腹部外科における腹腔鏡下外科手術はめざましい進歩を遂げている。これは, 腹腔鏡下外科手術が開腹手術と比較して同等以上のメリットがあるからに他ならない。ことに緊急腹腔鏡は, 従来の検査に加え, 無益な開腹手術 (negative laparotomy) を回避し, 的確な手術法を選択するための十分な情報収集と的確な治療戦略の立案に非常に有用で, 現在は消化器外科に止まらず, 他領域でも緊急腹腔鏡下外科手術が積極的に応用されているが世界と本邦では, 適応疾患・手技に関して有意な差はないと思われる。しかしながら本邦においての普及度は欧米に比してやや遅れ, その理由としては設備的問題, 保険診療報酬制度, また医療スタッフの充実などさまざまな問題があるものと推定される。尊厳ある人体に不適切・不必要な手術が行われるのは問題である。今後, 腹部救急疾患の診断と治療を目的に腹腔鏡が積極的に応用されるならば, 腹腔鏡下外科手術にみられる利点, すなわちその非侵襲性は, 多数の患者に恩恵をもたらし, しいては医療費の削減にも貢献するものと考える。
抄録全体を表示