人工臓器
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11 巻, 6 号
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  • 田代 忠, 諌本 義雄, 坂本 照夫, 横倉 義武, 加来 信雄, 大石 喜六, 古賀 道弘
    1982 年11 巻6 号 p. 1101-1104
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室における開心術後腎不全症例は57例であり、その発生率は3.2%、死亡率は55.4%であった。以上の症例を、前期(S50.1~53.4:cardioplegia以前), 中期(S53.5~55.7:cardioplegia以降), 後期(S55.8~57.4:拍動流体外循環以降)に分けて、術前状態、体外循環術後経過について検討した。
    開心術後腎不全となるrisk factorとして、術前腎機能低下、重症心不全、高年令、長時間体外循環、術後低心拍出量症候群などが、あげられた。
    拍動流体外循環の導入は、開心術後腎不全の発生を防止させる上には有用で、腎不全の発生率は減少したものの、症例の重症化のため腎不全例の死亡率は上昇しており、今後の問題を残している。
  • 新井 達太
    1982 年11 巻6 号 p. 1105
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 横山 秀雄, 数井 暉久, 泉山 修, 山口 保, 杉木 健司, 竹田 晴雄, 鎌田 幸一, 小松 作蔵
    1982 年11 巻6 号 p. 1106-1109
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたOmniscience弁による大動脈弁置換術34例を対象に、運動負荷を含めたBrockenbrough法心臓カテーテル検査により心機能および弁機能を評価し、臨床成績とあわせて検討した。術後早期死は1例(3%)で、術後2カ月から20カ月にいたる遠隔追跡上、晩期死は感染性心内膜炎による弁周囲逆流を併発した2例(0.9% per patient-month)であった。しかし、血栓塞栓症、弁機能不全などの代用弁由来の合併症は認あられなかった。安静時(R)および運動負荷時(Ex)の両者で測定した平均大動脈弁圧較差は、それぞれR=18.2±6.2mmHg、Ex=22.9±6.2mmHg、一方大動脈弁有効弁口面積はR=1.47±0.48cm2、Ex=1.69±0.65cm2であった。また左室機能をはじめとする心機能はいずれも改善を示し、X線透視下でのoccluderの開放角の観測も満足すべきものであった。Omniscience弁による大動脈弁置換は臨床的に有効と考えられ、長期遠隔期の抗血栓性、耐久性に注目し、今後とも使用していく考えである。
  • 川内 義人, 徳永 皓一, 田中 二郎, 松井 完治, 古森 正隆, 森田 茂樹, 麻生 俊英, 益田 宗孝, 井本 浩
    1982 年11 巻6 号 p. 1110-1114
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    219例にHancock弁置換を施行し, hospital survivors 205例を627 patient-year (10カ月~7年6カ月, 平均3.1年) follow-upした。遠隔死は14例, 2.2% per patient-yearであった。overall actuarial survivalは, 4年以降85±3%であった。actuarial late survivalは, AVR, MVR, CVRの3群間に差はなく90%であった。血栓塞栓症は13例に20回 (3.2% per patient-year), Hancock弁のみによる人工弁置換例では2.6% per patient-yearの発生をみ, 0.3% per patient-yearの死亡率であった。危険因子としては, MVR, 心房細動, 心拡大 (CTR≧65%)が考えられた。AVRでは, 非抗凝固療法にも拘らず, 血栓発生はなかった。MVRでは, thrombus free rateは5年で89±4%であった。bioprosthesis failureを8例に認め4例を再手術で救命した。3例がprimary tissue failure, 5例が心内膜炎によるものであった。このようにHancock弁置換症例は遠隔期にも良好な結果を示した。
  • 筒井 達夫, 今村 栄三郎, 小柳 仁, 土屋 喜一
    1982 年11 巻6 号 p. 1115-1118
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    抗血栓材料を用いてtri-leaflet valve prosthesisを作製し、水力学的検討を行なった。leaflet bodyは回転楕円体の一部として設計し、弁尖沈み角は応力解析、及び水力学動態から21度とした。このとき回転楕円体は球体に一致する。coaptation zoneをとりつけることにより、拍出流量のばらつきは小さくなった。coaptation zoneの存在は、non-stented valveを縫着する際の安全係数として作用する、と言える。non-stented valveとstented valveとの、開放時のenergy損失係数を検討すると、口径19mm以上では差は10%以内であったが、径17mm以下の場合、損失係数の差は大きくなった。このことは、臨床応用を考える場合、留意すべき点である、と思われる。
  • 小机 敏昭, 久米 弘洋, 鈴木 茂, 丸山 浩一, 中村 譲, 宮沢 総介, 古川 仁, 森田 紀代造, 鈴木 和彦, 新井 達太
    1982 年11 巻6 号 p. 1119-1122
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IS弁によるMVR21症例を対象に, 使用弁サイズ別にI群(25.・27mm)・II群(29mm)・III群(31・33mm)に分け, その術緩急性期血行動態を検討した結果, III群が最も経過良好で, CI2.98±0.31~3.58±0.59L/min/m2, SI34.7±4.6~45.5±8.6ml/beat/m2, PVR 98±17~186±63dyne/sec/cm-5の間の変動であった。病態別にみるとIII群に属した症例はMSR・MR例で, 術前状態からみると最も重症群であった。またI群は, MS例が7例中6例を占め, 術直後の肺動脈圧の下降が少ない点, 左室容量が小さい点が術後血行動態に影響を与えていた。LA(mean)-LVEDPからIS弁の弁機能をみると, I群8.33±3.21mm-Hg. II群4.60±1.54mmHg. III群3.17±1.08mmHgで, 29mm以上の弁の弁機能が優れていた。IS弁によるMVR症例では, 31・33mmの弁, 病態別ではMR例の術後急性期血行動態が優っていた。
  • 小松 作蔵
    1982 年11 巻6 号 p. 1123
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―心室ペーシングとの比較検討―
    村松 博文, 喜多 村敬, 安藤 重幸, 加藤 林也, 平田 幸夫, 林 博史, 外畑 巌, 村瀬 允也
    1982 年11 巻6 号 p. 1124-1127
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    洞不全症候群(SSS)に対する心房pacing(AP)の有用性を検討するためSSS患者28例を対象として術后遠隔期、AP群15例(男2、女13、平均年齢58.2才)と心室pacing(VP)群13例(男2、女11、平均年齢63.2才)の臨床症状、CTR、運動耐容能を比較した。術后脳虚血症状は両群とも全例消失したが、術前に存在した日常労作時の呼吸困難はAP群8例中6例(75%)、VP群11例中4例(36.4%)で消失した。CTRはAP群術前60.2±2.8%、術后(平均19.1カ月)52.9±4.4%へと有意に減少した(P<0.01)が、VP群では変化しなかった。Treadmill運動時間はAP群11.2±1.4分、VP群9.3±2.4分で、両群間に有意差(P<0.05)を認めた。APは心室充満に対する心房収縮の同調と正常心室内伝導が維持されるため、VPに比しより多い心拍出量が期待される。AP群ではVP群に比し臨床症状改善が優れ、CTRもより減少し、運動耐容能もより向上した。SSSに対し、APはVPに比しより優れた、生理的pacing法であると考えられた。
  • 加藤 林也, 村松 博文, 安藤 重幸, 平田 幸夫, 林 博史, 外畑 巌, 村瀬 允也
    1982 年11 巻6 号 p. 1128-1131
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    洞不全症候群(SSS)における心房pacemaker(AP)のsensing不全と心房電位の関連を検討した。対象はAP植込を行ったSSS 16例(男2、女14例、平均年齢58.9才)であり、心房電位の測定には右心耳の電極を用いた。多段階Treadmill exercise test(TMT)を施行し、運動中のsensingの良否を測定した。TMTにてoversensingは認められなかったがundersensingは10例(62.5%)に認めた。Sensing良好な6例(I群)の心房電位は2.25±1.05mV、HRの増加と共にsensing不全を示した5例(II群)では1.40±0.67mV、全自己心拍に対しsensing不全を示した5例(III群)では0.54±0.09mVであり、III群の心房電位はI・II群に比し有意に(P<0.01、P<0.05)低値を示した。APのsensing閾値は0.75~1.00mVであり、undersensingを避けるには閾値の約2倍の安静時心房電位が必要であると考えられた。SSSでは洞機能障害に合併する心房病変が心房電位の低下を来し、そのためsensing不全を惹起した。
  • ―非プログラマブルとプログラマブル, 心筋電極とカテーテル電極―
    神吉 豊, 中村 昭光, 岩本 恒典, 門脇 政治, 佐藤 伸一, 北浦 一弘, 嶋田 秀逸, 鄭 正勝, 和田 行雄, 佐々木 義孝, 白 ...
    1982 年11 巻6 号 p. 1132-1136
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室において, 1966年7月~1982年4月までに, 222例に対し植込まれた365回のgenerator, 250本の電極を対象とし, ペースメーカー自体の合併症を検討した。365個のgeneratorの内訳は, non programmable P. G 82個, programmable P. G 159個, multiprogrammable P. G 124個である。これらのうち, generator回路のfailureの頻度と原因は, non programmable P. G 6個7.3%, runaway 2, demand failure 2, 接続部不良2で, programmable 1個0.6%, 出力停止1, multiprogrammable 1個0.8%, rate異常上昇であり, programmabilityそのものが作動異常を増加する原因になっていない。電極250本の内訳は, 心筋電極30本, カテーテル電極220本であった。断線例をみると, 心筋電極では, tack折損2本, およびその他の部位での断線3本, 計5本6回20%であり, 一方, カテーテル電極の断線は8本3.6%であった。そのうち3本は7年以上を経過後に発生したものであり, 稀な心房内断線も経験した。
  • 山本 豊
    1982 年11 巻6 号 p. 1137-1139
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    右心室ペーシング患者52例を対象にそのSTIおよびQRSを検討した. PEP/ETが0.8未満の例(I群)はその後も0, 8未満であり, 0, 8以上の例(II群)はその後も0.8以上であった. 左脚ブロック型のQRSはII群にのみ認められ, I群には認められなかった. V6のQRSが下方に優位な例では, QRSが上方に優位な例に比し, PEPが短かく, ETは長く, PEP/ETは小さかった. V6のQRSが上下ほぼ等しい例ではSTIは両者の中間値を示した. これらの結果は, 右心室ペーシングにおけるQRS波形が, 心室の電気的興奮過程を通じ心効率に影響を与えている可能性を示唆した.
  • 長柄 英男, 山口 明満, 笠置 康, 板岡 俊成, 横山 正義, 和田 寿郎
    1982 年11 巻6 号 p. 1140-1143
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    プログラマブル・ペースメーカーは植込み後に生体の特殊な状況に体外からプログラムすることにより対処することが出来る。この特性を利用し, ペースメーカー植込み患者に合併した骨転移を伴なう前立腺癌に対し体温を41~42℃まで上昇させる全身温熱療法を行なった。
    患考は68歳の男性で8年前に完全房室プロクでペースメーカーの植込みを受けた。1981年11月骨転移を伴なう前立腺癌を指摘され, 前立腺および両側睾丸の摘出術を受けた。4回にわたり体外循環を行なったが, 41~42℃に体温上昇中に体外からのプロミラミングによって心拍数を100~120BPMに維持した。その結果心拍出量は良好に維持されまた酸素消費量も他の患者とほぼ同様の動きを示した。
  • 服部 淳
    1982 年11 巻6 号 p. 1144
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 安藤 太三, 中島 伸之, 足立 郁夫, 藤田 毅, 曲直部 寿夫
    1982 年11 巻6 号 p. 1145-1148
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    術中自家輸血の臨床応用は未だ広く普及していない。近年開心術における体外循環法の確立に伴い、この分野において術中自家輸血の経験が積み重ねられてきた。他家輸血の節約、ウイルス感染などの大量他家輸血による種々の合併症を考えると、大量出血が予想される手術における術中自家輸血は非常に有用な方法である。我々は自家輸血装置を独自に考案して、大血管手術44例に積極的に使用した。自家輸血装置は吸引管、cardiotomy reservoir, Swank filterを用い、吸引と送血にはroller pumpを使用した。結果は、術中総輸血量の6割を自家輸血でまかなうことが出来た。溶血、止血機能、腎機能、微少塞栓などに特に問題はなく、安全に術中自家輸血が施行し得た。腹部大動脈瘤破裂の緊急手術と、胸部大動脈瘤手術で補助手段として一時的体外バイパスを用いる場合は、術中自家輸血は特に有用な方法であった。
  • 細川 進一, 小平 精吾, 友吉 唯夫, 吉岡 宏, 野中 優
    1982 年11 巻6 号 p. 1149-1151
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Polyesterを用いてMicropore blood transfusion filter(NS-filter)を作製し, 基礎的に検討を加えた。ナイロン, Polyesterをガラスビーズ溶液を用いてその透過性を検討し, 血液に対する適合性を調べた。その結果Polyesterの方がより適合していることがわかり, これを用いてdepth型とscreen型の混合型のfilterを作製した。試作品を,世界で最も一般的に使用されているSwank-filterと比較した。牛血及びヒト保存血を用いて, 赤血球, 白血球, 血小板の通過率, Microaggregatesの捕促率を調べた。この結果, 試作品(NS-filter)とSwank filterではほとんど有意差なく両方ともすぐれた結果を示した。NS-filterはSwank filterと比較して小型であり重量も軽く非常に良いfilterである。これらのことより, 試作品(NS-filter)は臨床的にも十分使用することが出来るものと考えている。今後さらに基礎的検討を重ね, すぐれたfilterを作製するつもりである。
  • 加来 信雄, 平田 邦寿, 徳安 敏行, 大石 喜六, 古賀 道弘
    1982 年11 巻6 号 p. 1152-1155
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肝不全, 腎不全に端を発した多臓器不全の多くは最終的には呼吸循環不全へ症状が進展して, 再び肝および腎を悪化せしめている。そして, この間には正常とは異なったhemorheologyが介在しているようである。この悪化したhemorheologyをより生理的な状態に改善することは多臓器不全から離脱する上で大切なことである。重症患者の血液粘性は健常者に比べて高い。それは赤血球の形態上の変化によるものであるが, その形態異常を起す原因に赤血球内の高リン酸エネルギー反応の異常が考えられ, とくにATPの低下にもとづくNa+-K+ ATPaseの崩壊は赤血球膜の脆弱化を起し, これが赤血球の形態異常に関与していると考えられる。
  • 稲垣 豊, 寺町 教司, 中村 通宏, 矢野 誠
    1982 年11 巻6 号 p. 1156-1161
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    MOS type FETのGATE METAL部の代りに, 電解液を用い, かつH+に感応性のある窒化シリコン(Si3N4)と酸化シリコン(SiO2)の二重膜構造で被覆する事により, pH電極ができる。又, この電極と比較電極をNaHCO3の液に浸しCO2透過性の膜で皮覆する事によりPco2電極ができる。この原理を利用して, 今回, 我々は微小pH電極とPco2電極を試作した。
    抗血栓性をもたせる為にpH電極の先端部をhydronでcoatingし, それ以外の部分をsilicone rubberで皮覆した。又, Pco2電極はCO2透過性の膜としてsilicone rubberを用いた。動物実験において電極の安定した感度を得るための最低ヘパリン量は, pH電極で初回300U/kg, 時間100U/kg/H, Pco2電極は初回100U/kg時間30U/kg/Hであった。
  • 小鯖 覚, 八木 一之, 桑原 正喜, 松原 義人, 畠中 陸郎, 二宮 和子, 船津 武志, 池田 貞雄
    1982 年11 巻6 号 p. 1162-1165
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今までの人工気管のなかで, 最も多くの臨床例に用いられているのはNevilleの人工気管である。しかし, Nevilleの人工気管は吻合部の肉芽形成, 人工気管の逸脱などの問題が残されている。その原因は周囲組織との親和性がないことおよびFlexibilityが乏しいことと考えられている。われわれはまず, Nevilleの人工気管の改良を行ない, 動物実験で検討したところ, 人工気管の逸脱は防止し得ることが確認された。さらにわれわれはFlexibilityに富んだ新しい桂型人工気管を開発し検討を加えた。
  • 稲垣 豊
    1982 年11 巻6 号 p. 1166
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 岡野 光夫, 片岡 一則, 阿部 一彦, 桜井 靖久, 島田 昌, 田原 博志, 杉山 徳栄, 篠原 功
    1982 年11 巻6 号 p. 1167-1170
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    親水-疎水型のミクロドメイン構造を有するブロックコポリマーは血小板の活性化を著しく抑制することを, 粘着血小板の形態, 内部構造, ATP放出能の測定から明らかにした。とくにこのような効果について, ミクロドメインのモルホロジー, サイズおよび化学構造の影響について検討した。これより300~500Aオーダーのラメラ状のミクロドメインを有するHEMA-St-HEMAブロックコポリマーは血小板の活性化を抑制して優れた抗血栓性を示した。このことはin vivoにおいて内径1.5mmのチューブをA-Vシャントとして用いた場合にもきわめて良好な抗血栓性を示すことによっても確められた。
    以上の結果から血小板活性化抑制表面の分子設計法に関して議論した。
  • 渡辺 哲夫, 丸山 厚, 好野 則夫, 鶴田 禎二, 片岡 一則, 岡野 光夫, 桜井 靖久, 西村 隆雄, 井上 祥平
    1982 年11 巻6 号 p. 1171-1174
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ミクロ相分離構造を有する櫛型コポリマーSA上で特異的にリンパ球粘着が抑制され, さらにBリンパ球が選択的に粘着されることが判明した。このような効果は, あらかじめアルブミンを材料上に吸着させておくとより顕著となった。このような機能は, SA自体のミクロ相分離構造あるいはSA上に形成された相分離吸着アルブミン層がリンパ球の膜流動を制御し, その活性化を抑制することにより発現されるものと考えられた。また, このような材料の特異性を定量的に把握する方法として速度論的解析を導入し, 個体差等の実験条件に左右されずに材料間の差を整理することを試みた。その結果, ミクロスフィアカラム法におけるリンパ球の見かけの粘着速度は, 一次の速度式に従うことが明らかとなり, 速度定数の値より各材料の粘着性を定量的に比較することが可能となった。
  • 由井 伸彦, 讃井 浩平, 緒方 直哉, 片岡 一則, 岡野 光夫, 桜井 靖久
    1982 年11 巻6 号 p. 1175-1178
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    化学構造を系統的に変化させることにより結晶性の異なるポリエステル及びポリアミドを合成し, これら材料表面に粘着した血液細胞の脱着性を材料の高次構造, とりわけ結晶性に着目して検討した。血液との相互作用はミクロスフィアーカラム法によった。ポリアミドでは, とりわけメチレン鎖長4~8において顆粒球の選択性及び脱着性が極めて優れており, 市販の材料であるナイロン6の回収率が34%であったのに対し, 最も脱着性の高いポリアミドでは回収率が68%であった。また材料表面に粘着した顆粒球の脱着性は, 材料の結晶性と比較的良い相関を示し, 材料表面の結晶状態, すなわち結晶-非晶によるミクロ不均質構造が細胞の粘脱着を制御する機能を有していると考えられた。
  • ―ポリグリコール酸製剤について―
    平野 誠, 若狭 林一郎, 岩 喬, 中原 理人
    1982 年11 巻6 号 p. 1179-1182
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    徐放性制癌剤として, 5F-u-PGA針とMMC-PGA針を作製した。in vitroの実験では, 5Fu-PGA針の徐放性に関する検討を行なつた。その結果, PGAの重合度を高めることによつて, あるいは5Fu濃度を高めることによつて徐放性能の高まることが判明した。そこで径1.5mm, 長さ1cmの30%5Fu-hiPGA針(5Fu 6mg含有)を用いて動物実験を行なつた。体重148-168g, 5週齢の雄ドンリユウラツトを使用し, 腫瘍はAH130腹水肝癌細胞をラツト側腹部皮下に移植し, 作製した。
    5Fu放出瀬は約9日間で, 血中灘は極めて低値を示した。抗腫瘍効果の実験では, 投与10日目のT/C%で1.7を示し, 極めて有効と判定された。以上より, 本剤が癌局所療法として有用であると思われた。
  • ―臨床53例の検討―
    貝塚 秀樹, 西山 祥行, 長柄 英男, 田原 士朗, 毛井 純一, 和田 寿郎
    1982 年11 巻6 号 p. 1183-1186
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Glutaraldehyde処理豚心膜 (Stabilized Porcine Pericardium; SPP)は, Rygg. I. H. によって開発され, 臨床報告されてきた。
    われわれは, 1978年5月より1982年6月までの間に, 53症例にSPPを用いほぼ満足すべき結果を得た。症例の内訳は, ファロー四徴症24例, 心室中隔欠損症9例など, 先天性心疾患45例と, 左心室瘤4例をはじめとする後天性心疾患であった。53例中7例を, LOSなどにより, 術後早期に失った。残る46例について, 最長4年2カ月, 最短5カ月の期間に亘り, 検討した。
    心室中隔欠損症と大動脈縮窄症の各1例に軽度の瘤形成を認め, また, Mustard手術例のバッフルに, 異常エコーを認めた。残る43例には, 特に異常所見を認めなかった。
    合併症については, 今後, 更に追跡を続けたい。
  • 寺田 良蔵, 鈴木 慈郎, 森 有一, 長岡 昭二, 菊地 哲也, 西海 四郎, 畑田 研司, 小林 弘明
    1982 年11 巻6 号 p. 1187-1190
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    毒性物質の細胞に与える影響を感度良く測定することができるMEM培地混合法を開発した。本法の細胞毒性の検出感度は従来の細胞毒性評価法(ディスク法, 寒天培地混合法)と比較して10~100倍高い。本法を用いて医療用軟質塩化ビニル樹脂(PVC)の可塑剤であるDEHPの細胞毒性を評価した結果10ppm以上で細胞増殖阻害が認められ, 70ppm以上では細胞増殖が完全に阻害されることがわかった。一方, PVCを仔牛血清を用いて37℃, 3日間抽出した時の溶出DEHP量は14ppmで, 細胞増殖阻害率は42%であったがプラズマ処理したPVCの場合は同様の抽出条件下ではそれぞれ2. 6ppmおよび10%でDEHP溶出量および細胞毒性も著しく軽減した。これらの事実はプラズマ処理技術が血液バッグ, 透析用回路に有効に応用されることを示唆する。
  • 岡野 光夫
    1982 年11 巻6 号 p. 1191
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 小沢 修一, 松森 正之, 山下 長司郎, 知花 幹雄, 山崎 良定, 大野 徹, 麻田 達郎, 西山 範正, 沢田 勝寛, 岡田 昌義, ...
    1982 年11 巻6 号 p. 1192-1195
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    昭和46年4月から50年4月までの4年間に28例の三尖弁置換術が施行されたが, そのうち入院死を除く17例を対象とし, 平均8年6ヵ月のfollow upで得られた, 遠隔成績, 合併症, 血行動態の推移を検討して, 以下の如き結論が得られた。
    1. 三尖弁置換術後の遠隔成績は比較的良好で, 退院症例の8年後の生存率は80%であった。また致命的な合併症, 血栓弁, 肺動脈塞栓症はまったく認めていない。
    2. MVR+TVR症例の術後血行動態は安静時には良好であるが, 運動負荷時には問題があり, 機能的三尖弁狭窄の状態になることが推測された。
    3. 以上運動負荷時の血行動態に若平問題があるが, 重症例であるにもかかわらず, 長期の安定した成績が得られていることから, 適応症例には三尖弁置換術を積極的に行ってよいと考える。
  • 湯田 敏行, 丸古 臣苗, 森下 靖雄, 有川 和宏, 山下 正文, 豊 平均, 平 明
    1982 年11 巻6 号 p. 1196-1199
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    82症例の弁置換術に計96個(僧帽弁位67個, 大動脈弁位29個)のSt. Jude Medical(SJM)弁を使用した。病院死は僧帽弁置換群5/54例(9.3%), 大動脈弁置換群2/17例(11.8%), 二弁置換群2/13例(15.4%)であった。術後合併症で致死的なものはPerioperative myocardial infarction, 低拍出量症候群, 急性腎不全, 多臓器不全などであった。NYHA機能分類では術後遠隔期にはほぼ全例I一II度と改善し, CTRも全群で低下した。術後早期の血栓塞栓症の発症はなく, 晩期に重篤な脳血栓を1例, 四肢の一過性のしびれを3例に経験し, その発症率は4.1/100患者・年となった。これらの症例は何れも抗凝固療法が不十分であった。術後の溶血を生体弁(Hancock, Carpentier-Edwards)群と比較するとSJM群でやや高い傾向を示したが臨床上問題とはならなかった。prosthetic infectionを2例に併発し再弁置換術を施行した。弁機能不全例は皆無であるが, 最近報告が散見されるので今後も注意深いfollow-upが必要と考える。
  • シネ撮影による動態観察
    木曽 一誠, 林 郁夫, 内藤 千秋, 東茂 樹
    1982 年11 巻6 号 p. 1200-1202
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    SJM弁はpyrolytic carbon製のディスク弁のため, 通常の胸部レ線で観察されない。我々はシネによる動態観察を検討したので供覧したい。Siemens Angioscope Cシステムを用い, 50コマ/秒でECGと同時記録した。観察は仰臥位でCアームを用いた。大動脈弁位(LAO 60°~90°, Cranial 10°~20°)で19例中17例, 僧帽弁位(LAO 45°~60°又はRAO 10°~20°, Cranial 10°~20°)で19例中15例で, 二つのleafletが心拍の全周期にわたり観察された。sewing ringを真上からみる角度では全周期にわたっての観察には不適で, ringに対しやゝ斜めでleafletを線ではなく面でとらえる方向が最も探索し易く, 観察も良好であった。5例(うち3例Af, 2例はNSR)(僧帽弁位)でasynchronous closure, early semiclosure, flutteringが認められたが臨床的血行動態的には異常はなかった。
  • ―傾斜円板弁との比較検討―
    林 純一, 大谷 信一, 福田 純一, 富樫 賢一, 佐藤 良智, 横沢 忠夫, 坂下 勲, 江口 昭治, 品田 章二
    1982 年11 巻6 号 p. 1203-1206
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    St. Jude Medical弁の臨床的特性をBjörk-Shiley弁と比較検討し, 本弁選択の指標を考察した。
    1979年12月より82年5月までに新潟大学第2外科においてSJM弁置換を行った後天性弁膜症例は62例で, 手術死亡は4例, 6.5%であった。このうちAVR7例, MVR15例につき術後1年で心機能を評価した。C. I., LVEDPはほぼ正常化し, mLAPも多くの例でよく改善した。
    圧較差は安静時で29M 1.4%mmHg, 27M 2.8mmHg, 25A 11.5%mmHg, 弁口面積はそれぞれ3.9cm2, 28cm2, 29cm2でB-S弁と有意差なかった。しかし23A以下では安静時2mmHg以上, 運動負荷により50mmHg以上となることより, 23A以下の置換は可及的に避けることがのぞましい。
    また術後1年以上の慢性期および1ヵ月以内の急性期における溶血の検索では, SJM弁例での溶血はB-S弁に比し多い傾向がみられた。
  • 柳生 邦良, 高山 鉄郎, 松永 仁, 松本 博志, 吉竹 毅, 水野 明, 浅野 献一
    1982 年11 巻6 号 p. 1207-1210
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    弁膜疾患の弁置換には, 当教室ではHall-Kaster弁を主に使用している。H-K弁の術後弁機能と左心機能への影響に関して調べた。大動脈弁と僧帽弁の理論上と実測上の弁口面積比の比較では, 有意差は認められなかった。UCTGで弁置換症例の遠隔期の左室機能をfollow upしてみるとAR群とMS群では, LVDd, EF, mVcfがいずれも正常値に収束してくる傾向が認められたが, MR群ではこの傾向は認められなかった。人工弁置換症例において, 術直後の弁口面積比の測定と, 遠隔期のUCTGを用いた左心機能のfollow upは, 植えられた人工弁の適切さと心筋機能の回善度を示す指標として使用できる可能性がある。
  • 高山 鉄郎, 松本 博志, 柳生 邦良, 吉竹 毅, 水野 明, 浅野 献一
    1982 年11 巻6 号 p. 1211-1214
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工弁置換術後の抗血栓療法は現在抗凝血薬に抗血小板薬が併用されることが多い。本研究では弁置換術後に抗凝血薬(ワーファリン)のみ投与群と抗血小板薬併用群にわけ術後の血液凝固能を測定し術直後の抗血栓療法の方法について検討した。プロトロンビン時間は術後第3病日ですでに85%と回復、血小板数血小板凝集能も第3病日以後回復、著しい充進を示し第21病日まで続いた。抗血小板薬特にTiclopidine投与により血小板凝集能の尤進が抑制された。これらの結果より血栓弁発生の危険は術直後より存在し、抗血栓療法は術直後より始める必要があると考えられた。我々はDipyridamole 2mg/Kg/日を術直後より24時間持続点滴で開始、第3病日以後ワーファリンとDipyridamole又はTiclopidineの併用を行なっている。なおDipyridamoleは末梢血管拡張作用によると思われる副作用が少なくなく慎重に投与する必要がある。
  • 中村 和夫
    1982 年11 巻6 号 p. 1215
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 星野 豊, 原田 英之, 数井 暉久, 藤原 嗣允, 兼古 悟, 安喰 弘, 小松 作蔵
    1982 年11 巻6 号 p. 1216-1219
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    EF 0.4以下の重症左心機能低下例30例を対象に, 拍動流体外循環群(PF群)17例と定常流体外循環群(NPF群)に分け比較検討した。1. 臨床成績では, 早期死亡, IABP施行頻度ともにPF群で少なく, 術後カテコールアミン使用例もPF群29%に対しNPF群54%とPF群で有意に少なかった。2. 末梢循環の指標として, 尿量, 中枢末枢温度較差, 加温時間, LDH5/TLDHをみたが, 尿量以外いずれもPF群で良好な結果を示した。特に, 大動脈弁閉鎖不全症のような脈圧の大きい症例での拍動流効果は顕著であった。3. 心筋代謝では酸素摂取率, 乳酸摂取率, Excess Lactate, Redox potentialについて検討したが, その結果PF群でより高い好気性代謝が維持されていた。4. 以上の結果より拍動流体外循環法は, 術中の主要臓器の機能保存, 末梢循環の維持とともに, 体外循環離脱時の効果も大きく, 重症心機能低下例には特に有効であると考えられる。
  • 永田 昌久, 近藤 三隆, 中井 尭雄, 内木 研一, 加藤 量平, 福田 厳, 矢野 孝, 小林 正治, 数井 秀器, 寺沢 利昭, 北川 ...
    1982 年11 巻6 号 p. 1220-1223
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    胸部下行大動脈瘤手術時の補助手段としての大腿動静脈間部分体外循環に際し, 下半身の循環を拍動流としたところ, 多くの効果がみられた. 胸部大動脈瘤手術例10例を対象とし, うち6例にPBP装置を用い拍動流とし (PF群), PBP装置を用いない4例(NPF群)と比較検討した. PF群は圧差平均40mmHgの拍動流がえられ, 上肢血圧の異常上昇もなく, 送血量の増減に対する上下肢血圧のコントロールは容易であった. 超音波流量波形の分析から, PF群では循環中から術後にかけての末梢循環はNPF群に較べ有意に良好であった. また循環中の尿流出はPF群で良好であり, 術後のBUN, CRNは両群の間で有意差がみられ, 血清酵素値(GOT, LDH, CPK等)の変化もPF群で軽度であった. F-Fバイパスにおける下半身の循環に拍動流の併用は, 腎循環, 末梢循環等にとって意義あるものと思われた.
  • 塩野 元美, 宮本 晃, 北村 一雄, 中村 士郎, 小笠原 弘二, 瀬在 幸安, 斎藤 敏三
    1982 年11 巻6 号 p. 1224-1227
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助循環法の最近の進歩はめざましく, 各種の補助方法が考案されているが, 大動脈内バルーンパンピング法は, すでにその有効性について数多くの報告がある。
    左心補助手段である大動脈内バルーンパンピング法(IABP)を, 右冠動脈結紮法によりブタに右室梗塞を伴う右心不全を作成後に施行し, その効果と限界を明らかにするとともに, 肺動脈バルーンパンピング法(PABP)および両者同時併用法の効果を検討した。右室梗塞による急性右心不全に対しIABPはその効果が乏しかったのに対し, PABP法は有用であり, さらにIABPとの併用時には, 血行動態的改善が著しく, これは主にIABPのDiastolic augmentation効果と, PABPの右室に対するSystolic unloading効果の相乗作用によると思われ, 開心術中の心筋梗塞, 特に右室梗塞を伴い, 急性右心不全を呈する症例に対しては, 有効な左右両心補助循環手段と考えられた。
  • ―中心静脈圧主導型―
    貝塚 秀樹, 日野 恒和, 田原 士郎, 毛井 純一, 板岡 俊成, 和田 寿郎
    1982 年11 巻6 号 p. 1228-1231
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心臓外科をはじめとする領域での体外循環の占める位置は, 現在非常に大きなものとなり, 既に多くの研究者によって, 機械的改良, 生理学的検討が加えられて来た。しかし, 操作自体は, いまだに, 人の手に委ねられており, より長時間を, より安定した状態に保つためには, 頻回の調節を要する。体外循環中の血行動態の指標となる静脈圧・動脈圧・尿量などのうち, 前2者について, 生体からのfeed back機構とすることにより, 作働を自動化するための研究を行って来た。このうち, われわれは, 中心静脈圧を主たる指標とした。装置自体には, あらかじめ, 各指標の設定値があり, これに対する生体からの情報の変化を利用した。雑種成犬30頭の実験では, 期待通めの機能と安全性を認め, 近い将来, 臨床に導入し得るものと考えられた。
  • ―コンピュータによる体外循環 送・脱血量の自動制御―
    福井 康裕, 小林 昭, 土屋 喜一, 今井 康晴, 高梨 吉則, 本多 正知, 副島 健市
    1982 年11 巻6 号 p. 1232-1235
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心臓外科における開心術の進歩は手術技法の発達と共に人工心肺装置による体外循環法の確立によるところが大である. しかしその血行動態は必ずしも生理的であるとはいえず, その影響は特に乳児等においては重要な問題となる. 本研究はマイクロコンピュータ制御により自動制御機構を有する人工心肺装置を開発し, 乳児期における長時間の生理的体外循環を実現しようというものである. 研究は自動制御の第一段階として送・脱血量の自動制御化を進めている. 送血ポンプはパルスモータ駆動によるローラ型とし拍動流送血やECGまたはAoPに同期した補助送血が可能である. 送血量および脱血量は体外循環中の全期間において生理的灌流操作が行なわれるよう考慮されており, 特に脱血量はCVPを制御目標値とする自動制御が可能である. 本システムにおける評価試験として動物実験を行ない良好な結果を得ているのでここに報告する.
  • 今井 康晴
    1982 年11 巻6 号 p. 1236
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 竹沢 真吾, 平野 史朗, 酒井 清孝
    1982 年11 巻6 号 p. 1237-1240
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ダイアライザーの性能を評価するためには、同一条件下にて行なわれた実験結果を用いなければ正しい結論は下せない。しかし、臨床において同一条件を要求することはまず不可能である。そこで、水溶液系in vitro実験にてその評価方法の検討、ならびに各社モジュールの性能を比較した。その結果、クリアランス(CL)は温度の影響を受けるが、ダイアライザーの設置位置には関係のないことが判明した。また、CLに与える血液ポンプ脈流の影響も得られなかった。12社のダイアライザーは膜面積が同一でないため、総括物質移動係数(K)にて比較した。Kは膜の厚さにも関係するが、ファイバーのポッティング状態がモジュール全体の性能を支配する傾向がみられた。以上のことより、ダイアライザーの性能は膜自体の性能の他にファイバーの充填状態が大きく影響していると思われた。
  • 細川 進一, 小平 精吾, 友吉 唯夫, 西尾 利二, 長尾 昌寿
    1982 年11 巻6 号 p. 1241-1244
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全の血液透析療法では, ダイアライザーの性能を正しく評価することはきわめて困難であるが, 非常に重要なことがらである。健康成人のボランティアより血液を得て, これに尿素, クレアチニン, リン等を加えて慢性腎不全症例と同様の血液性状を作製した。これを用いて各種ダイアライザーのUFRPならびにBUN, クレアチニンのクリアランスを測定した。条件はT. M. P (0, 100, 200mmHg), 血液流量(100, 150, 200ml/min)で, かん流液はキンダリー3号を用い流速500ml/minとした。これらの結果と実際に臨床より得た結果とは非常によく一致しており, 我々のダイアライザーの性能評価はそのまま臨床に応用することが出来ると考えられる。本法を用いてダイアライザーの性能評価を行ない, これから各患者さんに最適のダイアライザーを選定し, きわめてすぐれた安定維持透析を現在行なっている。
  • 竹沢 真吾, 斎藤 和幸, 山下 明泰, 酒井 清孝, 酒井 糾
    1982 年11 巻6 号 p. 1245-1248
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液浄化療法の一つである血液濾過は治療中にタンパク質等の生体高分子が膜面に堆積するため濾過流束、溶質透過能が著しく低下する。本研究では濾過流束の経時的な減少を清澄濾過におけるHarman-Bredee-Graceの式を用いて整理しその妥当性を確かめた。その際、4つの濾過式はいずれも高い相関でデータを説明し得た。これは膜面、孔壁における高分子堆積物の抵抗がほぼ等しいために起こるものと考えられる。また濾過抵抗の主因をなす物質を確認するためSC=1の物質(NaCl, イヌリン等)・タンパク質・フィブリノーゲン生食緩衡液・血清・血漿等を濾過し、濾過流束の経時変化を調べた。その結果SC=1の物質・タンパク質・フィブリノーゲン生食緩衡液は経時変化をせず血清・血漿のみが経時劣化を示した。このことから濾過抵抗の経時的増加は、数種類の物質が相互に影響し合って起こるものと考えられる。
  • 竹沢 真吾, 池 俊太郎, 酒井 清孝, 東 仲宣, 鈴木 満, 中西 光, 井上 政昭
    1982 年11 巻6 号 p. 1249-1252
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液濾過においてモジュールの性能を支配するものは膜自体と膜面上に形成されるタンパク層である。ここでは、そのような観点から膜面上に形成されるタンパク層厚みのモジュール内部分布を間接的に調べるべく、東レB1-Lの牛血in vitroによる半径方向濾過流量分布を測定した。その結果、半径方向では濾過流量の偏りがみられたが、その傾向は一定ではなく、血液流量、すなわち膜表面せん断速度の影響を強く受けることが判明した。さらに、自作平膜型モジュールにより長さ方向の濾過流量分布を調べたところ、ダイセルCDA膜にて入口付近においてやや高値を示す傾向がみられた。以上のことから、せん断速度を大きくとることにより膜表面上のタンパク層の生成を抑制し、モジュール性能を向上させることが可能である。しかし、せん断速度はかなりの高値でなければこの効果は期待できないと思われ、今後モジュール構造の改善が望まれるところである。
  • 金本 晃, 加田 貢一, 米満 政吉, 安藤 秀丸, 池袋 弘範, 佐藤 公彦, 野沢 真澄
    1982 年11 巻6 号 p. 1253-1256
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析の臨床において, 刻々と変化する患者個々の透析条件に対応させるために, 透析膜面積或は透析液流路が自由に且つ瞬時に変えられる血液透析器を開発した。当該血液透析器はHFKの側面に相対して夫々3個の透析液出入口を設けたものである。実験方法はそのうちの任意の1個づつの透析液出入口(他は閉口栓で閉じる)を用いて, 透析液流路として可能な9通りの流し方に対して, 生理食塩水及びVB12により夫々のクリアランスを測定した。その結果, (1)向流では流路長を変えることでクリアランスを自由に変えられ(並流では不変), (2)透析液出入口を上部或は下部にするとクリアランスは最大時の1/10に低下でき, また, (3)透析液出入口を中央にするとクリアランスは向流と並流との平均値となった。(4)以上より, 実用化する場合には透析液入口を1側下方の1点にだけ設け, 出口を他側の3点に設けることで透析器のクリアランスを自由に変えることができる。
  • 三田地 広和, 吉田 俊彦, 鈴木 弘之, 広瀬 正美, 宇津宮 寿彦, 小川 秋広, 高橋 源作, 稲垣 豊, 天野 泉
    1982 年11 巻6 号 p. 1257-1260
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者で, 強度な代謝性アシドーシスを呈したり, また重症肝障害, 術後胃液喪失及び大量消化管出血を合併した場合, 代謝性アルカローシスを呈する事が多い。これらの疾患に対しては, 大量の輸液剤は使いにくい場合が多く, 我々はこれら疾患の治療に高・低重曹gradient透析を施行した。
    高重曹gradient透析では, 透析前HCO3-濃度45~50mEq/lから経時的に低下させ, 透析終了時にはbaseのHCO3-度とした。一方低重曹透析では市販の重曹液を稀釈しHCO3-濃度15mEq/l, 3時間目から透析終了までは, 代謝性アルカローシスの過剰改善を防止する意味でHCO3-濃度20±3mEq/lとした。この低重曹gradient透析により, 透析前血液pH7.517, HCO3 31.5mEq/lから透析後血液pH7.456, HCO3- 27.67mEq/lと代謝性アルカローシスの改善を透析により速やかに行なうことができた。
  • 酒井 清孝
    1982 年11 巻6 号 p. 1261
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 浅沼 義博, 小山 研二, 大内 清昭, 高木 靖, 大和田 康夫, 中川 国利, 面川 進, 菊地 淳, 後藤 浩志, 佐藤 寿雄, 岩井 ...
    1982 年11 巻6 号 p. 1262-1265
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新たに開発されたPolyethylene hollow fiber plasma separatorの機能及び生体適合性について人全血及び犬を用いて検討した。Polyethylene 270 Tは, 内径270μm, 膜厚55μmの中空糸3600本よりなり, 有効膜面積0.5m2である。100ml/minの流入人全血量に対し30~35ml/minの血漿分離が3時間安定して施行でき, 各種血漿蛋白の膜透過率も, 30分後total protein, albumin, IgG, IgA, IgM, fibrinogenの順に0.93, 0.96, 0.95, 0.98, 0.75, 1.0と良好であり, 更に3時間後でも0.91, 0.99, 0.90, 0.87, 0.54, 0.90と安定した成績が得られた。犬を用いた実験でも同様の成績が得られ, 更に濾過圧を200~300mmHgに上げても溶血は見られなかった。これは中空糸表面の孔形状が, 短冊形状となっているため, 赤血球の穴に対するもぐり込み現象がおこり難いためと考えられ, 良好な蛋白透過率と合わせて, このfilterを臨床応用するに際し, 非常に有利な点としている。
  • 小森山 広幸, 出月 康夫, 浜口 実, 浜辺 茂樹, 田中 房子, 与那覇 朝英, 苑田 毅, 丹沢 宏, 渡辺 弘
    1982 年11 巻6 号 p. 1266-1270
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今日, 血漿採取法は遠心分離法が主体であるが, これは赤血球の分離のためにその比重が大きいことを利用して, 遠心沈澱法を利用している。我々は全く新しい着想より, 膜分離法を応用した中空線維型血漿分離器(Plasmax-東レ)を用いた血漿採取を試みた。実験はビーグル犬10頭(平均体重9.8Kg)を用い, 200単位/Kgのヘパリン化の後, 体外循環を行った。体外循環血流量は60ml/minとし, 18分間灌流を行い, 200mlの血漿を採取した。血漿採取後, 28%の蛋白減少, 10.3%の血小板減少をみたが, 各々2日後, 2時間後に前値に復することがわかった。また, 赤血球, 白血球, 蛋白分画, 電解質, 肝酵素, アミノ酸等の測定も行い, Plasmaxを用いた血漿採取の生体に及ぼす影響について検討を加えた。その結果, Plasmaxを用いた血漿採取法は, 生体にほとんど影響を与えることなく, 安全に血漿採取が施行可能であることを確認した。
  • 川島 司郎, 仲野 領二郎, 船橋 直樹, 水野 雅夫, 三浦 信彦, 三戸部 京子, 金田 朋子, 池亀 守
    1982 年11 巻6 号 p. 1271-1274
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    少ない血流量で、効率のよい膜血漿分離をおこなうことを目的として前希釈血漿分離法(Pre-diluted Plasma Pheresis, 以下PDPP)を考案し、臨床応用を試みた。悪性関節リウマチの56才男子症例にPDPPを計6回施行した。いずれの場合も、左、右前腕皮静脈をそれぞれ動、静脈側として血流を得た。
    毎分70mlの血流量に毎分30mlのハルトマン液を注入して血液を希釈し、希釈血流量の100ml/分によりPFO-02を使用して血漿分離をおこなった。第3回のPDPP前後における血液検査成績では、IgG, A, Mはいずれも前値の50%以下に低下し、RAHAは10240倍から2560倍へ、ANAも16倍から4倍へと低下し、臨床的にも自、他覚所見が改善した。また、IgMの篩分け効率、濾過効率は60分後でも低下せず、膜の分離能がよく保たれていた。
  • 堀内 孝, P. S. MALCHESKY, 末岡 明伯, 松金 隆夫, 上野 幹彦, 阿部 泰久, J. WOJCICKI, J. W. ...
    1982 年11 巻6 号 p. 1275-1280
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Rheumatoid Arthritis (RA), Cryoglobulinemia (CF)患者の治療に対し臨床上多くの有効例を数えているcryofiltrationの臨床結果を解析するうえで, 定量的なdataに基づくcryofiltrationの特異性を把握することが必要と思われる。そこで, 正常及び患者血漿を用いたin vitro cryofiltration testを行ない, macromolecular substancesの膜透過機構の違いによる血漿成分の低温下での挙動を検討した。さらに, 温度変化, 膜孔径のcryofiltrationに与える影響を正常血漿を用いた実験から考察した。正常血漿例では, 膜間圧力差の上昇は温度に依存することが認められ, さらにグロブリンの低温下での除去が得られた。疾患群でのcryofiltration test結果は正常血漿例に比し膜間圧力差の著しい上昇と疾患に特異的な物質の除去が認められ, 本方法の特異性が確認された。
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