育種学雑誌
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30 巻, 4 号
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  • 山口 聰
    1980 年 30 巻 4 号 p. 293-300
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    サクラソウ園芸品種のうち,2倍体,3倍体,4倍体,あわせて53品種の花粉形質を調査し,巨大花粉が1%以上認められ,花粉稔性が85%以下の品種が倍数体である可能性を示唆した。倍数体品種に共通して観察されたばかりでなく,一部の2倍体品種にも偶発的に観察された巨大花粉は,四分子期以降に,普通の大きさの小胞体2個と相接しているところをしばしば観察されるうえ,内容が充実していて,発芽カもあるところから,受精に関与し得る,2倍性の配偶子(非還元性)と見なせる。この巨大花粉が2倍体レベルでも,偶発的に生じ,しかも稔性が高いので,サクラソウ園芸品種群内に,配偶子倍加による倍数性進化が起きたものと考えられ乱花径の巨大性,花梗の長大性,なと伝統的に,サクラソウの優良品種に,一般的に要求される諸特性の大半は,倍数体の表現型にも共通していることから,300年に渡るサクララソウの栽培の歴史において,これら諸特性を対象に選抜が加えられた間に,無意識のうちに倍数体品種が育成,保存されたものと考えられる。
  • 長谷川,博 , 井上,雅好
    1980 年 30 巻 4 号 p. 301-308
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    アジ化ナトリウム(NaN3)はオオムギにおいて強力な突然変異誘起効果が確かめられているが,一方その然変異誘起効果が認められない植物も知られている。本報告は水稲品種「日本晴」の休眠種子および浸漬種子(0~54時間)に,PH3のリン酸緩衝液中において,アジ化ナトリウムを処理(0~10-1M,1.5~24時間)し,その処理障害および突然変異誘起効果を明らかにしたものである。休眠種子処理における幼苗期の処理障害の指標として,処理後10日目における発芽率,幼苗草丈を調べ,さらに発芽遅延日数についても調査した。処理障害は濃度および処理時間の増加とともに増大した。ことに,幼苗草丈および発芽遅延日数については著者らが前報(HASEGAWA and INOUE 1980)において示したアジ化ナトリウムの``dose"(濃度×処理時間)反応曲線が得られた。M1種子稔性は各処理区において著しい低下は認められなかった。この結果はアジ化ナトリウムは染色体異常を生じたいという報告を支持するものである。最高葉緑突然変異率はM1穂あたり11.1%,M2個体あたり1.22%であり,イネにおけるアジ化ナトリウムの突然変異誘起効果はオオムギにおける効果よりも低いことが明らかになった。M2代における農業形質の変異もあわせて調査した結果,晩生,短稈,優性,不稔等の変異が多く見い出された。
  • 梶浦 一郎, 鈴木 茂
    1980 年 30 巻 4 号 p. 309-328
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ在来品種と育成品種ならびにチュウゴクナシの白梨系統,秋子梨系統,合わせて432品種の果形図を52の文献から集め,果形を表現する9形質を測定して,ニホンナシ在来品種の果形の変異の範囲,分布の様相,果形から見た在来品種の地理的分布の偏りを明らかにするとともに,品種改良に伴う果形の変遷を調べた。9形質の頻度分布図より,秋子梨系統には肩と帯端部の丸みおよび肩幅が大きく,しかも両窪が浅い品種が多かった。白梨系統は各形質とも変動が大きかったが,肩幅が狭く,肩の丸みが小さい品種が多かった。ニホンナシは各形質とも変動が大きくて,扁円形から倒卵形,卵形まで種々の果形が見られたが,円形でやや重心が低く,両窪もやや深い品種が多かった。一般に特定形質で特異な値を示した品種は地理的に局在する傾向が見られ,特に果形の細長い品種は九州および日本海岸地方に多く分布した。江戸末期から明治時代に発見された品種群中には,江戸時代の品種に比べ,円形,扁円形の品種および両窪の深い品種が多く,重心の低い品種や帯端幅の狭い品種は少なかった。これに反し,近年の育成品種には,円形または扁円形で重心が果実の中心にあり,しかも,帯端幅の広い品種が多く,一部には著しく扁円で両窪の深い品種も含まれた。9形質の主成分分析による第1一第2主成分の品種散布図から,9つの果形群に分け,品種由来地の地方別,種類別ごとに,各果形群の出現率を比較した。九州在来品種群は他の地方よりも果形が長く,重心が下がった果形群の比率が高く,その出現率は白梨系統と似ていた。また,関東在来品種群は扁円で肩幅が広く,梗塞の深い果形群の比率が高かった。第2一策3主成分の散布図から,9つの果形群に分けると,東北地方は他の地方に比べ,帯窪が浅くて重心が低く,帯端幅の狭い果形群の比率が大きく,その出現率は秋子梨と似ていた。一方,北陸地方には帯窪の浅い品種の分布が見られなかった。
  • 武田 和義
    1980 年 30 巻 4 号 p. 329-334
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    台中65号糯粳性同質遺伝子系統(戻し交雑17回)を供試し,いくつかの環境条件下で糯玄米と粳玄米の豊熟経過を比較した。穎果の大きさは生体重が最大に達するまでは糯玄米と粳玄米で等しいが,受精後2~3週目から含水率に差が現われ,乾物重が最大に達する受精後5~6週目には明らかに糯玄米の水分が多く,乾物重が軽い。豊熟終了後この水分が放出されるために生体重においても糯玄米がいくぶん軽くなる。
  • 近藤 貞昭, 蓬辰 雄三
    1980 年 30 巻 4 号 p. 335-343
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲の穂密度に関する基礎資料を得るために,穂密度と密接に関連していると考えられた17形質について1主成分分析を行った。供試材料は疎穂9,密穂6および正常3,合計18品種および系統である。主成分分析の結果,第一主成分は穎花数,二次枝梗数など主として数に関与する因子で,また第二主成分は.穂軸長,一次枝梗長など長さに関与する因子と考えられた。この第一主成分から算出Lた各品種および系統のスコアーと穂密度との問には高い相関が認められた。一方,疎穂型品種および系統のみを用いて行った主成分分析では,第一主成分は数および長さに関与する因子で,また第二主成分は主として一次枝梗の分化と発育に関与する因子と考えられた。また密穂型品種および系統についての主成分分析では,それぞれ第一主成分は主として各器官の長さに関与する因子で,第二主成分は頴化数や二次枝梗数に関与する因子,第三主成分は一穂当りの二次枝梗総数に関与する因子と考えられた。18品種および系統について第一,第二主成分の変異性にもとづき,供試18品種および系統を穂密度の変異パターンから7つの型に群別することができた。穂密度との相関は計測した17形質中,14形質では有意であったが,穎総数と穂密度の相関は有意でなかった。以上の結果から,疎穂,密穂遺伝子は一般に穂密度に関与する形質に多様な効果をもち,これらの形質間の相関関係に大きな作用を及ぼすものと考えられた。
  • 丸山 清明
    1980 年 30 巻 4 号 p. 344-350
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ雑種集団を世代促進中に穂発芽性に関して選抜する方法について検討した。そのために,取播き種子の発芽速度による直接選抜法と,間接選抜法として種子の熱処理による発芽障害程度と休眠性との問にみられる形質間相関を利用した選抜法を比較した。F3からF5世代まで上記の選抜処理を繰り返した後,F6集団を本田に栽植し穂発芽性と主要農業形質を調査した。F5世代まで1粒法で維持した対象集団に比べて,直接法,間接法の集団ともに穂発芽性の集団平均値が小さくなり,両法が穂発芽難個体の選抜に有効であることが示された。また穂発芽性に関する集団選抜に伴い,主要農業形質の平均値と分散に大きな差異はみられなかった。本実験の結果は,イネの雑種集団の世代促進中に穂発芽性に関して集団選抜を実施し,育種効率の向上をはかることが可能であることを示す。
  • 山本 喜良
    1980 年 30 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    種間.雑種後代における両親染色体の組換えの状況を明らかにすることは育種遂行上重要な事項である。かかる観点から,両親間で核型の異なるV.pilosa(2n=14)とV.amphicarpa(2n=14)との交雑を行ない,F1ならびにその後代を育成し,雑種の細胞遺伝学的研究を行なった。両親の核型の観察から,それぞれ特徴的た付随体染色体,次中部に動原体のある染色体ならびに小型の次端部に動原体のある染色体が他と識別が可能であった。さらにF1ではそれらの識別可能な両親染色体がすべて観察された。F1植物の外観は両親の中間型を示したが,いくつかの形質は中間型か母親に,他は父親に似ていた。F1の減数分裂.時における染色体接合型は7IIか6II十2Iが大部分の細胞で観察され,4価までの多価接合型も認められた。F1の稔性はきわめて低く,V.pilosaとの戻し交雑によってのみ後代が得られた。これら戻し交雑の後代での核型は両親の半数染色体組をそれぞれV.pilosaをP,V.amphicarpaをTaとし,さらにV.amphicarpaの最小の染色体をta7で現わすとPP(2n:14),PTa(2n=14),PTa+ta7(2n=15)およびTaTa(2n=14)の4種類が出現Lた。雑種後代における同一系統内の個体問での形質の分離の程度はBF3世代では前代のBF2よりもかなり減少した。また雑種後代では識別可能な染色体については両親型に戻る傾向を示したが,識別できない染色体では両親間でいろいろの組合せの生ずることが推定された。
  • 加藤 正弘, 徳増 智
    1980 年 30 巻 4 号 p. 358-366
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    複二倍体Brassicoraphanus(ミズナBrassica japonica SIEB.Xダイコン Raphanus sativus L.)に,ダイコン・ナタネB.napus L.・カラシナB.cernua Cossを交配して得た種々の雑種について薬の形状と染色体数を調査し,莢の形状とBrassicaおよびRaphanusの染色体との関係を追究した。雑種における莢の全長に対する裂開部の割合は,その個体の染色体総数に対するBrassica染色体数の割合と密接な関係があり,Brassica染色体数の割合の増加と共に裂開部の割合も増加し,Brassica染色体数の割合と裂開部の割合との間に0.1%レベルで有意な高い正の相関が認められた。さらにこの相関に関して直線回帰(一次)と曲線回帰(二次)の両方程式を算出したが,その相関指数の値から直線,曲線いずれと見ても大差ないという結果を得た。またこの実験で得られた一次および二次回帰方程式のX(X2)の係数はKARPECHENK0(1928)および寺沢(1933)のデータを基に算出したものとほとんど差が見られず,三者の回帰直線(曲線)はほぼ平行的であった。過去の報告例との比較から,Brassica-Raphanus間の複半数体および複二倍体の莢の裂開部の割合は,同一交配組合せでは両者に差はないが,組合せを異にする場合には22%から46%とかなりな差があることが分かり,その差は交配親の遺伝的特性に由来することが推定される。一般的に,Brassica-Raphanus雑種におけるBrassica染色体数の割合(X)と莢の裂開部の割合(Y)との関係直線(曲線)において,各交配組合せが同じ傾きを持つと仮定すると,組合せによる違いは直線(曲線)をあらわす方程式の定数項の違いであらわされる。実験結果から導いたY=0.764X+b,またはY=O.005X2+bX+cにおいて,bおよびcを交配組合せ毎に決定しておけば,各個体の莢の形状からおおよその染色体構成を推定することが可能である。
  • 高 表保, 山縣 弘忠
    1980 年 30 巻 4 号 p. 367-374
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲を用いて雄性不稔突然変異の誘起を試み,得られた突然変異について遺伝子分析を行った。なお,本実験では実用上の見地より,袋かけによって完全不稔となりしかも雌性器官の機能には異常のみられないものを雄性不稔突然変異体とした。コシヒカリ,越南77号およびトヨニシキの3品種を供試し,それらの気乾種子にエチレンイミン(EI)処理(0.5%Y/v,2.5~3.0時間)およびX線照射(25kR,コシヒカリのみ)を行った結果,EI処理の次代に,各品種よりO.30~0.38%の頻度で合計8個体の雄性不稔突然変異体を得た。これらの突然変異体はいずれも葯が裂開せず,また大部分は花粉を全く形成しないかまたは異常花粉のみを有していたが,2個体には僅かながら正常花粉も観察された。
  • 細井 徳夫
    1980 年 30 巻 4 号 p. 375-386
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    品種の感温性(X1),感光性(X2),基本栄養生長性(X3)を人工光源の制御環境下にて検策すると共に,自然日長下における出穂日数(Y)を開放型変温装置を用い生育温度を1.5℃間隔で5段階に変え,また播種を20日間隔で4回変えて調査した。出穂日数(Y)と感温性(X1),感光性(X2),基本栄養生長性(X3)の重回帰分析を行い,以下の結果を得た。品種の感光性(X2)は偏一回帰係数が高水準で有意を示し,標準偏回帰係数が著しく大きいことから出穂日数(Y)に対し最も重要な働きを示す。基本栄養生長性(X3)の出徳目数(Y)に及ぼす影響力は,感光性に次くがその働きは弱い。感温性(X1)は品種の出徳目数(Y)の制御にほとんど関与しない。品種の出穂日数と3つの制御要因の関係は気象(温度)変動下において変化しない。以上の関係は東北地域の早期,普通栽培下において認められる。栽培期間の温度が比較的高く,日長が相対的に短い晩期栽培では,感光性の出穂同数に及ぼす制御カが減少し,基本栄養生長性の制御力が増加し,感温性の出穂日数に及ぼす作用性が認められる。日長が相対的にさらに短い極晩期栽培では基本栄養生長性>感光性>感温性の順序で出穂目数に影響を及ぼすと推察された。
  • 佐藤 茂俊, 木下 俊郎, 高橋 萬右衛門
    1980 年 30 巻 4 号 p. 387-398
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネの染色体地図を充実させるには,動原体の位置や標識遺伝子の染色体腕上分布を明らかにする必要がある。本研究では減数分裂の太糸期染色体を用いて,動原体と転座点の位置関係を決定することを試みた。(4)転座ヘテロ型の4連染色体環では,動原体の探索や染色体部分を決めることが困難であった。そこで同一の染色体がそれぞれの転座内に含まれる二種の相互転座ホモ系統を用いて交配を行い,F1の太糸期において生ずる複十字型または並立型を含む6連染色体の接合像を観察し,両親に関する2種類の(4)転座ヘテロ型と対比させて,転座点の種類や染色体部分の所属を明らかにした。また動原体の位置については,それをもっている染色体部分の推定が可能なことから,比較的容易に動原体部分と染色体の腕比を決定できた。このようた分析法によって,現在までに6種類の染色体(第1,2,3,9,10,11)について,23個の転座点と動原体の位置関係を示す細胞学的地図(Fig.5)が試作され,その中に既知の転座利用連鎖分析の成績によって,9種類の標識遺伝子座位を含めた。転座染色体に関する染色体番号は,西村(1961)の命名法によったが,これはこれまで核型に付けられてきた染色体の長さの順による番号とは異なるので,将来研究者間での混同をさけるために,核型を重んじて染色体番号を統一し,転座やトリソーミーの染色体番号やそれらと対応する連鎖群番号にも用いることが望ましい。
  • 渡部 信義, 津山 周彌
    1980 年 30 巻 4 号 p. 399-404
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    これまで暗発芽性品種として分類されてきたXanthiとZichinaIを供試し,種々の温度条件下における暗発芽率と光反応性を調査したところ,Xanthiの暗発芽性は温度によって変化し,35℃では要元性を示した。また赤色光・遠赤色光可逆反応が認められた。この発芽特性の遺伝パラメーターを両品種の交雑試験によって推定Lた。Xanthiが部分優性であり,この形質の遺伝力は0.452であった。
  • 佐藤 尚雄
    1980 年 30 巻 4 号 p. 405-415
    発行日: 1980/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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