心身医学
Online ISSN : 2189-5996
Print ISSN : 0385-0307
ISSN-L : 0385-0307
57 巻, 11 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
巻頭言
特集/小児科から心療内科への移行
  • 石﨑 優子
    2017 年57 巻11 号 p. 1105
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー
  • ―小児科―
    柳夲 嘉時
    2017 年57 巻11 号 p. 1106-1112
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    心身医学領域において, 小児期から成人期への移行期支援はきわめて重要である. 小児と成人ではライフスタイルや発症しやすい疾患が異なり, 患者のライフステージに合わせた医療や支援の提供が大切になる. また成人科への適切な移行を行うことは患者自身が自立性を獲得し成長する助けになり, 治療としての効果も期待できる. 患者の自己決定権を尊重しつつ適切な時期に移行を成功させるために, 移行前から移行中, 移行後を通じた小児科と心療内科の連携が重要となる.

    小児科医の立場 (送る側) から, 日本小児科学会の取り組みを紹介し, 実際の症例も交えながら, 移行期支援に対して感じる期待, 効果, 不安をお示ししたい.

  • 阿部 哲也, 福永 幹彦
    2017 年57 巻11 号 p. 1113-1117
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    小児科から心療内科への移行期医療を促進するために, 関西医科大学小児科心身症グループと心療内科による合同カンファレンスを開催した. この中で移行期医療に関する現状や問題点を共有し, 移行予定患者やすでに移行した患者の経過に関する症例検討を行った. これらの実践によって, 医療者同士が顔の見える関係になったのは大きな成果である. しかし, たとえこのような関係性がなくても, 両診療科の医療スタイルの相違を意識することで移行期の患者にかかる負担の大きさにも想像力を働かせることができれば, 受け手側から移行期医療を促進していくことができると考える.

  • ―精神科指定発言者の立場から―
    髙宮 静男
    2017 年57 巻11 号 p. 1118-1122
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    小児科から心療内科への移行には用意周到なプランが必要である. それらは, 小児科と心療内科からの児と保護者への丁寧な説明, 共同カンファレンスであり, 顔の見える連携である. 今回の関西医科大学での試みは, 貴重な取り組みであり, 全国に広まっていくことが期待される.

  • 村上 佳津美
    2017 年57 巻11 号 p. 1123-1126
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    小児科の守備範囲は一般的には中学生までとなっている. 高校生からは内科となるが, この枠組みには医学的な根拠はない. 高校生の心身症を小児科が診るべきか内科が診るべきかについては, 小児心身医学と心身医学の違いがポイントとなる. 小児は成人に比べて, 心身が未分化であり心理的ストレスが身体症状に現れやすいため, より広い範囲に心身症を発症する. そのため小児において心身症は小児科医が一般診療で扱っている場合が少なくない. また小児期は発達過程にあり, 心身症を診ていくうえでも発達について常に意識する必要がある. よって高校生が子どもからの延長で, 発達過程にあると考えるのであれば小児科医が診療を行うのが適切との結論になる.

  • ―診療所心療内科医の立場から―
    橋爪 誠
    2017 年57 巻11 号 p. 1127-1132
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    筆者の診療所において, 12年間に受診した高校生160名のうち心療内科を希望した者117名について検討した. 約65%は医療機関または学校から紹介されて受診した. 主訴では不登校と睡眠障害が多い. 診断名は心身症として過敏性腸症候群, 緊張型頭痛, 起立性調節障害, 過換気症候群, アレルギー性疾患, 摂食障害など, 精神疾患として気分障害, 不安障害, 適応障害, 発達障害などであった. 治療法として薬物療法と心理療法士によるカウンセリングが行われた. 39%は受診が1, 2回で, その多くは診療が中断していた. 残りの半数以上の症例は2年以内で治療が終了し, 63%で改善を認めた. 早期脱落例や小児科から心療内科への移行について考察を加えた.

原著
  • ―慢性疾患を有する症例を主体としたパイロットプログラムのレトロスペクティブな検討―
    伊藤 靖, 山本 和美, 神原 憲治
    2017 年57 巻11 号 p. 1133-1142
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    海外でMindfulness-Based Stress Reduction (MBSR) の有用性が示されている. 今回MBSRで使用されるCDを用い, 8週間のプログラムを主に慢性疾患患者を対象として実施した結果をレトロスペクティブに解析し, 本邦における実施可能性および効果を検討した. 参加者15例 (男性4, 女性11, 年齢〔±SD〕 : 61±12歳) 中, 13例 (87%) で最終評価が可能であり, 自習回数は平均4.6±1.6回/週, 時間は33±14分/回であった. QOLの指標であるSF-36は12例で評価可能であり, 下位尺度で “日常的役割機能 (身体) ” およびサマリースコアで “役割・社会的健康度” に改善を認めた. 効果量で中等度以上の改善 (Cohen’s d≥0.5) が “日常役割機能 (身体) ”, “活力” および “役割・社会的健康度” で認められた. 本邦における実施可能性および有効性が示唆され, 適切な試験デザイン・症例数でのさらなる検討が必要と考えられた.

資料論文
  • 一條 智康
    2017 年57 巻11 号 p. 1143-1150
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    ユマニチュード®はジネストとマレスコッティの2人によって創案された認知症ケアの技法である. 本稿では, ユマニチュードの語源をネグリチュードの歴史的意義にまで遡って解説し, 「ユマニチュード®」 の概略を紹介した. さらに, 治療的自己, マルチモダール, オキシトシンなどの観点から文献的考察を加えた.

    超高齢社会を迎えた日本にとって, ユマニチュード®の有用性は今後ますます広く受け入れられると思われる. その哲学を学び実践できれば, 人と人の 「絆」 という最も根本的に重要でありながら, 現代社会において希薄となっている大事な視点にわれわれが立ち返るきっかけをつかめるかもしれない. 「われわれがお互いに『人間としての尊厳』が保たれていることを再認識できる」 ユートピアが実現できることが期待される.

連載:心身医療の伝承―若手治療者へのメッセージ―
連載:関連領域からの学会・研究会だより
地方会抄録
feedback
Top