日本歯科保存学雑誌
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最新号
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総説
  • 吉羽 邦彦
    2024 年 67 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー
  • ―特に食習慣・食栄養バランス改善の点からの考察―
    三辺 正人, 山本 裕子, 河野 寛二, 中澤 正絵, 山本 龍生
    2024 年 67 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

     歯周病が全身の健康に影響を及ぼす経路については,局所歯周病巣由来の細菌,炎症性サイトカインやメディエーターが全身循環や消化管を経由して遠隔組織に影響を与える経路とともに,歯周病由来の歯の動揺や喪失,咬合痛による咀嚼能の低下を伴う不良な食習慣・食栄養状態の2つの経路が考えられる.本総説では,歯周治療による咀嚼機能回復が血糖コントロールをはじめ全身の健康に寄与するかという観点から,特に食習慣・食栄養改善という点に注目して文献的考察を行った.歯周病患者の咀嚼能と血糖コントロールおよび全身的健康の改善に関するエビデンスは,現状では少ないもののその重要性は十分に認識されていると考えられる.食習慣・食栄養については,咀嚼機能の低下と関連する食習慣や食栄養バランスの悪化は,歯肉炎症や口腔フローラのDysbiosisを助長することから歯周病の修飾リスク因子であることが示唆される.一方,抗炎症食品の摂取は,プラークの付着量や口腔清掃の有無と無関係に歯周組織の炎症を軽減することが明らかにされており,抗炎症性の健康食パターンは,標準的な口腔清掃や歯周治療の効果を増強すると考えられる.生活食習慣改善と歯周病ケアを医科歯科連携して組み合わせて行うプログラムを実践することにより,歯周病臨床症状とともに血糖コントロールの有意な改善効果が示されている.以上のことから,生活習慣病という視点から歯周病を捉えた場合,歯周病発症進行リスク因子への対応として食習慣および食栄養指導が必要であると考えられる.また,歯周病と糖尿病は双方向性の関係があり,双方の視点に立った咀嚼機能改善に関連した食習慣・食栄養指導は,疾病負荷の観点からも合理的と考えられる.

ミニレビュー
原著
  • 塚原 弾, 谷本 安浩, 永田 俊介, 平山 聡司
    2024 年 67 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

     目的:近年,シェードテイキングの簡略化を目的として,シングルシェードで広い範囲の色調に適合可能なコンポジットレジン(CR)が開発された.CRの問題点の一つとして,着色性の飲食物や唾液などに由来する変色が挙げられるが,色調適合性を有するシングルシェードCRの色調安定性に関する報告は少ない.本研究では,色調適合性を有するシングルシェードCRについて歯ブラシ摩耗試験および浸漬試験を行い,その色調安定性に関して従来のCRとの比較・検討を行った.

     材料と方法:シングルシェードCRとして,Omnichroma(トクヤマデンタル,OMC),Omnichroma Flow(トクヤマデンタル,OMF),Beautifil Unishade(松風,BUN),Clearfil Majesty ES Flow Universal U(クラレノリタケデンタル,CLM),Clearfil Majesty ES Flow Universal UD(クラレノリタケデンタル,CLD)およびClearfil Majesty ES Flow Universal UW(クラレノリタケデンタル,CLW)の計6種類と,対照群として従来のCRである,Estelite Σ Quick(トクヤマデンタル,EST),Estelite Universal Flow(トクヤマデンタル,ESF),Beautifil Ⅱ(松風,BFⅡ),Beatifil Flow Plus X(松風,BFF),Clearfil Majesty ES-2(クラレノリタケデンタル,CMP)およびClearfil Majesty ES Flow(クラレノリタケデンタル,CMF)の計6種類を実験材料とした.これら計12種類のCRについて,摩耗群と未摩耗群をそれぞれ作製し,コーヒー液および蒸留水に28日間浸漬を行うことで色差ΔE*abを算出した.加えて,別規格の試料を作製し,蒸留水に28日間浸漬を行うことで吸水率および溶解率を算出した.

     成績:コーヒー液浸漬群のなかで,S-PRGフィラー含有のBUNは28日間の浸漬で未摩耗群および摩耗群ともに他のCRと比較して有意に高いΔE*abの値を示した(p<0.05).また,コーヒー液浸漬群における各CRの未摩耗群と摩耗群のΔE*abを比較した場合,浸漬28日目ではCLM,CLW,EST,ESF,BFFおよびCMPの未摩耗群が摩耗群と比較して有意に高い値を示した(p<0.05).一方で,蒸留水浸漬群は,すべてのCR間および各CRの未摩耗群と摩耗群間において,ΔE*abの値は有意な差を示さなかった(p>0.05).吸水率は,BFFが他のCRと比較して有意に高い値を示し(p<0.05),無機質フィラー含有量との間に負の相関を認めた.溶解率は,CMPが最も高い値を示し,CLM,CLD,CLWおよびCMFに対して有意な差を認めたが(p<0.05),無機質フィラー含有量との間に相関を示さなかった.

     結論:S-PRGフィラーを含有するBUNは,コーヒー液浸漬によってΔE*abが顕著に高い値を示したことから,シングルシェードCRの色調安定性はレジン成分のみならず,フィラーの特性による影響を受けることが示唆された.

  • ―フルレングステクニックとクラウンダウンテクニックの比較―
    新井 恭子, 湊 華絵, 佐藤 友則, 横須賀 孝史, 松田 浩一郎, 清水 公太, 両⻆ 俊哉, 北島 佳代子
    2024 年 67 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

     目的:ニッケルチタン製ロータリーファイル(Ni-Tiファイル)のNEX NiTiファイルMs(NEX)は,フルレングステクニックとクラウンダウンテクニックの2通りの方法で使用できるファイルとして開発されている.しかし,根管形成の相違などの詳細についての報告は少ない.本研究の目的は,NEXを用いたフルレングステクニック(NF)とクラウンダウンテクニック(NC)により透明彎曲根管模型に根管形成を行い,総拡大形成時間,形成時の荷重,形成後の根管偏位量について評価することである.

     材料と方法:30度彎曲透明根管模型END-TRAINING-BLOCを,NF,NCおよびステンレススチール製Kファイル(SSK)で根管形成した(各群n=9).総拡大形成時間と形成時の荷重を測定し,根管形成前後の重ね合わせ画像を用いて根尖孔から0,1,2,3,4,5,6,7,8mmの位置における根管偏位量を求めた.結果は一元配置分散分析の後,BonferroniまたはGames-Howellで多重比較検定を行った(p<0.05).

     結果:NF群とNC群の総拡大形成時間はSSK群に比べて有意に短かったが,NF群とNC群の間に有意差はなかった.押し込み荷重と引き抜き荷重は,NF群とNC群のいずれもSSK群に比べて有意に小さかったが,NF群とNC群の間には有意差がみられなかった.NF群とSSK群の間では,0,1,2,4,5,7,8mmの位置で根管偏位量に有意な差があった.NC群とSSK群の間では,0,1,2,7,8mmの位置で有意差が認められた.NF群とNC群の間ではすべての位置で有意な違いは存在しなかった.

     結論:NEXを使用したフルレングステクニックとクラウンダウンテクニックによる根管形成法は,いずれもSSKと比較して彎曲根管を適切に,良好に拡大形成することができた.また,NEXを用いたフルレングステクニックによる根管形成は,既存のSSKを使用した規格形成法から新たにNi-Tiファイルによる根管形成法を行う場合の導入としても有効であることが示された.

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