日本腹部救急医学会雑誌
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27 巻, 6 号
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原著
  • 淺部 浩史, 岡 陽一郎, 甲斐 裕樹, 白日 高歩
    2007 年27 巻6 号 p. 819-822
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    過去7年間に当科で経験した小児絞扼性イレウスは19例であった。発症時期は新生児期, 乳児期各6例, 幼児期, 学童期各3例, 思春期1例であった。先天異常が原因と考えられる症例は8例 (腸回転異常症4例, (中腸軸捻転症を含む), 回腸閉鎖症を伴った腸間膜裂孔ヘルニア1例, 左十二指腸傍ヘルニア1例, Meckel憩室に伴うmesodiverticular vascular bandによる小腸の絞扼例1例, 出生時の臍帯結紮糸により小腸穿孔を伴う絞扼性イレウスをきたした臍帯内ヘルニアと先天異常に医原的要素が加わった特殊例の1例, 腸重積症4例, 外鼠径ヘルニア嵌頓3例, 術後に起こった絞扼性イレウス2例, その他2例であった。死亡した3例は緊急手術施行前より重篤な状態で, 全身状態の改善傾向は全くみられず, DIC, 多臓器不全に陥り死亡した。成人例と同様に絞扼性イレウスの診断およびその治療をいかに迅速かつ的確にすることが, このような重篤な症例を救命するためには必要と考えられた。
特集 : 腹部救急におけるステント治療を考える
  • 宮部 勝之, 林 香月
    2007 年27 巻6 号 p. 825-831
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    切除不能MGOOは救急疾患ではないものの, 経口摂取障害や嘔吐を繰り返すため低侵襲で迅速な対応が必要である。今回, 切除不能MGOOの78例にcovered SEMS留置を試み, 77例で成功し, 70例で経口摂取が可能となった。Covered SEMSを使用することで, uncovered SEMSの問題点であるtumor ingrowthやhyperplasiaによるSEMS閉塞を回避し, 良好な開存性が示されたため有用な緩和的治療と思われた。また, 十二指腸乳頭部にcovered SEMSが及ぶことによる胆管や膵管の閉塞は胆管SEMS留置により認めなかった。
  • 斉田 芳久, 長尾 二郎, 中村 寧, 榎本 俊行, 中村 陽一, 片桐 美和, 金井 亮太, 高林 一浩, 長尾 さやか, 草地 信也, ...
    2007 年27 巻6 号 p. 833-838
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    大腸狭窄に対するアプローチとしてステント治療が最近は導入されている。大腸に対するステント留置術は, 他の部位よりも臨床応用が遅れていたが, 最近は主に悪性疾患による狭窄への姑息的留置または狭窄型大腸癌に対する術前処置として, 欧米を中心に良好な臨床成績の報告が増加しており, 本邦での報告例も増加している。また良性狭窄に対する導入も報告されているが, これに関しては長期成績の欠如から慎重な適応の検討が必要である。今後, 大腸狭窄患者に対する治療として, 姑息的または一時的な人工肛門造設などの過大侵襲を回避し, QOLを向上させるためにステント治療の果たす役割は大きいが, 今後は大腸専用ステントとキットの導入と, 厚生労働省の認可と保険適用が待たれる。
  • 前田 清, 井上 透, 野田 英児, 西原 承浩, 八代 正和, 福永 真也, 平川 弘聖
    2007 年27 巻6 号 p. 839-843
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    切除不能の悪性疾患に伴う, 大腸狭窄に対しては従来, 姑息的人工肛門造設術が行われることが多かった。しかし, このような全身状態が不良で, 予後も短い症例に対し, 人工肛門を造設することは精神的, 肉体的負担が大きく, QOLの低下を招くことになる。われわれはかかる症例に対し, 金属ステントを留置することにより, 人工肛門を回避し, QOLの向上を図っている。本法は人工肛門と比べて, 低侵襲であり, 患者のQOL向上に有用であると思われた。
  • ~内視鏡的経鼻胆道ドレナージ (ENBD) と内視鏡的胆管ステント留置の比較~
    平田 育大, 高橋 周史, 中部 奈美, 坂元 直行, 朴 義男, 吉川 敏一
    2007 年27 巻6 号 p. 845-848
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    胆道救急疾患の治療において迅速・安全な胆道ドレナージは必要不可欠である。内視鏡的経鼻胆道ドレナージ (ENBD) は当センターではチューブトラブルが少なからず発生したため, 内視鏡的プラスチックステント留置を現在第一選択としている。そこでステント留置の有用性の評価のため, 2002年から2005年に当センターで施行したENBD群32例とstent群37例の患者背景・ドレナージ効果・偶発症・転帰につき比較検討した。その結果, 平均年齢, 有合併症率, 原因疾患と入院時病態の内訳に差は認めず, 両群の患者背景は同等だった。両群ともドレナージにより総ビリルビン値とCRP値の改善が同等に認められ, 病態改善効果に差はなかった。チューブトラブルは, ENBD群10例 (31.3%), stent群1例 (2.7%) であり, ENBD群に有意に多かった。処置後1ヵ月以内の死亡例は両群1例ずつだった。ENBD群の死亡例は, チューブトラブルに起因するものであった。以上より, 胆管ステント留置は, 経鼻胆道ドレナージと効果は同等で, 安全性は優位であり, 緊急胆道ドレナージ法として有用である。
  • 宮田 量平, 安藤 暢敏, 相浦 浩一, 北島 政樹, 熊井 浩一郎, 中塚 誠之
    2007 年27 巻6 号 p. 849-855
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    悪性肝外胆道狭窄113例を対象に81例にメタリックステント (MS群), 32例にチューブステント (9例は1本 : STS群, 23例は2本 : DTS群) を留置した。疾患別の50%開存期間は膵癌235日, 胆管癌116日, 転移性腫瘍106日と膵癌で長期の開存期間が得られた。ステント別50%開存期間はMS群, STS群, DTS群でそれぞれ172日, 91日, 235日で, DTS群はMS群より開存期間の延長を認めたが (Kaplan-Meier法, Logrank検定, p<0.05), 膵癌に限定するとDTS群とMS群の50%開存期間 (MS群234日, DTS群235日) に有意差を認めなかった。またDTS群で膵癌に対する内瘻化後の化学療法群 (n=15) の平均生存期間は375日で非化学療法群 (n=7) の103日に比べ有意に長かった (p<0.05)。ステント閉塞はMS群27例 (38%), STS群6例 (67%), DTS群3例 (14%) でDTS群はSTS群より有意に閉塞する頻度が少なかった (χ2独立性検定, p<0.05) がMS群との有意差はなかった。ステント閉塞に寄与する因子はSTS, 性別が有意な因子であった (Cox比例ハザード分析, p<0.05)。チューブステントを2本挿入することによりドレナージ効果が高まりメタリックステントと同等もしくはそれ以上の開存期間が得られ, とくに膵癌において化学療法の組み合わせにより長期の生存期間が期待できると考えられた。
  • 西 隆之, 幕内 博康, 島田 英雄, 千野 修, 山本 壮一郎
    2007 年27 巻6 号 p. 857-864
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    当科で扱った食道癌による気管狭窄に対するステント治療を行った8症例につき, 年齢, 性別, 占居部位, 病型, 病期, 治療法, 気管狭窄または閉塞の部位, ステントのサイズ, 気管ステント挿入後の生存期間につき検討した。5例がステント挿入後退院可能となった。うち2例は, QOLが改善し追加治療が可能であった。ステント挿入後の生存期間は, 9~362日, 平均124日であった。対象症例は全身状態が不良のことが多く, 長期予後も望みにくいので, 気管ステントの挿入にあたっては, 十分なインフォームドコンセントが重要である。施行時には呼吸器内科, 放射線科と協力し, 気管挿管下で挿入している。進行食道癌による気管狭窄に対するステント治療は, 患者を呼吸困難から解放しQOLを高めるばかりではなく, 呼吸状態の改善により得られた予後延長期間に, 化学療法や放射線治療が可能となることで, さらなる予後延長が期待できる有用な治療と考えられた。
症例報告
  • 東原 宣之, 岩崎 靖士, 池田 信良, 清水 壮一, 中村 修三, 高橋 伸
    2007 年27 巻6 号 p. 865-868
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 男性。夕食後の激しい心窩部痛で発症。翌日当院受診し腹部全体に圧痛を認めた。腹部単純CT検査にて脾門部と肝表面に出血を認めたため緊急入院。血管造影検査施行し, 脾臓上極に約5cm大のtumor stainを認め, 脾腫瘍破裂が考えられた。腹部造影CT検査ではtumorは胃との連続性を認め, 胃壁外性gastrointestinal stromal tumor (GIST) が疑われた。待機的に手術施行し, 開腹すると上腹部中心に約300ml の旧血塊を認め腫瘍は胃体上部大彎と脾臓に囲まれていた。検索すると胃大彎から発生した腫瘍であり胃部分切除施行した。腫瘍は50×60×35mm大で表面には破裂部を認めた。病理組織学的検査ではKIT陽性でGISTと診断された。破裂例では腹膜播種も懸念されるため今後も注意が必要である。今回われわれは比較的まれな腹腔内出血で発見された胃GISTの1例を経験したので報告する。
  • 渡邉 克隆, 神谷 順一
    2007 年27 巻6 号 p. 869-872
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の男性, 腹痛, 腹部膨満感を主訴に救急外来を受診し入院となった。注腸検査により直腸S状結腸部に全周性狭窄を認め, 大腸癌イレウスを疑いS状結腸に人工肛門を造設した。術後に便臭を伴う混濁した尿が出現し, 膀胱造影で直腸膀胱瘻の合併が判明した。直腸や膀胱からの生検では癌は陰性であった。直腸狭窄は改善傾向がみられず, 前方切除術, 膀胱部分切除術を施行した。病理組織学的には直腸憩室炎に伴う直腸狭窄と直腸膀胱瘻と診断した。医学中央雑誌の検索結果では, 直腸狭窄をきたした憩室炎は5例報告されていたが直腸膀胱瘻を合併した症例はなく, まれな1例と考える。
  • 狩俣 弘幸, 山崎 俊幸, 松原 洋孝, 小林 和明, 横山 直行, 桑原 史郎, 大谷 哲也, 片柳 憲雄, 斎藤 英樹, 西巻 正
    2007 年27 巻6 号 p. 873-876
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    腸閉塞を呈する左側大腸癌は, 経口的減圧のみでは減圧が困難なことが多く, 緊急手術を余儀なくされ, 人工肛門造設後, 2期的手術が施行されることが多い。今回われわれは, 下行結腸癌3例と直腸癌1例の閉塞性大腸癌4症例に対し, 経肛門的イレウス管を挿入し, 洗浄と減圧を行い, かつ術前精査を行った後, 待機的に腹腔鏡下大腸切除術を施行した。いずれの症例も減圧は十分で, 腹腔内の視野に問題はなく, D2またはD3郭清と1期的切除および吻合が可能であった。腸閉塞を呈する左側大腸癌に対しても経肛門的イレウス管で減圧することで, 待期的かつ1期的に腹腔鏡下に根治術を行うことが可能であり, 今後の治療方針として有効であると考えられる。
  • 裴 正寛, 田中 宏, 竹村 茂一, 田中 肖吾, 山本 訓史, 市川 剛, 高台 真太郎, 新川 寛二, 久保 正二
    2007 年27 巻6 号 p. 877-881
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    肝切除術後に離断末梢型胆汁漏をきたした3例に対しフィブリン糊充填療法を試みた。症例1は58歳の女性, 肝細胞癌に対するS7/8肝部分切除術後S8残肝から, 症例2は72歳の女性, 肝内胆管癌に対する左葉切除術後尾状葉から, 症例3は51歳の男性, 肝細胞癌に対するS8末梢を残存した不完全な肝右葉切除術後残存したS8の末梢から, それぞれ難治性の胆汁漏が認められた。いずれも排液量が20ml 前後となり, 細菌培養が陰性になった後にフィブリン糊を注入した。その結果, 胆管内まで充填できた症例1, 2は合併症なく治癒させることができたが, 膿瘍腔までしか充填できなかった症例3では胆汁漏は持続した。本法は比較的安全に施行できるが, 胆汁排液量や性状, 瘻孔の形状などを慎重に評価した上で施行することが肝要と考えられた。
  • 柳川 洋一, 金子 直之, 杉浦 芳章
    2007 年27 巻6 号 p. 883-886
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    肝外門脈損傷はまれであるが死亡率は高く, 検索した限り本邦では救命例の報告はない。今回われわれは鈍的外傷の1救命例を経験したので報告する。症例は71歳男性。乗用車運転中に電柱に激突し受傷。ショック状態で当科に搬送された。8年前に胃癌に対してBillroth I法再建による胃切除の既往があった。膝部開放骨折を認めたほか, 腹部CTで膵体部損傷と腹腔内液体貯留を認め, また網嚢腔に膵とは接しない奇異な液体貯留を認めたため開腹術を施行した。術中所見で膵体部の部分断裂のほかに門脈本幹損傷が判明した。大量出血のコントロールと術野の確保に難渋したが, 大動脈閉鎖バルーンで大動脈遮断を行うことにより門脈を膵上縁と肝門部でクランプでき, 門脈損傷部を縫合した。膵損傷に対しては縫合術とドレナージを行った。術後全身状態は特に問題なく経過。イレウスと脾静脈血栓症を合併したが自然軽快し, 下肢骨折の手術とリハビリの後に117病日独歩退院となった。
  • 原 義明, 渡辺 直純, 林 達彦, 村山 裕一, 清水 武昭
    2007 年27 巻6 号 p. 887-890
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    非外傷性小腸壁内血腫はまれな疾患であり, 術前診断は困難である。今回脳梗塞治療のための抗凝固療法にて, 空腸壁内血腫を生じた症例を経験したので報告する。症例は66歳男性。脳梗塞のために抗凝固療法を施行していた。著明な心窩部痛, 嘔吐を訴えて, 当院を紹介された。来院時結膜は貧血状で, 左上腹部の圧痛を認めた。Hb11.0g/dl, INR>10と貧血と抗凝固状態を示していた。腹部CTでは空腸および空腸間膜の肥厚と腹水貯溜を認めた。第2病日には強い腹膜刺激症状も認めたため, 腹腔内出血を疑い緊急手術を施行した。空腸および空腸間膜内に約17cmにわたり血腫を認めた。十二指腸周囲の後腹膜にも血腫が及んでいた。空腸および空腸腸間膜内血腫を呈している部分を含め約50cmの空腸部分切除を施行した。術後経過は良好であった。小腸壁内血腫は保存的治療が原則とされるが, 臨床症状により開腹手術も検討すべきと考えられる。
  • 奥村 英雄, 徳毛 誠樹, 岡 智, 大橋 龍一郎
    2007 年27 巻6 号 p. 891-894
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    結節性多発性動脈炎polyarteritis nodosa (PN) による, 壊疽性胆嚢炎から胆汁性腹膜炎を発症した1例を経験したので報告する。症例は36歳, 女性。内科にてPNと診断されステロイドパルス療法を行った。入院中, 右季肋部痛が出現し急性無石性胆嚢炎との診断で開腹胆嚢摘出術を施行した。摘出標本の病理組織所見より, PNによる胆嚢炎と診断された。術後, 胆汁性腹膜炎, 難治性瘻孔などの合併症が発生し, さらにPNの症状である頭痛や下肢の神経痛が増悪し, 長期入院となった。本症例のようにPNの活動期には外科侵襲により他の臓器障害が悪化する恐れがあるので, 胆嚢壊死や穿孔をきたしていない限り, 急性期の胆嚢摘出は控え, PNの治療の第1選択であるステロイドと免疫抑制剤の投与を優先するべきと思われた。
  • 畑地 慶三, 櫻井 丈, 片山 真史, 榎本 武治, 重田 博, 中野 浩, 大坪 毅人
    2007 年27 巻6 号 p. 895-898
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の女性。48歳時にSystemic lupus erythematosus (SLE) と診断され治療中であった。突然発症した腹痛と嘔吐で, 当院救命センターを受診した。腹部CT検査で, 消化管穿孔による腹膜炎と診断し, 同日, 緊急手術を施行した。脾彎曲部の腸間膜側に約2cmの穿孔部を認め, 穿孔部切除と人工肛門造設を行った。創感染を認めたがおおむね良好に経過し, 術後第19病日に内科へ転科した。
  • 横山 忠明, 井伊 貴幸, 福原 賢治
    2007 年27 巻6 号 p. 899-902
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は15歳女性。既往歴として先天性脳梁欠損症。嘔吐と腹痛を主訴に当院救急外来を受診した。来院時, 軽度の腹部膨満があり, 腹部全体に圧痛と筋性防御を認めた。白血球19,500/mm3, CRP33.21mg/dl と高度の炎症所見を認め, 腹部CT所見で腹水の貯留と胃から結腸にかけての腸管の拡張とガスの貯留がみられた。絞扼性イレウスを疑い緊急手術を施行したところ, 胃体下部大弯側に有茎性の嚢胞性病変を認め, それが穿孔し汎発性腹膜炎を呈していた。手術は穿孔した嚢胞性病変を胃壁の一部を含めて切除し, 洗浄ドレナージを施行した。術後経過は良好で術後第17病日に退院した。病理組織診では, 嚢胞は胃壁を巻き込んだ偽性嚢胞で内部にLangerhans島および導管を認め, Chromogranin A染色でも陽性を示した。以上から胃壁内迷入膵が偽性嚢胞を形成し, これが穿孔した極めてまれな病態と診断した。
  • 境 雄大, 須藤 泰裕
    2007 年27 巻6 号 p. 903-906
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    極めてまれな胆汁漏出による腹膜炎の1例を報告する。症例は89歳, 男性で, 汎発性腹膜炎の診断で入院した。腹部CTで肝右葉から胆嚢周囲の液体貯留と胆嚢の虚脱を認めた。超音波ガイド下の腹腔穿刺で胆汁性腹水が採取され, 胆嚢穿孔による胆汁性腹膜炎と診断し, 緊急開腹術を行った。右上腹部に胆汁性腹水が貯留していた。胆嚢底部に壁の菲薄な部位を認めたが, 穿孔は不明であった。胆嚢以外に胆汁漏出の原因はなく, 胆嚢摘出術を行った。胆嚢底部に径1.3cm大の類円形の粘膜欠損があり, 病理組織学的に全層性の出血と壊死がみられた。胆嚢内に結石を認めなかった。採取した胆汁から細菌は検出されなかった。術後は多臓器不全に陥ったが, 第35病日に退院した。病理組織学的所見より胆嚢壁壊死部からの胆汁漏出が原因となった胆汁性腹膜炎と診断した。胆嚢壁壊死の原因として動脈硬化による循環障害が考えられた。
  • 佐藤 やよい, 光定 誠, 中島 康, 塩入 貞明
    2007 年27 巻6 号 p. 907-910
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は22歳, 外国人女性。15歳より日本で生活している。5年前から左下腹部痛を認め, 軽快と再発を繰り返していた。また, 3年前から膀胱炎を繰り返し, いずれも内服薬で軽快していた。2005年7月, 左下腹部痛が悪化したため当院を受診した。来院時理学的所見では, 左下腹部に圧痛を認め, 触診で異物を触知したが, 体表面に手術痕などの創は認められなかった。腹部レントゲン検査では, 同部位に約4cm大の, 一部金属と思われるT字型の異物を認めた。画像所見では, 異物は腹腔内に存在することが疑われた。同年8月に異物除去術を施行した。異物は腹腔内にはなく腹壁内に存在し, 異物のすぐ近傍に腹壁と癒着した膀胱が認められた。本人から子宮内避妊具 (intrauterine device) 挿入歴を確認できなかったが, 異物の形状からIUDと考えられた。IUDが子宮を穿孔し, 腹壁内へ迷入したものと考えられた。
  • 廣田 政志, 神崎 章之
    2007 年27 巻6 号 p. 911-914
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 男性。発熱と黄疸を主訴に, 発症5日後当院を受診した。来院時腹部単純CT検査で下部胆管に石灰化像を認めた。総胆管結石, 胆管炎と診断され, 同日入院し第2病日にERCPを試みるも憩室内乳頭のため内視鏡的治療は断念した。第3病日に施行した腹部超音波検査では門脈左枝と前区域枝に血流が認められず, 三次元CT画像の門脈像では門脈左枝と前区域枝が欠損しており, 門脈血栓症と診断した。保存的治療により胆管炎と黄疸は消退し, 第15病日に手術を施行した。手術では高度の慢性胆嚢炎所見を認め, 胆嚢摘出, 総胆管切石, Tチューブドレナージ術を施行した。門脈は術前の腹部造影CT検査で部分的開存所見が認められた。慢性胆嚢炎, 胆管炎が門脈血栓症の原因と考えられ, 胆道系感染症では門脈血栓症の合併にも注意が必要である。
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