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上田 正射, 池永 雅一, 板倉 弘明, 田口 大輔, 福島 菖子, 關口 奈緒子, 高 正浩, 津田 雄二郎, 中島 慎介, 谷田 司, ...
2021 年41 巻3 号 p.
129-132
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
脳室腹腔シャント(ventriculoperitoneal shunt:以下,VPS)や腰椎腹腔シャント(lumboperitoneal shunt:以下,LPS)留置例の消化器手術では,シャント不全や逆行性感染が懸念される。症例は84歳の男性で,水頭症に対してVPS,LPSを留置された。右下腹部痛を主訴に救急搬送され,壊疽性虫垂炎と診断した。VPS先端を虫垂近傍に認めた。脳神経外科医にコンサルトし,緊急で単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。逆行性感染予防のため,両シャントを先端付近で結紮した。虫垂切除後,シャント先端を結紮部も含めて切離摘出した。術後は抗菌薬を投与し,逆行性感染,水頭症を認めなかった。虫垂炎など感染を伴う手術では,逆行性感染の予防のため,緊急性,腹腔内の汚染の程度から適切な対策が必要である。VPS・LPS留置例に対し腹腔鏡下手術を施行した急性虫垂炎の1例を経験したので報告する。
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成田 潔, 町支 秀樹, 登内 仁, 川口 達也
2021 年41 巻3 号 p.
133-136
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
【症例1】51歳女性,心窩部痛で救急搬送。CTで絞扼性腸閉塞と診断し緊急手術を施行した。術中所見で子宮広間膜裂孔ヘルニア(以下,本症)と診断し,整復および裂孔の縫合閉鎖をした。術後,術前CTを見直し,卵巣静脈がヘルニア内容物である拡張腸管により内側に偏位して走行していることを認識した。【症例2】58歳女性。腹痛,嘔気で救急搬送,原因同定できず,経過観察入院となった。入院3日目にCTを再検し,絞扼性腸閉塞と診断され当科へ紹介された。症例1のCTと同様の所見を認めたことから,本症を念頭に置いたCT読影を行い,本症と術前診断したうえで緊急手術を施行した。腹腔鏡で観察し本症であることを確認,小腸壊死を認めたため小開腹し,小腸部分切除および裂孔の縫合閉鎖を施行した。本症の術前診断は容易ではないが,自験例から卵巣静脈の内側偏位が術前診断のきっかけとなる可能性が示唆され,有用と考えられたので報告する。
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安藤 英也
2021 年41 巻3 号 p.
137-140
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
今回,再発を繰り返した特発性気腹症の1例を経験したので,文献的考察を含め報告する。症例は79歳の男性。便秘と腹部膨満感を主訴に当院を受診し,胸部X線検査で横隔膜下に遊離ガス像を認めた。腹膜刺激症状は認めなかった。炎症反応の軽度の上昇を認めた。消化管穿孔を疑い,近隣病院外科に紹介した。腹部CT検査で腹腔内遊離ガス像と大腸憩室を認めた。憩室の穿孔が疑われたため,入院のうえ絶食で保存的治療が開始された。上部消化管造影検査では,空腸上部に2ヵ所憩室を認めたが,穿孔は認めなかった。注腸造影検査では,S状結腸を中心に多数の憩室を認めたが,穿孔は認めなかった。食事を再開したが,症状が悪化することなく,全身状態良好で入院後6日目に退院された。退院後約2ヵ月後に同様な症状が出現し,胸部X線検査で横隔膜下の遊離ガスを再度認めたが,入院加療を行わず症状は軽快した。
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佐藤 寿洋, 室屋 大輔, 谷脇 慎一, 加来 秀彰, 小嶋 聡生, 新井 相一郎, 白濱 貴久, 川原 隆一
2021 年41 巻3 号 p.
141-144
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
症例は73歳男性。30歳時に血友病Aと診断され,定期的に第Ⅷ因子製剤を補充されていた。今回右季肋部痛が出現し,胆石性胆囊炎の診断で当院紹介入院。画像検査所見で胆囊頸部に嵌頓した結石を認めた。第Ⅷ因子製剤の投与と抗生剤加療を行い,経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage:以下,PTGBD)を施行した。ドレナージ後症状および炎症所見は軽快したが,30日後に出血性胆囊炎をきたしたため,開腹胆囊摘出術を施行した。第Ⅷ因子製剤の補充を行い,周術期の経過は良好で自宅退院となった。今回われわれは血友病Aに合併した胆囊炎に対して第Ⅷ因子製剤を使用し,PTGBD後に胆囊摘出術を施行したまれな1例を経験したので報告する。
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三頭 啓明, 郷右近 祐介, 中西 史
2021 年41 巻3 号 p.
145-149
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
症例は84歳,男性。黒色便を主訴に近医を受診した。貧血を認めたが上部内視鏡検査で出血源を指摘できず,当院紹介となった。精査の結果,出血源は認められず,食事を開始したところ下血を生じた。小腸出血を疑い,カプセル内視鏡施行されたが,出血源は特定されなかった。造影CTを再検され,小腸に造影効果を伴う腫瘤が認められた。小腸内視鏡検査では病変に到達できず,外科的切除の方針となった。小腸部分切除術を施行され,病理組織学的検査でpyogenic granulomaと診断された。Pyogenic granulomaは皮膚や口腔に好発する血管腫であり,小腸に発生するものは極めてまれだが,重度の貧血をきたした症例も報告されている。消化管出血をきたす原因として念頭に置くべきだが,診断に難渋することも少なくない。消化管出血の原因となり,診断に難渋した空腸pyogenic granulomaに対し外科的切除を施行した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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園田 啓太, 藤田 晃司, 三浦 弘志, 山本 聖一郎
2021 年41 巻3 号 p.
151-153
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
症例は44歳女性。腹痛を主訴に当院受診した。42ヵ月前にS状結腸癌に対して腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した。S状結腸肛門側は自動縫合器で切離し,double stapling techniqueで吻合を行った。腹部CT検査ではclosed loopを伴う腸管拡張とwhirl signを認め,絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した。腹部正中切開で開腹し,骨盤内の小腸を用手的に挙上すると索状物によるものと思われる絞扼は解除されており,Treitz靭帯より190cmの部位から回腸末端より110cmの部位まで50cmの腸管虚血を認めた。絞扼腸管の口側にステイプル針を含む索状物形成を認めるとともに肛門側の小腸間膜に瘢痕を認めたため,落下ステイプル針による絞扼性腸閉塞と推測した。腸切除は施行しなかった。ステイプル針は絞扼性腸閉塞の原因となりうるため,術中に落下させない工夫が肝要であると考えられた。
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堀口 桃子, 高野 啓佑, 木下 有紗, 宮﨑 敬太, 川井 廉之, 瓜園 泰之, 福島 英賢, 森田 剛平, 大林 千穂
2021 年41 巻3 号 p.
155-158
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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71歳,男性。他院で慢性骨髄単球性白血病(chronic myelomonocytic leukemia:以下,CMML)で通院中であった。近医より急性胆囊炎による敗血症性ショックの診断で当センターへ転院となり,緊急で開腹胆囊摘出術を施行した。術中,回腸末端漿膜面に軽度の発赤を認めたが,明らかな壊死は認めなかった。術後,循環動態はさらに悪化し,アドレナリンの持続投与を要した。初回手術時の回腸末端の病変が悪化したものと考えて再開腹したところ,同部位に壊死は認めなかったが,発赤,浮腫は増悪し,漿膜からの出血も認めた。同部位を切除したところ,術後12時間でショックから離脱し得た。切除標本の病理は粘膜の広範囲の脱落とCMML細胞の浸潤が認められ,循環不全に至った機序として,腸管上皮脱落からのbacterial translocationが生じたものと考えられた。
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佐藤 将大, 小野 文徳, 荒木 孝明, 谷口 肇, 柏木 良介, 平野 直大, 海野 倫明
2021 年41 巻3 号 p.
159-162
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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症例は75歳,女性。胆囊総胆管結石による急性胆囊炎および胆管炎に対して内視鏡的切石後に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した。術中に胆囊が穿孔し,腹腔内に胆石が落下したため可及的に摘出した。術後経過は問題なく退院したが,約2ヵ月後に発熱と炎症所見の上昇を認めたため再入院となり,CT検査で腹腔内の遺残結石が原因の肝膿瘍と診断した。経皮的ドレナージと抗菌薬による治療で軽快し,現在まで約2年間再燃なく経過している。術中の腹腔内落下結石により肝膿瘍をきたすことはまれであり,過去の報告例を総括して報告する。
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埜村 真也, 大谷 博
2021 年41 巻3 号 p.
163-166
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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症例は46歳,男性。左側腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部単純CTで虚血性腸炎と診断され入院となった。第4病日に左側腹部痛の増強を認め,腹部単純CTでlow density lesionおよび腹腔内遊離ガスを認め,下部消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。術中所見はS状結腸から直腸S状部に炎症を強く認めたが,明らかな穿孔部は確認できなかった。術中内視鏡を施行し肛門縁から35cmの部位に粘膜の陥凹を認め,同部が病変と考えられた。S状結腸切除および人工肛門造設術を施行した。病理所見では,病変部および正常部分でも固有筋層の部分的な欠損を認め,segmental absence of intestinal musculature(SAIM)と診断された。6ヵ月後に人工肛門閉鎖術を施行,初回手術後2年経過するが順調である。
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石毛 孔明, 山本 海介, 里見 大介, 福冨 聡, 小倉 皓一郎, 森嶋 友一
2021 年41 巻3 号 p.
167-170
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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上行結腸癌による閉塞性腸閉塞に対し盲腸瘻造設により減圧し腹腔鏡下に腫瘍切除術を施行し得た症例を経験した。【症例1】80歳台,女性。上腹部膨満感と頻回の嘔吐で受診した。精査の結果,上行結腸癌による閉塞性腸閉塞の診断となった。電解質異常をきたすほど嘔吐回数が多く,経鼻イレウス管による減圧は困難と判断した。腰椎麻酔下に緊急盲腸瘻造設術を施行し,55病日に腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した。【症例2】70歳台,女性。認知症で定期外来通院中に,食思不振の精査から上行結腸癌による閉塞性腸閉塞の診断となった。経鼻イレウス管で減圧を試みるも自己抜去を繰り返すため盲腸瘻造設術を施行し,40病日に腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した。盲腸瘻を造設したことで減圧に加えて腹腔鏡下手術における視野展開の補助になり,創部負担も軽減できた。患者背景によっては盲腸瘻造設術も減圧法の選択肢の1つとして有効な術式であると考えられた。
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加藤 航平, 松本 譲, 熊谷 健太郎, 桒原 尚太, 和田 秀之, 村川 力彦, 大野 耕一
2021 年41 巻3 号 p.
171-174
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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症例は68歳女性,他院で冠動脈狭窄に対して薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)を留置されプラスグレル,アピキサバンの内服を開始した。留置7日目に退院したが,同日突然の腹痛を主訴に当院へ救急搬送された。来院時はショック状態であった。造影CT検査で左胃動脈瘤と多量の腹水を認め,左胃動脈瘤破裂と診断し,緊急手術を行った。術中に動脈性の再出血を認め,動脈瘤切除を行った。病理組織学的検査でsegmental arterial mediolysis(SAM)による左胃動脈瘤破裂と最終診断した。術後2日目にプラスグレル,術後6日目にアピキサバンの内服を再開した。術後経過は良好で再出血,ステント血栓症を認めず10日目に退院した。薬剤溶出性ステント留置後早期に緊急手術を必要とした場合でも,可能な限り早期に抗血小板療法を再開することが望ましい。
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青木 輝, 伊藤 康博, 西 雄介, 杉浦 清昭, 岸田 憲弘, 瀬尾 雄樹, 田中 求, 戸倉 英之, 高橋 孝行
2021 年41 巻3 号 p.
175-178
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
腹膜透析中の患者に発症した臍ヘルニア嵌頓の報告症例は少ない。症例1は24歳男性。初発の臍ヘルニア嵌頓に対して用手還納された翌日に再発し,嵌頓組織の血行障害が疑われ緊急手術を施行した。ヘルニア囊内に嵌頓した壊死腸管を認めたため小腸部分切除を行い,ヘルニア門を単純縫合閉鎖した。症例2は60歳女性。初発の臍ヘルニアに対して用手還納されて2週間後の再発で来院し,臍ヘルニア嵌頓と小腸壁の造影効果減弱を認めたため緊急手術となった。腸管はうっ血調であったが改善を認めたため,ヘルニア門を単純縫合閉鎖し手術を終了した。2症例とも術後は血液透析を導入した後に腹膜透析を再開し退院した。臍ヘルニアではヘルニア門が狭く嵌頓しやすく,また腹膜透析患者は合併症を生じると重篤な結果に陥りやすい。腹膜透析中の患者では,臍ヘルニアの嵌頓解除の可否にかかわらず早期に修復術を行うことが望ましいと考えられた。
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瀬尾 雄樹, 杉浦 清昭, 青木 輝, 西 雄介, 岸田 憲弘, 田中 求, 伊藤 康博, 戸倉 英之, 高橋 孝行
2021 年41 巻3 号 p.
179-182
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
当院では2009年1月から2019年12月の間に,S状結腸軸捻転の再発予防を目的としたS状結腸過長症に対する手術を14例に施行したが,うち2例には腸切除は行わず腹腔鏡下癒着剝離術を施行し,長期間捻転の再発を認めず経過観察が可能であった。これらの症例では,S状結腸軸捻転発症の背景として,S状結腸口側と骨盤左側の後腹膜との強固の癒着に注目し,これによる捻れ癖がS状結腸捻転の要因と判断して,S状結腸外側の癒着剝離のみを施行した。本術式では腸管の切除,吻合を行わないため,縫合不全などの手術手技関連合併症をきたす可能性が低く,高齢者や併存症のため耐術能に不安のあるような症例にも応用可能な術式であると考えられた。
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須田 光太郎, 青木 琢, 清水 崇行, 白木 孝之, 櫻岡 佑樹, 松本 尊嗣, 森 昭三, 礒 幸博, 石塚 満, 窪田 敬一
2021 年41 巻3 号 p.
183-186
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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症例は67歳,男性。呼吸困難を主訴に当科紹介となった。8年前に肝細胞癌に対して,肝右葉切除術および横隔膜合併切除術を施行し,術後3年目より右横隔膜ヘルニアを認めていた。胸部単純写真,CTで回腸と右側結腸が右胸腔内に脱出しており,右肺が虚脱していた。バイタルサインは安定しており,腸管虚血を疑う所見を認めなかったため保存的加療を行ったが,翌日症状の増悪を認めたため,緊急手術を施行した。右胸腔内へ脱出した腸管を腹腔内に還納すると,胸壁に圧排された盲腸壁に虚血性変化を認めたため,回盲部切除術を施行した。ヘルニア門は,ヘルニアパッチを用いた縫合閉鎖術で修復した。術後22日目に合併症なく退院となった。術後8年を経て嵌頓した症例はいまだ報告がなく,広範な横隔膜欠損に対し,ヘルニアパッチを用いた1例を経験したので報告する。
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伊藤 喜介, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高山 祐一, 高橋 崇真, 桐山 宗泰, 清板 和昭
2021 年41 巻3 号 p.
187-190
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
症例は7歳女児。フィリピン国籍で,特記すべき既往歴なし。前日から続く臍周囲痛を主訴に当院受診した。腹部膨満,臍周囲に圧痛を認め,腹部造影CTで造影効果不良のある小腸のclosed loopおよびwhirl signを認めたため,絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した。手術所見では,血性腹水と暗赤色の拡張した小腸を認め,小腸同士が巻き付くようにして結節を形成しており,小腸-小腸型腸管結節形成症(ileo-ileal knot)と診断した。切除腸管を最小とするために肛門側腸管を先に切除し,結節を解除したうえで約130cmの小腸を切除し端々吻合した。術後経過は良好で,術後第12病日に退院した。腸管結節形成症は腸閉塞の0.52%に発生するまれな病態であり,小児に発生するileo-ileal knotの報告例はみられないため報告する。
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大塚 恭寛
2021 年41 巻3 号 p.
191-194
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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症例は特記すべき既往のない58歳男性。10日以上前からの血便と腹部膨満を主訴に当院外科を初診する目的で独歩来院したが,院内洗面室内に意識不明状態で倒れているところを発見され,ERに搬入。目撃のない心肺停止状態にあり,ただちに心肺蘇生を開始。初期心電図波形は心静止で,二次救命処置により自己心拍再開。蘇生後の各種検査の結果,進行直腸癌に伴う閉塞性大腸炎・敗血症性ショックと診断。ICUに入室し,機械的人工呼吸管理・大量輸液蘇生・カテコラミン投与・抗菌薬投与・体温管理療法を含む集中治療を施行しつつ,大腸内視鏡下に経肛門イレウス管を挿入し,腸管洗浄を施行。多量の泥状便のドレナージと腸管減圧は得られたが,ショックから離脱し得ず,多臓器不全の進行により来院10時間後に永眠された。後日,血液培養検体よりKlebsiella oxytocaが検出され,内視鏡下生検の結果は高分化管状腺癌であった。
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福井 貴巳, 加納 寛悠, 平田 伸也, 高橋 恵美子
2021 年41 巻3 号 p.
195-198
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
フリー
症例は29歳,男性。心窩部痛を主訴に当院を受診し腹部CTで小腸囊胞性腫瘍による腸重積と診断されたため緊急手術を施行した。開腹したところTreitz靭帯から約180cmの小腸に約5cm大の弾性軟な腫瘍を触知し,その位置から肛門側約60cmの小腸が拡張し浮腫も認められた。腸重積は解除されていたが小腸内に認められた腫瘍が責任病変と判断されたため,腫瘍を含めた小腸部分切除術を施行した。切除標本では,5.0×3.0×2.5cmの囊胞性腫瘍を認め,その囊胞内腔には漿液を認めた。病理所見では,Heinrich分類Ⅲ型の異所性膵の可能性が考えられた。術後経過は良好で術後10日目に退院した。
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笹嶋 奈津子, 前田 祐助, 吉野 雄大, 小林 陽介, 廣瀬 茂道, 原田 裕久
2021 年41 巻3 号 p.
199-203
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
ジャーナル
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症例は67歳,男性。右側腹部痛,黒色便を主訴に受診した。腹膜刺激症状を認め,腹部CTで小腸壁の肥厚と周囲にfree airを認めた。穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。Treitz靭帯より約120cmの空腸で腫瘍の穿孔を認め,小腸部分切除術を施行し,病理組織診断では未分化癌であった。術後のCTで左肺上葉に40mm大の腫瘍を認め,経気管支肺生検で小腸病変と同様に未分化癌の診断であった。全身検索で右鎖骨上リンパ節,十二指腸,右副腎に腫瘤性病変がみられ,転移と考えられた。術後合併症はなく,第28病日に退院した。最終診断は,左上葉非小細胞肺癌(未分化癌)StageⅣ,PD-L1強陽性で,ペムブロリズマブ単剤による薬物療法を開始し,術後2年8ヵ月の生存が得られている。肺癌小腸転移による穿孔性腹膜炎は予後不良であるが,臨床経過,組織学的所見から原発巣への治療を行うことで長期予後をもたらす可能性がある。
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小林 毅大, 増田 隆洋, 藤崎 宗春, 三森 教雄, 池上 徹
2021 年41 巻3 号 p.
205-208
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
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症例は54歳,女性。手術歴はない。3日間持続する腹痛,発熱を主訴に当院救急外来を受診した。腹部造影CT所見で骨盤腔内に小腸のclosed loopを認め,絞扼性腸閉塞と診断し,同日,腹腔鏡下に緊急手術を行った。虫垂末梢が炎症によって後腹膜と癒着することでヘルニア門が形成され,小腸が約20 cmに渡り絞扼されていた。絞扼を解除すると腸管血流が改善されたため,腸切除はせずに虫垂切除のみを行った。術後はとくに問題なく経過し,術後7日目に退院した。虫垂炎を契機に後腹膜と虫垂がヘルニア門を形成し絞扼性腸閉塞を引き起こした1例を経験したので報告する。
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箕輪 啓太, 野田頭 達也, 小野 文子
2021 年41 巻3 号 p.
209-212
発行日: 2021/03/31
公開日: 2021/09/30
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症例は64歳男性。サウナで倒れていたのを発見されて,意識障害を認めたために救急車で当院に搬送された。意識障害,高熱,頻呼吸,循環不全を認め,各種検査結果からⅢ度熱中症による意識障害と脱水に伴う循環血液量減少性ショックと判断した。第2病日に意識障害は改善したが,肝障害や横紋筋融解症の増悪を認めた。第3病日に発熱,血圧低下が再燃し,腹部超音波で骨盤腔に液体貯留を認め,CTでは入院時に比して腸管全体の浮腫状肥厚が増悪していた。翌4病日に暗赤色の水様便が出現し,動脈血乳酸値が9.8mmol/Lと上昇したため,腸管虚血を疑い,試験開腹術を施行した。腹腔内は混濁した腹水を認めたが,消化管穿孔や腸管壊死はなかった。血液培養と術中腹水培養から大腸菌を認めたことから,熱中症による特発性細菌性腹膜炎と診断した。術後は経過良好であり,第31病日に退院となった。Ⅲ度熱中症による消化管障害の際には循環不全による腸管虚血から特発性細菌性腹膜炎に留意する必要がある。
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