と非発生群につき背景因子,手術侵襲度,各種呼吸機能などの面から検討した結果,予測残存1秒量 (P-FEV1.0/BSA), %DLco/VA,Thin-sliceCT所見の三者が術後合併症予測因子として有用であった. P-FEV1.0/BSAO.85l/m以下, %DLco/VA60%以下, CTgrade IIIの3条件のうち少なくとも2つ以上を満たす例では極めて高率に術後合併症の発生がみられた.慢性肺気腫合併肺癌切除例ではP-FEV1.0/BSA,%DLco/VA,CTgradeの三者をcombinationすることによって,厳密な術前risk評価が可能と考えられた.
  • 加來 朝王
    1993 年 54 巻 3 号 p. 577-586
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1973年4月から1991年12月までに58例の食道表在癌を経験し, 45例に切除術が行われた.これらを臨床病理学的に検討し早期診断の重要性を示した.また早期診断における内視鏡下ヨード染色法の有用性を明らかにした.
    予後良好なep, mm癌のほとんどは0-II型であった. 0-II型の,ことにep, mm癌の診断にはX線検査よりも,ヨード染色を併用した内視鏡検査が有用であった. 50歳以上を対象とした内視鏡下ヨード染色を1983年8月から1991年12月までに1, 235例に行った.スクリーニングとして行った824例の中から5例の表在癌を発見した.これはスクリーニングとして行った症例の0.61%に相当し,他の報告よりも高率であった.またsevere dysplasiaと診断された症例の1例がそのつの生検で扁平上皮癌と診断されており,追跡検診の重要性が示された.
  • 近森 文夫, 青柳 啓之, 高垣 俊郎, 和田 光功, 渋谷 進, 高瀬 靖広, 深尾 立
    1993 年 54 巻 3 号 p. 587-593
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃静脈瘤に対する非観血的治療法として,内頸静脈よりカテーテルを胃腎静脈シャントに挿入して静脈瘤を塞栓する方法-経頸静脈的胃静脈瘤塞栓術(transjugularobliter-ationforgastricvarices:TJO)-を考案したので報告する.対象は,孤立性胃静脈瘤1例,食道胃静脈瘤2例,計3例である.食道胃静脈瘤2例については,硬化療法により食道静脈瘤を治療した後にTJOを施行した.胃腎静脈シャントの血流を制御し,逆行性塞栓を行うために, 5 Frenchコブラ型パルーンカテーテルを使用した.硬化剤は, 50%Glucose,無水ethanol, 5%ethanolamine oleate with iopamidolを用いた.全例において,胃静脈瘤の塞栓に成功し,内視鏡的に胃静脈瘤は消失した.なお合併症は認めなかった.いずれも現在,再発を呈することなく生存中である.以上から, TJOは胃腎静脈シャントを有する胃静脈瘤に対する有効な治療法になりうると思われた.
  • 山下 好人, 冬広 雄一, 竹内 一浩, 繁沢 晃, 国頭 悟, 西口 幸雄, 馬場 満
    1993 年 54 巻 3 号 p. 594-599
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当院で4年間に経験した胃十二指腸潰瘍穿孔49例の背景因子について臨床的検討を加えた.十二指腸潰瘍穿孔は胃潰瘍穿孔より発症年齢が若く,時期は秋から冬,時刻は夜間に多い傾向にあったが,胃潰瘍ではその傾向は認めなかった.また胃十二指腸潰瘍穿孔例において潰瘍の既往のない急性例が66.7%と多く,既往歴のある症例においても,穿孔時にはH2プロッカーの投与は受けていなかった.腹腔内遊離ガスは胃潰瘍穿孔例で86.7%,十二指腸潰瘍穿孔例で77.1%に認め,術前白血球数は高齢になるほど増加していない症例が多かった.術中の腹腔内貯留液の細菌培養は発症後6時間を越えると陽性率が増加した.手術は広範囲胃切除術を基本術式とし,2例に敗血症の合併を認めたが,死亡例はなかった.敗血症の2例は,ともに高齢で,発症から手術までの経過時間が長く,白血球数は増加していなかった.
  • 野地 みどり
    1993 年 54 巻 3 号 p. 600-606
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ras p21 oncoprotein (P21)の胃癌における臨床的意義を検討する目的で,胃癌126例,良性胃病変58例,担癌胃の癌周辺正常胃粘膜113例を対象として,抗c-Ha-rasp21モノクローナル抗体(NCC-RAS-001)を用いた免疫組織染色を行った. p21染色陽性例は胃癌で79/126と良性胃病変の17/58に比して有意に高率であり, p21が胃癌発生に重要な役割を果たしていることが推測された.低分化癌ではp21陽性率が低く,腸上皮化生を伴う胃癌では癌周辺粘膜では高率にp21発現がみられ,担癌胃粘膜では, 71/113と胃癌に匹敵する陽性率がみられるなど,胃癌発生に関して興味ある知見も得られた.胃癌の臨床病理学的進行度あるいは胃癌患老の予後とp21陽性率には相関がみられなかった. p21は主として胃癌の発生段階に関与し,その後の進展には関与するところが少ないと考えられる.
  • 大川 淳, 山崎 芳郎, 長谷川 順一, 本多 正治, 籾山 卓哉, 奥山 宏臣, 山崎 元, 坂本 嗣郎, 清家 洋二, 桑田 圭司, 小 ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 607-612
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌405例中, m癌22例, sm癌13例, pm癌26例の合計61症例 (71病変)に検討を加えた. sm癌は粘膜下層を2等分し,浅層よりsm1癌 (6例), sm2癌(7例)とした. m癌1例, pm癌4例が多発例であった.平均最大腫瘍径はm癌17.3mm, sm童癌23.1mm, s癌25.4mm, pm癌37.3mmであった. m癌に陥凹性病変はなく,癌の進行1こ伴い陥凹性病変が増加していた.病理組織型は93.0%が高分化腺癌であった. ly(+)はm癌3病変(9.7%), sm1癌3病変 (42.9%), sm2癌3病変 (42,9%), pm癌22病変 (84.6%) に認め, v(+)は1例も認めなかった.リンパ節転移はpm癌4例にのみ認めた.腫瘍径,深達度,肉眼形態とly因子の解析からpm癌及びly(+),最大腫瘍径20mm以上,陥凹性病変を満たすsm2癌はリバ節郭清を伴う腸管切除が必要であり,その他のm, sm癌は縮小手術も可能と考えられた.m癌1例, pm癌4例に原病死を認め,非治癒切除例を除く4例はいずれも多発例であり,良期にわたる観察が必要と考えられた.
  • 豊田 悟, 太田 博俊, 上野 雅資, 関 誠, 木下 雅雄, 西 満正, 柳沢 昭夫, 加藤 洋
    1993 年 54 巻 3 号 p. 613-621
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1946年より1989年まで癌研外科で手術された右側結腸癌286例のリンパ節郭清について検討した.その結果,右側結腸癌に対しては現行の標準郭清術式で概ね満足な結果が得られる事が再確認されたが,これに幽門下リンパ節等の右胃大網動静脈に沿った郭清を加える事により長期予後が得られる症例があり,これらを,主リンパ節特に上腸間膜静脈本幹に沿ったいわゆるsurgical trunkのリンパ節と同等の慎重さで郭清すべき事,また肝曲部付近にある癌に対しては必ずしも回盲部を含める半切除が必要ではない事,さらに4群以上のリンパ節転移に対してはリンパ節郭清範囲を拡大するだけでは長期の予後に影響しない事などが考察された.
  • 大橋 一朗, 佐々木 洋, 今岡 真義, 柴田 高, 永野 浩昭, 桝谷 誠三, 甲 利幸, 石川 治, 亀山 雅男, 古河 洋, 岩永 剛 ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 622-626
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    絶対非治癒切除を除く肝細胞癌切除例162例のうち術前画像診断としてLipiodol動注後CT(LpCT)を施行した群84例と施行しなかった群78例を対象として,術前LpCTの意義を検討した.術前LpCTにより多発病変の同定率が22%上昇した.多発病変に対するLpCTの敏感度は0.86, 特異度0.80であった.一方, LpCT以外の総合画像診断では敏感度は0.50, 特異度0.90であった. LpCTでは敏感度において有意に高い値を示した (p<0.05). 遠隔成績ではLpCTを施行した群は施行しなかった群に比し,無再発生存において良好な傾向を示した.この傾向は単発群間,多発群間の検討においても同様であった.特に多発群間の検討において, LpCT施行群の1年無再発生存率は非施行群のそれに比し有意に良好であった (p<0.05). 以上,術前LpCTの施行は術前の多発病巣の診断能を上昇させ,ひいては良好な肝切除後遠隔成績をもたらす可能性が示唆された.
  • 藤村 嘉彦, 高木 靖彦, 南 佳秀, 古永 晃彦, 郷良 秀典, 壺井 英敏, 江里 健輔
    1993 年 54 巻 3 号 p. 627-630
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症 (ASO) の手術目的で当科に入院した20例に対して,上肢運動負荷心電図を用いて冠動脈狭窄病変のスクリーニングを行った. 20例中7例 (35%) が上肢の疲労の為負荷を中止した.亜最大心拍数に達した13例の内3例に心電図上0.1mV以上のST低下を認め,その他1例が負荷前正常であった心電図が負荷後不完全右脚ブロックとなった.この4例に対して選択的冠動脈造影 (CAG) を施行し,全例に75%以上の冠動脈狭窄病変を認めた.冠動脈血行再建術を下肢血行再建術に先行させた症例はなかったものの,術中および手術近接期に血行動態の管理を厳重に行うことで下肢血行再建術を安全に遂行することができた.上肢運動負荷心電図はASO患者に対しては有用な冠動脈狭窄病変のスクリーニング法の一つである.
  • 伊藤 泰雄, 韮澤 融司, 薩摩林 恭子, 田中 裕之, 長谷川 景子, 関 信夫
    1993 年 54 巻 3 号 p. 631-635
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,小児包茎に対しできるだけ用手的に包皮翻転を行い,手術は必要最小限としている.昭和61年以降,包茎を主訴に当科を受診した527例を対象に,包茎の形態を分類し,病型別に治療成績を検討した.病型の明らかな427例の内訳はI型(短小埋没陰茎)22例, II型(トックリ型)86例, III型(ピンホール型)60例, IV型(中度狭窄型)154例, V型(軽度狭窄型) 101例, VI型(癩痕狭窄型) 4例であった.その結果,翻転不能例はI型の13例, 59.1%, II型の17例, 19.8%, VI型の2例, 50.0%のみであった.ピンホール型は一見高度の狭窄に見えるが,翻転不能例は1例もなかった.最終的に手術を行ったのは全症例中32例, 6.1%と少なかった.外来で積極的に包皮を翻転するわれわれの治療方針は,包茎手術を著しく減少させた.
  • 佐野 真, 山本 修美, 村山 良彦, 片井 均, 前田 耕太郎, 酒井 章次, 洪 淳一, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 三村 孝, 伊藤 ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 636-641
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    “non-recurrent inferior laryngeal nerve”は0.3~0.9%の頻度に存在するとされ,臨床的には甲状腺や上皮小体の手術に際し問題となる.今回,われわれは,腎性上皮小体機能充進症に対して上皮小体全摘術をおこなった際,右側の反回神経がnon-recurrentに直接に喉頭へ分岐する1例を経験したので報告する.
    反回神経の走行異常は胎生期の鰓弓からの神経と血管の発生過程により説明され,右鎖骨下動脈の大動脈弓起始部異常に伴われることが知られており,従って右側にのみ認められる.本症例でも術後に施行したIV-DSAにより,右鎖骨下動脈は左鎖骨下動脈よりも末梢側から立ち上がっていることを確認した.
    甲状腺,及び上皮小体の手術における反回神経損傷は最も重要な合併症の一つであるが右側の剥離に際して,その走行異常は十分念頭に置く必要がある.start-page=636
  • 大久保 賢治, 国崎 主税, 田村 寿康, 高橋 利通, 城戸 泰洋, 小林 俊介, 笠岡 千孝
    1993 年 54 巻 3 号 p. 642-645
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腺癌の扁平上皮化生により生じた乳腺扁平上皮癌を経験したので報告する.患者は42歳女性,左乳房腫瘤,落痛を自覚し,来院.マンモグラフィー,超音波断層撮影にて乳癌と診断され,非定型的乳房切断術を施行した.
    病理組織学的に乳房は,ほとんどが扁平上皮癌であった.転移陽性であった腋窩リンパ節では扁平上皮癌成分と同時に腺癌成分の混在も認められた.
    術後1年目に患側胸部皮膚に再発を認め,生検を施行した.病理組織学的には,ほとんどが充実腺管癌であり,扁平上皮成分はわずかしか認められなかった.
  • 長谷 泰司, 柳田 尚之, 西川 真, 近藤 征文, 内野 純一, 安倍 俊一, 中里 堯
    1993 年 54 巻 3 号 p. 646-650
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    転移性食道腫瘍は,縦隔や肺原発の腫瘍からの直接浸潤を除けば,比較的稀な疾患である.最近われわれは,乳癌の根治手術後に本症をきたした症例を経験した.
    症例は, 48歳,女性.乳癌の術後6年頃に咳声,嚥下困難が出現.胸部食道内腔になだらかな全周性の狭窄を認め,食道切除術を施行した.病理診断では,腫瘍は粘膜下をぴまん性に浸潤した腺癌で,乳癌の病理組織像とほぼ合致することから,
    乳癌の食道転移と診断された.術後24ヵ月の現在,再発の徴候なく生存中である.
    乳癌の食道転移は,1~2%にみられ,今後,乳癌の生存率の改善とともに,このような症例は増加すると考えられる.
    既往歴に乳癌のある食道狭窄例では,乳癌の転移をも考慮して,診断,治療にあたることが必要である.
  • 腰塚 浩三, 伊従 敬二, 萩原 純, 高野 邦夫, 岩崎 甫, 松川 哲之助
    1993 年 54 巻 3 号 p. 651-654
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸転移は比較的少なく,進行乳癌の患者においては考慮すべきである.
    症例は56歳女性,平成2年7月右乳癌にて定型的乳房切除術を受けた.組織型は,乳頭腺管癌で,T2n1βm0-stage IIであった.術後に51GyのCo照射をおこない,化学内分泌療法を外来で行っていた.平成3年2月より血中CEA値が5.4ng/mlと上昇し,平成3年7月には,血中CEA値9.6ng/ml,血中NCC-ST-439値が18L/mlと上昇し,転移を考え精査を行ったが転移は認めず,平成4年1月のCT検査にて腹腔内リンパ節の著明な腫大をみとめ,注腸造影にて上行結腸癌の診断にて右半結腸切除術を施行した.術後病理組織像より乳癌の転移と診断した.
  • 古田 一徳, 門脇 憲, 三重野 寛喜, 礒垣 誠, 嶋尾 仁, 榊原 譲, 比企 能樹
    1993 年 54 巻 3 号 p. 655-659
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前CDDP, 5-FU療法で著効した食道癌の手術症例を報告し,この化学療法の効果を文献的考察もあわせて報告する.
    症例は67歳女性,心窩部痛を主訴に来院した.内視鏡でEa領域の2型の腫瘍を認め,生検で中分化型扁平上皮癌と診断した.術前の化学療法としてCDDP70mg/m2を第1日目に, 5-FU800mg/m2を第2日目から3日間投与した.治療後のx線,内視鏡では腫瘍はわずかに縮少したがNCであった.EUSで浸達度はmpであった.術前化学療法後18日目に右開胸,開腹,胸腔内吻合を施行した.肉眼的にはMoPLoAoNoであった.標本では,粘膜下層から漿膜下層にかけて異物巨細胞が多数発見され,癌細胞は見られず,制癌剤の治療効果の組織学的判定基準では著効 (Ef3) に相当した.この症例の他に,われわれのプロトコールで現在まで15中Ef2が2例得られている.今後は原発巣のみでなく転移巣の検討も必要であると思われた.
  • 松井 武志, 西岡 豊, 雁木 淳一, 安岡 康夫, 丸川 将臣, 田中 紀章
    1993 年 54 巻 3 号 p. 660-663
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対する硬化療法は,現在急速に普及し,多くの施設で食道静脈瘤治療の第一選択とされるようになってきた.
    われわれは,アルコール性肝硬変症にともなう食道静脈瘤にpolidocanolを用いて硬化療法を実施し, 1年8ヵ月後に進行食道癌が発生した1例を経験した.
    食道癌の発生母地としてピラン性食道炎や腐触性食道炎は,よく知られているが,食道静脈瘤硬化療法後の食道癌の発生も,本邦で8例報告されているので,両者の関係について検討を加えた,
  • 家接 健一, 金子 芳夫, 田中 松平, 岩上 栄, 吉田 千尋
    1993 年 54 巻 3 号 p. 664-668
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    残胃に生じた胃石による腸閉塞の報告は比較的まれである.本症例は54歳男性で,十二指腸潰瘍にて26歳時に幽門側胃切除 (Bill.II) を受けている.柿を食べた2日後,上腹部痛,嘔吐を訴え来院した.精査にょり異物による腸閉塞と診断し,保存的治療を行ったが,症状の悪化を来したため開腹手術を行った.Treitz靱帯より約150cm肛門側に鶏卵大の異物を認め,小腸を切開して摘出し,経過良好にて退院した.異物は柿胃石と推定された.以上,自験例を中心に,本邦報告例28例について,若干の検討を加え報告する.
  • 野田 徳子, 長谷川 洋, 金井 道夫, 亀井 智貴, 村田 透, 西尾 秀樹, 平松 和洋, 清水 泰博, 吉田 英人, 太田 章比古, ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 669-673
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的まれな疾患とされている胃脂肪腫の1例を経験したので報告する.症例は61歳,女性.心窩部痛を主訴に近医受診,胃透視で腫瘤を指摘され当院に紹介された.胃内視鏡で前庭部後壁に粘膜下腫瘍を認めた. CTでは胃後壁に造影によってもenhanceされないfatdensityの腫瘍を認め,超音波内視鏡 (EUS) では腫瘍は胃壁第3層と連続し高エコーレベルであった.以上より粘膜下層に発生した胃脂肪腫と診断し腫瘍核出術を施行した.腫瘍は55×35mm, 20gで切除標本は病理組織学的にも脂肪腫と診断された.胃脂肪腫の術前診断は困難とされてきたがCT, EUSを用いることにより腫瘍の大きさ,形態,質,胃壁内の局在部位がわかるようになり,適切な治療方針を決定するうえでも重要な検査であると考えられた.
  • 竹鼻 敏孝, 山本 裕司, 今田 敏夫, 徳永 誠, 利野 靖, 呉 吉煥, 野口 芳一, 赤池 信, 天野 富薫, 松本 昭彦
    1993 年 54 巻 3 号 p. 674-677
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃空腸吻合術後19年を経過して発生した多発胃癌の症例を経験した.症例は59歳の男性で, 40歳時腸閉塞の診断で癒着剥離と胃空腸吻合術を受けた.昭和62年11月吐血を主訴に近医を受診し,胃X線検査,胃内視鏡および生検の結果多発胃癌の診断で当科紹介され入院した.昭和63年3月手術を施行した.術中所見ではP0H0N0S2で吻合部の小腸を一部含めて根治的に胃亜全摘術を施行した.切除標本では幽門前庭部にBorrmann2型 (tub1,ssγ), 胃空腸吻合部にBorrmann 1型 (por,pm), 胃体部大彎にIIc (por,sm), 胃体下部小彎にIIc (tub1,sm) の4つの異なった病変を認めた.胃空腸吻合術後の胃癌の報告は本邦では比較的少なく,多発胃癌は極めて稀である.吻合部から胃体部大彎の粘膜下には広範な腺管嚢胞状拡張 (Gastritis cystica polyposa) の変化を伴った興味深い症例であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 堺 秀行, 大島 進
    1993 年 54 巻 3 号 p. 678-681
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    保存的療法で治癒した急性輸入脚症候群の1例を報告した.胃癌の胃全摘術後6年目に発症した急性輸入脚症候群に対し,絶飲食, TPN, デニスチューブ留置,プロスタルモンF,ソルメドロール,フサン投与等による保存的療法を行ったが軽快せず,利水効果と腸蠕動の正常化を目的に五苓散と大建中湯を投与した.五苓散と大建中湯を投与すると数時間で尿量が増加し, 1日で輸入脚の拡張は消失した.五苓散投与により多量の利尿が得られたが,血清電解質には異常を来さなかった.大建中湯投与により腸管蠕動は正常に復し,腹痛は消失して良好な排便が得られた.
    漢方製剤は適応を正しく投与すれぽ非常に有用であると考えられた.
  • 篠原 浩一, 前田 守孝, 上田 祐滋, 児玉 吉明, 宮崎 俊明, 豊田 清一
    1993 年 54 巻 3 号 p. 682-686
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    長期にわたるイレウス状態を繰り返し診断の困難であった原発性空腸結核の1例を報告する.
    症例は64歳の女性で,慢性の腹部膨満感,腹痛を主訴に来院した.胸部X線写真に異常なく腹部単純X線写真にて小腸の著明な拡張像とNiveau像が認められた.経口小腸造影では小腸の一部に嚢状の異常拡張像がみられた.
    開腹所見では空腸に嚢状拡張部分を認め,その肛門側は狭窄しており,腸間膜リンパ節は多数腫大していた.腸切除術を施行し端々吻合した.切除標本の病理組織学的検査で結核と診断し得た.
    本症例は肺に腸結核を伴わない,いわゆる原発性腸結核であるが,本症例の如く病変部が異常な嚢状拡張を呈しイレウス状態を反復した症例は稀である.また本症例では経過中,血中CA125の高値を呈したが,これについても若干の文献的考察を加え報告した.
  • 高橋 利通, 笠岡 千孝, 山崎 安信, 小林 俊介, 田村 寿康, 国崎 主税, 大久保 賢治
    1993 年 54 巻 3 号 p. 687-689
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Crohn病が穿孔をきたすことは稀である.われわれはCrohn病の穿孔を経験したので報告する.症例は20歳の男性.主訴は腹痛で当科受診となった.腹部は板状硬で,胸部X線写真で横隔膜下に灘ガス像はなく,末梢血像で白血球は10,600/mm3であった.腹膜炎の診断で緊急手術を行った.汎発性腹膜炎があり,穿孔は回腸にみられ,回腸を30cm部分切除した.切除標本ではcobblestoneappearanceと縦走潰瘍がみられた.病理組織所見では全層にわたる炎症性細胞浸潤と非乾酪性肉芽腫がみられ, Crohn病の穿孔と診断された.術後経過は良好で第38病日に退院となった.術後2年2ヵ月の現在,再発は認めず,外来通院中である.
    Crohn病の穿孔は現在までに欧米で200余例,本邦では56例の報告があり,文献的考察を加えて報告する.
  • 吉田 和彦, 藤川 亨, 片山 隆市, 西田 雄, 串田 則章, 岡部 紀正
    1993 年 54 巻 3 号 p. 690-692
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本邦における消化管アニサキス症としては胃がよく知られているが,小腸は比較的稀である. 2例の小腸アニサキス症を手術したので報告する.症例1は47歳女性で腹痛を主訴に入院し,汎発性腹膜炎の診断で開腹した. Treitz靱帯より約160cmの空腸に強い浮腫とリンパ節の腫大を認め,浮腫の強い小腸を約30cm切除し,吻合した.切除した腸管の粘膜にはアニサキスが食い込んでいた.症例2は48歳の男性で腹痛を主訴に入院した.腹部レントゲン写真でイレウスと診断し,開腹した.Treitz靭帯より約270cmの空腸に弾性軟の腫瘤を触れた.腸を切開すると虫体を含む糞塊があり,それを摘出して手術を終了した.摘出した虫体の血清免疫反応ではアニサキスと診断された.小腸アニサキス症では腹膜炎やイレウスを呈する症例が少なくないために,急性腹症として開腹されてはじめて診断が確定することが多い.
  • 石田 誠, 三浦 将司, 小泉 博志, 山村 浩然, 斉藤 英夫, 宗本 義則, 笠原 善郎, 藤沢 正清
    1993 年 54 巻 3 号 p. 693-697
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    下部消化管出血,特に小腸病変からの出血はその原因疾患も多岐にわたり,大量出血例や間欠出血例もあり,治療に難渋することも少なくない.今回われわれは下血を繰り返す消化管出血に対し,術前に出血部位を診断し治療し得た小腸出血の3例を経験したので報告する.症例1は血管造影にて空腸腫瘍と診断し空腸部分切除を施行した.組織学的に平滑筋腫であった.症例2は小腸X線検査,血管造影にて潰瘍性病変と診断し回腸部分切除を施行した.組織学的に非特異性多発性小腸潰瘍であった.症例3は消化管出血シンチグラフィーにて出血部位を同定,術中内視鏡にて病変部を確認し回腸部分切除を施行した.組織学的に海綿状血管腫であった.
    小腸出血の診断には,積極的に血管造影や消化管出血シンチグラフィー,また症例によっては術中内視鏡を施行すべきであると考えられた.
  • 西江 浩, 村田 陽子, 岡本 恒之, 谷田 理, 周藤 秀彦, 渡辺 俊一
    1993 年 54 巻 3 号 p. 698-702
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室の多くは無症状に経過するが,時に腸閉塞・出血・穿孔などの合併症を引き起こし,外科的治療の対象となることがある.今回,われわれは,緊急手術を施行したMeckel憩室の2例を経験したので報告する. 1例は20歳男性で,異所性胃粘膜により潰瘍を形成し出血性ショックをきたした症例であった.もう1例は, 16歳女性で,憩室の軸捻転により憩室の壊死および腸閉塞をきたした症例であった.Meckel憩室の診断には,小腸造影・血管造影・消化管シンチグラフィーなどの有用な検査法もあるが,緊急時には確実にその診断を下すことは非常に困難である.したがって,原因不明の大量下血が持続するが上部消化管や大腸の検査で異常が認められない場合や,絞拓性イレウスが疑われる場合には,Mcckel憩室の存在を考慮し,積極的に開腹に踏み切り,適切な処置をとる必要があると考えられた.
  • 佐藤 哲也, 田渕 純宏, 猪野 睦征, 橋本 哲, 関根 一郎, 許 朝添
    1993 年 54 巻 3 号 p. 703-706
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌と空腸に発生した異所性膵癌の同時性重複癌症例を経験した.症例は64歳男性,右側腹部痛を主訴に来院し,精査の結果,胃癌の診断がつき開腹した.開腹時Treitz靭帯より110cm肛側の空腸に腫瘤あり,漿膜浸潤により約50cmのループを形成していた.そこで,胃全摘術と空腸部分切除術を施行した.病理診断は胃が低分化腺癌で,空腸はHeinrichI型の異所性膵癌であった.空腸における異所性膵癌の報告は2例であり,本症例が3例目の報告と思われた.
  • 藤川 正博, 大口 善郎, 上島 成幸, 岸 大輔, 水野 均, 位藤 俊一, 中島 邦也, 伊豆蔵 豊大
    1993 年 54 巻 3 号 p. 707-710
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性回腸癌は消化器癌のなかではまれな疾患であり,イレウスなどの比較的進行した状態で開腹手術を受けてはじめて診断される症例が多い.今回われわれは,術前に内視鏡にて確定診断できた原発性回腸癌の1例を経験したので報告する.
    症例は74歳男性で,腹痛と便秘を主訴とし,注腸造影で回腸末端部に腫瘤陰影を指摘された.内視鏡下生検にて回腸癌と診断し,下部回腸上行結腸切除とリンパ節郭清を行った.病理組織学的には高分化腺癌であった.
    原発性回腸癌は下部回腸に発生することが多いとされていることから,注腸造影や大腸内視鏡では下部回腸も注意深く観察することが早期診断につながるものと思われた.
  • 木村 厚雄, 奥道 恒夫, 渡辺 浩志, 西村 保彦, 柴田 諭, 梶原 博毅
    1993 年 54 巻 3 号 p. 711-715
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸腫瘍による腸重積は比較的稀な疾患である.イレウスのため入院し, CTscan, 超音波検査で腸重積と診断し手術を施行した回腸悪性リンパ腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は73歳,男性で主訴は腹痛,体重減少であった.イレウスのため入院となり, CTscan, 超音波検査を施行したところ,腸重積と診断された.まずガストログラフィンを用いた注腸造影を施行し非観血的整復を試みたが,一時的な整復に終わったため腸切除術を施行した.回腸末端より8cmの部位に6×5×4cmの腫瘍を認め,病理組織学的には回腸悪性リンパ腫であった.
    腸重積の診断にはCTscan, 超音波検査が有効であった.成人の腸重積症の場合,悪性腫瘍を念頭におくことが必要である.
  • 藤野 光廣, 武藤 文隆, 山本 拓実, 内山 清, 秋岡 清一, 塩飽 保博, 西本 知二, 池田 栄人, 谷向 茂厚, 栗岡 英明, 橋 ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 716-720
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年, S状結腸憩室症と共に,手術適応となる合併症であるS状結腸膀胱瘻も増加してきた.膀胱刺激症状,消化器症状を訴えとする患老では本症も考えにおき,注腸・膀胱鏡検査を中心とした早期診断が重要である.
    X線検査ではS状結腸の重なりのため,内視鏡検査では炎症性変化のためそれぞれ診断が困難となることが多く悪性疾患の合併を見逃さないよう注意する必要がある.
    手術術式としては痩孔切除+結腸切除が有用であり,われわれの2症例では膀胱部分切除は不要であった.
    われわれが最近経験した1症例を提示すると共に若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 向井 正哉, 花上 仁, 久保 博嗣, 飛田 浩輔, 奥村 輝, 菅野 公司, 田島 知郎, 三富 利夫
    1993 年 54 巻 3 号 p. 721-724
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.排便時の大量の下血を主訴に当院を受診した.直腸診検査にて可動性のある弾性硬の腫瘤を触知し,直腸癌が疑われた.注腸造影所見ならびに大腸内視鏡所見では,肛門縁より約50cmの部位に半周性の立ち上がりなだらかな隆起性病変を認め,その中心部には浅い潰瘍性病変とびらんを伴っていた.生検では炎症性上皮の診断であったが,S状結腸癌が強く疑われ開腹手術を施行した.開腹時,S状結腸に鶏卵大の腫瘤を触知したが,漿膜には浸潤を認めなかった. P0H0N0S0と判断しS状結腸切除術R2を行った.切除標本では粘膜に潰瘍性病変を伴った径6×5cmの山田1型の隆起性病変を認め,病理組織学的に粘膜下の大腸脂肪腫と診断された.今回われわれは,下血で発症した比較的稀な大腸脂肪腫の1切除例を経験したので文献的考察を加えて報告した.
  • 橋詰 倫太郎, 井原 朗, 岡田 孝弘, 赤石 治, 千田 俊哉, 横瀬 裕義, 森久保 雅道, 山口 晋, 品川 俊人, 小森山 広幸, ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 725-729
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性,全身倦怠感および下血を主訴として来院.注腸検査にて横行結腸より十二指腸および空腸に造影剤の漏出を認め,横行結腸癌の空腸および十二指腸浸潤の診断にて右半結腸切除,小腸部分切除,膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的には低分化型腺癌,粘液癌を含む大腸の高分化型腺癌であり,進行度は, si, n(-), P0H0M(-), stageIIIであり,手術は治癒切除であった.術後1年11ヵ月経た現在,再発の徴候は認めない.
    結腸癌による内瘻形成例は比較的稀であり,本例のごとく二臓器に瘻孔を形成した報告は,小川ら,安永ら,に次いで自験例が3例めである.結腸癌の消化管内瘻形成例は肉眼的な所見に対し悪性度は低いことが多く,根治的に切除すれば,瘻孔を形成しない他臓器浸潤結腸癌より良好な予後が期待できる.従って局所進展に惑わされず,積極的な根治切除が望ましいと考えられた.
  • 岸本 秀雄, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 小川 弘俊, 中村 従之, 大谷 亨, 織田 誠, 都築 尚生
    1993 年 54 巻 3 号 p. 730-734
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    著明な胆汁排泄遅延を認めた肝内結石症に対し分流手術を施行し, 3年3ヵ月を経過した現在,再発の徴候を認めないので報告する.症例は50歳の男性. 1983年8月に,胆嚢,総胆管結石症にて胆嚢摘出,総胆管切開,乳頭括約筋形成術を施行した. 1988年10月,肝内結石症を認めた.経皮経肝胆道鏡下切石術後の肝胆道シングラフィーにて著明な胆汁排泄遅延を認めたため,高度の胆汁鬱滞を基盤とし,食物残渣や膵液の胆管内への逆流が誘因となって生じた肝内結石症と診断し, 1989年2月,総胆管空腸吻合術を施行した. 1992年4月のシンチグラフィーにて依然として著明な胆汁排泄遅延を認めるものの,結石の再発はない.高度の胆汁排泄遅延を呈する肝内結石症に対する胆道付加手術としては括約筋形成術は適応外であり,分流手術が第一選択であると考えられた.また切石術後の肝胆道シンチグラフィーは肝内結石症の治療方針を決定する上で有用であると思われた.
  • 内田 直里, 赤木 真治, 栗栖 佳宏, 藤本 三喜夫, 河毛 伸夫, 中井 志郎, 増田 哲彦, 安井 弥
    1993 年 54 巻 3 号 p. 735-740
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Icteric type hepatomaは,肝細胞癌の約2%に認められ,黄疸や高度肝硬変の合併のため切除例は少なく予後は不良である.今回Icterictypehepatomaの1切除例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で,主訴は上腹部痛で,血液検査で胆道系酵素の上昇を,腹部超音波およびCTで肝内胆管の拡張と肝左葉に腫瘍影を,PTCで左肝内胆管から総胆管にかけて鋳型状の陰影欠損を認め,肝左葉から肝門部にかけての肝細胞癌と診断し,拡大左葉切除・総胆管切除を施行した.術後経過は良好で術後6ヵ月の現在再発の徴候なく健在である. Icteric type hepatomaで肝切除を施行し治癒切除できた症例は稀で現在まで自験例を含めて28例である.また, Icteric type hepatoma平均生存率は4.1ヵ月と非常に予後が悪いが肝切除を行って治癒切除できた症例は比較的予後が良い.今回, Icteric type hepatomaについて若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 四三, 中島 晃, 河島 留一, 太田 和美, 遠藤 彰, 甲斐 恭平, 笹橋 望, 川真田 修, 森 隆, 鍋山 晃, 岡田 康男, ...
    1993 年 54 巻 3 号 p. 741-745
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌切除後1年2ヵ月後に細小肝癌を切除し得た重複癌の症例を経験した.症例は33歳男性,盲腸癌・上行結腸多発ポリープ・十二指腸ポリープにたいし右半結腸切除術・十二指腸ポリープ切除術施行した.その後α-fetoprotein値の上昇あり,腫瘍径1.5cmの細小肝癌を診断,前区域切除術施行した.
    症例はわれわれが調べ得たかぎり最年少であり,家族内に肝癌2例,大腸癌2例発生しており,家族内発生が考えられた.癌の早期診断・早期治療において,家族歴の重要性を教示させられる症例であった.
  • 籾山 卓哉, 宗田 滋夫, 三木 康彰, 末岐 博文, 倉谷 徹, 山辺 和生
    1993 年 54 巻 3 号 p. 746-750
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆石イレウスは胆石症の比較的稀な合併症の一つである.また胆嚢胃痩がこの原因となることはさらに稀である.今回われわれは胆嚢胃瘻に起因した胆石イレウスに対し正確な術前診断の後に一期的にイレウス及び胆道系の根治的手術を施行し得た1例を経験した.
    症例は67歳の女性で主訴は腹満,嘔吐である.入院時はショック状態に陥ったイレウスであったが輸液管理,イレウスチューブによる減圧で全身状態を改善させた後,内視鏡的な癩孔造影による胆嚢胃瘻の証明とイレウスチューブからの造影による腸管内の結石の証明の後に根治手術を施行した.
    胆石イレウスの治療はイレウス解除と内胆汁瘻の処理の両方が必要である.適切な術前管理と的確な術前診断の後に一期的根治手術が可能である.
  • 河野 洋一, 河口 忠彦, 今井 滋, 西川 亨, 舩橋 渡
    1993 年 54 巻 3 号 p. 751-755
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    血清CA19-9, DU-PAN-2, SPan-1は,膵・胆道系悪性腫瘍の診断に有用なマーカーであるが,良性疾患においても陽性例がある.今回われわれは, CA19-9が10,000以上U/ml, DU-PAN-2が930U/ml, SPan-1が1. 900U/mlという高値を示した胆嚢・総胆管結石の1例を経験した. CA19-9の陽性例は散見するが, DU-PAN-2, SPan-1の陽性例の報告は希少であるため,若干の文献的考察を行った.
    症例は75歳女性で主訴は腹痛.黄疸,発熱も伴い,他医より精査加療目的で紹介され入院.経皮経肝胆嚢ドレナージを施行し,減黄するにつれて腫瘍マーカーも下降し,造影所見より胆嚢・総胆管結石の診断で手術施行.胆嚢・総胆管結石を認めたが,胆嚢は組織学的にも悪性所見は認めなかった.手術後,腫瘍マーカーは陰性化し,軽快退院した.
  • 花上 仁, 勝又 泰平, 菅野 公司, 奥村 輝, 久保 博嗣, 向井 正哉, 飛田 浩輔, 田島 知郎, 三富 利夫
    1993 年 54 巻 3 号 p. 756-760
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌の多くは腺癌であり腺扁平上皮癌は全胆嚢癌の約5%にすぎない.われわれは,同一胆嚢内に腺扁平上皮癌と腺癌が併存した極めて稀な1例を経験したので報告した.症例は87歳女性で突然の右季肋部痛を主訴として来院した.臨床症状・所見および画像診断から急性胆嚢炎と診断し胆嚢摘出術を施行した.胆嚢内には結石があり,胆嚢底部に小結節状隆起性病変ならびに胆嚢頸部に乳頭状腫瘍が認められた.病理組織像では胆嚢底部の病変は腺癌の一部に角化と扁平上皮癌への移行像を伴った腺扁平上皮癌であり胆嚢頸部の病変は腺癌であった.両腫瘍はそれぞれ独立しており連続性は認められなかった.腺扁平上皮癌と腺癌の胆嚢多発癌本邦報告例は調査し得た範囲では認められなかったので文献的考察を加え報告した.
  • 山本 宏明, 雄谷 義太郎, 佐藤 有三, 吉原 正, 都築 尚典
    1993 年 54 巻 3 号 p. 761-765
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術後の難治性膵液瘻にたいし瘻管空腸吻合を施行し良好な結果を得たので報告する.症例は76歳男性で下部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除を施行した.術後3週間で膵管tubeを抜去したところ数日して膵液瘻が形成された.瘻孔造影を行うと主膵管は明瞭に造影されたが空腸は全く造影されなかった.絶食, IVHの保存的治療を行うも閉じる傾向は見られなかった.患者の早期社会復帰の希望とquality of lifeの改善を考え瘻孔形成後2ヵ月の9月18日に瘻管空腸吻合術を施行した.瘻管壁を膵まで剥離した後短切し, Roux-en-Y法にて挙上した空腸と端側に吻合した.術後経過は順調で退院後も患者は無症状で良好な社会生活を送ることが可能となった.膵液瘻は多くは保存的に治癒するが膵管の下流側に流出障害のある難治性膵液瘻の場合には瘻管空腸吻合も考慮されるぺき治療法であると考えている.
  • 服部 浩治, 末広 茂文, 木村 英二, 西澤 慶二郎, 柴田 利彦, 南村 弘佳, 佐々木 康之, 木下 博明
    1993 年 54 巻 3 号 p. 766-770
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者に合併した腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を施行し良好な結果を得た.症例は59歳の男性で,慢性腎不全に対する血液透析導入時に腹部の拍動性腫瘤を指摘された. CT, 腹部エコー検査にて腹部大動脈瘤 (AAA) と診断され,手術目的で当科に入院した.術前の透析はメシル酸ナファモスタット (FUT) を抗凝固薬として用いて行い,術前日及び術当日にも透析を施行した.透析時に計260mlの濃厚赤血球輸血を行い,最終的にHt値31%, BUN31mg/dl,血清クレアチニン5.9mg/dl, 血清カリウム4.1mEq/lで手術に臨んだ.大動脈瘤は紡錘状で最大径は5,5cmであり,これをalbumin熱処理したY字型人工血管にて置換した.術後2日目よりFUTを用いて透析を再開したが,著変無く経過し13日目に退院となった.血液透析患者におけるAAA手術は,透析管理を中心とする綿密な術前,術後管理を行うことにより,一般のAAA手術と同様,安全に行い得ると考えられたので報告した.
  • 小山 隆司, 橋本 行, 津田 豊彦
    1993 年 54 巻 3 号 p. 771-775
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に消化管穿孔と誤った子宮留膿腫穿孔の1例を経験したので報告する.
    症例は88歳の女性で,腰椎圧迫骨折で入院中に突然腹痛を認めた.下腹部を中心に腹膜刺激症状がみられ,さらに腹部単純X線写真で気腹を認めたために消化管穿孔と診断し,開腹術を行ったところ子宮留膿腫穿孔と判明した.
    本症は比較的まれな疾患で,本邦での報告例は1977年以降自験例を含めて14例にすぎない.特徴は腹部単純X線写真で約半数にガス産生菌による気腹像を認めることで,そのため大部分の症例が消化管穿孔や急性腹症と診断され開腹術が行われていた.通常気腹は消化管穿孔に伴い認められることが多いが,その原因として本症のように消化管非穿孔のものがあることを理解しておく必要がある。同時に,人口の高齢化とともに本症も増加するものと考えられ,高齢者女性の汎発性腹膜炎の原因として本症の存在を念頭において診療にあたることも重要であると考えられた.
  • 田代 和弘, 間野 正衛, 古賀 平太, 平山 八郎, 水田 耕二
    1993 年 54 巻 3 号 p. 776-782
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔内ヘルニアの中でも稀な大網裂孔ヘルニアを経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    患者は59歳男性で,心窩部痛・嘔気を主訴に来院され,精査目的にて入院となる.上部消化管造影後に腹部レントゲン写真に鏡面像が出現し,徐々に増強するためイレウスチューブを挿入した.腹部超音波検査にて拡張した浮腫状の小腸像および腹水の貯留を認めたため,絞扼性イレウスの診断にて手術を施行した.術中所見は増量した腹水を認め,大網の一部に約5cmの裂孔が存在し,その中に約30cmの小腸が滑り込み締め付けられていた.血行障害は軽度と判断し裂孔閉鎖術を行ったが,術後10日目に流動食を開始したところ,再度イレウス状態となったためイレウスチューブを挿入,造影したところ,手術時の狭窄部に一致してKerckring雛壁の消失,小腸の拡張を認めたため再手術を行った.手術は約35cmの回腸切除および回腸一回腸端端吻合術を施行した.
    大網裂孔ヘルニア (TypeA) の本邦報告例は18例で,本症は貴重な症例と考え報告した.
  • 細野 竜司, 関野 昌宏, 清水 幸雄, 後藤 全宏, 今井 直基
    1993 年 54 巻 3 号 p. 783-786
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,大腿神経より発生した後腹膜神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
    症例は, 53歳,女性.慢性肝炎にて外来通院中に,右下腹部の腫瘤を指摘され,精査のため入院した.超音波検査, CTおよびMRIにて,右後腹膜腔に腸腰筋を正中側に圧排する多房性腫瘤を認めた.後腹膜腫瘍と診断し手術を施行したところ,腫瘍は大腿神経より発生したものであり,大腿神経を切断し,腫瘍を摘出した.病理組織学的には嚢胞性神経鞘腫と診断された.
    後腹膜腫瘍の画像診断はCT, 超音波検査が有用とされている.本症例では,術前MRIにて原発部位である大腿神経が描出されており後腹膜神経鞘腫が疑われた.本症においてMRIは,腫瘍を3次元的に描出でき,またCT, 超音波検査と組み合わせることで質的診断まで可能とし,有用と思われた.
  • 山本 隆行, 毛利 靖彦, 松本 収生, 黒田 道夫, 福田 宏司, 千賀 雅之
    1993 年 54 巻 3 号 p. 787-791
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    骨盤部CTにより術前に診断可能であった閉鎖孔ヘルニアの3例を報告する.
    3例はいずれも高齢の女性でイレウス症状を認めたが,閉鎖神経の圧迫症状であるHowship-Romberg徴候は1例にのみ陽性であった. 3例とも骨盤部CTにて閉鎖孔に嵌頓した腸管が鮮明に描出され,術前に診断可能であった.本症の診断にはCTが非常に有用であると考えられる.
  • 溝江 昭彦, 林 〓欽, 正 義之
    1993 年 54 巻 3 号 p. 792-795
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に確定診断を行いえた閉鎖孔ヘルニアの1例を経験し,腹部超音波検査及びCT検査が有用であったので報告する.症例は81歳の女性で,時々右股関節の激痛発作で整形外科で受診していた.今回下腹部痛を主訴に当院に入院した.右Howship-Romberg signを認め,腹部膨隆と蠕動不穏が著明であった.超音波検査で右鼠径靱帯下の大腿動脈内側に,筋層間を分け入るような類円形低エコー腫瘤を認めた.骨盤部CTで右恥骨筋と右内閉鎖筋の間に比較的均一な類円形腫瘤を認め,右閉鎖孔ヘルニアの嵌頓と診断した.手術にて右閉鎖孔に嵌頓した回腸を還納,ヘルニア嚢を内翻切除し縫合閉鎖した.小腸の数ヵ所に変色を認め,嵌頓と自然還納を反復した可能性が示唆された.高齢者のイレウスでは本症を念頭に置き,病歴の聴取,超音波検査, CT検査を積極的に実施することが早期診断に重要である.
  • 正司 義和, 洒井 めぐみ, 松原 峰夫, 森口 哲也, 引間 正彦, 田中 孝也
    1993 年 54 巻 3 号 p. 796-800
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    薬物中毒を契機として左上下肢のrhabdomyolysis,腎不全, DIC, ARDSなどの多臓器障害,全身の代謝異常を発生した症例を経験した.局所に対しては筋膜切開を含む外科的処置を,腎不全,高ミオグロビン血症,全身の代謝異常に対しては各種血液浄化法を施行した.肺における酸素化能の正常化には52日間を,血液浄化法よりの離脱には61日間を要したが,第90病日には麻痺も消失,創部も閉鎖可能となり,第110病日には各種臓器障害も軽快し,退院となった.
    本症例の病因としては,虚血再灌流に伴って放出された種々のchemicalmediatorの関与が考えられた.このため同様な症例に対しては,局所に対する適切な処置に加え,各種血液浄化法,蛋白分解酵素阻害剤投与などのchemicalmediator対策を考慮した治療が必要であると思われた.
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