史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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131 巻, 12 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 2023 年 131 巻 12 号 p. Cover1-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
  • 2023 年 131 巻 12 号 p. Cover2-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
  • 「国人」「<国号>人」から見る春秋期社会構造の変化
    水野 卓
    2023 年 131 巻 12 号 p. 1-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー
    殷周史における社会構造の解明は、国家形態を論じる上でも重要な課題である。春秋期に関しては、社会構造に関連する邑の氏族制的側面として、『春秋左氏伝』(『左伝』)に見られる「国人」や「<国号>人」がいかなる存在であるかが注目されてきた。これまでの研究では、この両者が同一の存在として捉えられることが多かったが、今回の検討を通して、同じ文脈で語られる記事では、「国人」と「<国号>人」とが書き分けられている点を見出した。
    「国人」は、春秋初期においては、先君や現君の「同族」以外の「同宗」たる傍系公族を示しており、それが異姓をも含む人々へと、次第にその範囲が広がっていったが、春秋末期まで基本的に国都内の人に限定されていた。一方、「<国号>人」は、春秋初期においては、異姓をも含む「国人」よりも広い範囲の人々を示していたが、次第に国都内の居住者を示しつつも、力役を担う「民」の一部とも重なるようになり、春秋末期では、国都外の人をも示すようになった。
    また、出土文献である清華簡『繋年』に見える「人」についても検討したところ、『繋年』では「国人」が1例もなく、もっぱら「<国号>人」で記されている点が見出された。「国人」が見えない点については、国際関係の叙述を旨とする編纂方針に絡んでいると考える一方、『繋年』の「<国号>人」は、『左伝』のような特定の集団というよりも、「<国号>に属する人」の意味しか持たせていない点が明らかとなった。このことは、『左伝』の「<国号>人」が春秋末期になると、国都外の人をも示すようになる変化に繋がるものであった。
    「国人」と「<国号>人」とが異なる人々を示していたとすれば、論じるべき課題は多々あるが、新たな出土文献の出現により、伝世文献では見出すことの難しかった歴史的な展開を明らかすることができたのである。
  • 咸豊五年~民国六年、「執業田単」をめぐる構想と運用
    藤澤 聖哉
    2023 年 131 巻 12 号 p. 38-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー
    清代、「田単」「方単」と呼ばれる地券が、所有の証拠として土地の所有者に発給されることがあったが、この事実は、民間に対して無関心であったという当時の公権力像や、個人間の取引において公権力の保証に絶対性がおかれないという民間社会像に対して、再考の余地を与えるものであろう。本稿は、咸豊五(1855)年行われた「清糧」の際に「執業田単」(「田単」)なる地券を発給した上海県に焦点を当て、同県の土地管理制度の理念と実際を明らかにする。
     咸豊五年に発給された田単は、土地の所有の保証、所有の移転についての公証、田賦(土地税)負担者の表示の三機能を有しており、田単に書かれた名義や土地面積は、所有権の移転の際に、県署で魚鱗冊(土地台帳)の情報とともに書き換えられることになっていた。すなわち、田単は、土地の来歴の証明という、私契が持つ役割を代替するように設計されていた。清代の公権力が、通説のごとく民間における土地所有者の把握に消極的であったかは、再考の余地があろう。
     しかし、ニセ田単が流通したことで官民における田単への信頼は低く、また、県署の胥吏は流通する田単の真贋の見分けができなかったことなどから、本来行われるべき田単への新情報の追記が行われなかった。本来田単が持つはずであった三機能を担ったのは、田単の真贋の鑑定能力を持ち、田単への土地面積への追記を行った地保であった。地保は、土地売買に常に立ち会うことで、坐落・面積・原所有者名・田賦負担者名・実際の所有者を把握し、田単の運用理念を表面的、部分的に実現させた。上海県の構想は失敗に終わったが、民間における土地所有・売買の慣習に、地保による保証という要素を付加する結果となった。
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