下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(EVLA)において,抗凝固薬内服の影響について検討した。EVLAを施行された大伏在型下肢静脈瘤患者を対象とし,抗凝固薬内服群と非内服群に分けて検討した。術後の血流遮断率は両群ともに100%で,両群間に差は無かった。抗凝固薬を内服下での下肢静脈瘤の症例に,EVLAは抗凝固薬を休薬せずに治療が可能であり,安全で低侵襲な治療であると考えられた。
エキスパートによりIgG4関連の大動脈周囲炎/動脈周囲炎および後腹膜線維症と診断された99例のデータを解析し,臨床像や診断に至った経緯を検討した。33例は動脈周囲/後腹膜の病理組織学的所見から,50例は他臓器のIgG4関連疾患の確診から,残りの16例は臨床経過などから総合的に診断されていた。IgG4関連疾患の厚生労働省研究班により策定された新しい臓器特異的診断基準を用いた検討では,73例(73.7%)が確診,6例(6.1%)が準確診,17例(17.2%)が疑診に分類された。
本邦では腎動脈瘤の治療として血管内治療,腎摘出術,開腹下腎動脈形成術などが多く行われている。一方,ベンチ手術は腎臓を摘出し,血管形成を行った後に自家腎移植を行う手順を要し,複数の診療科に跨る手術となることがあり,施行可能な施設が限られる。しかし本術式は腎機能が維持でき,血管形成も容易になることから,有用な選択肢である。今回,ベンチ手術を行った3症例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する。
透析シャント静脈高血圧により片側の胸水貯留を認めた稀な1例を経験した。症例は82歳男性,10年前に左前腕内シャント造設し,2年前より左上肢浮腫が出現した。左腕頭静脈狭窄を認めたが症状軽微なため経過観察とした。6カ月前より難治性の左側胸水貯留が出現した。シャント静脈高血圧を原因として疑い,狭窄部の拡張を行ったところ,胸水減少を認めた。しかし短期間で再狭窄を認め,左前腕内シャントの閉鎖を要した。
ステントグラフト内挿術(EVAR)後の大動脈十二指腸瘻(ADF)は稀とされている。EVAR後エンドリークなく,瘤径縮小みられた中,EVAR 6カ月後に発覚したADFを経験した。大動脈遮断なしで瘤腔を開放し,十二指腸と瘤の瘻孔を切除,閉鎖後,腎動脈上遮断でステントグラフトを全抜去し,in-situで再建した。大動脈遮断なしで瘻孔の処置ができ,通常の一次性,二次性のADF手術のような突発的な消化管出血の懸念無く,安定した状態で手術施行できた。