外国イネは一般に日本イネのもたない多くのいもち病抵抗性をもっている。これらの遺伝子を導入しようとするとき,できる限り早くその中に含まれる遺伝子の種類を知ることが望ましい。これにより,すでに日本で利用されている遺伝子を導入したり,多くの品種から同一の遺伝子を導入したりする無駄を省くことができる。この実験は,米国品種Dawnのいもち病抵抗性に関する遺伝子構成を知るとともに,低抗性遺伝子の早期同定の方法を探索するために行なった。 Dawnを種々の既知の抵抗性遺伝子をもつ品種と交配し,そのF
2にDawnが抵抗性を示す菌糸を接種し,その結果,DawnがPi-a,Pi-k,Pi-iをもつことを暗示する結果をえた。しかし,F
2分析では,含まれる遺伝子数が多いため,それを決めるためにも不充分であり,また,上記の3遺伝子が含まれると結論するためにも不充分である。 Dawn×新2号のF
3を用いて6菌糸を接種し,北1に対する抵抗性は主働遺伝子,稲72,研54-20,研54-04,稲168に対する低抗性は3主働遺伝子により支配されることを明らかにした。その他にも徴働遺伝子の存在を明らかにした。 Dawn×新2号のF
3を用いて,突然変異体法と頻度分布曲線法を併用して,Pi-a,Pi-k,Pi-iの存在を確認した。ただし,Pi-kについては,Pi-k座で知られている対立遺伝子,Pi-k,Pi-k
p,Pi-k
hのうちのどれかであるか,あるいは全然新しい対立遺伝子であるかを明らかにすることはできなかった。上記3遺伝子以外にも主働遺侯子が含まれているものと考えられる。 この実験では,突然変異体法を用いて頻度分布曲線を描くために,一部,系統当り中間型と罹病性個体数を用いたが,この方法は高度抵抗性遺伝子の同定には有効に利用しうるものと考えられる。
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