育種学雑誌
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27 巻, 2 号
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  • 吉田 智彦
    1977 年27 巻2 号 p. 91-97
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    オオムギ葉身裏側のmm2当たり気孔数は止葉で最も多く,下位葉になるに従い減少する。止葉の葉鞘にもかたりの数の気孔が存在する。芒の1穏当たり総気孔数は止葉の総気孔数に匹敵する。止葉裏側のmm2当たり気孔数の品種間差異は43~95に分布しており,既存の品種問でも気孔数の遺伝的変異はかなり大である。また止葉裏側の気孔数の多い品種は,他の葉身や葉鞘でも気孔数が多い。気孔数の品種間差異は異なった環境下でも変動しにくく,気孔数の異なる品種間の交配後代での遺伝獲取量より求めた遺伝力の値は,3組合せのうち2組合せの集団で比較的大きい値であった。
  • 後藤 虎男
    1977 年27 巻2 号 p. 98-104
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    コムギの春播性と秋播性との間の遺伝様式に関しては,従来から研究が行われているが,それらの論文では春播型と秋播型との2群に分けて遺伝様式を論じており,春播型と秋播型との間に存在する中間型については殆んど触れられていない。しかし,コムギの春播型と秋播型との間には,ぽぽ連続的に中間型が存在することが知られている。また最近,春播性品種と秋播性品種との交雑によって品種改良を行う大規模な計画が,米国オレゴン大学・CIMMYTの協力によって開始されている。従って,中間型についての遺伝的解明は実際の育種の推進上必要なことと考えられる。本論文では春播性品種ウシオコムギと秋播性品種Extra Early Blackhullとの交雑の後代について,中間型系統の固定を計ったところ,F6世代になって,20℃,24時間照明下での播種から止葉展開まで日数が両親の日数の間に分布する15の異った固定系統を得ることができた。これらの系統についてF8世代で8℃,24時間照明による低温処理について春化要求度の検定を行ったところ,得られた固定系統の春化要求度はIからVIまでの各段階に属することが分った。本実験によって,春化要求度Iの品種と春化要求度VIの品種の交雑後代には,春化要求度がIからVIまでの各段階に属する固定系統が出現する場合のあることが実験的に確かめられた。
  • 藤巻 宏, R E
    1977 年27 巻2 号 p. 105-115
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    戻し交雑法による育種では,一回親から導入する有用遺伝子(目標遺伝子)と農業上重要た量的形質を支配する遺伝子との間に不利な連鎖があると,育種を進める上での大きな障害となる。この研究では,戻し交雑集団におけるこのような不利な連鎖を評価するための統計遺伝学的方法を開発した。さらに,その方法の精度との関連で,実験に必要な系統数や反復数について論議した。両親となる自殖系を交雑し,雑種世代では正常な2倍性分離が起こるとする。遺伝子座間のエピスタシスはなく,目標遺伝子に関するヘテロ接合体が表現型により識別できるとする。目標遺伝子をB(その対立遺伝子をb)とし,最的形質を支配しBと組換え値cで連鎖する遺伝子をx(その対立遺伝子をX)とする。t回の戻し交雑によって得られるBtF1世代の遺伝子型頻度は第1表のとおりにたる。これらの個体を自殖してBtF2系統とL,B-b座の分離の有無に関して系統を群分けする。各群におけるX-x座の遺伝子型頻度は第2表に示すとおりになる。これら2つの系統群間の遺伝的差異がB-b座とX-x座との間の連鎖効果を表わすことになる。したがって,BtF2系統を適当な圃場試験計画で栽培して,農業上重要な最的形質に関して測定を行い,B-b座の分離の有無に関して2分した系統群間の遺伝的差異を統計的に検定すれば,目標形質と量的形質との間の連鎖効果を評価することができる。
  • 猪俣 伸道
    1977 年27 巻2 号 p. 116-122
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Brassica campestrisの子房の人工培養において,種々の炭素源による培養子房の発育について検討を行なった。用いた実験材料はそれぞれ2倍体Brassica campestris L. ssp. chinensis(L.)Makino栽培品種雪白体菜と同質倍体Brassica campestris L. ssp. pekinensis (Lour.) 0lsson栽培品種野崎白菜とであった。2倍体雪白体菜の株間交配と同質4倍体野崎白菜の株間交配は,各々除雄後2日目に開花した柱頭上に当日開花した花粉をかけて行なった。交配後4日目の子房を植物体から切り取り,殺菌後試験管(18×180mm)の寒天培地に植え込んだ。試験管に植え込んだ子房は植え込み後,36目目に取り出し,茨の長さを測定し,また茨における着粒率と得られた種子の発芽率を調査した。種々の炭素源の培地における子房の人工培養による発育を調査した実験において,用いた培地組成はNITscH(1951)の無機物にwH1TE(1963)のビタミン類と寒天(89/1)を加えたものであった。用いた種々の炭素源はサッカロース,グルコース,ラフィノース,フルクトースとマンノースであった。各炭素源は各々50g/1の割合で培地に添加した。種々の庶糖濃度の培地における子房の人工培養による発育を調査した実験において,用いた培地組成はNITsEHの無機物に修正WHITEのビタミン類と寒天(8g/l)を加えたものであった。培地に添加した庶糖濃度は各々10g/l,30g/l,70g/lと90g/lであった。
  • 横尾 政雄, 菊池 文雄
    1977 年27 巻2 号 p. 123-130
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネのいもち病抵抗性遺伝子 Pi-ztの雑種集団における分離を媒介として,Pi-ztと密接に.連鎖する出穂性遺伝子産 Lm1^)に関する遺伝子分析を行い,Lme,Lmn,Lmtの3個の複対立遺伝子を見出した。これらの複対立遺伝子の作用は不完全優性であり,Lme-Lmn-Lmtの順で出穂を遅延させる。Lm座は,イネの第I連鎖群にあって,日本型・インド型品種に共通して出穂性を支配する主要た遺伝子座であり,その中にさらに多数の複対立遺伝子の分化を生じているものと推測された。雑種集団の出穂期に関する変異は,連続分布を示したり,また,双峰あるいは三峰分布を示す場合でもその境界が重なり合うことが多いので,遺伝子分析のためには一般に検定交雑や後代検'定に頼らざるを得なかった。しかし,出穂期を支配する遺伝子と密接に連鎖する標識遺伝子を利用すれば,問題の出穂性遺伝子を分析することが可能であり,本研究では,いもち病抵抗性遺伝子 Pi-ztを標識遺伝子として,この方法の有効性を確かめた。
  • 山田 実, B A
    1977 年27 巻2 号 p. 131-140
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Sclerospora philippinensisに因る露菌病に対するトウモロコシの低抗性を高める育種を進めるのに当って,必要な最適な検定法を確立するために,分生胞子の懸濁液の胞子濃度および接種される幼植物の葉令と,発病率との相互関係を明らかにしようとした。用いた材料は,抵抗性品種間のF1(NE#1×Ph9DM=R)×MIT VAR2と罹病性品種間のF1 La GranjaPopcorn×UPCA VAR3とであり,1974年11月に実験-1,翌年2月に実験-2が,フィリピン大学農学部で木箱栽培で行われた。実験-1では,5×103胞子/mlと30×103胞子/mlの接種濃度で0.5~0.9葉期,1.5葉期,2.5葉期に,捲葉部滴下で接種した。実験-2では,0.2,1.0,1.5葉期に,実験-1の結果に基づいて,葉令が高いほど接種濃度を高めて接種した。なお,接種懸濁液の調製には,YAMADA et al(1976)の方法によって,同調化されている分生胞子が用いられた。接種後28日目までには,全身病徴による発病率がプラトーに達するので,28日目の発病株率によって,材料の低抗性を評価した(Table1)。その結果,実験-1と実験-2とを通じて,いずれの材料においても,接種葉令が若いほど,また接種胞子濃度が高いほど発病率は高く,従来の研究報告と一致していた(Fig.1とFig.2)。つぎに,実験-1と実験-2との結果から等発病率線を画くと(Fig-5),抵抗性の強弱いずれの材料でも,それぞれ一定の発病率を得るためには,接種葉令に応じた接種胞子濃度で接種すれぼよいことがわかった。したがって,抵抗性が異なる材料の差異を明確に識別できる接種条件を決定することができた。すなわち,抵抗性材料の発病株率が50%,罹病性材料のそれが100%となるような接種条件は,0.5葉期で50~60×103胞子/ml,1.0葉期で80×103胞子/ml,1.5葉期で120~150x103胞子/mlである。
  • 中川原 捷洋
    1977 年27 巻2 号 p. 141-148
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    栽培イネの葉身に含まれるエステラーゼ同位酵素は,寒天・ポリビニールピロリドンを支持体とする平板薄層電気泳動法では,約14種のパンドがある。このうち,主要なバンド,1A,6A,7A,11A,12Aおよび13Aについて交雑実験により遺伝様式を調べた。バンド1Aはすべての交雑組合せでF1個体に出現し,その活性は1A保有品種親より低かった。F2集団では,1A個体と非1A個体との比は3:1の単遺伝子分離に適合した。したがって,1Aの活性発現は単一の主働遺伝子に支配され,その座位にEst1の遺伝子記号を与えた。バンド6Aおよび7Aの遺伝も1Aと同樹こすべての交雑組合せで単遺伝子分離を示し,それぞれ主働遺伝子支配が明らかとなった。一方,両者はたがいに近接し,活性も同程度であり,これまで調査した在来種にはどちらか一方のバンドしか見い出されないことから,対立関係にあるアロザイムの可能性が大きいので,6A品種と7A品種の交雑を行った。その結果,F1個体は両酵素の活性があり,雑種酵素は出現せず,F2では正逆いずれの交雑組合せても6A型とF1型および7A型が1:2:1の割合で分離し,双方非活性の個体は出現しなかった。したがって,6Aと7Aの対立遺伝子座支配が証明された。この座位にEst2の記号を与え,6AをEst2s,7AをEst2Fとした。バンド12Aと13Aも6Aと7Aの関係と同様であり,複対立主働遺伝子支配であった。しかし,そのF2分離比はある程度“ゆがみ"(distorted segregation)を示し,これは受精時に配偶子選択が起こるものと考えられた。12Aと13Aを支配する座位をEst3とし,12AにEst3S,13AにEst3Fの記号を与えた。つぎに,上記3座位の連鎖関係を検討したところ,少なくともEEst1とEst2およびEst2とEst3との間では,有意な連鎖は認められなかった。以上から,栽培イネのエステラーゼ同位酵素は3座位の7対立遺伝子群(Est1,Est10,Est2S,Est2F,Est20,Est3S,Est3F)に支配される。さらに,バンド2AはEst1,14AはEst3にそれぞれ支配され,バンド10Aは別の遺伝子座支配と予想される。この3座位の4対立遺伝予群を加えると,今後標識遺伝子として4座位の11対立遺伝子群が利用可能となろう。
  • 小林 陽
    1977 年27 巻2 号 p. 149-156
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲品種の出穂促進の適温および適温の下眼を明らかにする目的で,ファイトトロンを用いていろいろの品種の苗を種々の温度で一定期間処理して品種ごとに処理区間の出稿養を調べた。その結果次のようなことが明らかにたった。30.0~18℃の範囲では処理区間の出稿養はいずれの品種でも小さく,この範囲の温度は出穂促進の適温と考えられた。適温と17.5℃以下の温度の問では出種差は苗の生育ステージで異なり生育の初期では小さかったが,幼穂形成期頃では大きかった。このことから適温の下限はいずれの品種でも18.6~17.5℃にあると考えられた。17.5℃以下でもまた処理区間の出種差はいずれの品種でも小さく,17.5℃以下は適温外の温度と考えられた。
  • 佐々木 多喜雄, 本間 昭
    1977 年27 巻2 号 p. 157-166
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    低温発芽性が高い在来種または旧品種と低温発芽性が低い最近の育成品種を交雑親として得られた集団を供試して,F3(3集団)において,低温発芽性に関して高低各々20%を個体選抜した。さらに,F3個体に由来するF4系統(2集団)では,任意選抜と品質選抜とに分けて検討した。その結果,低温発芽性は正規分布に類似した連続変異を示し,複数個の因子によって支配されていることが確認された。F3個体における低温発芽性の高い方への選抜は,後代において低温発芽性の高い個体および系統の選抜に,ある程度有効であることが実証された。その他の実用形質に及ぼす間接的影響を,F3集団における各形質の平均値および分散について,選抜と無選抜との比較で検討した結果,選抜区の平均値については腹白粒率が正の方向,芒性が負の方向へ偏っていた他は,2組合せ以上について有意性を示した形質はなかった。分散の変動についての比較では,全体の傾向として芒性以外は,選抜により分散が小さくなる方向であったが,各組合せにおいて有意性を示したものは認められなかった。F4系統では,標準栽培により草姿,耐倒伏性,品質,収量性および障害型耐冷性を重点的に検討したが,組合せにより結果が異たる場合が多く,明らかな同一方向を示した形質はたかった。また,品質選抜により,低温発芽性を低めることたく,良質系統を選抜しうることが明らかに示された。以上および前報までの結果から,低温発芽性の高い在来種または旧品種を片親として利用した,交雑集団の初期世代における低温発芽性に関する選抜により,低温発芽性が高く,低温下における初期生育性も良好で,かつ草姿,耐倒伏性,品質および収量性などの実用形質を具備した,寒冷地用の湛水直播栽培適品種の育成は,著しく困難性を伴なうものではないことが検証された。
  • 福井 重郎
    1977 年27 巻2 号 p. 167-173
    発行日: 1977/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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