日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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20 巻, 4 号
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  • 世界と本邦の現状
    山川 達郎, 田口 博一
    2000 年 20 巻 4 号 p. 523-527
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    腹部外科における腹腔鏡下外科手術はめざましい進歩を遂げている。これは, 腹腔鏡下外科手術が開腹手術と比較して同等以上のメリットがあるからに他ならない。ことに緊急腹腔鏡は, 従来の検査に加え, 無益な開腹手術 (negative laparotomy) を回避し, 的確な手術法を選択するための十分な情報収集と的確な治療戦略の立案に非常に有用で, 現在は消化器外科に止まらず, 他領域でも緊急腹腔鏡下外科手術が積極的に応用されているが世界と本邦では, 適応疾患・手技に関して有意な差はないと思われる。しかしながら本邦においての普及度は欧米に比してやや遅れ, その理由としては設備的問題, 保険診療報酬制度, また医療スタッフの充実などさまざまな問題があるものと推定される。尊厳ある人体に不適切・不必要な手術が行われるのは問題である。今後, 腹部救急疾患の診断と治療を目的に腹腔鏡が積極的に応用されるならば, 腹腔鏡下外科手術にみられる利点, すなわちその非侵襲性は, 多数の患者に恩恵をもたらし, しいては医療費の削減にも貢献するものと考える。
  • 渡邊 常太, 西崎 隆, 若杉 健三, 松坂 俊光, 久米 一弘
    2000 年 20 巻 4 号 p. 609-612
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2011/10/28
    ジャーナル フリー
    小腸がドレーン孔より脱出して生じた絞扼性イレウスの1例を報告する。症例は71歳, 女性。十二指腸潰瘍穿孔, 汎発性腹膜炎に対し, 穿孔部閉鎖, 腹腔ドレナージを施行した。手術時に左右の横隔膜下, ウィンスロー孔, ダグラス窩にドレーンを挿入した。術後12日目にダグラス窩ドレーンを抜去したが, 約5時間後ドレーン孔より絞扼された腸管の脱出に気づき, 緊急手術施行した。腸管は腹壁外に脱出し腸管壊死に陥っていたため, 腸切除およびドレーン孔閉鎖を施行した。術後経過は良好であった。腸管脱出の原因は, 腹壁が薄く低緊張であったこと, 感染および低栄養状態での手術でドレーン留置部の修復が遅れたことなどと思われる。われわれの検索し得た範囲内ではドレーン孔への小腸嵌頓による絞扼性イレウスは本邦で5例目である。ドレーントラブルにはさまざまな報告がみられるが, 宿主の状態を考慮したドレーン管理が必要と考えられた。
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