心身医学
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63 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
第63回日本心身医学会総会ならびに学術講演会
教育講演
  • 松林 直
    2023 年 63 巻 5 号 p. 409-416
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    背景:低コルチゾール血症をきたすストレス関連疾患の身体症状(疲労,食欲不振,体重減少,過度の眠気,嘔気や下痢,関節痛や筋肉痛,めまい,微熱など)は低コルチゾール血症をきたす代表的な身体疾患である副腎皮質機能低下症と類似した症状がみられる. 方法と結果:長引く疲労を主訴に心療内科を受診した患者に副腎皮質機能低下症診断アルゴリズムに従い検査した.1/5の症例が中枢性副腎皮質機能低下症と診断し得た.これらの2/3はうつ病を併発し,1/3は何らかの心的外傷体験を有し,既往症に気管支喘息などのため外因性ステロイド使用歴が2/5にみられた. 結論:低コルチゾール血症を伴うストレス関連疾患を診療する際に自己免疫疾患やアレルギー疾患などの身体併存症と過去の外因性ステロイド使用歴に注目し,中枢性副腎皮質機能低下症の鑑別も念頭に置くことが肝要である.

シンポジウム:慢性頭痛の心身医学的治療 次世代に向けて
  • 竹内 武昭, 菊地 裕絵
    2023 年 63 巻 5 号 p. 417
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー
  • 水野 泰行
    2023 年 63 巻 5 号 p. 418-423
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    慢性頭痛は関連する要素が多くなって病態が複雑化しやすいため,心身医学的な観点からの治療が必要な場合が多い.心理社会的因子の関与が大きな慢性頭痛は,その他の慢性疼痛と同じく,予期不安や過覚醒,回避行動などが悪循環を呈している病態ととらえると理解しやすい.治療においては頭痛ダイアリーを用いた行動分析をもとに,認知行動療法を導入するのが有用である.さらに,頭痛体操,自律訓練法,漸進的筋弛緩法などといった運動やリラクセーションを併用するとより効果的である.頭痛では薬物療法も効果が高いが,有効性の評価や使用状況の把握,用量調整に気を配り,不適切な使用や薬剤使用過多による頭痛を引き起こさないように注意が必要である.

  • 嶋 美香, 端詰 勝敬
    2023 年 63 巻 5 号 p. 424-429
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    片頭痛は日常生活において支障度の高い疾患であり,患者のQOLに影響を与え,患者への負担や社会的損失の大きい疾患である.片頭痛の誘発および維持要因は,生物学的要因のみならず,心理社会的要因も症状に影響を与えることがわかってきた.頭痛に対するとらえ方や痛みに対する反応,対処などは症状の維持要因として考えられている.服薬のみでは効果が十分でない,あるいは症状の背景に心理社会的要因が考えられる場合には,認知行動療法による治療効果が期待される.海外では,片頭痛に対して認知行動療法の有効性が示唆される研究が数多く報告されているが,本邦での実践および研究報告は少なく,今後さらなる実践と検証が必要であると考えられる.このような背景のもと,難治性片頭痛患者に対する認知行動療法のマニュアルが作成された.

  • ―不登校・不規則登校につながることもある―
    藤田 光江
    2023 年 63 巻 5 号 p. 430-435
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    子ども(小児・思春期を含む)の頭痛の多くは,片頭痛,緊張型頭痛と診断される.片頭痛は月2~4日程度の中等度~重度の頭痛発作で,発症時刻はまちまちであり治療薬も有効である.緊張型頭痛は,頭痛の治療薬が効かず,ときに慢性化し,学校欠席の理由となることがある.頭痛が月15日以上,3カ月以上持続すれば,慢性連日性頭痛(CDH)といわれる.CDHの子どもは学校のある朝,強い頭痛を訴え,起きられずときにはそのまま寝ていて,頻回あるいは長期の学校欠席につながっていく.CDHの子どもには,治療薬が効かず頭痛は続くこと,興味のあることを探しながら頭痛と付き合って生活するよう勧める.頭痛ダイアリーの記載や登校カレンダーの作成は,学校欠席の多い子どもに対し行動療法として有益である.また,保護者とは別に子どもへの支持的精神療法も必要であり,よい転帰につながる.学校欠席に関連する頭痛に対しては早期介入が必須である.

  • 北見 公一
    2023 年 63 巻 5 号 p. 436-444
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    緊張型頭痛(TTH)は,背景に上位頸神経・三叉神経伝導路(CTR)持続刺激という生物学的基本病態をもち,その上に個別の要素が加わり病像を形成している.CTR刺激はTTH診断基準を満たすすべての頭痛にみられる同一の生物学的背景であり,各個人の遺伝的体質,心理社会的背景や性格特性の違いなどにより臨床像が修飾されるが,CTR刺激それ自体が慢性頭痛に特有の性格特性をも生み出し,痛みの表出に影響を及ぼしてくると考えられる.睡眠障害や片頭痛体質の有無もTTH慢性化に影響を与える要因となっている.TTHの原因となる炎症仮説とそれに即した診断治療について私見を述べた.

原著
  • 三輪 裕介, 穂坂 路男, 三田村 裕子
    2023 年 63 巻 5 号 p. 445-451
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ患者の約15%はうつ病を合併するが,抑うつ状態と関連する因子を検討した報告はない.本稿では抑うつ状態と関連する因子を検討した. 方法:対象は昭和大学病院通院中の関節リウマチ患者のうち124人.患者背景は,年齢,性別,肥満度指数,喫煙歴,高血圧・糖尿病の有無,ステロイド・メトトレキサート使用量,関節リウマチの疾患活動性,ADL評価を調査した.うつ状態評価はHamilton Depression Rating Scale(HAM-D)を使用し,HAM-Dの各項目とおのおのの指標との関連を検討した. 結果:42人の患者が「抑うつ気分」を経験したと回答した.一方,抑うつ気分よりも「身体的不安」「一般的身体症状」「仕事と活動」「心気症」「生殖器症状」と回答した割合が高かった.「抑うつ気分」「一般的身体症状」ともにSimplified Disease Activity Index(SDAI),Health Assessment Questionnaire Disability Index(HAQ-DI)と相関し,「身体的不安」は年齢と相関した. 結論:関節リウマチ患者の抑うつ状態を構成する因子としては,「抑うつ気分」よりも「一般的身体症状」として訴える割合が高かった.これらは疾患活動性やHAQ-DIと軽度の相関を認めた.

  • ―高齢男性患者に対する心理的介入の効果に関する予備的検討―
    岡本 恵, 名越 泰秀
    2023 年 63 巻 5 号 p. 452-462
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    心臓リハビリテーション患者のストレスコーピングに対する自己効力感(CSE)や感情に対する心理的介入の効果を検討した.心臓リハビリテーションを行った65歳以上の男性入院患者を介入群(21名)と非介入群(15名)に分け,地域在住高齢者(74名)を健常群として比較した.介入群には入院中にストレスマネジメントに関する集団での心理教育と個別面接を行った.CSEと感情の質問紙調査を,介入群には介入前後と退院1カ月半後に行い,他の群にも同様に計3回実施した.その結果,非介入群では退院後の認知・問題解決・気分転換CSEが低下した.介入群では問題解決・気分転換CSEは維持された.心臓リハビリテーション患者では退院後にCSEの低下が生じるため,それに対する予防的介入が必要であることが示唆された.一方,認知CSEの改善は認められず,介入方法の再検討が必要であると考えられた.

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