育種学雑誌
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26 巻, 4 号
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  • 河村 重行, 岩崎 文雄
    1976 年26 巻4 号 p. 291-297
    発行日: 1976/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    花粉の人工発芽床の寒天濃度(硬さ)と花粉発芽との関係を検討するために実験を行なった。実験にはImpatiens, Petunia, Cosmos, Helianhus 4属のそれぞれ1種と Brassica 属3種の花粉を主として用いた。発芽床の寒天濃度は0.5, 1, 2, 3, 4, 5%として変えた。Cosmos花粉の場合は寒天濃度をさらに7,9,11,13%に高めたほか,スライドグラス上に花粉を撒布した区を作った。人工発芽床には寒天の他に添加物は加えなかった。その結果, Impatiens は3%, Petuniaは2%, Helianthusは3%, Brassica oleracea は1%の寒天濃度のときに最も良い発芽率がえられ,それより濃度が増しても減っても発芽率は低下した。Cosmosの花粉は,寒天濃度が11%までは濃度が高いほど発芽率が良い傾向がみられた。このようたことから,スライドグラス上に花粉を撒布して温室状態で発芽実験を行なったところ,寒天培地上より良い発芽率がえられた。Brassica属の3種もスライドグラス上での発芽率が寒天培地上の歯合より高かった。以上のことから,花粉発芽に用いられている寒天培地は花粉発芽の際の単なる物質供給の場所としての役割のみではなく,培地の硬さなどの物理的な条件が花粉発芽に影響を及ぼしているものと考えられる。
  • 桑田 晃, 馬淵 敏夫
    1976 年26 巻4 号 p. 298-306
    発行日: 1976/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Hibiscus asper, H.cannabinusおよびH.sabdariffaの種間雑種を作出するために,3種間の交雑を行い,また得られた交雑種子の胚珠培養および胚培養を行った。交雑組合せの種類および方向によって交雑可能度に差異が認められた。すなわち,H.asper×H.cannabinusおよびH.asper×H.sabdariffaでは種子を採取することができたが,いずれも完熟種子ではなかった。H.sabdariffa×H.asperおよびH.sabdariffa×H.cannabinusでは,.ある日数以上着していたが除々に落した。また,H.sabdariffaは罹病株でも交雑の母親に用いることができた。H.cannabinus×H.sabdariffaでは,受粉後すぐに落するが,前もってIAAを処理しておくことによって,受粉後,最大限4目目まで着させておくことができたので,4目目の胚珠を得ることができた。H.cannabinusとH.sabdariffaαとの正逆交配およびH.sabdariffa×H.asperでは,受粉後の胚珠を,RM-1964培地(糖濃度10%),RM-1964培地+ビタミン類+カゼイン加水分解物1g/l(繕濃度10%),変更NITSCH培地+ビタミン類+カゼイン加水分解物1g/l(糖濃度10%)の培地で培養することにより胚を育成し,さらに,これらの胚を,前述の培地の無機塩類,ピタミン類を,いずれも1/2に希釈し,糖濃度を3%にした培地で培養することによって植物体に分化させることができた。
  • 後藤 虎男
    1976 年26 巻4 号 p. 307-327
    発行日: 1976/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    コムギ品種の播性は播種期試験における出穂反応によって分級されている。しかし,播性は春化要求度の大小によって決められるべきであるとの考えから品種の分級を試みた。その結果次のような分級法が得られた。すなわち,20℃連続照明で義成し,1葉展開後から30日以内に止葉が展開したものをI,31日以上34日以内で止葉が展開したものをII,35日以上60日以内に止葉展開に達したものをIIIと分級する。61日以上を要するものについては,1葉展開時から8℃連続照明下で春化処理を行い,低温処理30日で春化を終了すればIV,処理40月で春化終了すればV,処理55日で春化終了すればVI,60日以上の春化を要する場合をWと分級する。秋播性品種の日長に対する反応を検討したところ,東北地方の早熟品種では,短日遅延がほとんど認められないが,北海道品種は,14時間以下の日長になると止葉展開に達しなかった。短月遅延度と播性を比較した結果,従来の播種期移動による播性検定では,短日遅延度の小さた品種ほど播性が低く分級される傾向がみられた。コムギの胚は豊熟中に受けた低温によって春化され,成熟後の春化要求度が小さくなることがあるので,検定材料としては,豊熟条件も考慮する必要がある。
  • 細井 徳夫
    1976 年26 巻4 号 p. 328-338
    発行日: 1976/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    開放型変温装置を用いて盛岡の自然温度の推移に対し+3, +1・5, 0, +1.5, +3℃の温度差を保つ処理区内で48品種の水稲を栽培し,生育温度の差に基づく品種の出穂変動幅の成因を,品種の最終主神葉数および出葉間隔の温度反応性から検討し以下の結果を得た。稲品種の出穂日の早晩の順序は,新・旧品種をとわず生育温度の差異による変動を示さず,比較的安定した形質であることを艦種の出穂の温度反応から明らかにした。生育温度の差による自然目長下における稲品種の出穂変動幅の成因と感温性の発現は,品種の生態反応から3区分できた。(1)早生種の生育温度の差による大きな出穂変動幅は,高温下の出葉間隔の短縮と主桿葉数(出穂までの積算気温)の減少,低温下の出葉間隔の遅延と主神葉数(積算気温)の増加に由来した。(2)晩生種の生育温度の差に基づく小さな出穂変動幅は,高温下における出葉間隔の短縮が主神葉数(積算気温)の増加により,また低温下における出葉間隔の遅延が主桿葉数(積算気温)の減少により相殺されることに起因した。(3)中生種の生育温度に由来する出穂変動幅は,主神葉数(積算温度)の変動が小さく,出葉間隔の温度処理区間の差に起因した。温度の変動に伴う品種の出穂変動幅は早生種から晩生種まで連続変異を示し,その変動幅の大きさは生育温度の差に比例し,出穂日数の増加と反比例した。
  • 清沢 茂久, 塩見 正衛
    1976 年26 巻4 号 p. 339-352
    発行日: 1976/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    真性低抗性品種のほとんどすべてが罹病化することが各国で報告され,真性低抗性遺伝子の単独使用は危険であることが現在ではむしろ常識となっている。今後の抵抗性育種の方向として種々の異なる抵抗性遺伝子をもつ品種の混合栽培(多系品種),交替栽培,一つの品種中への種々の低抗性遺伝子の集積,圃場低抗性の利用,圃場低抗性と真性低抗性の組合せなど種々の方法が提案されているが,それらのどれが最も効果的な方法か較べる方法は確立されていない。ここでは一つの方法としてシミュレーションによる真性低抗性遺伝子と圃場低抗性遺伝子の効果の推定を,基本式として[numerical formula]を用いて行なった。yは時間tにおける累積病斑数,y0は伝染開始期の病斑数,rは伝染速度,Y'は最終累積病斑数の上限,Tは累積病斑数の増加が止まる時期である。長野県農業試験場〔栗林・市川(1952),下山ら(未発表)〕のいもち病菌の飛散胞子数に関するデーターからr,yT(T時におけるyの値),θ(越冬率),logyT,logθの分布を調べ,rとlogθがある平均値と標準偏差をもつ正規分布をすることを確認Lたのち,同一の平均値と標準偏差をもつ正規乱数から毎年rとlogθを選び,それを用いて上式によりyTを計算し,それに任意に選んだθをかけて次年度のy0を求め,この過程を20年ほど続け,この計算を200回行なって平均値を求めた。長野農試の当時の栽培品種にそのまま真性低抗性を入れた場合平均5年目に罹病化したが,クサブエ並に圃場抵抗性が除かれた場合3年目に罹病化することを示した。一般に圃場抵抗性は罹病化後の罹病度を低くするだけでなく罹病化までの年数を延ばす作用をもつことが示された。
  • 石墨 慶一郎
    1976 年26 巻4 号 p. 353-362
    発行日: 1976/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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