育種学雑誌
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8 巻, 4 号
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  • 鳥山 国士, 蓬原 雄三
    1959 年8 巻4 号 p. 209-214
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.水稲において32Pをmutagenとして使用した場合の有効な選抜法を究明するため,R1の分蘖節とその後代にあらわれた変異型との関係について調査を行つた。2.主稈および各1次分蘖はそれぞれ独立Lた変異を生ずる場合が多いが,時には同一変異型が共通に認められる場合がある。この場合,変異型の出現する1次分蘖は主稈を対象に区分キメラ的にあらわれることが多い。3.下位分藥ほど変異型の出現頻度が高い傾向があった。4.変異型の出現については,2次分蘖および3次分蘖はこれらが従属する1次分蘖および2次分蘖との間にそれぞれかなりの相同性がみられた。5.R1稔性とR2穂別系統における不稔系統出現との間にはかなりの相関が認められたが,一方R1穂稔性とR2穂別系統内における稔性変異を除いた変異型の出現頻度との間には特に関連は認められなかった。6.以上の結果より,R1およびR2の取扱いについて若干の考察を試みた。
  • 西 貞夫, 川田 穣一, 戸田 幹彦
    1959 年8 巻4 号 p. 215-222
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.はい培養法の利用によって従来著しく困難とされたBrassica属cゲノムとaゲノム間の種間雑種を比較的容易に育成することができた。2.はくさい(野崎2号,春播野崎,4倍体野崎,松島純2号,さんとうさい)を母本とし,かんらん(中野早春,増田晩生)を花粉親とした組合せにおいては,交配花数2,925に対し結きよう数1,998で種子7を得た。'収穫種子はいずれも大粒で傾母個体を生じたが,その他のさやでは子房が十分に発育することたくしぼみ,はいの退化も早く現在の技術では培養の可能性が低いものと3.B.alboglabra x B.oleraced(中野早春)のF1を母本とし,はくさい(下山千歳)を花粉親とした組合せでは,155花の交配を行ない,交配約40日後に8個の幼はいを摘出した。これらをWHITEの処方を修正した培地で培養し,3個体の交雑植物を得た。さらに他のはくさい(野崎2号)を花粉親として身50花を交配し,約1か月後に46個の幼はいを摘出,これを培養して22個体の交雑植物を得た。対照として交配後放任したさやからは大粒種子6粒を得たがすべて傾母個体を生じた。4.母本にかんらん(中野早春),花粉親にはくさい(野崎2号)を用いた組合母では,533花の交配より生じた395のさやより約1か月後に30個の幼はいを摘出培養し,これより5個体の交雑植物を得た。対照として1,273花を交配後放任したものからは637のさやを生じたが種子は全く得られなかった。この交雑植物は合成はくさいの育種素材として有用と考えられるほか,合成はくさい育成過程の遺伝的解明,はくさい,かんらん相互の核置換育種およびnapus型結球そ菜の育種にも有用と思われる。5.以上の培養はいは不整形で容易に正常たはいと区別できる。培養により得た植物の形態は両親の中間型を示し交雑種であることが明らかであったが,その特性,染色体数,ねん性等については追って報告する。
  • 斎尾 乾二郎
    1959 年8 巻4 号 p. 223-226
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    L.N.HAZEL(1943)の方法によって家蚕の3形質,繭糸長(m,G1,X1),繭糸量(cg,G2,X2),繭幅(1/10mm,G3,X3)に関するF2集団の選抜指数を作り,それに付随して,ヘリタビリティーおよび遺伝子相関を求めた。へリタビリティーや遺伝子相関はF2集団と戻し交雑から求め,その価は第3表にある。選抜指数はかっこ内の単位を用い,G1は相加的遺伝価で,X1は表現価であるが,育種目標を一応H=G1+G2とすれば雌でI=22X1+852X2+42×3雄でI=66X1-854X2-154×3となり,実際にはこれによって,F2集団の劣悪個体を除き,あとは無作意交配でF3へもってゆけばよいと思う。なおここに用いた3形質は特別に意味があるわけではたく,育種目標が何であるかと言うことは別の問題である。
  • 西村 五月
    1959 年8 巻4 号 p. 227-232
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.本材料は変異係数が極めて大きく,前報同様雑種性が高い事を認める事が出来た。2.枝の着生距離,枝の着生角度,枝の長さ,枝梗の着生距離,枝梗数及び枝径は何れも個体間に有意差を示した。3.枝の着生距離は枝の着生部位によってその距離に1有意差を示し,且つその距離と枝の着生部位との間に規則性はないので,その表示には,測定の方法を考えねばならない。4.枝の着生角度は,樹冠の略々中央部に平均値を有し,それより上部はより鋭角に,又中央部より下部は平均より鈍角となり,その偏差は殆んど相殺される。5.枝梗数は枝の着生部位によって異るが観則性はたい。略々樹冠の中央部が平均でそれより上部及び下部はやや多くなったり或は少くなったりしている。6.枝梗数は校長及ぴ枝径との間に,又枝径は枝長との間に何れも正の有意性ある相関を認めた。7.樹高及び枝張りの生長量は,1953年迄の総生長量と1954年迄の総生長量との間に高い相関があるが,1954年の生長量との間には有意性ある相関は見出せなかった。8.樹高,枝張り及び根元径の生長量については,枝の若干の形質との問に有意性ある正の相関を認めた。9.枝張りは枝の長さ,枝便数及び枝径の三形質との間に正の相関が存在する。10.樹高と枝の長さとの間に正の相関が認められた。11.根元径は横径との間に正の相関を認めた。12.前報に於て,枝径は他の生長量との間に相関は考えられないと述べたが,枝張り及び根元径との間にかなり高い正の相関が存在している事を認めた。13.偏差に或る期待値を与えて,その場合に必要とする標本の大きさについて検討した。14.以上の結果を総括して,本樹の育種のために要する測定の方法について考察した。
  • 眞島 勇雄, 佐藤 尚雄
    1959 年8 巻4 号 p. 233-237
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    甘藷農林1号の苗にX線照射を行い,照射世代への影響,次代に於ける変異の出現状態及び3代,4代目に於ける変異系統の固定及び形質について研究した。(1)X線5000~20000rで照射した苗は各一葉づつつげて茎を切断し挿苗し活着をはかったが生存個体は線最の増加と共に減少する。照射世代は地上部に於いて生育抑制が著しく,茎葉の変異が認められ,地下部では大部分が赤褐色から黄白色へ変異した部分をもつキメラの諸が得られた。此等変異の出現率は線量と共に増加するが15000r以上にたると変化がたいようである。(2)X1の変異個体を個体別に系統としてX2における変異の出現状態を調査したが諸の皮色が黄白色及び赤紫色への変異が認められ,茎では長短,細大,緑色の変異が出現した。X1の変異は次代の変異と一致せず,叉X2ではキメラを示さず全個体について変異しているものが出現し,変異の固定が伺われた。皮色について黄白色への変異のみによって得られた突然変異率はX1生存個体に対して52~58%を示し,5000~15000rに向って増加している。(3)X3及びX4に於いて変異の固定状態及び二三の形質について調査した。毎代変異系統及びキメラ系統を供試して固定系統を調査選抜したところ,X3で12,X4で20の変異を得,キメラ個体は次第に固定することが示された。変異固定系統について形質の調査を打つたが諸の皮色の変異として黄白,赤紫色のほか,茎の形状が長,短,細,太,緑に変化したものが得られた。(4)放射線による甘藷皮色の変異は単純にキメラ性の変化によるか,ゲン突然変異によるかについて考察し,叉藷の皮色のみたらず他の形質の変異が誘発されるから放射線による育種の有効であることを記述した。
  • 長友 大
    1959 年8 巻4 号 p. 238-246
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.麦の花は初め主茎の下部葉腋に着生して順次先端に及ぶが,着花部と他部とに於て2・3の形質を比較すると着花部は葉が細長くなり,節間も短くなるがその傾向は秋播は急であるのに対し夏播は緩慢である。花房は分枝上に二次的に形成されるが高次分枝との区別が必要である。従来花房と称して居るものを十数個の小花房に分けて取扱った。2.開花順序は花房が一つの独立した単位として認められる。又株内の秩序は花の着生位置によって規制されて居る。次に逐日花と名づけて同一日に咲く花の様子と頻度を調べる事により細かい開花の性質が分る。3.一日中の開花時刻は午前6時近くから始まり午前8時迄に80%以上が完了する。午後や夜間の開花は無いが,低温では遅延する。4.開花速度は夏蕎麦が速く秋蕎麦は遅い。叉5月に掻くと遅延し9月に掻くと速くなる。速度は形態的にも花房の伸長程度により比較が出来る。5.初花数は開花速度と一致し開花の遅い5月播は少なく,速い9月播は多い。叉開花の速い夏蕎麦は多いが遅い秋蕎麦は常に少ない。6.到花日数は4月播と9月播では相関は高いが品種の差は小さいので類別し難い。然るに6月播に於ては開花が遅延し且つ品種の差が拡大される。冬は生育が不良となり開花が遅延するも品種の差は無くなる。7.初花節位は開花の遅延した6月播に於て高くだり花芽分化が乱された事が分る。冬期の節位は低く且つ斉一で花芽分化も早く斉一であった事を示せるが,分化後の生育が遅延した為めに冬の開花は遅延する。品種では常に秋蕎麦の節位が高い。
  • 野口 弥吉
    1959 年8 巻4 号 p. 247-254
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    従来水稲の幼穂形成は品種の特性として日長感応性と温度感応性の組合せによって決定され,更にそれに栄養その他の条件が加わって出穂の遅速が現われると考えられている。しかし,温度感応性はすべて日長感応性と共に実験され,考え方としては一応纏められているが,実態に関しては未だ推察の域を脱していない。不時出穂の現象は栽培の立場からすれば異常現象と認められるが,植物生理の見地に立てば一種の出穂促進現象である。それは早生種に限って見られ,常に肥料不足が伴うようであり,初夏の急激な温度上昇に由来するとも考えられる。数種の水稲品種,特に早生品種を対称とし,不時出穂現象を鍵として温度感応性を解明しようとしたのが本研究であって,その結果,温度感応性の強い品種の幼穂形成は高温に支配され,一方茎葉等の栄養器官の発育は栄養,特に窒素の存在に左右されることが明かとなった。たお温度に感応する時期は発育の極く初期,発芽期ではないことが実証された。
  • 中村 直彦
    1959 年8 巻4 号 p. 255-260
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    放任授粉によって得られたhalf-sib系統を使用して各種の量的砂質のheritabilityを親・子共分散とha1f-sib共分散から推定する実験が1956~1958年に亘って玉葱を材料として行われた。まず親・子共分散とhalf-sib共分散を対比してみるとその期待値から当然考えられる2Cov HS≦COvPOの関係が茎長以外の砂質では認められないことが見出された。所が遺伝型と環境の交互作用を仮定してみるとCov HSとCov POの間には2Cov HS≦Cov POの外に2Cov HS>Cov POの場合も現われることが分つたので,本実験の茎径,倒伏期,鱗茎の形状指数,鱗茎重ではCov HSに遺伝型と環境の交互作用の分散が含まれていることは明らかである。遺伝型と環境の交互作用の認められない場合には,heritabi1ityは,(1)epistasisのない場合には[numerical formula](2)epistasisのある場合には[numerical formula]によって推定することが出来る。しかし交互作用の認められる場合には,Cov HSは交互作用の分散を含むから,Cov POを使用するのが合理的である。[numerical formula]但しこの場合には若しepistas量sがあるとすればCov POはCov HSよりepistasisの分散を多く含むからやや高い推定値となることはさけられない。この様にCov HS或はCov POを使用して推定されたheritabilityをみると最高は倒伏期で,それに次ぐのは茎長と鱗茎の形状指数である。これらの形質については母本選抜の効果が期待出来るだろうが,茎径と鱗茎重についてはheritabilityは極めて低く,選抜の効果は全く期待出来ない。
  • 佐俣 淑彦
    1959 年8 巻4 号 p. 261-268
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    コスモスに見られる種々の花型の分類,及び,基本的二花型である一重型・八重型・無弁型の遺伝的構成については既に前号に報告した。引き続きこれ等花型相互の交雑により次の諸点を明にした。(1)Np型とS型の交配のF1,F2,F3,B1等の分離よりNp型に異たった二つの遺伝子型のある事が推論さ.れた。一方は八重の遺伝子を含まず,F1で中間型のMs.型の表現をし,F2で両親型を3:1に分離をし,他方は、八重遺伝子を含む。このFlでは他の要素のために八重の表現が抑制されているが,世代を重ねるにつれ,次第に八重の表現率が高められて行く。(2)Np型とD型の後代からも上同様のNp型に二つの異なった遺伝子型の存在を暗示する分離が見られた。(3)実験結果を総合して,コスモスの花型の表現に関与する遺伝子として,舌状花の発達と筒状花の発達を支配する別々の遺伝子を想定し,更にその各々にいくつかの変更遺伝子の働きを付加して考えると,分離の結果が大体説明出来ることがわかった。
  • 堅田 彰, 武田 功
    1959 年8 巻4 号 p. 269-276
    発行日: 1959/03/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    汚毛量,毛長,剪毛前体重のRepeatabilityを推定する為に,北海道農業試験場,農林省十勝種畜牧場,同幅鳥種畜牧場,北海道立滝川種羊場の4場所において1948年から1950年にうまれたコリデール種雌緬羊から資料を得た。供試個体は4回の剪毛記録(2才~5才)をもつ396頭であった。2才羊の汚毛量,剪毛前体重は,直線回帰によって415日に,毛長は1日当りの生長率によって365日に日数補正を行った。補正資料から推定したRepeatabilityの値は,各場所の群によって異り,汚毛最では0.35~0.65,毛長では0.31~0.61,剪毛前体重では0.35~0.78であった。3形質共に福島種畜牧場の群は最大値を示し,滝川種羊場の群は最小値を示した。Repeatabilityの推定値について,5%水準で場所間の差異を比較した結果,産毛量では北海道農業試験場と福島種畜牧場の間,十勝種畜牧場と滝川種羊場の間にそれぞれ有意差は認められなかったが,前2者と後2者との間には有意差が認められた。毛長と剪毛前体重の推定値では,福島種畜牧場と他の3場所間に有意差が認められた。北海道農業試験場,十勝種畜牧場,滝川種羊場の資料を一緒にして推定した平均のRepeatabilityの値は,毛長0.36,剪毛体重0.64であった。一般に勇毛前体重のRepeatabilityは汚毛量,毛長に比較して大きい推定値を示し,更に産毛最も毛長に比較して大きい推定値を示す傾向が認められた。
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