史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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125 巻, 4 号
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  • 2016 年 125 巻 4 号 p. cover1-
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
  • 2016 年 125 巻 4 号 p. cover2-
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
  • 延喜二年四月十一日太政官符を中心に
    田原 光泰
    2016 年 125 巻 4 号 p. 1-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    これまで、中央官人身分をもちながら在地に居住する者=「部内居住官人」については、官人としての立場から論じられることがほとんどなかった。本稿では、延喜二年四月十一日太政官符を中心とする関連史料を再検討し、官人制の視点から部内居住官人に関わる諸問題について見直す。また当該期以降における官人制自身の課題についても言及する。
    部内居住官人による国司への対捍事例を分析すると、衛府舎人による課役の拒否、畿内周辺の諸司下級官人による田租・出挙の未納のように、官人の類型や活動地域によって対捍の内容に差があることがわかる。その点をさらに検討すると、令制の課役免除システムは、少なくとも延喜二年官符の当時まで、彼らに対して有効に機能していたことも判明する。
    しかし延喜二年官符には、九世紀半ば以降、諸国が部内居住官人を「差用」してきたとの記述があり、彼らへの賦課があったことが強調されてきた。だがこれも彼らの課役免除特権の剥奪を意味するものではない。同官符が雑色人郡司の形成に関わりがあるとの指摘をふまえるなら、この記述は、国郡に一定の地位を得ることを志向する一部の在地有勢者に対して、諸国が彼らを国郡機構の中に編成してきた事実を述べたものとみるべきである。
    延喜二年官符は、部内居住官人の全体に対して、その編成を目指したものであり、事実上の課役(雑徭)を賦課したものともいえるが、建前上はあくまで官人としての職務遂行を求めるものであった。この法制化を可能にした背景には、九世紀半ば以降の国郡機構の再編の中で形成された《官人の「公役」=白丁の「公役」》という論理があると考えられる。
    以上の検討をふまえるならば、延喜二年官符の施行の意義とは、この時点での「課役」制度の改変ではなく、その背後にある令制的身分編成に基づいて機能する諸システム全体の改変の契機という点にあるといえるだろう。
  • 平野 仁也
    2016 年 125 巻 4 号 p. 32-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    天和3年(1683年)から翌貞享元年にかけて、江戸幕府は諸大名・旗本家等に、徳川家に関係する文書類の提出を求めた。この時、諸家から差し出されたものが『貞享書上』である。書上提出を命じた理由は、幕府が歴史書を編纂するにあたって、材料となるべき諸史料を収集するためであった。本稿は、『貞享書上』の有する史料的性格ならびに後世へ与えた影響について考察するものである。
    第1章では、『貞享書上』の成立について、幕府からの関連法令を検討するとともに、同書の伝来状況について論じた。『貞享書上』から派生して成立した『譜牒余録』についても、その編纂経緯等について分析した。
    第2章では、幕府から書上提出を命じられた諸家側の動向について検討した。事例として、仙台藩伊達家・米沢藩上杉家・小田原藩大久保家・村上藩榊原家・岡山藩池田家・福山藩水野家・福岡藩黒田家を取り上げた。それぞれの大名家が、幕府担当者や、一族内・家中・他家・所領などへ問い合わせをする動きなどを検討し、書上作成に関する具体的様相を明らかにした。また、書上の体裁について論じ、その構成自体が提出主体の意図するところを表した資料であることを述べた。
    第3章では、『貞享書上』が近世後期に幕府が行った歴史編纂事業へ与えた影響について考えた。事例として、『貞享書上』における関ヶ原合戦の記述が、『寛政重修諸家譜』においてどのようなかたちで用いられたか、島津・毛利・丹羽家の例を挙げて検討した。
    最後に、本稿末尾において、今後の課題について述べた。綱吉政権において、書上の提出から『武徳大成記』の編纂・成立にいたる一連の歴史編纂事業は、どのように位置づけられるべきであるか、綱吉の国家統治に対する意識とあわせて考えることの重要性について論じた。
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