日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
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56 巻, 1 号
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原著
  • 高橋 雄介, 吉岡 靖介, 朝日 陽子, 永山 智崇, 野杁 由一郎, 林 美加子
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:Minimal Interventionの概念が普及して,歯髄保存の重要性がより注目される一方で,う蝕象牙質の除去範囲についてはいまだに明確な基準が存在しない.本研究では,う蝕除去後の残存象牙質に対するEr:YAGレーザーの照射が,残存細菌に与える影響について多面的評価を行った.材料と方法:う蝕治療が必要な患歯57歯を対象とした.う蝕検知液にて象牙質が淡いピンク色に染色されるまでう蝕象牙質を除去した後,レーザー照射群(28歯)ではEr:YAGレーザーをう蝕除去後の残存象牙質に照射し,同部の象牙質採取を行い,定性的かつ定量的な細菌学的検索に供した.非照射群(29歯)では,レーザー照射を行わずに象牙質を採取し,レーザー照射群と同様の手順で実験を行った.また,一部の試料では採取した象牙質を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した.成績:レーザー照射群・非照射群とも,術後に臨床症状が出現した症例は認めなかった.また,非照射群では69%の試料から細菌が検出されたのに対し,レーザー照射群では43%の試料から細菌が検出され,照射群では有意に残存細菌の検出率が低下していた(p<0.05).一方,細菌が検出された試料で細菌数について評価したところ,非照射群と比較してレーザー照射群では検出された細菌数が有意に減少しており(p<0.05),このことは共焦点レーザー顕微鏡による観察でも確認された.検出された細菌種については,レーザー照射群と非照射群の問で明確な違いは認められなかった.結論:う蝕象牙質除去後の残存細菌に対する殺菌効果について,低出力Er:YAGレーザーの照射は有用であることが明らかとなった.
  • 伊藤 崇史, 山中 裕介, 金子 友厚, 吉羽 邦彦, 吉羽 永子, 重谷 佳見, 興地 隆史
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:Mineral trioxide aggregate (MTA)に対するマクロファージや樹状細胞の生体内での応答様式を追究するため,MTAを移植されたラット皮下結合組織における各種マクロファージ・樹状細胞関連分子の発現状況を,免疫組織化学的,もしくは定量的遺伝子発現解析により検討した.材料と方法:MTA (ProRoot MTA)および対照として水酸化カルシウム系覆髄材(Life)を被験材料とし,それぞれシリコンチューブへ充填後,Wistar系雄性ラットの背部皮下へ移植した.同一サイズのシリコンロッドをコントロール群とした.14日経過後に移植体周囲組織を採取し,ED1(CD68:抗マクロファージおよび樹状細胞)およびOX6(抗主要組織適合抗原クラスII分子)を用いて酵素抗体二重染色を施した後,ED1+/OX6+細胞およびED1+/OX6-細胞の密度を求めた.さらに,リアルタイムPCR法を用いてCD163(組織修復(M2)マクロファージのマーカー)およびCD34(血管内皮細胞,一部の真皮樹状細胞などが発現)のmRNA発現レベルを定量した.成績:MTA移植群では,ED1+/OX6+細胞はほかの全群と比較して,またED1+/OX6-細胞はLife移植群と比較して,有意に高い密度を示した(p<0.05).また,MTA移植群におけるCD163およびCD34mRNA発現は,他群より有意に高レベルであった(p<0.05).結論:ラット皮下結合組織において,MTAはLifeと比較して有意に高密度のCD68陽性細胞亜群(ED1+/OX6+細胞およびED1+/OX6-細胞)の浸潤と,有意に高レベルのCD34, CD163mRNA発現を誘導した.マクロファージの関与する創傷治癒・組織修復機構が,MTAに対する生体反応に関与する可能性が示唆された.
  • 澤 悦夫, 向井 義晴, 富山 潔, 椎谷 亨, 飯塚 純子, 長谷川 晴彦, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:象牙質知覚過敏治療法として,平均粒径0.8μmのsurface pre-reacted glass ionomer (S-PRG)微粉末とポリアクリル酸から構成される新規象牙細管封鎖法を考案し,象牙細管を開口した象牙質に適用し,その細管封鎖能を表面および割断面からSEMにより観察するとともに,適用下象牙質の耐酸性能をtransversal microradiography (TMR)を用いて評価した.材料と方法:象牙細管を開口させたウシ歯根部象牙質を用い,実験群にはS-PRG処理ならびにMSコートを適用した.細管を開口させたのみの象牙質を対照群とした.S-PRG処理は,脱イオン水(DW)を含ませたマイクロアプリケーターでS-PRG微粉末を微量採取して象牙質表面に15秒間擦り込んだ後,ポリアクリル酸溶液をマイクロアプリケーターでさらに5秒間擦り込み処理し,象牙質表面および割断面をSEM観察した.試料の耐酸性試験は,各群の処理に引き続き耐酸性バーニッシュにより1×3mmの開窓部を規定して脱灰試験に付し,薄切してTMR撮影後,脱灰病巣形態の比較およびミネラル喪失量(integrated mineral loss: IML)を測定した.成績:対照群のSEM観察では,すべての細管が開口しており試料は知覚過敏モデルとして適切であることが示された.S-PRG群ではS-PRG微粉末とポリアクリル酸の反応物からなる薄膜により象牙質表面は完全に被覆され,細管内約20μmまで反応生成物がプラグ状になって入り込み,良好な細管の封鎖状態を示していた.一方,MS群は24時間水中保管後には開口した細管も認められ,脱灰試験後はさらに開口した.脱灰試験後のTMR像では,対照群とMS群において低いミネラル濃度を示す顕著な病巣が観察されたのに対し,S-PRG群では,高いミネラル濃度を示す軽微な病巣が確認された.また,S-PRG群はほかの2群に比較し有意水準5%で低いIMLを示した.結論:細管が開口した象牙質表面にS-PRG処理を適用することにより象牙細管が確実に封鎖されること,および適用下象牙質の脱灰が効果的に抑制されることが確認され,本法が有効な知覚過敏症の治療法となりうることが示唆された.
  • 大橋 桂, 二瓶 智太郎, 三宅 香, 清水 統太, 寺中 文子, 芹田 枝里, 原 健一郎, 近藤 行成, 好野 則夫, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:われわれはシランカップリング層の耐水性を向上させるために,疎水性基を有するシランカップリング剤を合成・開発し,一般的に使用されている3-methacryloyloxypropyltrimethoxysilane (3-MPS)単独処理に比較して,長期水中保管後の接着強さが有意に低下しないことを報告してきた.本研究では,疎水性基を有するシランカップリング剤nonafluorohexyltrimethoxysilane (4F),および3- (4-methacryloyloxyphenyl) propyltrimethoxysilane (p-MBS)の生体為害作用の有無を細胞毒性試験により評価した.材料と方法:50mmol/lに調製した3-MPS, 4Fおよびp-MBSで表面改質したガラス板をエチレンオキサイドガスで滅菌した後,細胞培養液(MO5)に浸漬し,37℃, 5%CO2インキュベーター中で24時間抽出した.これを100%抽出液としてMO5培養液で10種類に段階希釈(0.5〜50%)し,検体試験液を作製した.培養は24 well組織培養用プラスチックプレートに100個/mlに調製したチャイニーズハムスター肺由来線維芽細胞(V79)を0.5ml/well播種し,37℃, 5%CO2インキュベーター中で6時間培養した.培養後,各濃度の検体試験液を0.5ml/wellずつ加え培養し,6日後に0.1%メチレンブルー溶液で染色して,細胞数50個以上のコロニーを計測した.細胞毒性評価は,50%コロニー形成阻害濃度(IC50)を求めた.結果および考察:その結果,3-MPS, 4Fおよびp-MBSのIC50は,100%以上であった.このことから,今回用いた疎水性基含有シランカップリング剤は細胞毒性を示さないことが示唆された.
  • 高松 秀行, 片桐 さやか, 長澤 敏行, 小林 宏明, 小柳 達郎, 鈴木 允文, 谷口 陽一, 南原 弘美, 早雲 彩絵, 和泉 雄一
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:慢性歯周炎はインスリン抵抗性を亢進させることにより,2型糖尿病患者の血糖コントロールを悪化させると考えられている.高感度C反応性タンパク(hs-CRP), tumor necrosis factor-α (TNF-α), interleukin-6 (IL-6),また,アディポネクチン,レプチン,レジスチンのようなアディポカインなどのさまざまなメディエーターの増加や減少は,インスリン抵抗性に関与すると考えられている.本研究の目的は,歯周炎に罹患した2型糖尿病患者における,歯周治療による血糖コントロールおよび血清中のメディエーターへの影響を調べることである.対象と方法:歯周炎を伴う2型糖尿病患者41名に,抗菌薬の局所投与を併用した歯周治療を行った.ベースライン時と歯周治療2,6カ月後に,歯周組織検査として,プロービング深さ(PPD),プロービング時の出血(BOP)を測定し,また採血を行って糖化ヘモグロビン(HbA1c), hs-CRP, TNF-α, IL-6,アディポネクチン,レプチン,レジスチンを測定した.結果:全被験者において,PPDとBOPは有意に減少したがHbA1cおよび血清中のメディエーターには有意な変化は認められなかった.次に,6カ月後のBOPの改善率が50%以上の群(BOP-D群)とBOPの改善率が50%未満の群(BOP-ND群)に分けて解析を行ったところ,BOP-D群ではPPD, BOP, HbA1cが有意に減少しており,血清中のアディポネクチンは有意に増加していた.一方,BOP-ND群においては,PPDとBOPの有意な減少が認められたが,HbA1cや血清中のメディエーターには有意な変化は認められなかった.さらにBOP-D群においては,BOPとレジスチンの6カ月間の変化量の間に有意な正の相関(p=0.03, ρ=0.49)が認められた.結論:歯周炎に罹患した2型糖尿病患者において,歯周組織の炎症が顕著に改善した被験者では,血清アディポネクチンの増加およびHbA1cの減少が認められた.またBOPの減少に伴ってレジスチンも減少することが示された.歯周炎に罹患した2型糖尿病患者に対してBOPの改善率が50%以上と表されるように大きく炎症が減少することにより,インスリン抵抗性が改善し,血糖コントロールが安定する可能性が示された.
  • 山羽 聡子, 北村 正博, 宮里 幸祐, 栗原 暁子, 島 美和子, 久保田 実木子, 西村 誠, 山本 温, 吉岡 恵利, 松本 航, 伊 ...
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,supportive periodontal therapy (SPT)の歯の保存に対する有効性を検討した.方法:約3カ月ごとのリコール間隔で10年以上SPTを受けている268人の歯周炎患者の残存歯数と歯の喪失を調査し,その推移を平成17年歯科疾患実態調査と比較した.結果:被験者は動的歯周治療が終了したSPT開始時(平均年齢50.8歳)に平均24.4本の歯を有し,その後10年間のSPT期間に年平均0.22本の歯を喪失したが,その喪失歯の割合は上記実態調査の同年齢層の人よりも少なかった.さらに,SPT開始時の残存歯数が同実態調査で示された同年齢層の残存歯数より少なかった被験者(105人)も,平均16.7年間のSPT後には同調査における同年齢層の人よりも多数の歯を保有していた.結論:SPTが歯の保存に効果的であることが明らかとなった.
  • 加藤 侑, 合田 征司, 池尾 隆, 林 宏行
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:う蝕の進行に伴い,う蝕病原性細菌により歯髄組織に炎症が惹起される.炎症時の歯髄組織では炎症性サイトカインであるIL-1βが産生され,炎症の進行に伴いマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)などのタンパク質分解酵素が産生される.特にMMP-3は,細胞外マトリックス分解能だけでなく,ほかのMMP-1, MMP-7, MMP-9を活性化し,歯髄組織を破壊進行し,炎症を進展することが知られている.C-Jun N-terminal kinase (JNK)は,アポトーシス,細胞分化・増殖,炎症やサイトカイン産生に関与していることが報告されている.そこでわれわれは,歯髄炎の進展機序を解明するために,ヒト歯髄由来線維芽細胞を用いてIL-1β刺激によるMMP-3の産生およびそのシグナル伝達経路を検討した.材料と方法:大阪歯科大学医の倫理委員会において承認を得た(大歯医倫100505号).ヒト歯髄由来線維芽細胞を初代培養し,以下の実験に用いた.ヒト歯髄由来線維芽細胞はα-MEM (serum-free)にて培養後,IL-1β (0, 10, 20, 50, 100ng/ml)およびJNK inhibitors (AS601245)を添加し,24時間共培養を行った.刺激終了後,MMP-3の産生およびJNKのリン酸化をそれぞれの抗体を用いてウエスタンブロット法にて検討した.また,培養上清を1mg/mlのゼラチンを加えたSDS-PAGEに供し電気泳動を行い,Comassie blueにて染色後Destain bufferにて脱染色しザイモグラフィー法にて検討した.結果:ヒト歯髄由来線維芽細胞においてIL-1β濃度依存性にMMP-3の産生は増強したが,MMP-2の産生に影響は認められなかった.さらに,ヒト歯髄由来線維芽細胞においてIL-1β刺激により増強したMMP-3の産生およびJNKのリン酸化はJNK阻害剤であるAS601245添加により有意に抑制された.結論:以上より,ヒト歯髄由来線維芽細胞において歯髄炎進展に深くかかわっているMMP-3の産生には,JNKの活性化が関与している可能性が示唆された.
  • 栗林 恵美, 北迫 勇一, サダル アリレザ, 田上 順次
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:光ファイバー微小pHセンサー,ISFET (Ion-Sensitive Field Effect Transistor)微小pHセンサーおよびDIAGNOdent penを用いて,抜去う蝕歯のう蝕活動性評価を行い,各デバイスの有効性について比較検討した.材料と方法:エナメル質初期う蝕または象牙質う蝕を有するヒト新鮮抜去歯30本を用いた.う蝕表層部の色調や硬さの臨床的な診断基準に従って,急性う蝕,慢性う蝕,初期う蝕の3つのグループに分類した後(n=10),光ファイバー微小pHセンサー,ISFET微小pHセンサー,DIAGNOdent penによるう蝕表層の蛍光反射の測定を行った.各う蝕の測定値はWilcoxon rank sum testを用いて比較した.さらに,各デバイスで得られた測定値の相関性は,Spearmanのローを用いて検定した.すべての分析において有意水準5%にて検定を行った.成績:光ファイバー微小pHセンサーを用いた場合,急性う蝕の表層pH値は5.7±0.3,慢性う蝕は6.2±0.2,初期う蝕は6.2±0.1を,ISFET微小pHセンサーを用いた場合,急性う蝕の表層pH値は5.5±0.3,慢性う蝕は6.1±0.3,初期う蝕は6.2±0.2をおのおの示し,両デバイスにおいて,急性う蝕および慢性う蝕間のpH値に統計学的有意差が認められた(p<0.05).一方,DIAGNOdent penを用いた場合,急性う蝕の測定値は99.0±0.0,慢性う蝕は83.1±19.2,初期う蝕は33.0±20.4であり,慢性と初期う蝕間の測定値に統計学的有意差が認められた(p<0.05).また,すべてのデバイスにおいて,急性と初期う蝕間の測定値に統計学的有意差が認められた(p<0.05).なお,各デバイスで得られた測定値の相関性は,光ファイバー微小pHセンサーとISFET微小pHセンサーとの間に強い正の相関を,DIAGNOdent penと光ファイバー微小pHセンサーとの間,およびDIAGNOdent penとISFET微小pHセンサーとの間に負の相関を認めた(p<0.05).結論:すべてのデバイスで,測定値を指標とした,急性う蝕および初期う蝕間におけるう蝕活動性評価の有効性が示唆された.また,光ファイバー微小pHセンサーとISFET微小pHセンサーとの間で正の強い相関が認められた.
  • 吉川 孝子, 森上 誠, 田上 順次
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:著者らは,光重合型コンポジットレジンにおいて,始めは弱く次に強く光照射を行う低出力照射法(Slow-start curing法)により重合すると,窩底部レジンの重合促進効果が認められ,レジン修復物の辺縁封鎖性ならびに窩壁適合性が向上することを報告している.本研究では,実験用ランプ電圧可変型光照射器(ジーシー)を使用し,Slow-start curing法を用いて,各種レジンにおける窩底部レジンの重合促進効果について検討した.材料と方法:深さ2mmのテフロンモールドに,Clearfil AP-X(クラレノリタケデンタル),Photo Clearfil Bright(クラレノリタケデンタル)のVitaシェードのA3とB4に対応するおのおの2種類のシェードのレジンを填塞し,Slow-start curing法と通常の光照射法により重合硬化させた.すなわち,(1)600mW/cm^2 60秒の通常照射法,(2)270mW/cm^2 10秒照射,インターバル5秒,600mW/cm^2 50秒のSlow-start curing法を用いた.硬化物をモールドから取り出し,その表面と底面のヌープ硬さを光照射終了直後に荷重100g,負荷時間15秒の条件で測定を行い,底面の硬さを表面の硬さで割ったHardness ratioを求めた.成績:通常の光照射法である600mW/cm^2 60sで光照射を行い,光重合型コンポジットレジンを硬化すると,レジン材料,シェードにかかわらず,すべての群で重合直後のレジン試片の表面が底面に比べ有意にヌープ硬さが高くなった.Slow-start curing法の270mW/cm^2 10s+interval 5s+600mW/cm^2 50sで光照射を行い,光重合型コンポジットレジンを硬化すると,VitaシェードA3に対応するPhoto Clearfil Brightの重合直後のレジンの底面が表面に比べ有意にヌープ硬さが高くなった.また,Clearfil AP-XとPhoto Clearfil BrightのVitaシェードB4に対応するレジン試片においては,表面と底面のヌープ硬さが同等となった.結論:Slow-start curing法により重合すると,窩底部レジンの重合促進効果が認められることが確認された.レジンの重合に伴いコントラスト比が増加する光重合型コンポジットレジンのほうが,コントラスト比の減少が大きいレジンよりも窩底部レジンの重合促進効果が高く,重合収縮応力を緩和する可能性が示唆された.
  • 大野 知子, 内藤 徹, 阿南 壽, 佐藤 博信
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:非接触型歯科用分光光度計を用いて歯の色を測定し,オフィスブリーチによる色の変化とその後の推移を評価した.対象と方法:本研究は,福岡歯科大学倫理委員会の承認を得て本学医科歯科総合病院口腔顔面美容医療センターにて行った.被験者は,オフィスブリーチを受けた者のうち研究への参加の同意が文書で得られた成人63名とした.オフィスブリーチには,過酸化水素を用いた漂白システム(Beyond Whitening System, Beyond Dental & Health, USA)を用いて製造業者の指示どおり漂白剤塗布と光照射を3回繰り返して漂白を行い,14日後にも再び同処置を行った.歯の色の測定は,非接触型歯科用分光光度計Crystaleye (CE100-DC, Olympus)を用い,術前,漂白直後および1カ月後の計3回行った.色は,CIEL*a*b*均等知覚色空間(Commission Internationale de l'Eclarirage, 1976)を用いて数値化し,被験歯の唇側面を歯頸部,歯冠中央部,切縁部の3部位に分けて術前の部位別の色を統計解析した.歯種ごとの有意差が最も顕著にみられた部位を用いてオフィスブリーチの効果を評価することとし,術前,漂白直後,1カ月後の色を解析した.統計学的検討は,one-way ANOVAおよびBonferroni's post-hoc testにより有意水準5%で行った.成績:術前における被験歯の部位別の色を解析したところ,3部位のうち歯冠中央部で最も歯種ごとの有意差がみられた.歯冠中央部を代表部位とし,術前に比較して漂白直後の色は,全歯種において有意にL*が高く,a*およびb*が低くなっていた.また,漂白直後と比較して1カ月後では,a*は上顎側切歯と上顎犬歯でさらに低くなっており,ほかの歯種でも有意差を認めず後戻りはなかった.一方でL*は上顎犬歯と下顎側切歯を除く歯種で有意に低く,b*はすべての歯種で有意に高くなっており,後戻りが観察された.結論:非接触型歯科用分光光度計を用いてオフィスブリーチによる歯の色の変化を評価した結果,歯の漂白効果を客観的に確認できた.一方,漂白1カ月後において歯の部位,歯種および測定項目による差があるものの,すでに色の変化が認められた.
  • 及川 美早, 伊藤 和雄, 楠 みづほ, 北原 信也, 長谷川 篤司
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2013/02/28
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,超音波振動器に曲腕のチップを装備した場合の手指感覚によるう蝕象牙質削除精度を,う蝕染色液(Caries Check)による染色を指標にスティールバーによって削除した場合と比較検討した.方法としてう蝕象牙質除去後の象牙質窩壁の硬さ,および励起光としてレーザー光を使用するDIAGNOdentとLED光を使用するVistacam Pの2種類の蛍光う蝕診断法を用いて,う蝕象牙質除去後の象牙質窩壁からの蛍光を計測することによって評価した.方法:象牙質う蝕のあるヒト抜去歯20本をう蝕の中心を通る歯の長軸方向に切断し,この断面上で歯髄腔からう蝕部に向かって200μmごとに象牙質のマイクロビッカース硬さ(MVH)を測定した.1つのグループでは,超音波装置を使用してう蝕象牙質を経験的な手指感覚によって削除し,他方では,Caries Checkを併用し,歯科用低速回転切削バーによってう蝕象牙質を削除した.切削後,象牙質窩壁面のMVHを確認するとともに,窩壁面からの蛍光をD値(DIAGNOdent)およびVistacam P値(Vistacam P)を測定して比較検討した.結果:Vistacam P値では2グループ間に有意差が認められなかった(p>0.05)が,MVHおよびD値では有意差が認められた(p<0.05).結論:超音波振動装置に取り付けたダイヤモンドチップによるう蝕除去法は,残存象牙質のMVH,D値の結果から,う蝕象牙質の過剰切削が危惧されるため,Caries Checkによる指標を伴いながら削除することが推奨される.また,Vistacam Pによる残存象牙質の歯質の細やかな区分は困難であることがわかった.
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