育種学雑誌
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24 巻, 3 号
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  • 清沢 茂久
    1974 年24 巻3 号 p. 117-124
    発行日: 1974/06/29
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    外国イネは一般に日本イネのもたない多くのいもち病抵抗性をもっている。これらの遺伝子を導入しようとするとき,できる限り早くその中に含まれる遺伝子の種類を知ることが望ましい。これにより,すでに日本で利用されている遺伝子を導入したり,多くの品種から同一の遺伝子を導入したりする無駄を省くことができる。この実験は,米国品種Dawnのいもち病抵抗性に関する遺伝子構成を知るとともに,低抗性遺伝子の早期同定の方法を探索するために行なった。 Dawnを種々の既知の抵抗性遺伝子をもつ品種と交配し,そのF2にDawnが抵抗性を示す菌糸を接種し,その結果,DawnがPi-a,Pi-k,Pi-iをもつことを暗示する結果をえた。しかし,F2分析では,含まれる遺伝子数が多いため,それを決めるためにも不充分であり,また,上記の3遺伝子が含まれると結論するためにも不充分である。 Dawn×新2号のF3を用いて6菌糸を接種し,北1に対する抵抗性は主働遺伝子,稲72,研54-20,研54-04,稲168に対する低抗性は3主働遺伝子により支配されることを明らかにした。その他にも徴働遺伝子の存在を明らかにした。 Dawn×新2号のF3を用いて,突然変異体法と頻度分布曲線法を併用して,Pi-a,Pi-k,Pi-iの存在を確認した。ただし,Pi-kについては,Pi-k座で知られている対立遺伝子,Pi-k,Pi-kp,Pi-khのうちのどれかであるか,あるいは全然新しい対立遺伝子であるかを明らかにすることはできなかった。上記3遺伝子以外にも主働遺侯子が含まれているものと考えられる。 この実験では,突然変異体法を用いて頻度分布曲線を描くために,一部,系統当り中間型と罹病性個体数を用いたが,この方法は高度抵抗性遺伝子の同定には有効に利用しうるものと考えられる。
  • 海妻 矩彦, 三浦 祥英
    1974 年24 巻3 号 p. 125-132
    発行日: 1974/06/29
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    大豆(Glycine max)の種子タンパク質含量および含硫アミノ酸含量が,各種の豆科植物の種子におけるそれと比較した場合に,どのような特徴を有するかを明らかにする目的で,本実験を行なった。各地の国公立農業試験場,研究所,種苗商などから,1972年に,18属,37種にわたる延べ106の品種または系統の豆科植物の種子を収集し,タンパク質含量(マクロ・ケルダール法)および含硫アミノ酸含量(微生物定量法)の測定を行なった。結果の主なものは次のとおりである。 1)大豆(G. max)およびツルマメ(G.soja)は,供試材料中で最も高いタンパク質含量および含硫アミノ酸含量を有する種の1つであること,また,それらの属するGlycineae族は,最も高い含硫アミノ酸含量をもつこと,が明らかとなった。 2)Phaseoleae族は,概して,やや低いタンパク質含量と中庸の含硫アミノ酸含量をもつこと,また,この族の主要なメンバーをなすPhaseolus属については,含硫アミノ酸含量に関し,2群に分ち得ること,すなわち,P.vulgarisなどの新大陸原産の種は,比較的低いメチオニン含量と比較的高いシスチン含量を有するのに対し,P.anguralisなどのアジア原産の種は,逆に,比較的高いメチオニン含量と比較的低いシスチン含量を有することが明らかとなった。さらに,Vicineae族(Vicia属が中心)は,特に,メチオニン含量が低く,Glycineae族のほぼ1/2であること,Trifolieae族は,比較的シスチン含量が低いこと,なども明らかとなった。 3) タンパク質含量と含硫アミノ酸含量(メチオニン,シスチン,両アミノ酸合計)に関して,属平均値間にみられる相関々係をしらべたところ,タンパク質含量と含硫アミノ酸含量との間の相関係数およびメチオニン含量とシスチン含量との間の相関係数,のいずれにおいても数値は,ほとんどゼロであった。これら各形質の変動は,互いに独立であると考えられた。
  • 山口 秀和
    1974 年24 巻3 号 p. 133-139_3
    発行日: 1974/06/29
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1)この実験は,生殖生長への移行期から減数分裂期のイネの分化と生長に与える放射線照射の影響を明らかにする目的で行なった。2)水稲品種レイメイを材料とし I.栄養生長から生殖生長への移行期,II.1次,2次枝梗の形成期,III.頴花形成期,IV.減数分裂期の4時期にX線3kR,6kRを照射した。総葉数,出穂日,致死率,節間長,分けつ数,穂構成諸器官の分化,発育数,稔実率を調査し併せて組織学的観察も行なった。3)総葉数は両線量区ともI区で増加の傾向を示した。出穂日もI区のみで遅延した。致死率は,6kR照射でII(90%)>I>III>IV(0%)となり,3kR照射では致死はほとんどあらわれなかった。稈長は,II,III,IV区でI区より強く抑制される。各節間の伸長抑制は,下位節間ほど早い時期の処理で強い抑制をうける。分けつの葉位別出現頻度は両線量区でよく類似したパターンを示し,処理時期により変化する。分けつの発生した最高葉位は,処理時期のすすむにつれ上位となり,IV区では11葉位節からも分けつの発生がみられる。
  • 山口 彦之, 多々良 敦
    1974 年24 巻3 号 p. 141-145
    発行日: 1974/06/29
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    オオムギ種子の浸漬後,第1葉分裂組織のなかに細胞分裂像が現われる前の間期のS期やG2期に比較的低線量(1,800R以下)のガンマ線を照射すると,一時的に“G2阻止"が生ずること,および,細胞分裂のための準備はS期からはじまっていることをすでに明らかにした(YAMAGUCHI and TATARA 1973)。本実験は,細胞分裂開始のための準備がおこなわれていると考えられるS期に抗生物質処理をして,分裂のためのメッセンジャーRNAや蛋白質がこの時期に合成されているかどうかを調べた。S期に蛋白質合成阻害剤のChloramphenicol,puromycin,cyc1oheximideおよびメッセンジャーRNA合成阻害剤のactinomycin Dで2時間処理することによって,細胞分裂の頻度は著しく減少した。このことから,DNA合成期には,同時に細胞分裂のために或種のRNAや蛋白質が合成されていると推察された。動物細胞では,DNA合成期に核蛋白質のヒストンが合成されるという報告があるので,細胞分裂のための蛋白質はヒストンと推察された。このことは.S期に3H-leucineをとりこませたときに,中期染色体上に銀粒子が観察されたことからも証明された。 つぎに,このようた細胞分裂に必要な蛋白質の合成が,放射線照射によって阻害されるかどうかを調べた。種子浸漬後,15時間目の発芽種子にガンマ線180~1,800Rを照射し,照射直後に2時間,3H-leucineのとりこみをおこなって固定し,オートラジオグラフをおこなったα間期細胞における標識細胞の割合は約30%であったが,この値は,ガンマ線を1,800R照射したときにも減少しなかった。 間期細胞に1,800Rを照射すると,細胞分裂の開始は阻害されるにもかかわらず,細胞分裂のための蛋白質合成は阻止されないことがわかった。
  • 河村 重行, 岩崎 文雄, 細田 友雄
    1974 年24 巻3 号 p. 146-152
    発行日: 1974/06/29
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1)花粉発芽の基礎的実験の一つとして,花粉粒内の糖含量が植物の種類・花粉の発育時期によりどのように異なるかを調査した。2)実験にはホーセンカ,ペチュニア,コスモス,菜類およびアサガオの花粉を主として用いた。3)糖類の検出はヨード・ヨードカリ法,Periodic Acid Schiff法およびFluckigen法で行った。4)その結果,同一植物の花粉でも発育時期によって糖の種類や含量に差が認められた。5)一般に花粉の発育初期から成熟する重での過程でデンプン含量は減少するが単糖類の含量は増加する傾向がみられた。6)ホーセンカ,ペチュニア,アサガオはデンプン,多糖類,単糖類の含量が比較的多く,特にPAS反応とFluckigen法で検出される糖類が顕著であった。これに対しコスモス,菜類はデンプン,多糖類,単糖類とも検出されたが,とくにFluckigen法で反応する糖類の含量は少なかった。7)無添加の寒天培地に発芽させたところ,ホーセンカとペチュニアはよく発芽するが菜類,コスモス,アサガオは発芽がわるかった。このことから単糖類と発芽との関係をさらに調べることにした。
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