堀野・山田(1978)によってイネ白菜枯病抵抗性と判定された品種の一つであるIR28のイネ白菜枯病菌I~V群菌に対する低抗性の遺伝解析を行う目的で,IR28,トヨニシキ射よびそれらの雑種F
1およびF
2集団を供試し,3針接種法により抵抗性を検定した。IR28のIおよびV群菌に対する低抗性は質的低抗性であって,各々1個の優性主働遺伝子に支配されること,および両遺伝子は組換価約4%で密接に連鎖していることが明らかにされた。一方,IR28のll,lllおよびlV群菌に対する抵抗性は量的抵抗性とみられ,これらの菌糸に対する低抗性のF
2世代における広義の遺伝力は0.718(ll群菌),0.909(lll群菌)および0.835(lV群菌)といずれも高い値を示した。また,F
2世代におけるI~V群菌に対する発病度相互間の表現型および遺伝子型相関のいずれもが正の値を示し,特にII,IIIおよびIV群菌に対する発病度相互間には0.7~0.9の高い遺伝子型相関が示された。以上のことから,IまたはV群菌のいずれかの菌糸による検定で,両菌系に対する低抗性の同時選抜を行い得る可能性が高いこと,また,ll,lllおよびlV群菌に対する量的低抗性も選抜の対象になり得ること,さらに,II,IIIおよびIV群菌に対する発病度相互間に高い遺伝子型相関があることは,これらの菌糸に対する低抗性選抜にとってきわめて好都合であることなどが結論された。
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