日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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42 巻, 7 号
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症例報告
  • 小花 彩人, 小山 基, 松村 知憲, 小出 紀正, 諏訪 達志
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 719-722
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    食道癌術後の食道裂孔ヘルニアによる絞扼性腸閉塞はまれながら致死的な合併症の1つである。今回,食道癌術後の食道endoscopic submucosal dissection(以下,ESD)を契機に発症した食道裂孔ヘルニア門による小腸絞扼性腸閉塞を経験した。症例は81歳女性で4年9ヵ月前に胸部食道癌に対して右開胸開腹胸部食道全摘,高位胸腔内食道胃管吻合が行われていた。異時性食道癌に対してESDを行った翌日に強い腹痛と嘔吐が出現した。胸腹部CTで食道裂孔をヘルニア門とする小腸絞扼性腸閉塞と診断して緊急手術となった。前回の手術操作で開大した食道裂孔がヘルニア門となり,挙上された胃管左側より小腸が縦隔内に嵌頓していた。90cm程度の壊死小腸を切除後,大網で食道裂孔を被覆した。食道癌術後患者ではESDによる腹圧の上昇で食道裂孔ヘルニアを発症し得る。裂孔の直接縫縮が難しい場合は大網による被覆が有用である。

  • 山田 嵩宜, 岡﨑 雅也, 福永 潔, 近藤 譲, 小田 竜也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 723-726
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は38歳,月経困難症のある女性。間欠的な右下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診し,腹部造影CTで回盲部の腸重積症と診断された。血流障害を疑う所見はなく,待機的に内視鏡的整復を試みたが,整復不十分と判断し,準緊急で開腹手術を施行した。術中所見では腸重積は解除されていたが,正常虫垂を同定できず,盲腸に腫瘤を触知した。回結腸動脈に沿って腫大したリンパ節を複数認めたため,悪性腫瘍の可能性を考慮して回盲部切除術(D3郭清)を施行した。術後病理組織学的に虫垂に発生した腸管子宮内膜症と診断された。虫垂子宮内膜症による腸重積は極めてまれな病態であり,術前・術中診断は困難である。子宮内膜症は良性疾患であるが,癌の可能性が否定できない場合はリンパ節郭清をすべきである。

  • 仕垣 隆浩, 執行 ひろな, 岡 洋右, 赤木 由人
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 727-731
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は85歳,女性。定期検査の腹部X線検査で骨盤内に線状の異物を指摘された。腹部CT検査でS状結腸の憩室内に嵌まり込む6cm大の高吸収な異物を認めた。腹部症状はなく,画像上も穿孔を疑う所見はみられなかった。緩下剤内服で経過観察されたが,1ヵ月経過しても自然排出されず,消化器内科に紹介された。下部消化管内視鏡検査でS状結腸の憩室内にヘアピンの両端が嵌まり込み,可動性不良な状態であった。抜去時の腸管穿孔のリスクが高く,内視鏡による摘除は困難と判断された。全身麻酔下に腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery:以下,LECS)を行い,腸管損傷なく下部消化管内視鏡でヘアピンを摘除した。今回ヘアピンの両端がS状結腸憩室に長期間陥入し,内視鏡的治療では摘除できない症例に対してLECSで安全に摘除することができたので文献的考察を加え報告する。

  • 大西 紘平, 桒原 聖実, 杢野 泰司, 松原 秀雄, 宇治 誠人
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 733-736
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は57歳,女性。10年以上前より臍からの液体の漏出を認めていた。1ヵ月前より臍周囲の疼痛と食思不振が出現し,その後徐々に増悪したため当院受診した。臍に皮膚びらんを認め,びらんの中心部から便臭を伴う少量の混濁排液を認めた。腹部CTでは臍から横行結腸,膀胱頂部に連続する低吸収域を認め,尿中に便の混入を認めた。臍から瘻孔造影を行ったところ,横行結腸と膀胱が造影されたため,横行結腸瘻を形成した尿膜管感染と診断した。便路変更目的に回腸人工肛門造設術と,開腹洗浄ドレナージを行った。臍の症状は改善したため,術後第17病日に退院となった。3年後,臍からの排液を再度認めた。腹部CTおよび臍からの瘻孔造影で臍結腸瘻の再発と診断した。瘻孔を含めた右半結腸切除術を施行し,その後人工肛門閉鎖術を行った。術後3年の現在,症状の再燃なく健在である。

  • 金原 真義, 小野山 裕彦, 坂井 昇道, 車 清悟, 土佐 明誠, 安次富 駿介, 大久保 海周, 平野 博嗣
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 737-740
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は88歳,女性。発熱,嘔吐,腹痛を主訴に当院を受診。CT所見では,両側肺の浸潤影および小腸全体の腸管拡張像が認められた。腫瘍性病変は同定できなかった。肺炎を合併した腸閉塞症と診断された。腸閉塞に対して第2病日にイレウス管を挿入し,肺炎の治療を行った。肺炎は改善したが,腸閉塞症は保存的治療で軽快しないため閉塞機転は不明だが腸閉塞症に対し第15病日に手術を施行した。開腹すると小腸全体の拡張がみられた。虫垂に囊胞状の腫瘤を認め,その部分から後腹膜に索状物を形成しており,そこに回腸が陥入して絞扼していた。絞扼を解除して回腸部分切除術,虫垂切除術を施行した。虫垂囊腫は1.8cm大であり,病理組織学的検討では低異型度虫垂粘液性腫瘍(LAMN)と診断された。虫垂腫瘍により腸閉塞をきたした報告例は極めて少ない。さらに本症例のように索状物を形成し,それによる腸閉塞をきたした症例は本邦においては他に報告がなく貴重な症例と考えられる。

  • 田中 伶於, 大田 信一, 中村 一郎, 楠井 隆
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 741-744
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例1は40歳台,女性。左下腹部痛,嘔吐を主訴に当院を受診した。造影CTでは小腸拡張所見と骨盤内にループ像を認めた。S状結腸間膜ヘルニアの診断で手術を施行した。手術ではS状結腸間膜の欠損孔に小腸の嵌頓を認めた。嵌頓小腸は色調不良を認めなかったため温存し,結腸間膜の内ヘルニア門を縫縮閉鎖した。症例2は50歳台,男性。改善しない腹痛を主訴に受診した。造影CTで小腸拡張とS状結腸近傍でのループ像を認め,S状結腸間膜ヘルニアを疑った。保存的加療をしたが改善せず,手術を行った。手術ではS状結腸間膜にポケットが形成され回腸の陥入を認めた。嵌頓回腸には虚血性変化を認めなかったため温存した。S状結腸間膜ヘルニアは術前診断が困難であるとされているが,造影CTで骨盤左側に短いループ像形成を認め,S状結腸間膜ヘルニアと術前診断可能であった。

  • 篠田 智仁, 高井 一輝, 太田 雅斗, 中島 拓哉, 桐山 俊弥, 松本 圭太, 八幡 和憲, 佐々木 義之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 745-748
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,男性。急激な腹痛を主訴に近医を受診しイレウスの疑いで当科紹介となった。CT検査で上腸間膜静脈の血栓閉塞および小腸壊死を疑う所見を認め同日緊急手術の方針となった。小腸の約20cmに腸管全層壊死所見,さらに壊死腸管の口肛門側腸管約40cmに腸管の高度な浮腫状所見を認め同部を含む約100cm程度の小腸を切除し吻合を行った。術翌日よりヘパリンの投与で抗凝固療法を開始した。術後6日目よりヘパリンをエドキサバンに変更し抗凝固療法を継続し術後11日目に退院となった。病理組織学的には静脈血栓に伴う小腸壊死と診断された。また,続発性上腸間膜静脈血栓症の原因となる素因はなく特発性上腸間膜静脈血栓症と考えられた。その後,外来でエドキサバンによる治療を継続し,術後半年のCTで上腸間膜静脈の血栓の消失を確認した。術後2年になる現在もエドキサバンの内服を継続しており上腸間膜静脈血栓の再燃はなく経過している。

  • 髙野 洋次郎, 中原 健太, 垣迫 健介, 関 純一, 大饗 園子, 島田 翔士, 竹原 雄介, 向井 俊平, 榎並 延太, 澤田 成彦, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 749-752
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は20歳台女性,統合失調症治療中で自傷行為を繰り返していた。上腹部痛を主訴に受診。腹部に多数の異物を認め,画像検査で10本の伏針を確認した。一部の伏針は肝,結腸への刺入が疑われた。X線透視を併用し腹腔鏡下に手術を施行した。腹腔内に到達していた伏針は7本でそれぞれ大網に被覆され,膿瘍形成や消化管損傷は認められなかった。すべての伏針を破損することなく摘出した。摘出した伏針は引き伸ばされたゼムクリップ2本と裁縫用針8本であった。自験例は伏針の本数が10本と本邦報告例のなかで最多であったが,低侵襲かつ安全に手術を施行可能であった。また自験例のように経皮的経路で侵入した金属製の伏針であれば,確実に対処することにより膿瘍などの合併症を起こすことなく,安全に経過することができると考えられた。

  • 久保田 友紀, 根本 洋, 山田 正俊, 針金 幸平, 宮地 孟, 去川 秀樹, 矢澤 直樹, 宮前 拓, 吉田 寛
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 753-757
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は58歳の男性で,腹痛を主訴に来院した。画像検査で上行結腸癌と思われる腫瘤と,それによる腸閉塞,腹膜転移,脾転移と診断した。イレウス管挿入後,回盲部切除術を行った。手術標本では肉眼的に管腔内に腫瘍を認めず,病理診断上,憩室から発生した大腸癌と診断された。その後,肝転移,肺転移により1年後に死亡した。大腸憩室から発生する大腸癌(以下,憩室癌)について自験例を含めた32例について検討した。憩室癌は術前診断例が少なく,半数以上が腹痛など急性期症状を呈していた。左側結腸に多く,ほとんどは単発で治療は手術が行われていた。病理で癌と憩室の連続性を認めることの難しい症例もみられた。組織型は粘液癌の比率が通常癌より高く,周囲に炎症を伴うことが多い。仮性憩室からの発症が多くみられており,平均的には腫瘍は小さいものの進行癌になりやすい特徴を有していた。

  • 本多 正樹, 奥澤 平明, 星 博勝, 坂下 麻衣, 遠藤 彰, 伊東 浩次
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 759-762
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,男性。2022年3月吐血,呼吸苦で前医に救急搬送され,CTで左気胸,縦隔気腫を認め食道穿孔が疑われた。当院搬送後の内視鏡検査では食道穿孔は認めず,スコープ通過不能の幽門狭窄および十二指腸潰瘍を認めた。保存的加療を施行したが入院4日目に吐血,出血性ショックをきたし,十二指腸潰瘍出血と診断し緊急手術を施行した。術中所見から部分切除や縫合止血は困難であったため膵頭十二指腸切除術を施行し,術後24日目に退院となった。切除標本の病理学的検査では深掘れの強い十二指腸潰瘍を認め,出血の原因と考えられた。また幽門部に胃癌を認め,十二指腸浸潤をきたしており幽門狭窄の原因と考えられた。上部消化管出血に対しては内視鏡的止血術が第一選択であるが,潰瘍や悪性疾患による瘢痕狭窄や周囲の線維化を伴う場合,内視鏡的止血術や縫合止血術などが困難となり膵頭十二指腸切除術などの拡大手術も要すると考えられた。

  • 森 泰木, 藤田 昌久, 釜田 茂幸, 伊藤 博
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 763-766
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    十二指腸総胆管瘻を伴う出血性十二指腸潰瘍の1例を経験したので報告する。症例は61歳,男性。意識障害で当院に救急搬送され,上部消化管出血による出血性ショックと診断された。内視鏡的止血が困難で緊急開腹手術を選択した。十二指腸球部後壁の潰瘍底に存在した露出血管からの出血と十二指腸総胆管瘻を認めた。直接縫合止血術を行ったが,術野全体の出血コントロールが困難となり,ガーゼパッキングによるダメージコントロール手術に移行した。全身状態安定後の再手術でDubois手術と総胆管へのT-tube挿入を行い,術後経過は良好であった。このような症例では定型的な治療法はなく,緊急性や重症度から縮小手術が求められる場面も多い。本症例で行った二期的手術は低侵襲かつ総胆管狭窄や胆汁瘻などの重大な術後合併症発生時にも配慮した方法であり,治療の選択肢になると考えられる。

  • 大豆生田 尚彦, 小泉 大, 宮原 悠三, 北林 宏之, 近藤 悟
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 767-771
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は81歳,女性。66歳より器質化肺炎があり15年間ステロイド内服中であった。2週間持続する食思不振を主訴に前医を受診し,腹部単純X線検査で腹腔内気腫が疑われたが腹部症状が乏しく経過観察されていた。その5日後に同じ症状で当院を受診し,精査目的に上部消化管内視鏡検査を施行した。特記すべき内視鏡所見はなかったが,翌日発熱を主訴に再診し,造影CT検査で広範な後腹膜気腫を伴う腸管囊腫様気腫症を認めた。診察上腹膜刺激症状はなく,造影CT検査から腸管壊死も否定的であったため,緊急手術対応可能な準備のうえ,抗菌薬と絶食による保存的加療で厳重な経過観察の方針とした。CT検査で気腫像は経時的に縮小傾向が得られ,第20病日には消失し,第27病日に退院した。ステロイド内服中に発症した後腹膜気腫を伴う腸管囊腫様気腫症はまれで,保存的に軽快した1例を経験したので報告する。

  • 東 智彦, 西原 政好, 古澤 慎也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 773-776
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,男性。肝門部胆管癌術後の再発に対して外来でゲムシタビン・シスプラチン療法を施行していた。自宅で転倒し受傷した右脛骨骨折と同部位の蜂窩織炎に対して入院加療中であった。入院中に突然の腹痛,下痢が出現しショックバイタルとなったため,ICU管理を行った。CT検査で直腸からS状結腸にかけての著明な粘膜下層の浮腫があったため,重症感染性腸炎と診断した。その後に便塗沫検査より糞線虫体が,血液培養検査でKlebsiella と大腸菌(ESBL)が検出され,播種性糞線虫症の診断に至った。診断後すみやかに駆虫を行い救命し得た。担癌患者における化学療法中の免疫抑制状態では,重篤な播種性糞線虫症を発症する可能性がある。そのため,化学療法の施行前には糞線虫のスクリーニング検査を行うことで感染状況を把握し,予防治療を考慮する必要がある。今回の特異的なCT所見は早期診断の一助になる可能性があり報告する。

  • 榎本 義久, 島﨑 猛
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 777-780
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,男性。左鼠径部の膨隆を主訴に受診となった。疼痛はなく,臥位で容易に還納された。CT所見では,左下腹壁動静脈内側から大網の脱出を認め,左内鼠径ヘルニアと診断した。腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal approach:以下,TAPP)を施行したところ,術後2日目に腹部膨満,嘔気を生じ,腸閉塞を認めた。イレウス管を留置したが,改善乏しく,CT所見では,血流障害はないが,closed loopが疑われ,術後7日目に腸閉塞解除術を施行した。腸閉塞の原因はTAPP時の腹膜閉鎖部から膀胱前腔への小腸の脱出であった。腸管の血流障害はなく腸管切除の必要はないと判断し,整復して腹膜を閉鎖した。再手術後は経過良好で,術後15日目に退院となった。TAPPは近年増加傾向にあり,それに伴い従来法では起こらなかった合併症の報告が散見されている。TAPP術後早期に発生した腸閉塞の1例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 濵口 暁, 松谷 毅, 三島 圭介, 山際 亮, 谷合 信彦, 吉田 寛
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 781-784
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性。膀胱癌に対して経尿道的膀胱腫瘍切除術を行い,再発予防としてBCG膀胱内注射療法を来院5日前に外来で行っていた。突然に発症した腹痛を主訴に当院へ救急搬送された。腹部造影CT検査で腹腔内遊離ガス像を認めたことから,消化管穿孔の疑いで緊急手術を施行した。腹腔鏡下で腹腔内を観察したが,明らかな消化管の穿孔部位を認めなかった。開腹へ移行して検索すると膀胱に約20mm大の発赤を伴う穿孔部を認め,膀胱破裂と診断した。穿孔部を単純縫合閉鎖し,洗浄ドレナージ術を行った。術後経過は良好で第9病日に退院となった。今回われわれは,BCG膀胱内注射療法中に腹腔内遊離ガスを伴う膀胱破裂の1例を経験したので文献的考察を含めて報告する。

  • 桑田 大輔, 三浦 卓也, 坂本 義之, 諸橋 一, 中山 義人, 須藤 亜希子, 笠井 大貴, 袴田 健一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 785-787
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    直腸肛門周囲膿瘍・腸閉塞を契機とし,術前化学放射線療法(neoadjuvant chemoradiotherapy:以下,NACRT)後に治癒切除した痔瘻癌を経験したので報告する。症例は61歳,男性。36年前に交通事故による脊髄損傷で対麻痺,膀胱直腸障害となり,以後摘便で排便していた。2年前に痔瘻を指摘された。1ヵ月前に嘔吐,下痢で前医に救急搬送された。CTでは直腸肛門周囲膿瘍とそれに伴う腸閉塞を認めた。膿瘍壁からmucinous adenocarcinomaが検出され,痔瘻癌の診断となった。手術先行での治癒切除は困難と考え,NACRTの方針とした。NACRT 10週後に骨盤内臓全摘術を行った。病理で尾骨に腫瘍浸潤を認めたが,切除断端は陰性だった。膿瘍を伴う痔瘻癌に対するNACRTは,腫瘍縮小と炎症の鎮静化という点で治癒切除に有効であると考えられた。

  • 熊谷 健太郎, 山田 秀久, 平野 聡
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 7 号 p. 789-793
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,男性。右鼠径部痛,腫脹を主訴に救急外来を受診した。右鼠径ヘルニアと診断するも用手還納困難であった。CT検査でヘルニア内容は虫垂であり,炎症の合併も疑われた。虫垂は壊死や穿孔を認めず,入院のうえ,抗菌薬加療を開始し,待機的腹腔鏡下虫垂切除,二期的ヘルニア修復の方針とした。炎症鎮静後も還納は困難であり,入院3日目に手術を施行した。手術所見で右鼠径ヘルニアは再発性であった。内視鏡下に虫垂の還納を試みたが困難で,鼠径部切開法へ移行した。ヘルニア囊を開放し虫垂を切除後,一期的にBassini法を施行した。ヘルニア内容が虫垂の鼠径ヘルニアをAmyand’s herniaとよぶ。本病態に対して一期的に腹腔鏡下虫垂切除後,二期的な腹腔鏡下ヘルニア修復術の施行が感染性合併症の回避と根治性の観点から理想的である。一方,虫垂還納が困難な場合は鼠径管を開放し虫垂を処理後,一期的組織縫合法が選択される。本病態の手術の際は周到な手術計画を要する。

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