育種学雑誌
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32 巻, 4 号
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  • 田口 拓郎, 三位 正洋
    1982 年 32 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    花粉からの胚形成に関する基礎的知見を得るために, Nicotiana rustica の一核期,分裂期および二核期初期の花粉を用い,花粉培養を行った。 通常の葯培養では二核分裂期が最も高い花粉胚形成率を示したが,同じステージの葯を採取後直ちに花粉を単離して培養した場合には全く花粉の分裂は認められなかった。 一方,二核分裂期の葯を寒天培地上で4日間培養するかあるいは液体培地上で6日間浮遊培養したのちに,その葯中から花粉を単離Lて培養Lた場合には,胚形成が認められた。その場合葯の前培養期間が長くなると,両培養法とも胚形成は減少した。NAAとBAの添加はかなり低い濃度でも花粉胚の形成に抑制的に働いた。 培養前に花蕾を5℃で4日間低温処理Lた場合には,胚形成は著しく促進された。低温処理はまた,浮遊培養法による前培養期間を長くした場合におこる胚形成の阻害効果を打ち消したが,寒天培地上で葯の前培養をしたものに対しては無効であった。 葯を浮遊前培養した場合,一核期から二核分裂期の花粉で胚形成が認められたが,二核期初期の花粉では全く胚の形成が起こらなかった。 以上の結果から本種の花粉培養には一核期~二核分裂期の花粉を含む花蕾を5℃で4日間低温処理し,葯培養を4~6日間行ったのちに花粉を抽出して培養することが最適と思われた。
  • 笹原 健夫, 上林 美保子, 小宮 耕, 金 長範
    1982 年 32 巻 4 号 p. 311-316
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    葉令4葉期の幼植物を,昼・夜温10/7℃の極低温下に1週間おいたとき,染分と密陽23号,ヨネシロと密陽23号の正逆交雑のF2集団の枯死率は,染分およびヨネシロを母親とする集団で低かった。染分とヨネシロを母親とする集団の間では,染分を母親とするF2集団の枯死率が低かった。 第3葉について調査したクロロフィル含量は,染分と密陽23号の正逆交雑のF2集団では差異がみられなかった。ヨネシロ×密陽23号のF2集団のクロロフィル含量は,明らかに,染分と密陽23号の正逆交雑のF2集団より少ない傾向がみられた。 極低温下で生存したイネを,冷水掛流圃場(栽培期間を通じて15℃以下)に移植した。染分と密陽23号の正逆交雑のF2集団では,密陽23号を母親とする集団に稔実歩合の高い個体が多く出現する傾向がみられた。また,幼植物期のクロロフィル含量と稔実歩合の間には一定の傾向がみられなかった。
  • 松田 俊夫, 佐藤 経子
    1982 年 32 巻 4 号 p. 317-322
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    タバコのわき芽発生量に差がある黄色2品種間およびわが国在来2品種間の交配F1~F3世代を用いて,MATHERのモデルにもとづいて,わき芽の数の遺伝様式,遺伝分散成分の分割および遺伝率の推定を行った。両組合せにおいて,わき芽の数はポリジーンに支配される量的形質であることが認められ,遺伝分散は環境分散に対して大きかった。遺伝分散中の優性成分の占める割合は,MC×Virginia115の場合は大きかったが,F1の表現型としての優性効果は小さかった。一方,松川×大だるまでは,優性成分およびF1の表現型としての優性効果ともに小さかった。分散成分から推定したF3系統平均値での遺伝率は,MC×Virginia115で66.47%,松川×大だるまで93.49%であった。従ってわき芽発生量に関する選抜は,F3あるいはF4世代において有効であると考えられる。わき芽発生量の遺伝に関与する有効因子数は,MC×Virginia115で3,松川×大だるまで6であることが推定された。
  • 吉村 淳, 岩田 伸夫, 大村 武
    1982 年 32 巻 4 号 p. 323-332
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ(2n=24)において期待される12の連鎖群は主として日本型の標識遺伝子を用いてNAGA0 and TAKAHASHI(1960,63)により明らかにされた。しかし,その後,相互転座や三染色体植物が用いられるようになって,これまで同一連鎖群に属するとされていた標識遺伝子が別の連鎖群に移動したり,2ないし3連鎖群が合体する可能性のあることが示唆された(IWATA and OMURA 1976)。また一方では,既存のいずれの連鎖群にも対応しない三染色体植物や,その三染色体植物とのF2で三染色体的分離を示す標識遺伝子のあることが明らかにされた(IWATA and OMURA 1975)。そこで,既知の連鎖群とその座乗染色体との対応,あるいは三染色体植物を用いて明らかにされた新しい遺伝子群と座乗染色体との対応関係を明らかにすることが急がれている。ここでは,主として相互転座を用いた分析によって,染色体2,3,4,7に対応する連鎖群を明らかにした。なお,本研究では染色体番号は西村(1961),連鎖群番号はNAGAO and TAKAHAsHI(1960),三染色体植物型はIWATA et al.(1970)の記載にしたがった。 染色体2には,第VI連鎖群に属するd1と第IX連鎖群の nl1,riがともに座乗し,したがって,これらの2連鎖群が1連鎖群を構成するという既往の結果を追認した。 染色体3には第III連鎖群の eg,spl6,lax,d10 が座乗する。これまで所属連鎖群の不明であったd18kも染色体3に座乗し,第III連鎖群に所属する。 染色体4にはA型の三染色体植物とのF2で三染色体的分離を示した spl,fl,rk2 が座乗する。染色体7にはC型の三染色体植物とのF2で三染色体的分離を示した pgl,fl,rk2 が座乗する。扁平粒遺伝子 rk2 はここで新たに記載する遺伝子である。A型およびC型の三染色体植物はいずれも既知の連鎖群とは対応しないことが明らかであるので,染色体4,7に座乗するこれらの遺伝子がそれぞれ新しい連鎖群を構成するといえる。 以上,既報の結果と併せて,染色体12を除く11の染色体について対応する連鎖群が同定されたことになる。
  • 片山 平, 寺尾 寛行, 井之上 準, 陳 進利
    1982 年 32 巻 4 号 p. 333-340
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネの Aus, Aman, Boro, Bulu, Tjereh の5生態型および日本品種を供試して,酸性フォスファターゼ・アイソザイム,フェノール反応,粒型,吸水速度,メンコティール伸長の高温反応(40℃),酸素吸収量などについて比較検討した。えられた結果から,5生態'型のうち,Buluのもつ諸特性と日本品種のそれらとの間には,高い類似性のあることが認められ,日本品種の成立にBuluの影響も無視できないことが示唆された。 Buluのもつ遺伝子の日本までにたどった道筋として,ジャワ-フィリピン-台湾-琉球-日本のルートと,シャワ-中国大陸-日本のルートの2つが考えられる。
  • 稲垣 正典, John W.SNAPE
    1982 年 32 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    日本のコムギ8品種を母親にオオムギ野生種 Hordeum bulbosum(4x)を花粉親として属間交雑を実施した。また異なる交配操作が交雑率に及ぼす効果についても調べた。さらに交雑により得た未熟種子の胚を無菌培養することによってコムギの半数体を作出しようとした。 H. bulbosum との交雑率はハルヒカリを除く7品種で平均4.4~24.0%であった。そのうちフクホコムギ,アサカゼコムギ,農林29号および農林61号は約20%の高い交雑率を示した。 紙,セロファンおよびビニール製の交配用袋を用い授粉時期を開花前および開花後として,フクホコムギの交雑率を調べ,さらに授紛後にジベレリン75ppm水溶液を噴霧してその効果をみた。その結果,交雑率を高める条件としてビニール製の交配用袋による高湿度の維持および授粉後のジベレリン処理が有効であった。しかし成熟前の雌蕊への授粉は不適当で,交雑の成功には十分た雌蕊の成熟が必要であることが明らかとたった。 H.bulbosum との交雑により得た2品種フクホコムギおよび農林29号の未熟種子の胚を授粉約3週間後に摘出して寒天培地で培養した結果,供試した胚のほぼ半数から半数体植物を獲得することができた。 以上の結果から日本のコムギの品種改良における H.bulbosum との交雑を利用した半数体育種法の可能性について論議した。
  • 斉藤 初雄, 田中 正武, 石田 紀郎
    1982 年 32 巻 4 号 p. 348-352
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    野生四倍性コムギの起原と種の分化を宿主寄生者相互作用に基づいて考察することを試み,著者の一人田中正武は京都大学メソポタミア北部高地植物調査隊(BEM,1970)の学術探険において野生四倍種の自生地でさび病菌の探索を行い,イラクのスライマニア(Sulaymaniya)地方で栽培コムギ T.durum Desf. の赤さび病自然感染葉を発見・採集した。著者らはこれらの感染葉から1菌糸の分離・培養に成功した。この菌糸は,コムギ属以外のどの植物に対しても病原性を示さなかったので赤さび病菌のうちコムギのみを宿主とする分化型と思われる。また,CHESTERの標準判別品種に対する接種検定の結果,レース群1(RG1)に属すると決定された。コムギ属植物に対する病原性は,1)二粒系及び普通系以外のコムギに対し病原性を示さない,2)二粒系コムギに対しては特異な病原性を有することが明らかにされた。これらの事実から,この菌糸はレース群1に属しながら他の菌系とは非常に異なった病原性を有すると思われるので採集地の名を冠してMesopotamia raceと名付けた。
  • 武田 和義
    1982 年 32 巻 4 号 p. 353-364
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    粒大を支配する主働遺伝子(d-1,d-7およびMi)が関与するF2集団を供試し,穎および子房の長さに対する遺伝子の作用を解析した。これらの主働遺伝子は穎の長さの変異の約90%,子房の長さの変異の約70%を支配していた。これらの主働遺伝子が穎の長さ(C1)を短縮する割合は子房の本来の長さ(T1)を短縮する割合よりも大きいので,T1/C1は正常個体で平均1.2であるのに対して/小粒個体では平均1.4と高く,穎と子房の長さのアンバランスが甚しかった。また,くびれ米歩合は正常個体で平均1%であるのに対して小粒個体では平均65%と高く,T1/C1とくびれ米歩合の相関は供試1,483個体でr=0.79と密接であった。従って,くびれ米が発生する第一義的要因は穎と子房の長さのアンバランスであり,これらの主働遺伝子は穎と子房の長さに対するアンバランスな支配を通じてくびれ米の発生に関与していると考えられる。
  • 渡辺 好郎, 高遠 茂
    1982 年 32 巻 4 号 p. 365-370
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    異質6倍種であるパンコムギにガンマー線の種子照射(急照射10,20,25,30および35kR)と生体照射(緩照射10,15,20および25R/日)を行った場合の当代(M1)における花粉母細胞成熟分裂の染色体行動の差をしらべた。いずれの処理においても,観察された主要な染色体異常の型は転座と1価染色体の形成およびその混合であった。その他の染色体異常としては,欠失・染色体橋・遅滞染色体・等腕染色体・小核の形成なとが頻繁に観察されたが,その割には花粉稔性,種子稔性は低下しなかった。観察された急照射と緩照射の大きな差は,後者で同一小花内の葯間に染色体数や対合型の変化がみられ,時には同一葯内に染色体モザイク(chromosome-mosaicism)が観察されたこと,および異数体類似の草型の個体が高頻度に出現したことである。
  • 雫田 直紀, 中島 哲夫
    1982 年 32 巻 4 号 p. 371-377
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    種間,属間などの遠縁交雑に胚珠培養法を利用することの有効性を検討する目的で,雑種植物が得にくいとされている Nicotiana rustica と N.tabacum の組合せについて胚珠培養法を適用した。交配後の胚珠の組織学的観察ならびに N.rustica の幼胚珠の培養実験の結果から,N.rustica に N.tabacum の花粉を授粉し,5日目に胚珠をとり出し,NITSCH と NITSCH(1969)の無機塩類にビタミン類を加え,庶糖濃度7%とした液体培地で培養した。交配した17花について約2,000個の胚珠を培養した結果,185個体の雑種植物を得ることができた。これら雑種植物では草姿,葉形,花形,花色などに両親の特性がそれぞれ表現されていたが,個体間変異は全くみられなかった。一部について根端細胞の染色体数を調査した結果,いずれも2n=48(両親は共に2n=48)であり,両親のゲノムを完全に合せ持っていると考えられた。本実験の結果は,この組合せに関して報告されている交雑結果と比べて,格段に効率が勝れている。したがって,この組合せのように,胚珠の退化によって雑種植物が得られない遠縁植物間の交雑に胚珠培養法を適用することは極めて有効であると考えられた。
  • 横尾 政雄, 鳥山 国士, 菊池 文雄
    1982 年 32 巻 4 号 p. 378-384
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    栽培イネの出穂期を支配する主要な遺伝子座Lmに関して異なる対立遺伝子をもつ2つの同質遺伝子系統を播種期を変えて栽培し,自然日長の変化に対するLm対立遺伝子の出穂反応の差異を調べた。Lme/Lme系統の到穂日数(播種から出穂まで日数)は播種期が変わってもほぼ一定で,早生遺伝子Lmeは自然日長の変化に反応しなかった。一方,Lmu/Lmu系統では,播種時期によって到穂日数の変化が著しく,晩生遺伝子Lmuの作用は明らかに自然日長の変化に依存していた。すなわち,7月下旬から翌年3月中旬にかけて播種したとき,Lmu/Lmuが系統は9時間30分から13時間30分までの日長に感応し,非常に短い生育期問で出穂Lたが,3月下旬から7月中旬までの播種では,14時間30分から13時間30分に減少する日長に感応して幼穂分化を開始するため,この系統の到穂日数は長くなった。Lmu/Lmu系統は,Lme/Lme系統に比べて小さな基本栄養生長相と大きな感光相をもつため,敵日長に遭遇する7月下旬から3月中句までの播種ではLme/Lme系統よりも早く出穂した。その他の時期に播種すると,Lmu遺伝子の敵日長域を越えるため,Lmu/Lmuが系統はLme/Lme系統よりも晩生となり,両系統の早晩性は逆転した。
  • 佐藤 尚雄
    1982 年 32 巻 4 号 p. 385-395
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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