甘藷農林1号の苗にX線照射を行い,照射世代への影響,次代に於ける変異の出現状態及び3代,4代目に於ける変異系統の固定及び形質について研究した。(1)X線5000~20000rで照射した苗は各一葉づつつげて茎を切断し挿苗し活着をはかったが生存個体は線最の増加と共に減少する。照射世代は地上部に於いて生育抑制が著しく,茎葉の変異が認められ,地下部では大部分が赤褐色から黄白色へ変異した部分をもつキメラの諸が得られた。此等変異の出現率は線量と共に増加するが15000r以上にたると変化がたいようである。(2)X
1の変異個体を個体別に系統としてX
2における変異の出現状態を調査したが諸の皮色が黄白色及び赤紫色への変異が認められ,茎では長短,細大,緑色の変異が出現した。X
1の変異は次代の変異と一致せず,叉X
2ではキメラを示さず全個体について変異しているものが出現し,変異の固定が伺われた。皮色について黄白色への変異のみによって得られた突然変異率はX
1生存個体に対して52~58%を示し,5000~15000rに向って増加している。(3)X
3及びX
4に於いて変異の固定状態及び二三の形質について調査した。毎代変異系統及びキメラ系統を供試して固定系統を調査選抜したところ,X
3で12,X
4で20の変異を得,キメラ個体は次第に固定することが示された。変異固定系統について形質の調査を打つたが諸の皮色の変異として黄白,赤紫色のほか,茎の形状が長,短,細,太,緑に変化したものが得られた。(4)放射線による甘藷皮色の変異は単純にキメラ性の変化によるか,ゲン突然変異によるかについて考察し,叉藷の皮色のみたらず他の形質の変異が誘発されるから放射線による育種の有効であることを記述した。
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