史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
Print ISSN : 0018-2478
ISSN-L : 0018-2478
132 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 2023 年 132 巻 2 号 p. Cover1-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/29
    ジャーナル フリー
  • 2023 年 132 巻 2 号 p. Cover2-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/29
    ジャーナル フリー
  • 社会大衆党の「国民の党」構想に注目して
    渡部 亮
    2023 年 132 巻 2 号 p. 1-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー
    本稿は、一九三八年の近衛文麿新党計画に端を発する社会大衆党の「国民の党」構想を取り上げ、その内容および形成・展開過程を地域内在的に明らかにすることを通じて、大政翼賛会の成立過程を再検討するものである。
    先行研究においては、一九三八~三九年の新党計画や、それと密接にかかわる社会大衆党の「国民の党」構想は、日中戦争の勃発に伴う挙国一致の必要性と関連づけて理解されるのが通例であった。これに対して本稿では、社会大衆党地方支部(特に長野県連・新潟県連)の動向を補助線とすることで、昭和新党運動のダイナミズムを対外的文脈と切り離して検討した。その成果は以下の通りである。
    社会大衆党は一九三七年の第六回党大会において綱領を改正し、大幅な転回を決定した。これを受け、党幹部の亀井貫一郎はドイツに渡ってナチスの党組織を研究し、帰国後それを「国民の党」構想として体系づけ、近衛新党工作と絡めて実現しようと目論む。この近衛新党は失敗に終わったが、それでも「国民の党」構想は一九三八年の第七回党大会で正式に党是となり、地方支部にも広がり始める。地方レベルで独自の新党運動が立ちあげられつつあったなかで、一九三九年初頭に党幹部が画策した東方会との合同計画が破綻すると、地方支部は新党運動に対する主体性をいっそう強めていく。かくて、はじめ亀井ら党幹部の机上論にすぎなかった「国民の党」構想は、地方レベルにおける革新運動のエネルギーを土台として実体化した。それは、初期段階において中央レベルで観念されていた「国民の党」構想が地方レベルに移っていったというのではなくて、もともと中央と地方で差異を含みながら折り重なっていた新党構想が、後者に重きを置きながら総合されたということを意味している。そのように質的な変化を伴いながら「国民の党」構想が全国化したからこそ、社大党は党を挙げてスムーズに近衛新体制に合流しえたのであった。
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