史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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132 巻, 7 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 2023 年132 巻7 号 p. Cover1-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/25
    ジャーナル フリー
  • 2023 年132 巻7 号 p. Cover2-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/25
    ジャーナル フリー
  • 清野 真惟
    2023 年132 巻7 号 p. 1-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー
    イタリア同盟とは、1454 年に締結されたローディの和約に基づき1455 年に結成された相互承認・相互防衛機構である。「イタリアの平和」のための半島内勢力均衡と半島外勢力の排除がその目的であった。1494 年のイタリア戦争勃発まで存続したこの同盟時代は、同時代の歴史家フランチェスコ・グイッチャルディーニの歴史書によって「40 年間の平和」と位置付けられた。先⾏研究では、この評価を検証する形で同盟がその平和にどれほど有効であったのかという問題が議論されてきた。だが、上記の位置付けはイタリア同盟に関するごく短い総括的叙述から抽出されたものである。
    以上を受け、本稿は同時代の歴史家で唯⼀イタリア同盟の時代全体を叙述しているニッコロ・マキァヴェッリの歴史叙述『フィレンツェ史』に注目する。該当する叙述を分析することで彼によるイタリア同盟評価を検討し、同盟の有効性やその実態に関する議論に新たな視座を提供しようとする。
    以上の⽬的で『フィレンツェ史』分析を行い、マキァヴェッリの叙述においてイタリア同盟当時の政治を動かしていたのは支配領域の有無に拘らず武力や外交力に秀でた「ヴィルトゥある者」であった。そして同盟の目的である勢力均衡体制は、相互監視に基づきこの「ヴィルトゥある者」を排除し合うことで成立したため、結果的にイタリア戦争の勃発を止め得なかった。したがって、マキァヴェッリは逆説的にイタリア同盟の効⼒を認めている。その効力とは、イタリア同盟の協定の法的拘束力ではなく、同盟が規定した「イタリアの平和」のための勢力均衡という目的の存続自体を指す。このことは、イタリア同盟の時代に外交上有効なツールとして機能していた「イタリアの平和」という政治言語の利用という側面から同盟体制の実態をさらに検証する必要を示唆している。
  • 桜井 英治
    2023 年132 巻7 号 p. 41-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー
    天文五年(一五三六)に戦国大名伊達稙宗が制定した「塵芥集」は全一七一条にもおよぶ最大の分国法だが、小論はその成立過程を、主としてテキストに残された痕跡を手がかりに探ろうとするものである。
    「塵芥集」は法としての一般化、抽象化が不十分なうえ、同じ規定が二ヵ条存在するなどの不備もあって長大化したが、その原因は稙宗がブレインに頼らず、一人でこつこつと書きためていったことにあった。
    「塵芥集」の成立過程に関する研究としては小林宏の三段階成立説が有力である。小林は条数の少ない伝本ほど古いという前提に立ち、現存する四つの一次伝本を古いほうから順に猪熊本・狩野本(全一六三条)→佐藤本(全一六九条)→村田本(全一七一条)という三段階に分け、もっとも古い形状を示す猪熊本・狩野本の祖本に二度の改定が加えられた結果、最新版である村田本が誕生したとする仮説を提示した。
    この三段階成立説は、通常の分国法にはまずみられないようなきわめて不自然な改定方法を想定しており、日付や稙宗の花押から得られる所見も改定がおこなわれた事実を支持していないことから、小論はこの三段階成立説を否定し、あらためて一回で完成したとする説を提示している。条数の少ない伝本は「塵芥集」の古い形状を示しているのではなく、たんなる誤脱という解釈である。
    一方、「塵芥集」には排列の悪さというもうひとつの問題があり、とくに一五一条以降には孤立した条文が増えることに加え、本来ならもっと早い位置に置かれてしかるべき条文がいくつもあることから、小論は、一五一条以降の条文は一五〇条までの排列がいったん確定したあとに追加された条文であると結論している。ただしそれは追加とか改定というレベルのことではなく、あくまでも完成までの長い途次に訪れた一時的な中断にすぎなかったと考えられる。
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