日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
21 巻, 2 号
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論文
  • ―東北地方太平洋沖地震の本震・余震への適用―
    儘田 豊, 藤田 雅俊, 菅谷 勝則
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_1-2_20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震(東北地震)を対象として,本震発生から1年間に発生した余震を含めた確率論的地震ハザード解析を行った.東北地震の余震の規模別発生頻度を,検証と将来予測の観点から,2通りの方法でモデル化し,防災科学技術研究所の強震観測網(KiK-net,K-NET)の太平洋沿岸に位置する観測点4地点において地表の最大加速度の年超過頻度を推定した.余震の規模別発生頻度のモデルについては,東北地震の余震カタログ(モデル1)及び東北地震発生前に発生した複数の本震・余震群カタログ(モデル2)を用いて推定した.解析の結果,いずれのモデルについても,1地点を除いた3地点の最大加速度の年超過頻度はほぼ同等であった.また,4地点で推定した最大加速度の年超過頻度を,各地点で観測された地表の強震動記録から読み取った年超過頻度と比較した.その結果,200 cm/s2程度以下の加速度範囲において,両モデルによる推定値と観測記録の最大加速度の年超過頻度は調和的であり,東北地震発生前の観測記録を用いたモデル2でも余震の規模別頻度が推定可能なことが示された.加えて,Iervolino et al. (2004)により提案されている本震・余震の時系列地震群のハザード解析に基づき,モデル2による余震の規模別頻度の予測結果を用いて東北地震の本震及び余震を考慮した最大加速度の年超過頻度を推定した.余震域に近い3地点では建築物等の被害が危惧される加速度範囲を含む300~1500 cm/s2程度において,余震における最大加速度の年超過頻度への寄与は20~30%程度となった.以上を踏まえ,東北地震のような超巨大地震のプレート間地震における余震域から近い地点では,地震動で被害が拡大する可能性があるため,防災及び減災の観点から,余震を対象に被害が生じうる大きな地震動の超過頻度を定量的に把握することの重要性が示唆された.

  • 新井 健介, 境 有紀
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_21-2_33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    地震直後に建物の大きな被害と相関の高い地震動強さ指標とされている減衰定数20%の弾性加速度応答スペクトルの周期1-1.5秒の平均値(1-1.5秒応答)の面的分布をSimple Krigingによって精度良く推定する空間補間方法について検討した.具体的には,新井・境(2020)による地震動予測式(GMPE)をトレンド成分として,表層地盤の影響のみならず,1-1.5秒応答に影響を与える深部地盤の影響も考慮できる空間補間方法を提案した.提案した空間補間方法を用いることで,精度よく1-1.5秒応答を推定できることを示した.

  • ―ゆっくりすべりケースに対するテレビ報道を例に―
    大谷 竜, 兵藤 守, 林 能成, 橋本 学, 堀高 峰, 川端 信正, 隈本 邦彦, 岩田 孝仁, 横田 崇, 谷原 和憲, 入江 さやか ...
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_34-2_56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    国は,2017年に「南海トラフ地震に関連する情報(以降,南海トラフ地震情報)」を導入した.これは,駿河湾から九州の日向灘沖にかけての南海トラフ沿いで,地震が発生したり,異常な地殻変動が観測された場合等に,巨大地震への警戒や注意を呼びかける新たな防災情報である.しかしながら,現在の地震学の知見では,地震の発生時刻や規模を正確に予測することは難しい.そのため南海トラフ地震情報は,地震災害軽減に寄与する大きな可能性がある一方で,空振りとなる等の「不確実性」をもはらんでいる.そこで本研究では,最新の地震学の知見に基づき,シナリオ手法を用いて,南海トラフ地震情報の発表や在京メディアによるテレビ報道の仕方に関する仮想的なストーリーを作成し,それに対する情報の受け手側の対応を多面的かつ具体的に検討することで,この情報を使った防災対応上の潜在的な課題を「仮説」として抽出する新たな手法の構築を試みた.これらの潜在的な課題に対して,社会が事前に適切な対策を講じることができれば,南海トラフ地震情報の有効性を高める効果が期待できるからである.こうした「課題発掘ツール」としての可能性を検証するため,実際に静岡県の防災担当部局やローカルメディアを対象としたワークショップを実施した結果,セクター間の対応や考え方の不整合から生じうる,これまで認識されていなかった防災対応上の課題の候補を複数見つけ出すことができた.

  • 丹羽 健友, 岩田 直泰, 山本 俊六
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_57-2_69
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    新幹線では,地震時における安全性を確保するため早期警報用地震計を用いた地震警報システムが導入されている.早期警報用地震計は,地震発生時においてP波の到達を検知した後に震央位置とマグニチュードを推定するものであり,微弱なP波を利用するため,設置環境が推定精度に影響を与えることが予想されるがこの影響の程度は明らかとなっていない.そこで本研究では,早期警報用地震計による震央位置推定の精度向上を目的として,地震観測点サイト特性(表層地盤特性,深部地盤特性,静穏性)と震央位置推定誤差の関係を明らかにした.特に震央方位推定に関しては,AVS30が大きく,その上でノイズレベルの小さい地点を選定することで,推定精度を向上できる可能性があることを確認した.

  • 桑原 光平, 松岡 昌志
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_70-2_89
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    本論文では1891年から2016年までに発生した41地震のデータを用いて,日本全国の液状化危険度の推定を行った.入力データと液状化の複雑な背景構造のモデル化を期待し,機械学習手法の一つであるランダムフォレストを推定モデルとして採用した.データセットの不均衡性を考慮し,アンダーサンプリングとアンサンブル学習を行うことで,既往研究よりも高精度かつ安全側を重視するモデルを作成した.さらに,作成したモデルに仮想の地震動を入力することで日本全国の液状化ハザードマップを作成した.

  • 先名 重樹, 小澤 京子, 杉本 純也
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_90-2_108
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震では大規模で甚大な被害をもたらした液状化が発生したが,それ以降も,2016年熊本地震や2018年北海道胆振東部地震など,最大震度7を観測し,広い範囲で震度5強以上の強い揺れに見舞われ多くの地域で液状化が発生した.本研究では,詳細な航空写真画像による液状化判定が可能で,震度6弱以上を観測した,2011年東北地方太平洋沖地震,2016年熊本地震,2016年鳥取県中部の地震,2018年大阪府北部の地震,2018年北海道胆振東部地震の5つの地震の液状化発生地点の情報に基づき,4分の1地域メッシュ(以下,250mメッシュと呼ぶ)単位に基づく液状化発生率や250mメッシュ内の液状化面積を考慮した液状化面積率を推定し,液状化発生率と面積率の積による液状化危険率の推定式を提案した.

  • ―東京都町田市の標高差のある住宅団地における実証実験―
    梶川 久光, 岡田 由佳, 白井 亮太朗
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_109-2_129
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    筆者らは,巨大地震時の建物調査において建物の被災度を精度よく診断するためには,建物ごとに地震入力を把握する必要があると考え,住宅向けの被災度判定計の開発を行った.本論文は,東京都町田市の傾斜地に建つ木造建物が密集する住宅団地における被災度判定計の実証実験により,地震入力に関して検証を行ったものである.具体的には,地震入力の指標として,計測震度,最大加速度,加速度軌跡図に関して,建物の標高,建物の向き,表層地盤の与える影響について検証を行った.隣接した場合でも建物や地震ごとに計測震度,最大加速度,加速度軌跡図の数値もしくは形状に違いが見られた.

  • 仲野 健一, 川瀬 博
    2021 年 21 巻 2 号 p. 2_130-2_153
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    強震動予測においては震源・伝播・サイト特性を適切に設定することが重要である.これらの特性は極めて複雑であり,フォワード的に設定することは依然として難しく,特に事前情報が得られていない任意地点における精度の高い予測手法の開発が急務である.本研究では,全国展開された強震観測網で得られた多数の強震記録から震源・伝播・サイトの各特性を分離し,フーリエスペクトルの振幅情報だけでなく位相情報も考慮した,任意地点に適用可能な強震動予測手法を提案した.また,同手法を用いて2011年東北地方太平洋沖地震最大余震を対象にした強震動シミュレーションを実施し,その適用性を検証した.

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