(1)レンゲの岐阜大晩生種と富農選24号の自殖系統間のF
1に発現する雑種強勢の程度を調査し,つぎのようた結果を得た。すたわち,雑種強勢は生育初期に持いて,すでに認められ,葉数,草丈ともに'F
1は親より有意にすぐれていた。開花期における乾物収量については,平均してF
1は親の約60%の増収を示し,もっとも優秀た組合せでは約80%に達した。また種子収量に.ついてもF
1は,平均して親の30%の増収が認められた。なお,この乾物収量,種子収量については,いずれもF
1系統問に有意差が認められ,組合せ能力について差のあるものと考えられた。したがって高い組合せ能力をもつ自確系統を選抜することが,雑種強勢利用による育種を実用化するための第一歩であると考えられた。(2)レンゲの自然交雑率は約80%あるいはそれ以上であることを実験的に推定した。したがって約20%の自殖もしくは姉妹交雑種子の混入を許すならば,原則的には自然状態においてもF
1採種ができることを示した。そして実際に採種もおこたって,自然採種のF
1(約20%の自殖種子を含む)3系統と4栽培品種の生草収量を比較したところ,もっとも優秀た栽培品種,岐阜大晩生種より有意に優れた系統も見出され,雑種強勢利用による育種の実用化が有望視された。(3)ついで,親とF
1との競争力について考察し,F
1の競争力が親よりも大たらば,適当な栽植密度においては,集団中に多少自殖または姉妹交雑種子が含まれたとしても,その生産力は,F
1ばかりの集団とあまり変らないのでないかと考え,シンゲの雑種強勢利用による育種は,結果的には,この競争力を利用することにより,F
1種子中に自殖種子が混入する採種上の欠点も欠きた障害とたらずに,実用化され得るのではないかと推考した。しかし,この問題については,まだ実験的た裏付けはなく宿題とされた。
抄録全体を表示