日本栄養・食糧学会誌
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総説
  • 伊藤 隼哉, 山田 浩輝, 石原 克之, 仲川 清隆
    2024 年 77 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    様々な疾患の原因や増悪化に関連する炎症を制御するために, 日常の食事を通じた抗炎症成分の摂取は有用である。本総説では, 近年オートミールやグラノーラ, オーツミルクなどで需要が高まっているオーツ麦に注目し, オーツ麦に含まれる抗炎症成分を中心に概説する。特に, 機能性脂質として注目されている糖脂質 (ジガラクトシルジアシルグリセロール, DGDG) やエストライド (ヒドロキシ脂肪酸と脂肪酸のエステル体), そしてこれらを構成要素として有するDGDG-モノエストリドの構造解析と抗炎症効果について詳細に述べる。DGDG-モノエストリドはオーツ麦に特徴的な成分であるが, その機能性, 特に抗炎症効果については明らかでなかった。著者らはオーツ麦から単離精製したDGDG-モノエストリドが抗炎症作用を示すことを初めて報告した。本総説で紹介したDGDG-モノエストリドをはじめ, オーツ麦の機能性成分に関する知見がさらに蓄積され, オーツ麦の健康有用性のさらなる解明や, 活用増進につながることが期待される。

  • 大崎 雄介, 白川 仁
    2024 年 77 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    ビタミンKは特定のタンパク質の翻訳後修飾 (Gla化) を介して血液凝固や骨恒常性などに寄与する一方で, 脳や精巣などのGla化活性が低い組織にも高濃度で分布するが, その意義は不明であった。我々は遺伝子発現を網羅的に解析した結果から, ビタミンKが抗炎症作用を有していることを見出し, その機序には核内因子κB (NFκB) 経路の活性化抑制が関係することを明らかとした。また, ビタミンK2の一種であるメナキノン-4の側鎖構造に類似したゲラニルゲラニオール (GGOH) もビタミンKと同様に抗炎症作用を有することを見出した。その作用点はビタミンKの標的分子よりもさらに上流にあるインターロイキン1受容体関連キナーゼ1 (IRAK1) の活性化の抑制によるものであった。また, ビタミンKは精巣において炎症時に活性化されるNFκBを抑制することによりテストステロン産生の減少を抑える可能性や, ビタミンKやGGOHが脳ミクログリア細胞での炎症も抑制する可能性も示されている。

  • ―慢性炎症が引き起こす脂質代謝異常の食品成分による予防・改善―
    高橋 信之, 高橋 尚子, 森本 洋武, 井上 博文, 後藤 剛, 河田 照雄, 上原 万里子
    2024 年 77 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    肥満に伴う白色脂肪組織での慢性炎症は, 白色脂肪細胞においてインスリン抵抗性を引き起こし, 糖尿病の原因となることが明らかとなっている。また近年, 脂肪消費により得られたエネルギーを熱に変換する機能を持った褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞における熱産生能を慢性炎症が阻害することで, 肥満状態を悪化させる可能性も明らかとなった。さらに腸管における慢性炎症が, 動脈硬化性疾患発症リスクである食後高脂血症の悪化をもたらすことが示唆されている。このように, 生体内での慢性炎症が脂質代謝異常を引き起こし, 様々な生活習慣病の発症に関わっている。このことは慢性炎症を抑える作用, すなわち抗炎症作用を持つ食品成分を摂取することで, 日々の食事による脂質代謝異常の予防・改善が期待できることを意味している。そこで本稿では, 慢性炎症による脂質代謝異常のメカニズムならびに抗炎症作用の食品成分による改善効果について概説する。

  • 田中 未央里, 飯田 薫子, 井上 博文, 高橋 信之, 上原 万里子
    2024 年 77 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    わが国を含む世界各国で蔓延する生活習慣病, 動脈硬化性疾患, 骨疾患などに共通する初期病態として, 慢性炎症が注目されている。肥満者の脂肪組織では, 肥大化した脂肪細胞にマクロファージが浸潤し, 脂肪細胞から遊離脂肪酸, マクロファージから炎症性サイトカインが過剰に分泌されることで, 脂肪組織の慢性炎症や線維化がもたらされる。線維化により脂肪蓄積能が低下した結果, 肝臓など他の臓器への異所性脂肪蓄積, インスリン抵抗性などの代謝異常が惹起される。また, 炎症の慢性化に伴い骨代謝が破綻し, 骨吸収が亢進することで, 様々な骨疾患が引き起こされる。一方で, 食品中のポリフェノールは抗炎症作用を有する機能性成分として注目され, 疾病予防の一助となることが期待されている。本稿では, メタボリックシンドローム及びロコモティブシンドロームに関連する様々な疾患の発症・進展における慢性炎症の役割について概説し, 慢性炎症を標的としたポリフェノールの疾病予防効果について紹介する。

  • 中島 史恵, 柴田 貴広, 内田 浩二
    2024 年 77 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    近年, 慢性的な炎症はがんや糖尿病などの種々の疾病発症に繋がることが明らかにされていることから, 過度な炎症応答の抑制および炎症の慢性化を抑制することが「健康維持・増進」の基本戦略であると言える。我々が日々口にする食品には様々な食品成分が含まれており, そのそれぞれが特徴的な活性を有すると考えられる。経験的に健康増進に寄与すると言われている食品も存在するものの, その機能性発揮に寄与する実行分子や詳細な分子メカニズムについては未だ不明な点が多い。筆者らはこれまで特に食品中に含まれる低分子化合物に着目し, 生体成分であるタンパク質と低分子食品成分の相互作用を介して発揮される食品成分の炎症抑制メカニズムについて解析してきた。本稿では, これまでに標的タンパク質が同定されているキャベツ由来のイベリンと, ターメリック由来のクルクミンによる炎症抑制機構について紹介する。

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