日本歯科保存学雑誌
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59 巻 , 5 号
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総説
原著
  • 雨宮 傑, 遠藤 悠美, 浅井 拓, 足立 哲也, 足立 圭司, 西垣 勝, 大迫 文重, 山本 俊郎, 金村 成智
    2016 年 59 巻 5 号 p. 394-401
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 羊膜は抗炎症・感染抑制作用などを有し, 種々の手術療法に用いられ, 移植材料としてだけでなく培養基質としても高い有用性・有効性が注目されている. われわれはこの羊膜に注目し, 羊膜を基質とした各種培養細胞シートを作製し, 一部では臨床応用を実施しており新たな再生医療的治療法としての有効性を示してきた. 近年, 骨膜由来の細胞をシート状に培養して移植し, 歯周組織再生を試みる研究が散見される. 今回, 新規骨膜由来細胞シートの作製を念頭に, 羊膜上にて骨膜由来細胞の培養を行い, 同培養シートのin vivoにおける細胞動態について免疫組織学的な検討を加えた.

     材料と方法 : 羊膜は帝王切開時の胎盤より採取したものを研究に供し, 骨膜組織は口腔外科手術時の粘膜骨膜弁作製時に, 歯槽骨上にある組織を骨膜組織として採取した. 得られた骨膜組織の初代培養を行い, 3~4代継代したものを骨膜由来細胞とした. 得られた細胞を, 上皮細胞を剝離・除去した羊膜上に播種し3週間の培養を行った. 上記にて得られた培養シートをヌードマウス腎被膜下へ移植し, 4週間後に摘出, H-E染色, ならびに免疫染色を行った.

     成績 : 骨膜由来細胞は羊膜上にて層状構造を示し, 免疫染色像では細胞増殖マーカーであるKi-67, 間葉系細胞マーカーであるvimentin, 骨芽細胞マーカーであるosteocalcinの発現が認められた. また, デスモソームのマーカーであるdesmoplakinおよびタイト結合のマーカーであるZO-1が発現し, 細胞シートを形成していた. また, 移植後もvimentin, osteocalcinの発現を認め, その性質を保持していた.

     結論 : 骨膜由来細胞は羊膜上で1枚の細胞シートを形成して増殖しており, 羊膜は培養に適当な基質であることが示唆された. 骨膜には骨芽細胞や骨細胞へ分化する能力をもつ細胞が含まれているとされ, 細胞シートにて骨芽細胞が産生するタンパクの発現を認め, in vivoの環境下でもその性質を保持していた. 今後, 長期間移植後の検討が必要と思われるが, 羊膜を用いた骨膜由来細胞シート作製が可能であることが示された.

  • —疑似エナメル質および修復物表面性状の変化とプラーク除去率について—
    川本 諒, 五條堀 眞由美, 柴崎 翔, 松吉 佐季, 鈴木 総史, 平井 一孝, 植田 浩章, 金澤 智恵, 高見澤 俊樹, 宮崎 真至
    2016 年 59 巻 5 号 p. 402-409
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯科疾患の予防という概念の普及に伴って, 機械的歯面清掃 (PMTC) を行う機会が増加している. その際に用いられるPMTCペーストは, さまざまな製品が市販されているものの, プラーク除去効果あるいは歯質に対する影響については不明な点が多い. そこで, PMTCペーストの使用がエナメル質および歯冠修復物の表面性状とプラーク除去効果に及ぼす影響について検討した.

     材料と方法 : 疑似エナメル質としてステンレス板 (SUS304), コンポジットレジン試片としてFiltek Supreme Ultra (3M ESPE), 金銀パラジウム合金試片としてキャストウェルM. C. 金12% (ジーシー) を用い, それぞれ通法に従って10×10×1mmの平板に調整したものをPMTC用試片とした. これらの試片に対し, 等速コントラアングルに歯面清掃ブラシを装着し, PMTCペースト0.1gを用い, 回転数2,000rpm, 荷重250 gfの条件で, 15秒間PMTCを行った. なお, 供試したPMTCペーストは, クリンプロクリーニングペーストPMTC用 (CP, 3M ESPE), コンクールクリーニングジェル (CJ, ウェルテック), メルサージュレギュラー (MR, 松風), メルサージュファイン (MF, 松風) およびメルサージュプラス (MP, 松風) の合計5製品とした. PMTC終了後の試片について, その表面をレーザー走査顕微鏡を用いて観察するとともに付属のソフトウェアによって表面粗さRa (μm) を求めた. また, 表面に塗布した人工プラークの残存面積 (mm2) を計測することによって, 人工プラーク除去率を算出した.

     成績 : PMTC後のステンレス, コンポジットレジンおよび金銀パラジウム合金試片の表面粗さは, 用いたPMTCペーストによって異なる傾向を示した. 特に, CJ, MRおよびMFはBaselineと比較してPMTC後の表面粗さが増加し, MRはほかの製品と比較して有意に高いRa値を示した. 一方, CPにおいては, コンポジットレジンおよび金銀パラジウム合金でPMTC後の表面粗さが増加したが, ステンレス板においては変化が認められなかった. また, プラーク除去率についても使用した製品によって異なる傾向を示した.

     結論 : エナメル質, コンポジットレジンおよび金銀パラジウム合金のPMTC後の表面粗さの変化ならびにプラーク除去率は, 用いたPMTCペーストによって異なるものであり, 配合されている研磨粒子の成分や粒径によるものであったことが示された.

  • 長谷川 晴彦, 富山 潔, 熊田 秀文, 飯塚 純子, 國松 雄一, 浜田 信城, 向井 義晴
    2016 年 59 巻 5 号 p. 410-417
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 根面齲蝕の予防は高齢者にとって重要な課題である. 昨今, ブリーチングが幅広い年代にわたって受け入れられていることを鑑み, 本研究では, 過酸化尿素を主成分としたホームブリーチング剤の抗菌効果ならびに象牙質脱灰抑制効果を象牙質上に形成された多菌種バイオフィルムを用いて検討した.

     材料と方法 : 凍結保存した1被験者の刺激唾液を50倍希釈になるようにunbuffered McBain semidefined medium (0.2% sucrose添加, 0.2ppmF) に加え, ウシ象牙質歯根から取り出した直径6mm, 厚さ1.5mmの円盤状試片で嫌気培養することにより, バイオフィルムを作製した. 培養液の交換は10時間および14時間経過後に1日2回行った. 薬液は0.5%過酸化尿素水溶液 (0.5CP), 20倍希釈されたHiLite Shade Up (0.5HS) およびコントロールとして滅菌脱イオン水 (Cont) を用い, 培養開始から24時間後, 試料を各薬液で30分間浸漬処理した (各群n=6). 培養液のpHは, 培養開始から10時間, 処理直前, 処理後10時間, および処理後24時間に測定した. 生菌数 (CFU/ml) は, 処理直後および処理後24時間で測定した. また, 処理後24時間ではTransverse microradiography (TMR) にて, 各群の象牙質の平均ミネラル喪失量 (IML : vol%×μm) を測定した.

     結果 : 処理後10時間で0.5HSおよび0.5CPのpHが上昇した. また, 生菌数は処理直後, 処理後24時間ともに0.5HSおよび0.5CPがContと比較して有意に減少した. さらには, ミネラル喪失量は0.5CPがContと比べて有意な減少を示した.

     結論 : ホームブリーチング剤の主成分である過酸化尿素は, 象牙質上に形成されたバイオフィルム中の細菌数の減少ならびに象牙質脱灰抑制効果を示すことが確認された.

  • 吉居 慎二, 清水 博史, 西野 宇信, 諸冨 孝彦, 鷲尾 絢子, 西藤 法子, 北村 知昭
    2016 年 59 巻 5 号 p. 418-424
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究では, ファイバーポスト支台築造システムの1つであるi-TFCシステムの補強部材であるスリーブが築造体の強度に与える影響を, 通常根管と細い根管の2つの場合で, 2点曲げ強さ試験および繰り返し衝撃試験を用いてほかのファイバーポストシステムと比較・検討した.

     材料と方法 : 直径および形状の異なる7種類のファイバーポストと1種類のスリーブを試験に用いた. 試験片は, 通常根管と細い根管の2種類についてファイバーポスト支台築造体および全部金属冠による修復を想定して作製された. 2点曲げ強さ試験は曲げ強さ試験機を用いて分析し, 繰り返し衝撃試験は作製した衝撃試験機により築造体が破折するまでの回数を計測することで耐久性を分析した. 計測された曲げ強さ (N) および破折するまでの回数に関しては, ANOVA Tukey testにて有意水準5%で統計学的有意差の検定を行った.

     成績 : ファイバーポストの直径の増加は2点曲げ強さを大きくするが, 繰り返し衝撃試験で評価される耐久性には関連しない傾向が認められた. 繰り返し衝撃試験では, スリーブを併用したファイバーポスト (φ1.1mm) ではほかのサンプルと比較して耐久性が著しく高かった.

     結論 : スリーブを用いることにより耐久性が著しく向上することから, i-TFCシステムにおけるスリーブの使用は効果的な補強となることが示唆された.

  • 山田 志津香, 池田 毅, 山本 耕平, 栁口 嘉治郎, 林 善彦
    2016 年 59 巻 5 号 p. 425-431
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 超高齢社会の到来により, 骨粗鬆症による骨折が社会問題となっている. 歯科領域においては, インプラント埋入部の骨の厚さや強度不足が治療の妨げとなることがある. このため, 骨再生剤の研究開発が急務となっている. 牛海綿状脳症 (BSE) や口蹄疫などの人畜共通感染症の対象動物である牛や豚由来の生体材料の代替物として, 魚の皮や骨由来のコラーゲンペプチド (FCP) は, その可能性がある. 今回, 顎骨の骨欠損部へ直接塡塞した後, 骨再生過程を観察し, FCPの骨再生剤としての有用性を検討した.

     材料と方法 : ラットに腹腔内麻酔の後, 下顎骨下縁とオトガイ孔の間の骨面にラウンドバーを用いて, 左右にそれぞれ2カ所ずつ円筒形の骨窩洞を形成した. 左右1対の窩洞内を滅菌生食水で洗浄, 止血後, 窩洞にFCPを緊密に塡入し, 皮弁を縫合した. 残り1対の窩洞は対照群とした. 術後1, 4, 8週間および12週間経過時におのおののラットを全身麻酔下で灌流固定後, 顎骨試料は上昇系列のエタノールで脱水し, エポキシレジンに包埋した. 準超薄切片はトルイジンブルー染色を施した後, 光学顕微鏡下で観察・撮影を行った.

     結果 : 術後1週目では, FCP塡塞群・対照群ともに炎症性細胞浸潤はほぼ消失していたが, FCP塡塞群は脈管系の新生が旺盛で, また線維芽細胞の増殖も認めた. 対照群は脈管系の新生を認めるが, 細胞成分はまだ少なかった. 4週目では, FCP塡塞群において窩洞周辺部および深部において骨芽細胞の増殖が認められた. また窩洞入口に島状の新生骨の形成が認められた. 対照群ではFCP塡塞群同様, 窩洞周辺部および深部で骨新生はみられたが, 窩洞入口中央では骨性修復を認めなかった. 8週目においては, FCP塡塞群でかなり骨性修復が進行していたが, 対照群では窩洞の骨性閉鎖は未完了であった. 12週目では, FCP塡塞群の窩洞入口は層板骨により完全に閉鎖していた. 対照群では窩洞入口は線維性組織による閉鎖がみられたが, 骨性修復は不完全であった.

     結論 : FCPは早期に骨欠損部の骨性修復再生を促進させることが明らかとなった. BSEなどの感染の危険性がなく安価であるFCPは, 骨再生剤として今後臨床応用の可能性を十分有する有用な材料であることが明らかとなった.

  • 寺田 裕, 長澤 敏行, 小西 ゆみ子, 尾立 達治, 森 真理, 森谷 満, 舞田 健夫, 井出 肇, 辻 昌宏, 川上 智史, 古市 保 ...
    2016 年 59 巻 5 号 p. 432-443
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯周病を含む口腔の健康状態と脳梗塞や虚血性心疾患といった心血管疾患との関連については以前から研究されているが, 残存歯の咬合状態を含めて検討したものはほとんどない. 本研究では心臓血管疾患の既往と, 残存歯の健康状態ならびに咬合接触との関係を明らかにすることを目的として, 大学病院の内科と歯科の両方を受診している患者の歯科および内科の診療記録を分析した.

     対象と方法 : 北海道医療大学病院の内科と歯科を受診しており, 血液検査・歯周組織検査ずみの93名を対象とした. 対象者は脳梗塞および虚血性心疾患既往の有無で分類後, 診査または検査項目の種類に応じてPearsonのカイ二乗検定, Fisherの正確確率検定, あるいはMann-Whitney検定を行った後, 二項ロジスティック回帰分析で関与している予測因子を解析した.

     結果 : 93名中脳梗塞の既往者は8名, 虚血性心疾患の既往者は16名であった. 脳梗塞の既往者はEichner Cで有意に多く, Eichner Aで少なかった (p=0.015). 脳梗塞の既往者の総コレステロール (p=0.023) とHDLコレステロール (p=0.005) は低かった. 虚血性心疾患の既往者では, どの変数にも有意差はみられなかった. 脳梗塞の既往を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析では, Eichner C該当者 {p=0.013, オッズ比 (OR)=17.381, 95%信頼区間 (95%CI)=1.848~163.489} およびHDLコレステロール (p=0.020, OR=0.894, 95%CI=0.813~0.982) が有意な独立変数であることが明らかになった. 虚血性心疾患の既往者に対しては, 統計学的に有意に成立する回帰モデルは構築できなかった.

     結論 : 脳梗塞の既往と, 上下顎の咬合接触の喪失を伴う歯の欠損との間で関連が示唆された.

症例報告
  • 林 善彦, 井川 一成, 杉本 浩司, 栁口 嘉治郎, 山田 志津香
    2016 年 59 巻 5 号 p. 444-449
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 外歯瘻は, 根尖性歯周炎後に二次的に形成されるものである. 根尖性歯周炎は, 歯髄炎, 歯根破折, あるいは歯の外傷後に発症する. この根尖性歯周炎は, 皮膚病変の発症にも影響するが, 一般に原因歯は失活歯であることが多い.

     症例 : 今回, 完全埋伏智歯の抜去後に生じた頰部の紅斑性病変を有する症例を報告する. 歯原性を疑った皮膚病変は, X線検査のほか磁気共鳴映像法 (MRI) を用いて診査された. 処置として下顎左側第一・第二大臼歯の抜髄と根管治療を施し, 頰の紅斑性病変の改善を認めた.

     結論 : MRIは, 非侵襲的な優れた診断技術である. これによって, 骨や軟組織に生じる感染性化膿性病変の進行を確認できる. 本症例の原因歯は生活しており, また瘻孔も存在しなかったため, 典型的な外歯瘻様病変ではなかったが, 抜髄と根管治療によって頰の紅斑性病変は改善できた.

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