心身医学
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巻頭言
第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会
教育講演
  • 藤田 光江
    2024 年 64 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    不登校は近年,小児・思春期の子どものみならずわが国の社会全体において大きな問題になっている.文部科学省によると,不登校とは児童生徒が1年間に30日以上欠席することをいい,「何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しない,あるいはしたくともできない状況にあること(ただし,病気や経済的な理由によるものを除く)」と定義している.2021年の統計によると,小中学校では244,940人(1,000人中,中学生では50人,小学生では13人)が不登校に登録され,2020年より24.9%増加していた.この増加率はコロナ禍の影響を考慮しても顕著で,衝撃的であった.1992年文部省(当時)は,登校拒否(当時)は深刻な問題で,どの児童生徒にも起こりうるものという視点に立って対処する必要があるとの基本方針を示した.

    不登校は,身体症状,個人の性格特性,家族や社会的要因が複雑に絡んで引き起こされる状態である.登校を渋り始める徴候として,どの年齢でも学校のある日の朝の頭痛や腹痛など身体症状の訴えが多い.子どもがまず受診するのはかかりつけ医と思われるが,器質性疾患が除外された場合は,子どもの性格特性や家庭・学校などに何か困難を抱えていないか目を向けてほしい.長期欠席に至る前の早期発見・早期介入が何より大切である.教師,養護教諭,スクールカウンセラーのかかわりは重要であるが,子どもが学校に入ることを拒否している場合は難しい.その場合は区市町村の適応指導教室や習い事などの子どもの居場所作りが重要である.筆者は行動療法として子どもに登校カレンダーの作成を勧め,小学生では有効例が多い.また,保護者とは別席の子どもへの支持的精神療法は,時間はかかるがどの年齢でもよい転帰につながる.子どもが元気になって,打ち込める何かをみつけ,将来社会に出ていくことが不登校児ケアの最終目標である.

シンポジウム:皮膚科心身医学
  • 羽白 誠
    2024 年 64 巻 2 号 p. 119
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー
  • 檜垣 祐子
    2024 年 64 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    心身医学の臨床では傾聴が医療者に求められる態度の基礎となっている.これは共感的,受容的に話し手に耳を傾け,聞き手自身に無理がないという態度である.受容と共感は,医療の現場で特に重視され,診療科によらず共通の主題である.

    皮膚科診療においては,視診や触診が重要であるため,傾聴しつつ並行して診察,検査,治療を行うことになる.そのため,受容・共感的診療には多少の工夫が必要である.

    傾聴することは,よい治療関係を構築し,望ましい治療結果をもたらす.また,傾聴は小さな治療的自己ともいわれるように,治療者の成長にもつながるものと考える.

  • 堀 仁子
    2024 年 64 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    皮膚症状を見るだけではなく,患者の抱える心理・社会的背景および患者特性を全人的に診る診療法を皮膚科心身医学的アプローチという.かゆみや慢性の経過,露出部の皮疹など皮膚疾患が心理面に与える影響もあわせて診療する姿勢が必要である.

    交流分析は,心理や行動についてのひとつのパーソナリティ理論で,構造分析,交流パターン分析,ゲーム分析,脚本分析の4つを基本理論にしている心理療法である.エゴグラムを用いた構造分析は,患者の性格傾向を知り,患者特性にあわせた外用指導や治療の提案の仕方に役立つ.患者の皮膚症状をコントロールしつつ,自己肯定感を増幅させ,その後の人生をより自分らしく歩んでいけるようになることを診療の最終ゴールにしており,その手段のひとつとしてエゴグラムを活用している.

  • 山北 高志, 芦原 睦
    2024 年 64 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    自律訓練法(autogenic therapy:AT)は1932年ドイツの精神科医J. H. Shultzが催眠の研究に基づいて創案し,後にW. Lutheによって体系化された心理療法である.ATは交流分析および認知行動療法とともに心療内科における治療の三本柱の1つとして発展してきた.その特徴は自分で「公式」を繰り返すことで全身の緊張を解き,自分自身でリラックスした心身の状態を得て,健康の回復,維持,増進を目指すセルフコントロールを行うことである.元来,神経症や心身症の治療法として用いられてきたものであり,心療内科領域ではさまざまな疾患に用いられている.本法は体系化されている心身医学療法の1つであり,皮膚科医でも実践しやすいため,不安や緊張を伴う皮膚科心身症に対して選択肢として適している.本稿では実際の方法と皮膚科領域への適応と注意点,皮膚科心身症へ応用した症例を提示する.

  • 羽白 誠
    2024 年 64 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    行動療法は不適切な行動を心理的操作によって修正する精神療法である.方法としては,段階的曝露法,セルフモニタリング法,ハビットリバーサル法,オペラント条件づけ,フラッディング法,苦行療法などがある.皮膚科において不適切な行動として問題となるのは,アトピー性皮膚炎をはじめとする痒みに対する過剰な搔破行動が最も多いと思われる.そのほかとして抜毛症や爪咬み,皮膚むしり症などがある.また人前に出るとコリン性じんま疹が出るという場合もある.搔破行動にはセルフモニタリング法やハビットリバーサル法が有用である.抜毛症や爪咬み,皮膚むしり症に関してもセルフモニタリング法やハビットリバーサル法が有用である.これらは本人に課題を課すため,やる気(動機づけ)が出ないとできない治療法である.いかに動機づけを起こすかということが治療のポイントとなる.

原著
  • 萩原 綾香, 小林 如乃, 仲保 徹
    2024 年 64 巻 2 号 p. 141-151
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    鍵盤ハーモニカ演奏前後の患者の気分に対する主観的指標の側面を,医学的に効果が実証されているスレッショルドとの比較により検討した.呼吸状態が安定している慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者17名を対象とし,鍵盤ハーモニカ群(8名)と,スレッショルド群(9名)に無作為に割付を行った.約15分間の呼吸練習を実施し,その前後に気分の測定としてProfile of Mood States 2nd Edition(POMS2)の測定を行った.群と呼吸練習後のTotal Mood Disturbance(TMD)得点の2要因の分散分析を行った結果,呼吸練習実施前後の主効果が有意であり,呼吸練習実施前に比べて実施後のTMD得点が低かった.さらに,重回帰分析の結果から家事頻度と活動頻度が説明変数として採択され,寄与率は31.1%であった.以上のことから鍵盤ハーモニカとスレッショルドによる呼吸練習には気分改善効果が認められ,日常的に活動的な人のほうがより気分が改善しやすいことが示唆された.そして,呼吸練習に鍵盤ハーモニカを用いることで継続性を見込める新たな呼吸練習の選択肢を示した.

  • 池田 裕美枝, 江川 美保
    2024 年 64 巻 2 号 p. 152-160
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    [早期公開] 公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー

    目的:短縮版Daily Records of Severity of Problems(DRSP)8項目を記憶型尺度に応用することで,premenstrual syndrome(PMS)の負担感を測定する尺度としたPremenstrual Syndrome Short Scale 8 items(PMS-8)について,信頼性と妥当性を検証する.方法:まず短縮版DRSPの8項目について,自覚する普段の月経前の症状の負担感を問う形にした尺度PMS-8を作成した.次に定期的な月経を有する18歳以上の女性をオンラインでリクルートし,基本属性,PMS-8,PMS-Impact尺度を質問した.PMS-8についてクロンバッハαを算出し,確認的因子分析にてRMSEAとCFIを算出した.併存的妥当性としてPMS-Impact尺度とのスピアマンの相関係数を算出した.結果:回答者は415名だった.PMS-8のクロンバッハαは0.75で,心理的因子,身体的因子の2因子構造であり,RMSEA 0.08,CFI 0.94だった.PMS-Impactとのスピアマンの相関係数は0.72(p<0.01)だった.結論:PMS-8は信頼性と妥当性が許容できるものであることを示した.

連載 心身医療の伝承―若手治療者へのメッセージ
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