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鶴田 宏明, 良原 久雄, 麻田 達郎, 中尾 守次, 山本 信一郎, 小川 恭一
1984 年 13 巻 1 号 p.
363-366
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
2年間に40例のpacemaker植込手術を施行し、18例に対し、のべ6機能、22回のProgram変更を行った。各種Programのうち、Rate変更が9例と最も多く、Pulse width 3例、Pulse amplitude 3例、Hysteresis 2例、Mode 4例、Refractory period 1例である。Programの変更は、合併症や不快な自覚症状のある症例に対して行った。RateとHysteresisの変更は11例中8例が動悸などの自覚症状の改善を目的とし、Pulse widthとPulse amplitudeの変更は6例中5例が横隔膜刺激の防止を目的とした。Mode変更は4例中2例が頻拍発作の防止を目的とし、Refractory periodの変更は逆行性伝導による頻拍に対して行った。特にDDD pacemaker植込み例に、心房不応期を延長させることにより、逆行性伝導による頻拍を抑えるのに有効であった。
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斉藤 裕, 三崎 拓郎, 松永 康弘, 岩 喬
1984 年 13 巻 1 号 p.
367-370
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
近年頻拍に対し体内式ペースメーカーで自動的に単発刺激の可能なAutomatic Scanning Pacemakerが臨床で用いられるようになつた。著者らはWPW症候群の回帰性頻拍に対し他医にて本ペースメーカーを植え込まれた後に発作性頻拍性心房細動を認めようになつた症例を経験した。頻拍性心房細動時, 回帰性頻拍と誤認したために発生した刺激が右室に無秩序に加えられていた。副刺激伝導路切断とペースメーカー除去を行ない, 頻拍の根治に成功した。WPW症候群は元来心房細動を発生しやすぐ, 時にこの心房細動が心室細動を起こし致死的となる場合がある。WPW症候群にこのペースメーカーを植え込むことは心房細動発生を助長するばかりか, 心房細動発生後の本ペースメーカーよりの刺激は危険な不整脈の発生原因になると思われ, 禁忌と考えられる。
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北村 惣一郎
1984 年 13 巻 1 号 p.
371
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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豊田 道明, 石橋 修, 越川 雅宏, 酒寄 享, 中込 恵美子, 森田 裕, 和田 淑郎, 水沼 裕光, 池田 晃治, 岩田 猛男, 池崎 ...
1984 年 13 巻 1 号 p.
372-375
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
われわれは, ペースメーカー植込み症例の肺癌治療に際して, 姑息的療法として放射線療法を行った。今後このような症例が増加すると考え, ペースメーカー装置の放射線療法の影響を検討した。臨床症例では, 右上肺野の腫瘍は, 総線量6000radsの
60CO照射により消失し, 左前胸部皮下のペースメーカー装置に異常は現われなかった。実験において, 1000radsまでの分割照射では, pulse intervalに大きな影響が認められたほか, 電圧, 電流, 感知能にもそれぞれ影響が認められた。特に感知能に関しては, プログラム型ペースメーカーでは, 感知能不全が観察された。1000radsの一回照射では, プログラム機構が複雑な装置に機能破壊の傾向が認められ, 特にDVI装置では, 心房側の一過性のruna way, および発振停止が認められた。未だペースメーカーの放射線照射による影響についての報告は少ないが, 今回の実験から, 100radsの少量照射でも, その影響は無視することのできないものと思われた。
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笠置 康, 横山 正義, 曽根 康之, 中島 秀嗣, 毛井 純一, 長柄 英男, 和田 寿郎
1984 年 13 巻 1 号 p.
376-378
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
近年ペースメーカー本体は小さく軽いものとなってきた。しかしながら従来までの植込み方法では手術創が前胸壁に目立つ為, 若年の女性にとっては疾患の重篤さにもかかわらずなかなかペースメーカー植込みを受け入れ難いものである。手術創を腋窩に置くことによって, 目立たず疾患に最適の治療を行う術式を開発したので報告する。術式1は左腋窩縦切開より第3または第4肋間にて開胸し左心房及び左心室に心外膜電極を縫着する法である。ペースメーカー本休は同皮切部より前胸部に置くことにより, 術後左上肢を下げていると殆んど目立たない。術式2は前胸部外側より腋窩にかけて円孤状の皮切を置き, この皮切を前上部に牽引し撓側皮静脈を見出すか, 鎖骨下静脈を穿刺しカラーテルィントロデューサーを用いて心内膜岡ペースメーカー電極を挿入する。鎖骨下静脈穿刺に際しては前腕部静脈より造影剤を注入することにより100%安全に施行しうる。
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会田 博, 清水 健, 入山 正, 岩波 洋, 早瀬 修平, 坂本 滋, 安西 吉行, 大河内 則仁
1984 年 13 巻 1 号 p.
379-382
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
より生理的なペーシング機構をめざして開発されたDDDペースメーカーの臨床面での有用性とその問題点を検討した. DDDペースメーカーは生理的ペーシングを行うことができ, かつそのprogrammabilityから個々の患者に対し適切なペーシングを経時的に施行可能であり有用なペースメーカーといえる. 問題点としては, 労作時呼吸の影響と思われるP sensing failureが認められ, 心房電位測定の際深呼吸をさせ最小Pを決定すべきである. P sensingのため高感度を要するDDDペースメーカーは筋電位干渉を生じやすく, 唯一の防止対策としてはgenratorを腹壁皮下へ植え込むことである. 双極型の開発が望まれる. 逆伝導による頻脈防止のためその有無を右室ペーシングで確かめる必要がある. DDDペースメーカーはその操作上の点からtelemetry機構を採用すべきである。
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笹生 正人, 横山 正義, 曽根 康之, 斉藤 真知子, 笠置 康, 長柄 英男, 和田 寿郎
1984 年 13 巻 1 号 p.
383-386
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
DDDペースメーカ植え込み後の洞不全症候群7例、完全房室ブロック6例において自己脈、VVIペーシングDVIペーシングにて心機能を比較した。洞不全症候群7例中4例に逆行性伝導がみられ、これによる心房収縮のため右房圧の著明な上昇、心拍出量の低下をみとめた。これら4症例にてDVIペーシングはVVIペーシングに比し平均1.52L/min 46.1%の心拍出量の増加を示した。また逆行性伝導を認めない3例ではDVIペーシングはVVIペーシソグに比し平均0.82L/min 22.2%の心拍出量の増加を示した。これら洞不全症候群に対し心房の収縮の保たれている完全房室ブロックでは、DVIペーシングはVVIペーシングに比し平均0.74L/min 16.8%の増加にとどまり洞不全症候群とは明らかに異った。以上のことより洞不全症候群においては、VVIペーシングは不適であり、心房をペーシングすることが必修のことと思われた。
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清水 健
1984 年 13 巻 1 号 p.
387
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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真下 好勝, 梶原 博一, 芦沢 賢一, 蔵田 英志, 熊本 吉一, 相馬 民太郎, 小林 理, 松村 弘人, 後藤 久, 熊田 淳一, 近 ...
1984 年 13 巻 1 号 p.
388-391
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
平織りテフロン人工血管をヘパリンを加えた生食液にて強制含浸し、これを犬門脈に置換し, 開存率, 内膜形成過程につき検討した。雑種成犬10頭の門脈を内径6mmの平織りテフロン人工血管にて置換した。早期閉塞による死亡2例を除き14日目より28週目まで観察し8例が開存しており, 開存率は80%であった。移植に先だち, ヘパリン加生食液にて強制含浸することにより, 早期の血栓性閉塞を防止しうるものと考えられた。
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毛井 純一, 板岡 俊成, 貝塚 秀樹, 田原 士朗, 曽根 康之, 和田 寿郎, 岡野 光夫, 桜井 靖久
1984 年 13 巻 1 号 p.
392-395
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
冠動脈外科への人工血管の応用は, その開存性の点から非常に困難とされ, 自家血管移植が主流を占めている。また冠動脈血行再建術は冠動脈との血管縫合の際, 補助手段として体外循環, cardioplesia等が必要とされ, 心臓という特殊性から単なる血管吻合手術以上の侵襲の必要性が一般的理念となっている。今回, 我々は抗血栓材料セグメント化ポリエーテルポリウレタンウレア(SPU)を素材とする人工血管を用い, 冠動脈バイパスグラフトとしての実験的検討を行った。
その結果, 生存実験にて最高1日間の開存が得られた。またSPUは適度の硬度を有し, 冠動脈へは, 体外循環を使用せずに, 通常のCut down法にて血行再健が可能であった。SPUによる灌流量検策は心筋心電図上においても充分であることが示唆された。今後, より良い抗血栓材料の開発とともに, その形態, 手術手技の改良により, 新しい冠動脈血行再建術が期待できる。
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松田 光彦, 田畑 良宏, 森 渥視, 岡田 慶夫
1984 年 13 巻 1 号 p.
396-399
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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人工血管移植後の開存性を左右する因子は, 生体側のみならず, 使用する人工血管側にも多くみとめられる。移植直後よりみられる生体の反応, なかでも初期の血栓付着を抑えることは, その後の仮性内膜形成に好結果を与えるものと考えられる。そのために人工材料の改善が種々なされているが, 抗凝固剤を固定したり, 血管内皮細胞を人工血管内面にはりつけるなど, 複雑な手技, 技術が必要とされる。我々は, フィブリン糊がhigh porosityの人工血管においても完全にpreclottingの代用をはたし, ヘパリン使用下にも人工血管壁からの血液漏出のないことから, フィブリン糊にヘパリンを添加して人工血管を処理し, 移植後早期にみられる人工血管内面の状態を観察した。その結果, 全身性にヘパリン投与を行わなくても, ヘパリン添加フィブリン糊は, 人工血管内での血栓形成を抑え, 最長5ケ月にわたる観察で, ヘパリンを加えない場合に比べて, 内腔狭窄の程度を減少せしめえた。
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児玉 亮, 広津 敏博, 坂井 士, 津田 圭四郎, 井島 宏, 前田 肇
1984 年 13 巻 1 号 p.
400-403
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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市販の高有孔性ダクロン製人工血管を高濃度コラーゲン溶液(0.4%)のグルタルアルデヒド処理により, ほとんど漏血のない状態にした。このコラーゲン修飾人工血管の上に, さらに, コンドロイチン硫酸, あるいはフィブロネクチンを介してヘパリンを結合させてin vivo(犬の下大静脈等)とin vitro(豚の血液中)において, それぞれの表面に対する血漿タンパク質や血球成分の付着と変形を調べた。
コラーゲン膜上では赤色血栓が生じやすく, コラーゲン・コンドロイチン硫酸複合膜上では, 赤血球や血小板の付着はあまりなかったが, リンパ球の付着がin vivoでもin vitroでも認められた。フィブロネクチンによりヘパリンを結合した表面膜上には血小板は付着していたが他の血球成分, 血漿タンパク質の付着は認められなかった。
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松本 昭彦
1984 年 13 巻 1 号 p.
404
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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高本 真一, 松田 高明, 北条 浩, 上田 恵介, 江本 秀斗, 許 俊鋭, 横手 祐二, 尾本 良三
1984 年 13 巻 1 号 p.
405-407
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
全身ヘパリン化して体外循環を用いる大動脈置換術において, 人工血管の選択とpreclotting法が問題となっている。今回我々は25%アルブミンに浸した後オートクレーブで135℃5分間熱処理をするpreclotting法を施した人工血管について血液漏出を測定し, このpreclotting法の臨床の実用性を検討した。ペパリン化した犬の体外循環回路にφ8mm長さ10cmのアルブミン熱処理をした人工血管を連結し, 100mmHgで潅流すると, Dacron Woven(naturally soft)は1時間まで0.2~0.5ml/5min, Dacron Knit Double Velourは最初の5分が6.5ml/5min, 以後1~1.5ml/5min, Sauvage Bionitは1分で120mlの血液漏出をみた。臨床例2例でもこのpreclottingは有用であった。アルブミン熱処理によるpreclottingをしたDacron Woven Graftは体外循環下ほぼ完全に血液漏出を防止する。この方法は簡単で短時間でできる為実用的である。
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和泉 裕一, 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 稲葉 雅史, 佐藤 綾子, 鮫島 夏樹
1984 年 13 巻 1 号 p.
408-411
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
織布人工血管の新しいpreclotting法としてfibrinの特性を応用したIn-vitro Fibrin Preclotting法について検討した。これまでの基礎的検討によれば、fibrinogenとthrombinの至適量によつて形成された安定したfibrinは抗血栓性及び生体適合性を有し、fibrinのもつ粘弾性は人工血管のporeを完壁にsealingすることが可能であることから, fibrinを用いた人工血管のpreclottingは、有用な方法であると考えられる。教室では1982年1月から1983年8月までに、体外循環下胸部大動脈瘤及び破裂性腹部大動脈瘤を含む47例の血行再建術に対し、In-vitro Fibrin Preclotting法を施行し、その有用性が確認された。また、本法施行による合併症として、血栓症、塞栓症及びfibrinogen使用に起因する肝炎の発生を認めておらず、従来の自家血preclotting法にかわる有用な方法であると考えられた。
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数井 暉久
1984 年 13 巻 1 号 p.
412
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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浦山 博, 吉田 知弘, 神林 清作, 永田 一三, 飯田 茂穂, 岩瀬 孝明, 遠藤 将光, 渡辺 洋宇, 岩 喬
1984 年 13 巻 1 号 p.
413-416
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Gore-tex人工血管(E―PTFE graft)をExtra―anatomical bypass(腋窩―腋窩動脈, 腋窩―大腿動脈, 大腿―大腿動脈)において第1選択, 大腿―膝窩動脈以下へのバイパスにおいて第2選択として用いた。1979年以降34症例42肢のバイパス術に使用し, 1ケ月開存率は95.2%, 1年開存率は71.9%であつた。大腿―膝窩動脈以下へのバイパスにおいて末梢側吻合部が膝部を越える場合や末梢run offの悪い症例には自家静脈とのComosite graftとして用い, 1年開存率は69.2%であつた。Gore―tex人工血管内径で開存率を比較すると径8mmでは1年開存率90.9%, 径6mmでは1年開存率61.9%であつた。術後の抗血栓療法をヘパリン→ワーフアリン, PGE
1, ウロキナーゼに関して比較すると, ヘパリン→ワーフアリンとPGE
1の併用が最も良いと思われた。
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小出 司郎策, 金渕 一雄, 稲村 俊一, 福田 崇典, 小川 純一, 井上 宏司, 川田 志明, 正津 晃
1984 年 13 巻 1 号 p.
417-420
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
人工血管移植後は, 人工血管の内腔を新生内膜が被覆し生着するまで, 血液を凝固させない状態に維持すればグラフトの開存率は上昇すると考え, Gore-Texバイパスにはワーファリンを併用してきた。このたび, 1月以上開存したGore-Texバイパス症例38例(49肢, 53本)をワーファリン非投与群と投与群とにわけて, ワーファリンは遠隔期のグラフト開存率を上昇させるか否かを検討した。
検討の結果, 開存率は非投与群が58%に対して, 投与群は89%と有意に高値を呈した。また, 1年以上の観察期間の症例で再者を比較すると, 非投与群58%に対して投与群は95%と有意に高い開存率を示すことから, 術後1年経過以後もワーファリン投与を続行する方針である。
また, グラフト閉塞例の再手術時に, ワーファリン投与例ではグラフト内に新鮮血栓がみられず, 末梢動脈内への血栓進展も非投与例に比べ遅い印象を得た。
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小田 桐重遠, 嶋津 明, 徳永 裕之, 永田 真人, 石倉 義弥, 吉松 博
1984 年 13 巻 1 号 p.
421-424
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Sauvage EXSグラフトを用い、閉塞性動脈硬化症12例、15肢に対しバイパス手術を行った。このうち3例に対しては大腿~膝窩動脈バイパス術を行い、残り9例に対してロングバイパスを行った。9例のうち2例には大動脈~大腿~膝窩動脈バイパス術を、他の7例には腋窩動脈を用いた各種の非解剖学的バイパス術を行った。最長のバイパスは腋窩~大腿~膝窩動脈バイパス手術で2例に行った。このうちの1例は膝関節以下で吻合した。9例中1例は術後急性腎不全で失ったが、他の8例は最長1年8ケ月の観察期間中、全例バイパスは開存中である。術式上の留意すべき問題点として、(1)関節部位を通過する際はポリプロピレンで補強された部分となるようにする。(2)腋窩動脈よりのsequentialバイパスを予定する場合は、あらかじめ10mmY型を用いる方がよい、などがあげられる。本グラフトは腋窩~大腿動脈バイパス術には適当なグラフトであると思われる。
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山田 公弥, 岡本 好史, 粟津 篤司, 中山 健吾
1984 年 13 巻 1 号 p.
425-428
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
末梢血管領域特にextraanatomical bypassを施行するに当り, 屈曲に強い, 血栓閉塞のない, 又耐久性をもった材料の開発が待たれる. 現在, 臨床に供されているもののうちSauvage EXS graftとGORETEX EPTFE graftにつきほぼ満足しうる臨床結果を得ている. また動物実験においてEXSグラフトの均一な層をもつ内膜形成を確認し, そのstent部での内膜形成の阻害が全く見られなかったことを確認したが, 吻合中間部での内膜形成は, 術後3ヶ月ではまだ充分とは云えず, 一定の期間の抗凝固療法の必要性を痛感した.
また, 内膜完成後のpannus発生, graftの経年劣化については尚注意深い観察が必要である.
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井上 紀雄, 数井 暉久, 渡辺 祝安, 佐々木 孝, 小松 作蔵
1984 年 13 巻 1 号 p.
429-432
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
教室では1978年より1982年までに末梢動脈再建術を施行した38例に42本のExpanded polytetrafluoloethylene (EPTFE)グラフトを用い, その遠隔成績について検討した。再建部位はFemoro-popliteal 22例, Femoro-femoral 11例, Aorto-femoro-popliteal, Ilio-femoral, Axillo-axillar各々2例, Axillo-femoral, Femoral artery interposition, popliteal artery interposition各々1例ずつであった。42本のEPTFEグラフトのcumulative patency rateは1ヵ月100%, 6ヵ月97%, 12ヵ月80%, 24ヵ月, 36ヵ月, 48ヵ月は71%であった。F-Pbypass above kneeでEPTFEグラフトと自家大伏在静脈の開存率を比較すると, 術後48ヵ月までの追跡ではEPTFEグラフトは大伏在静脈とほぼ同程度の開存率が得られた。動脈硬化性末梢動脈閉塞症では冠動脈疾患を合併することも多く, 適当な静脈が採取できない場合や温存したい場合, または緊急手術の際は, EPTFEグラフトは代用血管として有用と考える。
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浅井 康文, 原田 英之, 山口 保, 山田 修, 杉木 健司, 安倍 十三夫, 安喰 弘, 小松 作蔵, 稲尾 雅代, 樫野 隆二
1984 年 13 巻 1 号 p.
433-436
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
過去4年間に, チアノーゼ性肺血流減少疾患28例に, EPTFEグラフトを用い, interposition法10例, modified Blalock-Taussig法9例, central shunt法13例. 計32回の短絡手術を施行した。短絡閉塞による低酸素症での死亡は3例であった。術後1ヵ月の, 赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値は有意(P<0.005)に改善し, PaO
2も有意に上昇した。life table analysisによる累積開存率は, 2年ではinterposition 40±17.5%, modified B-T 100%, central shunt 40±17.3%で, modified B-T法が有意の差をもって他の2法より開存率が良好であった。サイズでは径5mmが, 径4mmと較べて明らかに開存率が良かった。術後はウロキナーゼ療法や抗血小板療法が重要である。
突然の閉塞例もあり, 計画的な再短絡手術または根治手術が必要である。以上よりmodified B-T法を第一選択としているが, 再短絡例や複雑心奇型例にはcentral shunt法を施行している。
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正津 晃
1984 年 13 巻 1 号 p.
437
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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坂井 隆, 邦須 通寛, 宮村 一男, 大井 勉, 山崎 順彦, 並河 尚二, 湯浅 浩, 草川 實
1984 年 13 巻 1 号 p.
438-441
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
体外循環時に白血球の減少と共に補体の減少がみられるが, この原因としては血液に対するbiomaterialの影響が考えられる。そこで今回我々は人工心肺時に用いられる各種人工材料を用いて補体活性変動と分離白血球に対し凝集能試験を行った。その結果は,
1) Polyester, Polypropylen, sihcone膜と血漿によって補体第2経路活性が主に生じる事はわかった。そしてこの活性の程度はsilicone, polypropylene, polyesterの順に軽い傾向が認められた。
2)酸素の直接作用は人工材質の作用と同様補体活性が生じる事が明確となった。
3)各種人工膜を作用させた血漿によって白血球凝集が生じることが明らかとなった。
である。この事から, 我々は開心術やMCMOの時には補体活性が生じていることに配慮し, 予防についても考えていかねばならない。一方補体活性を起さない材質の開発をも必要であろう。
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野村 文一, 広瀬 一, 松田 暉, 中埜 粛, 前田 世礼, 笹子 佳門, 宮本 裕治, 大竹 重彰, 川島 康生
1984 年 13 巻 1 号 p.
442-445
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ECMOの問題点はヘパリン使用による出血である。新しく開発されたPGI
2 analogueによるヘパリン非使用下のECMOの可能性を検討した。方法としてはA-V方式を用い, 呼吸不全モデル犬を3群に分け, 5時間のA-V ECMOを施行した。ヘパリン(100U/kg/hr)のA群(n=7), ヘパリン(100U/kg/hr)とPGI
2 analogue (3μg/kg/min)の併用B群(n=6), PGI
2 analogue (3μg/kg/min)のC群(n=6)について各々血行動態, 血液ガス, 及び血液学的検索を行なった。B, C群ではECMO中平均大動脈圧はA群に比し, 20-25mmHg低値をとったが, 有意ではなく, 血液ガスデータにおいても3群間及びECMO中, 差はなく, 正常範囲に保たれた。血液学的にもC群では, 最小範囲の変化を示すのみであった。A-V式において, 5時間のECMOをPGI
2 analogueのみ有効に行なえた。今後, より長時間及び他の方法のECMOにも応用出来る可能性が示唆された。
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気泡型肺(BOS)と膜型肺(TMO)使用例での検討
林 郁夫, 木曽 一誠, 内藤 千秋, 鈴木 茂樹, 塩田 哲也, 饗庭 秀則, 薄根 茂雄
1984 年 13 巻 1 号 p.
446-449
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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体外循環におけるPoloxamer188(エキソコルポール:ミドリ十字社製)投与による溶血防止効果について臨床例で検討を加えた。気泡型肺使用例での効果及び, 膜型肺使用例との比較をテーマとした。対象症例は, 気泡型肺コントロール群16例, 同エキソコルポール投与群13例及び膜型肺エキソコルポール投与群6例の3群より成る。エキソコルポールは全循環血液量に対し1mg/mlを用いた。溶血の指標として血清遊離ヘモグロビン量を用いた。気泡型肺使用例においては, 投与群と非投与群に有意差(t検定)を認め, 体外循環開始後60分までその効果の持続を確認した(P<0.005)。エキソコルポール投与時の気泡型肺と膜型肺使用例での比較では, 両群に有意差(ウイルコクソンU検定)を認めなかった(P<0.05)。気泡型肺使用時にはエキソコルポールの効果は有意であり, 溶血を低値に保ち, その発現を遅延させた。その程度は膜型肺使用時と有意差を見い出せない程度であった。
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永田 昌久, 小林 正治, 北川 茂久, 近藤 三隆, 加藤 真司, 倉橋 忠司, 福田 巌, 中井 堯雄, 土岡 弘通
1984 年 13 巻 1 号 p.
450-453
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
長時間体外循環時の溶血は急性腎不全の原因となり, 手術成績に影響を及ぼす. 溶血防止剤Poloxamer 188により体外循環開始より60分までは対照群と有意差がみられたが, 90分以降は有意差がみられず, したがって追加投与の必要があるが, 副作用の点で若干の問題がある。一方血漿中のFree-Hbは, ハプトグロビン(Hp)と結合し肝で処理され血中から消失していく. このため開発された人精製Hpは即効的であるが, この複合体の処理能力には限界があり, やはり大量投与は問題となる. そこで長時間体外循環時に両者の併用療法を行なったところ, 120分のFree-Hb10.4±18.0mg/dl, 180分31.3±32.1mg/dlと対照群より有意に低く, この時の両者の投与量はPologamer 1mg/1ml, Hp 4000単位であり, 追加投与可能であるため, さらに長時間の体外循環, 補助循環に応用されると思われる.
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―血小板prostaglandinの面より―
竹田 治土, 鵜沢 茂樹, 合田 俊宏, 松倉 裕美, 田辺 達三
1984 年 13 巻 1 号 p.
454-457
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
従来から頻用されているローラーポンプと遠心式ポンプを用い、雑種成犬による2時間の無血体外循環を行い、主に血小板、血管作動性プロスタノイドの面より比較検討を行い次の結論をえた。1)遠心式ポンプ(Bio-pump)では血小板数の保護作用が認められた。2) Bio-pumpでは6 ketoPGF
1α/TXB
2比がRoller-pumpより高く、又PF4が低値を示すことより凝固能抑制の傾向がみられた。3) Bio-pumpでは溶血量が少かった。4) Bio-pumpではPlatelet Deformity Rateが低く、形態学的にも血小板の保護作用が観察された。
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矢田 公
1984 年 13 巻 1 号 p.
458
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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康 重雄, 北村 惣一郎, 山田 義帰, 西井 勤, 大山 朝賢, 河内 寛治, 宮城 康夫, 森田 隆一, 金 烱澤
1984 年 13 巻 1 号 p.
459-462
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
開心術症例21例においてHaemonetics社製automated CELL SAVER IIIを使用, 人工心肺内残留血を再利用し, 約5本の血液の節減が可能であった。セルセーバー処理血の赤血球寿命は22.8±4.5日で銀行血の24.1±4.7日と有意差はなかったが, 生理食塩水内保存で, 15~18時間後の赤血球抵抗の減弱および赤血球の変形像よりみてそれ以前に輸注することが望ましい。PRP (Platelet-Rich Plasma)血小板のADP, Epinephrine, Collagenによる凝集能は, 3.5~4.5時間の保存後それぞれ45, 36, 23%低下した。PRP輸注前後での血小板数, 血小板凝集能に差を認めなかった。術後肝機能異常は, 使用血液量とある程度相関しており, セルセーバー使用例で少なかった。体外循環終了後放棄されていた回路内血液はその保存に問題は残るが充分再利用可能である。
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前田 雅道, 麻田 邦夫, 井上 隆夫, 志熊 粛, 近藤 敬一郎, 柿本 祥太郎, 木村 弘, 大関 道麿, 佐々木 進次郎, 武内 敦郎
1984 年 13 巻 1 号 p.
463-465
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/12/02
ジャーナル
フリー
長時間の体外循環時間を要し, 大量の心筋保護液を使用する開心術例では, その液を回路内に回収すると血液希釈率が異常に高くなり水分バランスの維持を困難にすることがある。この余分な水分を術中積極的に排出するため, 限外濾過法を10例(I群)に併用した結果,その有用性を認めたので, 非併用9例(II群)と比較し検討した。GIK使用量はI群30.7±10.5ml/kg, II群19.3±6.3, 限外濾過量は30.0±8.1ml/kgであった。ICU入室時バランスはI群+44.6±17.9ml/kg, II群+43.6±25.7とI群では循環時間が長く, GIK使用量も多かったにもかかわらず, 両群に差は認めなかった。また膠質浸透圧も両群とも同様の推移を示し, 血漿浸透圧はほぼ一定の値を示した。本法は細胞外液(組織間)に貯留すべき水分を濾過するものと思われ, 簡便なだけでなく, 心筋保護法の徹底, 術後の水分管理についてなど種々の利点をもつものと思われた。
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萩原 秀男, 宮本 晃, 田野 井均, 北村 信三, 川野 幸志, 高橋 薫, 隈部 時雄, 伊良子 光正, 新野 成隆, 瀬在 幸安, 鈴 ...
1984 年 13 巻 1 号 p.
466-469
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
心臓外科における血液節約法として, 新しく開発されたポリプロピレン製ヘモコンセントレーターを使用し, 人工心肺内残留液を濃縮した。器械の性能をA群として, 血液流量200ml/分, 吸引圧200mmHg, B群として, 血液流量100ml/分, 吸引圧100mmHgで行い, 各々の血液性状を調べた。結果として, 血液を濃縮し, Htを40~45%にするのにA群では約20分, B群では約40分要した。血小板, 総蛋白量は両群とも濃縮化に比例して増加した。BUN, クレアチニン, 尿酸も多少増加するも, これらは排液中に良く濾過された。Na, Cl, Kは, 血中濃度に合せて良く濾過された。一方, 血漿遊離ヘモグロビンは, 両群とも濃縮化に比例して増加するも, A群ではB群より高値となり, より多くの機械的溶血が示唆された。
以上より, B群の条件の濃縮血を術後, 再輸血し, 約60%の血液節約を行なった。
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信岡 亘, 横山 繁樹, 小西 理雄, 浅妻 茂生
1984 年 13 巻 1 号 p.
470-473
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
成分輸血療法の普及に伴い, 術後肝炎の増加が注目されている。我々が1977年7月から1983年2月迄に行った心臓手術症例の中の開心術のうちfollow出来た。成分輸血療法で行った開心術の術後肝炎は134例中28例であり, 全血使用群の50例中5例の2倍である。この原因には輸注donor数の増加が関係しており, 術後肝炎発生防止の対策としてautotransfusionを併用する洗浄赤血球とアルブミンを用いる方法によって開心術の全経過を行っている。この方法で行った症例は38例で肝炎は1例のみである。自家血群では血液使用量が節減されるが,この方法に人工腎を用いて人工心肺残留液の濃縮再輸血を併用すると成分輸血群の同種血液使用量の約4分の1で充分であった。
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藤田 毅
1984 年 13 巻 1 号 p.
474
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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―Roller Pumpとの比較―
斎藤 圭治, 宮村 一男, 田中 国義, 庄村 赤裸, 矢田 公, 草川 實
1984 年 13 巻 1 号 p.
475-478
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Centrifugal pump (Bio-Pump)を開心術中の体外循環に使用し, 安全性, 溶血, 血小板機能, 血液生化学的諸値に及ぼす影響についてRoller pumpと比較検討した。
Centrifugal pumpはBio-Medicus社Bio-Console及びBio-Pumpで, 当教室で使用しているRoller pumpの回路中の送血側又は脱血側のうちの一方に使用した。
対象は1982年9月より1983年6月までに, 三重大学胸部外科で施行した開心術症例の中より30例(うち10例は送血側, 20例は脱血側)にBio-Pumpを使用した。また, 同期間中にRoller pumpを使用した10例を対照群とした。この結果, 術中, 術後にBio-Pump使用によると考えられる合併症はなく, 溶血, 血小板機能, 血液生化学についての検討でも, Roller pump使用群との間にほとんど差を認めず, 開心術中の体外循環への臨床応用は, 充分に可能であると考えられた。
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西内 素, 荻野 均, 福山 守, 岡本 交二, 薗 潤, 岡田 行功, 宮本 覚, 秦 紘, 立道 清, 庄村 東洋
1984 年 13 巻 1 号 p.
479-482
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
弁機構を持たない特徴ある二種類の拍動流ポンプ(AVCO社製pulsatile bypass pump, Sarns社製7400型ポンプ)の検討を循環系機械モデルを用いて行った。流量波型は両型とも通常の負荷範囲内では変化せず, そのピーク値は灌流量4l/minのとき300mmHg駆動PBPもS-7400型ポンプも150ml/sec以上の良好な値を得た。しかし, PBPは高駆動圧(450mmHg)を用いた場合, 高灌流圧(100mmHg)で逆流を無視できなくなった。S-7400型ポンプはSD比を任意に選択するうえでポンプヘッド部にさらに大きな口径(12mm以上)のチューブを必要とした。これらの点に注意を払えば, 臨床上, 満足しうる拍動流ポンプであると思われた。
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田中 隆, 梅津 光生, 阿久津 哲造, 康 義治, 一橋 浩二, 藤田 毅, 得能 敏正
1984 年 13 巻 1 号 p.
483-486
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
弁機構, 羽根車を持たない遠心式血液ポンプのひとつであるBio-Pump (Bio-Medicus社製)について機械式循環系モデルを用い, 種々の流量特性試験を行った。その結果, 本ポンプは作動流体の粘性の影響を強く受け, 流量は回転数だけでなくポンプ前後間の圧差にも依存することがわかった。さらに回帰分析を行うことによって流量・回転数・ポンプ前後圧差の関係が明確になり, 体外循環で組込む回路が既知であればその回路における適正回転数をある程度予測できることが確認できた。Bio-Pumpを, 通常の開心術の際の体外循環に12例(平均1時間59分), 長時間V-Aバイパスに4例(平均46時間47分)用いた。最長例はMVR術後に膜型肺と組合せて使用した症例で75時間後に離脱に成功した。Bio-Pumpは耐久性も高く, 「オートフローモード」により安定した流量維持も可能であり, 特に長時間V-Aバイパスに有利であることが確認できた。
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富野 哲夫, 青野 信卓, 笹木 秀幹, 川副 浩平, 梅津 光生, 藤田 毅, 曲直部 寿夫
1984 年 13 巻 1 号 p.
487-490
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
空気圧駆動方式の拍動ポンプとローラポンプを直列に接続し, 拍動流体外循環を試みた。
本方式と従来の方式を比較検討し, 利点と特長について以下の結果を得た。(1)拍動ポンプ流入側の弁および流入側のリザーバの有無は流出波形に何ら影響を与えない。(2)拍動ポンプ流出側に弁のない時は拡張期に逆流を生じ, 動脈々圧は大となる。(3)この逆流波形は生体内臓器へも逆流波形としてあらわれ, 特に送血カニュレに近い頸動脈に最も強く逆流波形があらわれる。股動脈, 腎動脈がこれに次ぐ。(4)ローラポンプ送血量よりも拍動ポンプ拍出量が多くなるように駆動圧を設定すれば, 完全な拍動流波形を得ることができる。(5)拍動流量の制御はローラポンプの調節によって行ない得るので操作が簡便である。(6)頻脈に対しては拍動ポンプ拍出量が減少してもローラポンプによる流量補償がされるため血圧変動が少ない。
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貝塚 秀樹, 日野 恒和, 横山 正義, 和田 寿郎
1984 年 13 巻 1 号 p.
491-494
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
体外循環中の静脈側の血行動態を至適状態に保つという視点に立ってわれわれは中心静脈から直接静脈血を導出し, 静脈圧を血液柱として可視化するとともに, 中心静脈圧の変動による血液柱の上下動を赤外線センサーに感知させローラーポンプを回転停止させて静脈脱血量を加減し中心静脈圧をほぼ一定範囲に維持する制御回路を考案した。雑種成犬を用いて完全体外循環を行ない上下大静脈圧を記録し, 中心静脈血導出部位を, SVC, IVC, 大腿静脈の3点の任意の1-3点とし, また, 動脈側送血量に対する静脈最大脱血量の比を0.8から2までとして上下大静脈圧の変化を検討した。実験の結果, 導出部位がSVCまたはIVCの時, 上下大静脈間の最高, 最低, 圧差, 周期に有意差なく, 周期は2から3秒, 圧差夢よそ6cm水柱であった。また脱送血比の増大につれて最低値と周期は減少し, 一方で圧差は増大した。今後, 末梢・微少循環について検討を続けたいと考えている。
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伊藤 敏行, 数井 暉久, 佐々木 孝, 星野 豊, 渡辺 祝安, 小松 作蔵
1984 年 13 巻 1 号 p.
495-499
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
胸部下行大動脈瘤の外科治療に対し、種々の補助手段が用いられている。教室では従来より大腿動静脈部分体外循環(以下F-Fバイパス)法の有用性にっき報告してきたが、最近、遮断末梢側の循環状態を、より生理的なものとするため、拍動流F-Fバイパス法を臨床応用するようになった。今回、著者らは拍動流F-Fバイパス法の、特に腎機能に及ぼす影響について実験的および臨床的に検討した。動物実験ではバイパス灌流量40ml/Kg/minが至適灌流量と考えられ、とくに拍動流では腎組織血流量は良好に保たれた。臨床例においては術前腎機能低下例のクレアチニンクリアランスは、拍動流群では術後著しい上昇を示し、アンジオテンシン豆は、術後24時間でも有意に低値をとり(p<0.005)、腎機能に対する拍動流効果を認め、また、定常流に比し末梢側循環動態を、より生理的に保つことが可能であった。
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岡田 昌義
1984 年 13 巻 1 号 p.
500
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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轟木 元友, 稲葉 頌一, 徳永 皓一, 田中 二郎, 古森 正隆, 川内 義人, 吉利 用和
1984 年 13 巻 1 号 p.
501-503
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
長時間体外循環例においては, 術後著しい出血傾向の認められる場合があるが, 凝固止血学的に不足している因子を明らかにすべく, 8例の短時間体外循環例(Ia群)と14例の長時間体外循環例(IIa群)の体外循環終了直後の血小板数, プロトロンビン時間(PT), 部分トロンボプラスチン時間(PTT)を調べ, 術前値に対する割合を群間比較した。更に, 51例の長時間体外循環症例中, 31例のフェレーシス血小板濃厚液輸注群(IIb群)と20例の非輸注群(Ib群)の術後出血量を比較した。血小板数は, Ia群42.9±4.0%に対し, IIa群21.8±2.0%と後者が有意に低かった(P<0.005)のに対し, PT, PTTには群間の差を認めなかった。術後出血量はIb群329±6.3ml/hrに対し, IIb群16.9±2.0ml/hrと後者が有意に少なかった(P<0.01)。以上より, 長時間体外循環例においては, 術後止血管理に血小板が重要な役割を占め, フェレーシス血小板濃厚液の輸注が非常に効果的であると思われた。
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今村 洋二, 祝井 文治, 中西 光, 井上 政昭, 若井 秀治, 青木 由雄
1984 年 13 巻 1 号 p.
504-507
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
新たに開発されたpolypropyleneを膜素材としたhollow-fiber型血液濃縮装置を実験的・臨床的に検討した。本装置は, 内径200μm, 厚さ25μm, 長さ155mmのpolypropylene膜の中空糸を用い, 有効面積0.3m
2である。中空糸内へ血液を導き, 吸引圧をかけて除水を行う方式である。
牛血(Ht 25%)及び, 体外循環終了後の残存血液を用い, 吸引圧, 流量の変化に伴う濾過量, 圧力損失, 血液及び, 濾過液中のFree Hb, Na, Cl, K, UN, Creatinine, 総蛋白量, 浸透圧, Ht値を測定した。吸引圧300mmHg, 流量300ml/minの条件で, 圧力損失300mmHg, 中空糸の破損もなく, 50ml/minの濾過液摂取が可能であった。低分子量のものはすべて濾過され, Free Hb, 総蛋白は約10%が濾過された。本製品は, cell saver法と異なり, 有効かつ簡便, 安全, 廉価に血液濃縮が可能であり, また, 開心術中の限外濾過法にも有用と考え, 7例の臨床応用を試みた。
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―PlasmafloとCell Saverの比較―
布施 勝生, 細田 泰之, 小西 敏雄, 工藤 英範, 上田 正人
1984 年 13 巻 1 号 p.
508-511
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
体外循環後の稀釈残液を濃縮利用するために, Plasmaflo AP-06M(A群, 11例), Plasmaflo AP-08H(B群, 12例), およびCell Saver(C群, 10例, 無洗浄法)を用いて血液濃縮を行い, 濃縮前後の血液成分の変化を検討した。
各群とも, 血球成分は有効に濃縮された。このほか, A群では血小板数, LDH, CK, および遊離ヘモグロビンが, B群では血小板数, およびLDHが, C群ではLDH, CK, および遊離ヘモグロビンが有意に濃縮されていた。血漿蛋白の有意な変化は, 各群ともみられなかった。
Cell Saverと比較して, Plasmafloは, 大型の装置を必要とせず, 操作も簡単で, 血小板が濃縮される利点もありすぐれていた。2種類のPlasmafloでは, 遊離ヘモグロビンの上昇が少ない点で, AP-08H型の方が良好な結果が得られた。
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仲田 勲生, 副島 健市, 小柳 仁, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 鈴木 進, 小橋 信二, 内村 進
1984 年 13 巻 1 号 p.
512-515
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
体外循環用血液濃縮装置Hemo-Collcentrator®(Cordis Dow社製)を使用する機会を得, 今回は主に体外循環終了後の残血濃縮の目的で使用した。TMP 450mmHg, 流量250ml/分で, 限外濾過能は7.2±0.5ml/mmHg/hrであった。Htは26.3±5.2から41.1±10.7%と上昇し, 白血球数は濃縮に対応して上昇したが, 血小板数は減少した。TPは3.9±0.5から7.8±2.6g/dlと上昇し, GOT, GPT, LDHは濃縮に伴って上昇した。Fibrinogenは加圧の場合補正値が減少したが, 吸引の場合は有意差なかった。遊離Hbは濾液中に少量認められ, 血中濃度は濃縮に伴って上昇した。BUN, クレアチニン, 電解質の濾過は良好であった。臨床では22例に使用し, この内無輸血体外循環15例はCell Saver使用11例と比較した。出血量, 血液生化学的検査で両者に差はなかった。Helno-Collcentrator®は濾過能にすぐれ, 血液, タンパク質成分の保持は良好で, 体外循環中のVolume管理, 体外循環終了後の残血濃縮に有用と思われた。
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箱島 明, 日野 宏, 小西 正樹, 平山 哲三, 山田 充, 石丸 新, 古川 欽一, 高橋 雅俊, 石川 幹夫, 松尾 五郎, 工藤 龍 ...
1984 年 13 巻 1 号 p.
516-519
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
遠心洗浄法により, 術野からの吸引血液を洗浄濃厚赤血球液として回収するAutologous blood recovery system (Cell Saver®) について, 体外循環使用血液の節約と循環血液の稀釈防止効果を中心に検討した。
Cell Saver非使用群では, 充填用血液5単位の他に, 体外循環開始後追加血液を約8単位心要とし, さらに, 術後, 血液稀釈, 出血等によるHb, Htの低下に応じた輸血が必要であった。使用群では, 回収した洗浄濃厚赤血球液を追加する事により, 心筋保護液, 局所心筋冷却液による循環血液の過剰な稀釈は防止され, 回路内追加血液はほぼ不用となり, 体外循環終了時に, Hb, Htを上昇させる事も容易であった。また, 体外循環回路内残存血液により, 約700mlの洗浄濃厚赤血球液を回収する事ができ, 術後輸血が節約される利点を認めた。
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土岡 弘通
1984 年 13 巻 1 号 p.
520
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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松田 暉, 広瀬 一, 中埜 粛, 白倉 良太, 奥田 彰洋, 前田 世礼, 高 義昭, 金香 充範, 大竹 重彰, 野村 文一, 川島 康 ...
1984 年 13 巻 1 号 p.
521-524
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
拍動流体外循環の有用性を, クレアチニンクリアランス(CCr)30ml/min以下の術前高度腎機能障害例の開心術にて検討した。対象は10例の後天性心疾患患者で, 年令は48~71才(平均61), 術前Ccrは120~190ml/min(平均20.4)であった。体外循環は平均177±66分で, Cobe pulsatile pumpによる拍動流を6例に用い, 非拍動の4例と比較した。術前値ではCcrが拍動群で有意に低値であった。術後の血清BUN, クレチアニン値には両群間に差はなかった。Ccrの術後3日目と術前の変化(ΔCcr)をみると, 体外循環4時間以上の1例を除いた9例では, 拍動群が, +0.8±2.9, 非拍動群が-9.5±6.1と有意(P<0.05)に非拍動群が低下を示した。体外循環時間と尿量, ΔCCrとの間に有意の相関はみなかった。病院死は非拍動の2例で, Ccr20ml/min以下の5例を含め拍動流全例が生存した。高度腎機能障害例において, 拍動流の有用性が示唆されたが, 他の多くの因子の影響も考えられた。
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―高度溶血に対するplasama pheresisとの併用―
山本 信一郎, 清水 一太, 中尾 守次, 鶴田 宏明, 後藤 武, 小川 恭一, 石橋 悦次, 山崎 富生
1984 年 13 巻 1 号 p.
525-530
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
開心術後の腎不全、肝不全に対し、5例中4例に血液透析を、2例にPlasma pheresisを施行し3例を救命し得た。年令は36才から66才、男女比は4:1であった。血液透析開始時期は術後2日から7日であり、plasama pheresis開始はいずれも術後1日であった。乏尿、非乏尿にかかわらず、自由水クリアランスを腎不全の指標とし、早期から中心静脈栄養を50%糖液とアミノ酸製剤を用いて行い1000~1500cal/日の投与を目標とした。腹膜透析を行うことなく初回早期から心不全の状態に関係なく血液透析を開始したが、血行動態への悪影響は認められなかった。非乏尿性腎不全では血漿クレアチニン6mg/dl、BUN 100mg/dl、乏尿性腎不全では血漿クレアチニン3mg/dl、BUN 50mg/dlを血液透析開始の指標とした。plasama pheresisは開心術後の遊離ヘモグロビンを低下させ得たが、いわゆる肝腎症候群に対して行った1例では効果は一時的であった。
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遠藤 幸男, 猪狩 次雄, 今野 修, 寺西 寧, 羽田 一博, 阿部 俊文, 薄場 彰, 井上 仁, 庄司 光男, 星野 俊一, 元木 良 ...
1984 年 13 巻 1 号 p.
531-534
発行日: 1984/02/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
教室における開心術696例のうち, 急性腎不全の発生をみた20例(2.9%)を前期(S. 46.5~S. 52.12)と後期(S. 53.1~S. 57.12)に分けて検討したところ, 前期より後期に術前腎機能障害を有する症例が多く, 体外し循環もより長時間であり, 心疾患の重症化が示唆された。腎不全の救命率は, スワンガンッカテーテルたよる管理下で, 自由水クリアランスによる早期発見, 利尿剤大量療法無効時の早期透析により, また低心拍出量症候群に対してはドパミンやドブタミンや大動脈内バルーンパンピング法による血行動態の是正により, 前期23%より後期43%に改善し, 昭和57年には4例中3例(75%)救命し得た。急性腎不全の発生率は, 心筋保護の導入, 体外循環や術前・術後管理の向上などにより, 前期4.1%より後期1.9%に改善された。
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