バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
40 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
解説
  • 吉田 宏昭
    2016 年 40 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー
  • 清水 義雄
    2016 年 40 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー
    本論文は,感性工学の基本的方法論について述べたものである.細分化された現代の科学や技術では,自分の住んでい る世界がどのような状態になっているのか,自分が何処にいて何処に向かおうとしているのか知る由もない.我々はもっと広 く深く多様な世界を理解した上で自分の仕事に取り組めたら,より幸せを感じ世の発展に尽くせると思う.そしてこの思いこ そ感性工学の出発点である.どのようにしたら広く深く多様に物を観ることができるか.その手段の一つとして,行為,感性, 文化の表現方法を提案する.この提案に先立って,行為,感性,文化の其々の定義と互いの関係性を明らかにし,行為を関数 として記述する方法を提案する.そして感性,文化が多様な行為の関数の集積により表現されることを示す.この方法を我々 自身の日常性の中に取り組むことによって,常に自己と他者の感性ならびに文化を客観的に知ることが可能となる.この客観 化は,自己と他者との関係の理解を促し,互いにどのような行為をすることが幸福につながるかの判断を与えてくれる.行為 の多様性を考慮すると,行為の関数表現は,時には多価関数であり,時には入れ子になっており,複雑で膨大な情報量を取り 扱うことが前提となる.それで,大容量の情報量を処理できる計算機科学技術の関与が不可欠となってくる.行為・感性・文 化には,より具象的な物とより抽象的な物とがあり,両者が作り出す具象と抽象の広がりの概念が重要な意味を持つ.この広 がりの概念は,行為,感性,文化を展開するキーワードである.我々は具象的な行為・感性・文化をより鮮明に感じ取り,同 時に抽象的なそれらをより深く理解することにより,より広く深く多様な価値の世界を手にすることができる.また,行為の 関数表現は,人文科学のみならず自然科学の表現形式でもあることを述べ,感性工学が文理融合の学問たりうることを示す. 集団の構造について大きく 2つのモデルを取り上げる.一つはヒエラルキー(階層構造)型であり,二つはネットワーク(網 目構造)型である.ヒエラルキー型は古から現代まで,社会を運営してきた集団の基本構造である.明快単純,効率的に集団 を動かすにはヒエラルキー型は便利である.しかし,ヒエラルキーは,抑圧と搾取を内包している形である.一方ネットワー ク型は,多様性と具象・抽象の広がりを展開し人々が共感思考 1)できる構造であり,感性工学がサポートする集団の構造はネッ トワーク型である.以上のように,行為,感性,文化の関数表現は,人々の多様性と文化の発展を支援するものと考えられる.
  • 林 豊彦
    2016 年 40 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー
    日本社会の高齢化の進展にともない,高齢者の嚥下機能の低下が問題となり,その予防やリハビリテーションが医歯学 において大きな課題となっている.その解決には,嚥下機能の客観的な測定・評価が必要であり,現在,嚥下造影や嚥下内視 鏡などが臨床で用いられている.この課題に対して著者らは,喉頭運動を無侵襲に測定できる喉頭運動測定器を独自に開発し, 嚥下音・筋電図と同時測定してきた.本来の目的は嚥下機能評価と嚥下リハビリテーションへの応用であったが,企業から食 品の飲みこみの評価の依頼が来るようになり,お粥,ビールなどの食品の性状・形状と嚥下動作との関係について明らかにし た.本解説では,嚥下困難者用のお粥の有効性評価,ビールの喉ごしの分析,および嚥下リハビリテーションのための喉頭挙 上訓練への応用について述べる.
  • 岡本 美南
    2016 年 40 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー
    これまで従来型の節水シャワーの多くは,使用水量は少ないが快適性も低かった.本報では使用水量は少ないが快適性の高い,新しい節水シャワーの開発に取り組んだ.快適性を高める流量以外の要因を検討するため,「快適性の高い」状態をシャワーの感覚で記述する試みを行った.その結果,快適性の高いシャワーは適度な「刺激感」と高い「量感」を持つことが示唆された.さらにシャワーから吐水される水の物理量を計測し,関連付けて整理したところ,シャワー粒径を増大させ,適度なシャワー流速とすることで快適性が高まることが示唆された.この結果を基に,シャワーから吐水される水に空気を含ませるエジェクタ機構を用いて,大粒の水滴をシャワー状に吐出するシャワーの開発を行った.こうして開発されたエアインシャワーは快適性の高い節水型シャワーとして評価された.
  • 福井 信行
    2016 年 40 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー
    近年では,欧州を中心に自動車の内装質感に対するお客様の期待が高まり,自動車メーカーではどのように質感を向上 させるかが課題となっている.一方,以前のマツダ車の内装質感は,市場からの評価が低く厳しい状況であった.1999年より, 全社一体で「クラフトマンシップ」向上の取り組みをスタートさせ,評価の体系化や基準設定を行い,コンセプト,戦略作成 も含め活動してきた.その中で,感性工学を適用した質感の定量化や質感向上の技術開発を積み重ねてきている.それらの技 術をマツダ車へ織り込むことで,少しずつではあるが,お客様からの評価も向上してきた.実際の自動車の内装開発の現場で 行ってきた,感性工学の適用事例の一部を紹介する.
  • 吉良 康宏
    2016 年 40 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー
    著者は千葉大学工学部でプロダクトデザインを専攻し,卒業後企業にて40年以上に亘って商品開発のためのプロダク トデザインに携わってきた.ここでは著者の主分野である最近のプロダクトデザインについての意見を述べる.デザインはそ の時代の最先端の技術や材料,社会の指向,経済の状況,人々の考え方の変化など社会の様々なものを背景にしながら将来の 世界の人々に必要なものを考察し,創作し,産業化して世に提案するものである.なによりも人々の未来の生活を豊かにする ものでなければならない.ところが,最近のデザインはその本来の目的を見失ったかのように価値観がふらついているのでは ないかと思っている.
研究
  • ― CSP 機構を使用した下肢血管阻血とその計測の研究 ―
    佐橋 拓, 佐橋 昭, 内山 尚志, 塩野谷 明, 福本 一朗
    2016 年 40 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー
    阪神・淡路大震災の時,クラッシュ症候群(以下CS)の発症が大きな問題となったが,現在においても現実的な対抗策は存在しない.我々はこれまで人命救助ロボットの発案・研究を行ってきたが,本研究ではそのロボットに搭載するクラッシュ症候群発症阻止機構(以下CSP 機構)についての実験を行った.被災者を医師の許まで運ぶ間,CS の発症を抑える事を目的として,鼠蹊部を圧迫材にて圧迫し,大腿静脈を阻血することで血液の再灌流阻止を想定した実験を試みた.また大腿動/静脈が隣接していることから,後脛骨動脈の流速を血流計で計測することにより静脈の阻血の指標とした.実験の結果,本CSP 機構は太腿の駆血や,掌による鼠蹊部圧迫法よりも高い阻血率を示した.また,年齢・体脂肪率などにより阻血に必要な圧迫圧力に個人差が生じることも判明した.
  • 澤留 朗, 多田 充徳, 竹村 裕, 河内 まき子, 持丸 正明
    2016 年 40 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー
    発達による歩容の変化を明らかにするため,4 歳の子どもが7 歳になるまでの4 年にわたり縦断的に歩行の計測を行った.情報の損失を抑えつつ歩容の変化を比較するために,主成分分析を用いて下肢関節の角度とモーメントの時間変化を次元圧縮し,年齢間での歩容の変化とそのばらつきの変化を評価した.主成分分析の結果,第1 主成分と第2 主成分がともに足関節の役割の変化を表すことが分かった.また,成長に従い歩容が主成分空間中で直線的に変化するのに対して,そのばらつきは一定値に漸近することが分かった.これらの結果は,歩容の成熟とその再現性の獲得が独立した現象であることを示唆している.また,主成分分析を導入すれば,歩幅や歩調のような特徴量では表現できない歩容の変化が評価できることを示している.
  • 行成 沙織, 山田 洋, 小河原 慶太, 長尾 秀行
    2016 年 40 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,足趾屈筋力と姿勢制御能との関係を明らかにすることであった.足趾屈筋力と静的姿勢制御能との関係を検討するため,能動的及び受動的足趾屈筋力測定と足圧中心測定を行った.さらに,足趾屈筋力と動的姿勢制御能との関係を検討するため,外乱に対する姿勢制御能の測定を行った.測定中の下腿及び足趾の筋電図を導出し,筋放電量を足趾屈筋力測定値の上位群と下位群で比較した.その結果,受動的足趾屈筋力は静的姿勢制御能と相関関係を示した(p<0.05).さらに足趾屈筋力と前方外乱に対する動的姿勢制御能とも相関関係を示したことから(p<0.01),足趾屈筋力は姿勢制御能と関係していることが推察された.また,前方外乱に対して姿勢を制御する際,足趾は屈筋群の運動単位をより多く動員して力発揮をし,重要な役割を果たすことが考えられた.
feedback
Top