反復低温負荷により作製され, vagotonia型自律神経失調症のモデル動物であり, 低血圧・頻脈状態にあるSART (specific alternation of rhythm in temperature)ストレスラットを用いて, ストレスと起立性低血圧の関係をHead-up tilt試験により調べた.SARTストレスラットでは麻酔下でも意識下と同様, 収縮期, 拡張期血圧ともに低く, 心拍数の多いことが認められた.このラットを麻酔下で背位固定し, 急速に水平位から頭部を上昇し60°傾斜にする体位変換刺激を与えて低血圧を起こし, その状態を4分間持続した.このときにみられる血圧変化から, 3つの指標を算出して, 起立性低血圧の程度を正常ラット(非ストレス群)と比較した.SARTストレス群では, 起立(60°head-up)による血圧の最大低下値が大きく, 血圧上昇の反射率は有意に小さく, 時間-血圧曲線-基線下面積は有意に大きかった.起立後の心拍数は非ストレス群では直後から増大したが, SARTストレス群では変化しないか, 逆に減少した.このようにSARTストレスラットは体位変換によって容易にかつ重篤な起立性低血圧を惹起することが認められた.このような結果から, SARTストレスラットは起立性低血圧の実験動物モデルとしての有用な可能性を秘めていると考えられる.
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