育種学雑誌
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11 巻, 3 号
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  • 福井 重郎, 松本 重男
    1961 年 11 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    大豆品種の花芽の分化,発達に及ぼす短日の影響の品種間差異については生態型を異にする大豆7品種を用い,叉開花後の発熟に及ぼす短日の影響については生態型を異にする17品種を用い,1957年度に関東々山農業試験場(鴻巣)で戸外と硝子宝(高温区)とにおいて,自然日長区と10時間短日区を設けてポット試験を行った。試験結果の概要は次の様である。(1)自然条件下の花芽分化迄日数,花芽発達日数及び結実日数には著しく品種間差異があり,品種の生態型についてはI→II→IV→V及びa→b→c程その日数は長く,叉短日による花芽分化迄日数短縮率,花芽発達日数短縮率及び結実日数短縮率にも可成り品種間差異があり,品種の生態型についてはI→II→IV→V及びa→b→C程大きく,更に高温下における短日による上記三期間日数の各短縮率にも殆んど同じ傾向が認められる。(2)以上の様な各生態型間の差異は,処理期間中の自然日長・温度が各品種によって異るために引き起されたものでなく,各生態型品種の短日感光性の本質的差異に基くものと考えられる。(3)花芽の分化,発達並びに豊熟に対する一連の関係については,短日処理により花芽分化迄日数短縮率が大きい品種は花芽発達日数短縮率も大きいこと,開花迄日数短縮率は花芽分化期或いは発達期のみの処理よりも雨期を継続して処理した場合の方が大きいこと,短日処理による花芽分化迄員数短縮率は同一品種の花芽発達日数短縮率及び結実日数短縮率よりも常に大きいが,花芽発達日数短縮率と結実日数短縮率の大小との間には一定の傾向はみられたいこと等を認めた。(4)上記の短縮率の大小の関係は本実験の供試条件の範囲内において表現された相互関係であり,従って大豆品種の短日感光性の特性に対して一断面の反応結果である。今後更に広範の条件下で実験を行う必要があろう。
  • 鳥山 国士, 蓬辰 雄三
    1961 年 11 巻 3 号 p. 191-198
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.耐冷性と草型を異にする水稲品種間組合せの雑種後代について耐冷性と形態的生理的諸形質および収量性との関係を調査した。2.染分(耐冷性極強穂重型在来種)×青森5号(耐冷性極弱穂数型育成種)のF3系統については一般に草丈,程長,穂長が長く,一穂着粒数が多く,茎数,穂数が少く,叉草型指数が染分型のものがそうでないものに比し耐冷性が強い傾向が有意に認められた。3.上記の組合せと耐冷性と草型が逆の関係にある北系3204号(耐冷性極強穂数型)×奥羽187号(耐冷性弱穂重型)のF2集団では耐冷性の強いものは草丈,程長が長い傾向が有意に認められたが,その他の形態的語形質との相関は認められなかった。4.耐冷性と出穂期との相関は上記2組合せとも認められなかった。5.染分×青森5号のF4 12系統の収量試験の結果,耐冷性と収量との間には有意な相関は認められなかつた。供試系統より耐冷性がかなり強く草型が青森5号型の多収系統がえられたことは在来種の耐冷性を育成種に導入し得る可能性を示したもので,又染分よりも耐冷性の強い超越系統が出現したことと共に育種上注目される。6・以上の結果から耐冷性と諸形質との相関は耐冷性品種育成の困難性をますものであっても致命的なものとは考えられない。
  • 赤藤 克己, 川端 習太郎
    1961 年 11 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    (1)レンゲの岐阜大晩生種と富農選24号の自殖系統間のF1に発現する雑種強勢の程度を調査し,つぎのようた結果を得た。すたわち,雑種強勢は生育初期に持いて,すでに認められ,葉数,草丈ともに'F1は親より有意にすぐれていた。開花期における乾物収量については,平均してF1は親の約60%の増収を示し,もっとも優秀た組合せでは約80%に達した。また種子収量に.ついてもF1は,平均して親の30%の増収が認められた。なお,この乾物収量,種子収量については,いずれもF1系統問に有意差が認められ,組合せ能力について差のあるものと考えられた。したがって高い組合せ能力をもつ自確系統を選抜することが,雑種強勢利用による育種を実用化するための第一歩であると考えられた。(2)レンゲの自然交雑率は約80%あるいはそれ以上であることを実験的に推定した。したがって約20%の自殖もしくは姉妹交雑種子の混入を許すならば,原則的には自然状態においてもF1採種ができることを示した。そして実際に採種もおこたって,自然採種のF1(約20%の自殖種子を含む)3系統と4栽培品種の生草収量を比較したところ,もっとも優秀た栽培品種,岐阜大晩生種より有意に優れた系統も見出され,雑種強勢利用による育種の実用化が有望視された。(3)ついで,親とF1との競争力について考察し,F1の競争力が親よりも大たらば,適当な栽植密度においては,集団中に多少自殖または姉妹交雑種子が含まれたとしても,その生産力は,F1ばかりの集団とあまり変らないのでないかと考え,シンゲの雑種強勢利用による育種は,結果的には,この競争力を利用することにより,F1種子中に自殖種子が混入する採種上の欠点も欠きた障害とたらずに,実用化され得るのではないかと推考した。しかし,この問題については,まだ実験的た裏付けはなく宿題とされた。
  • 斎藤 清
    1961 年 11 巻 3 号 p. 206-212
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    (1)春うえ球根の一つとして安易に栽培されているカンナは19世紀後半ヨーロッパにおいて育成された交雑園芸種で主としてFrenchおよびItalianの両系統よりなるという。わが国こおいてはもっぱらそれらの輸入品種の栽培がおこなわれているだけで従来ほとんど育種的手法が加えられておらず,ことにItalian系統には強い不稔性が存在するといわれているので,今後の育種的展開を期するためにまず市販品種20点を供試して染色体数算定による倍数性品種の検出とその実用的特性の確認および不稔性の実態を明らかにしようと試みた。(2)形態的にみてこれらの品種は次の3型に大きく区別することが適当と認められる。すなわち(1)野生原種に近い小輸喫わい性で稔実性の高い二倍体種,(2)従来French型とよばれている大輪咲で若干稔実性のあるもの,および(3)Italian型で高性不稔性のつよいもので,後2者にはいずれも二倍体と三倍体とが見出され,三倍体はとくに花部が大きく観賞価値がすぐれてい乱(3)型別を異にする9品種を用いての自殖たらびに交雑試験結果によれば,小輸咲系およびPrench系二倍体において充実種子生成がおこたわれただけで,多くの三倍体およびItalian系二倍体晶種は完全に不稔であった。(4)Italian系統を中心にひろく見出されている不稔性は,現存品種成立当初に運命ずけられた構造的雑種による遺伝的のものと推察され,さらに三倍体品種がかたり多く存在する理由は恐らくそれらの片親に野生的四倍体の血をひくものが用いられたことによるものであろう。(5)充実した健全花粉粒の存在頻度は大きくその品種の遺伝的構成によって支配されることは明らかであるが,なお多少の程度で生育環境の温度条件だと後天的要素によっても変化されることが指摘され,晩春あるいは初秋の冷涼季節には比較的稔性の向上をみるものであるから,優良形質をそなえた三倍体品種を交配母本とする育種に際しては,そのような環境条件の利用を考慮することが有効であるように示唆される。
  • 小松崎 亮, 伊佐山 悦治, 小川 信太郎
    1961 年 11 巻 3 号 p. 213-219
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    (1)1957年に圃場で,叉1958年にガラス室で小麦について,春化処理が次代作物に及ぼした後作用,及び処理の累積効果について調査した。(2)圃場で低温処理の効果が明瞭にあらわれるか否かは,気象条件により支配されることが大きく,暖冬年次に発現し易い。幸いに1957.1958年とも暖冬の年であったので,処理効果は顕著年あらわれ,後作用と見られる処理残効も認められた。処理残効は,分げつ初期より節間伸長開始螂こかげて,草丈,茎数,節間伸長開始期にあらわれる。継続処理による累積効果は,明瞭には認められなかつ(3)ガラス室では,圃場よりもさらに明瞭で,処理残効は,草丈,茎数,分げつ角度,草型,出葉期,葉の大きさ,出穂期等にあらわれた。また処理の累積効果についても処理残効と略々同様であった。
  • 花房 勇士, 後藤 寛治, 市橋 良一
    1961 年 11 巻 3 号 p. 220-224
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    この報告は,在来種ヒラキコムギの品種生態を解析する目的で,鳥取県農業試験場東伯分場と国立遺伝学研究所で行なった協同試験の結果である。一般農家が自家採種を続けてきた種子を蒐集し,両地で栽培,観察した結果,北谷三江産の集団が最も変異に富んでいることがわかった。その申から後藤が49個体(A群),花房が36個体(B群)を任意にとり出し,実験に供した。実験の結果を要約すると次のとおりであ'る。1)A,B両群ともに系統間に形態的形質について統計的に有意な差異が認められ,系統と年次の相互作用は穂長で,系統と地域の相互作用は稗長で,わづかに有意性が認められた。2)系統の親子間相関では,形態的形質について一般に高い係数がえられた。3)春播性程度の検定結果,両群ともに春播性程度の低い系統によって構成されていた。4)系統の特徴を最もよくあらわす稗長,穂長,芒長によって型指数をつくり,指数によって系統を分類した。型指数に関する変異は非常に顕著であった。5)A,B両群ともに,耐酸性について有意た系統間差異を示し,さらに系統と処理(酸性土壌:普通土壌)の相互作用が有意と認められた。このことに関連して,土壌生態型が生ずる機構について考察を加えた。6)両群とも分離系統を含んでおり,A群6.12%,B群8.33%とその頻度は異常に高かった。形態的多様性にもかかわらず,集団の出穂期は非常によく満っており,異質接合性が自然交雑による可能性を暗示した。
  • 西村 五月
    1961 年 11 巻 3 号 p. 225-229
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.前報において,耐寒性は種子莢の熟期と関係があることを予想したので,その次代検定を行なった。耐寒性検定は芽生の原砂質分離,低温処理(一2℃~一3℃),KC1O3に対する抗毒性によった。2.原形質分離はCaC2水溶液のみが,低温処理による被害と正の相関を示し,CO(NH2)2,KNO3,KCl十CaCl2(容積比8:2)等の試薬では全く相関はなかった。3.KC1O3に対する抗毒性と低温処理による被害との問には負の相関が存在する。4.上述の各処理による被害と種子葉の熟期との間には,明らかに高い相関がある。低温処理に強い系統の母樹は種子葉の熟期が挽く,低温抵抗の弱い系統の母樹は種子葉の熟期が早い。
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