日本腹部救急医学会雑誌
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25 巻, 7 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 久保 雅俊, 治田 賢, 宇高 徹総, 水田 稔, 白川 和豊
    2005 年 25 巻 7 号 p. 877-881
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    近年, 腹腔鏡手術手技の向上に伴い急性胆嚢炎に対しても腹腔鏡下胆嚢摘出術を選択する施設が増えている。当院では1995年より早期手術を基本方針に急性胆嚢炎に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っており, その適応と安全性について検討を行った。2004年12月までに当院で施行した急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術施行例は115例である。発症から手術までの日数は4口以内; 84例, 5~7日; 11例, 8~14日; 5例, 15~28日; 11例, 29日以降; 4例であった。開腹術移行率は18.3%で, 発症後7日以内の早期手術例に限れば13.8%と低率であった。開腹術移行の理由は, Calot三角部の剥離不能が7例と最も多く, 次いで高度炎症による他臓器との癒着が5例, 進行胆嚢癌が2例, 胆管損傷が1例であった。早期手術例では術前の炎症反応 (白血球数, CRP) が強いほど手術難易度が高くなる傾向を認めた。胆嚢癌の2症例は一旦退院後, 癌死したが, その他の症例では後期合併症は認めていない。発症早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術は安全かつ有用であるが, 高度炎症例では開腹術への移行を躊躇しないことが重要と考えられた。
  • 金子 直之
    2005 年 25 巻 7 号 p. 885-891
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    近年, 重症外傷の治療においてdamage comtrol (DC) が注目されている。しかしこれは, あくまでも先人の努力の上に成り立つものであり, それを理解しなければ判断を過つ可能性もある。今回われわれは肝損傷を例に, 過去100年の論文221編を検討し, 診断・治療の変遷を基にDCの位置づけを考察した。現在までに報告された主な術式には, 肝門部遮断, パッキング, 肝縫合, 解剖学的切除, resectional debridememt, 肝動脈結紮, また静脈系損傷に対する種々の手術法がある。さらに近年は, TAEも治療法の一つとして主要な位置を占めている。重症外傷患者の手術には幅広い知識と手技を身につけ, DCも, 多々ある術式の一つという位置づけを熟知して用い, 症例に応じて瞬時に適切な治療法を選択し実行できることが必要である。またそのためには, 十分外傷に精通した外科医が手術を行うべきである。
  • 葛西 猛, 貫和 奈央, 田中 研三, 弥永 真之, 葛西 嘉亮, 三沢 尚弘, 佐藤 康次, 大橋 正樹, 不動寺 純明
    2005 年 25 巻 7 号 p. 893-897
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    外傷外科における新しい治療戦略の一つであるDamage Control Surgery (DCS) を選択する生理学的適応基準はいまだ確立されていない。著者らは1995年に重症型肝損傷に対して肝切除を施行した42症例を対象として50%予測死亡率からDCS選択の新基準を設定した (深部体温く34℃, Base Excess<-13mmol/L, PT>17sec.) 。新基準がDCSの生理学的術式選択基準として妥当な指標であるか否かについて検討した。新基準設定前 (1985~1995) のDCSの生存率22.2%に対して, 設定後 (1996~2004) の生存率は60%と生存率は有意に向上した (P<0.05) 。この結果のみならず, 米国から報告されているdeadly triadの指標はほぼ著者らの作成した指標に近似することを勘案するならば, DCSの生理学的術式選択基準として新基準は有用性が高いと考えられた。
  • 非切除手術を中心に
    中村 達也, 畑 倫明, 瓜園 泰之, 關 匡彦, 奥地 一夫
    2005 年 25 巻 7 号 p. 899-904
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症肝損傷 (AAST-OIS grade IV and V, 日本外傷学会肝損傷分類IIIb型およびIIIb型に傍肝静脈損傷の合併) に対し肝周囲gauze packingによる止血のみを行う一期手術と損傷部分をそのまま温存し止血の確認と損傷部分の閉鎖のみを行う二期手術により, 2003年8月より連続6例全例を救命し社会復帰をなし得た。この手術術式と術後合併症を示す。Gauze packingは主に肝右葉損傷に対するばかりでなく傍肝静脈損傷に対する止血にも有効である。術後胆汁腫を全例に認めたが4例は縮小消失し, 2例は感染性胆汁腫となり待期的肝右葉切除を施行。本術式は卓越した技術を持つ限られた外科医だけでなく, その場に直面した多くの救急医が同様の結果を導き出すことを目標としている。
  • 解剖学的定型肝切除術との比較検討
    佐々木 淳一, 北野 光秀, 長島 敦, 土居 正和, 林 忍, 江川 智久, 吉井 宏
    2005 年 25 巻 7 号 p. 905-910
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    循環動態の不安定な重症肝損傷に対する当院の手術的治療戦略, すなわちdamage control surgeryのみに固執せず, 積極的に解剖学的定型肝切除術を施行することの妥当性について, 自験例より検討した。対象は, 過去10年間に手術を施行したIIIb型肝損傷のうち, 初療時に循環動態不安定な15例で, damage control surgery施行の6例 (死亡3例) と肝切除術施行の9例 (死亡1例) の二群に分け, 外傷死の三徴 (trauma triad of death) である (体温, pH, 血液凝固障害), 合併損傷, 手術所見, 転帰・合併症などを比較した。その結果, 外傷死の三徴 (trauma triad of death) のなかでも軽度の体温低下やアシドーシスのみを伴う場合には, 解剖学的定型肝切除術はdamage control surgery同様に安全に施行可能であると考えられた。ただし, 臨床的出血傾向を伴う凝固障害が出現している場合や骨盤骨折などを合併し高度のショックに陥った肝損傷症例では, damage control surgeryを行ったとしても救命率は50%と低く, IVRの併用も考慮すべきであることが示唆された。
  • TAEとの関連において
    阪本 雄一郎, 益子 邦洋, 松本 尚, 阿部 幸喜, 山本 保博
    2005 年 25 巻 7 号 p. 911-916
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    外傷初期診療ガイドライン, Japan Advanced Trauma Evaluation and Care (JATEC) において外傷患者に対する初期輸液療法の反応を以後の治療法の目安とするように定めているが, 具体的な数値は記載されていない。今回, 2000年1月から2005年4月までに止血処置を施行した肝・脾損傷を対象としTAE群と開腹手術群に分け, 当科の定めた初期輸液の反応に従い分類し, 止血法や損傷形態についてretrospectiveに比較検討した。また, 同時期に経験したIIIb型肝損傷手術症例11例をDCS施行群と非施行群に分け比較検討した。肝・脾損傷症例を外傷初期輸液の反応に基づき分類するとstable群, responder群でTAEを施行した症例は全例止血, 救命し得, Transient responder群中TAEを施行した脾損傷の1例は後に開腹手術を要し, non responder群は全例手術を施行していた。IIIb型肝損傷手術症例中DCSを施行した群は非施行群より有意に重症で, DCS施行例とTAE止血例は, 明らかに状態が異なっていた。当科の外傷患者初期輸液の反応は, 肝・脾損傷症例の止血法決定に有用と考えられた。
  • 森脇 義弘, 小菅 宇之, 豊田 洋, 山本 俊郎, 杉山 貢
    2005 年 25 巻 7 号 p. 917-921
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    制御不能出血を伴う腹部骨盤外傷症例やショック状態にある腹膜炎・後腹膜炎症例に展開される治療戦略であるdamage controlの合併症としてabdomillal compartment sylldromeが知られている。治療法は減圧開腹だが, 解放された腹腔内臓器保護や一時創被覆法が問題となる。当センターで採用している開腹創密閉下高圧持続吸引法 (以下, 本法) では, 血液や浸出液は閉鎖回路のまますべてチューブから吸引され創を被覆するガーゼや周囲環境への汚染拡大はなく, 吸引バッグごと廃棄され, 排液量の完全測定が可能である。過去に施行していた密閉小バッグ吸引法では, バッグ内吸引量350±460g/時, ガーゼ吸収量が123±154g/日, ガーゼ交換回数1.1±0.5回/日であったが, 本法では各, 247±269g/時, 6±16g/日, 0回であった。本法は, DCS創解放一時閉腹法として, 創からの汚染浸出液や血液散布拡散, 頻回の創処置, 汚染物の回収過程での感染拡大防止や操作の人件費の面, 浸出液や血液の正確な計測が可能である点から輸液量管理面でも有用と考えられた。
  • 鈴木 彰, 清水 文彰, 土屋 拓司, 岡本 講平
    2005 年 25 巻 7 号 p. 923-927
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    特発性食道破裂は致死的な疾患であり早期の診断と適切な処置を行う必要がある。今回われわれは有効なドレナージと洗浄により保存的に治療できた特発性食道破裂の一例を経験したので報告する。症例は56歳, 男性。飲酒後の嘔吐に続く腰背部痛を主訴に近医を受診。心血管疾患を疑われ当科へ紹介された。胸部Xpおよび胸部CTで縦隔気腫があり, 特発性食道破裂と診断した。発症から確定診断までの時間は約6時間であった。この際, 胸水, 縦隔内膿瘍はなかったため, 経鼻胃管留置および抗生剤投与を行った。第3病日に左側に胸水が貯留し胸腔ドレナージを行い, その後トロッカーを用いた持続洗浄, 抗生剤の投与, 高カロリー輸液による栄養管理を行ったところ第42病日の造影で瘻孔の閉鎖が確認できた。アレルギー性紫斑病を合併したが, 経過観察のみで軽快し, 第89病Fiに退院した。
  • 木内 誠, 黒田 房邦, 土井 孝志, 金子 直征, 佐藤 学, 小林 信之
    2005 年 25 巻 7 号 p. 929-932
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは腹部造影CT検査で出血部位を同定し手術を施行した上行結腸憩室出血の1例を経験したので報告する。症例は71歳の男性で, 大量下血と眩量を主訴に救急車にて来院した。来院時血圧62/40mm Hg, 脈拍100/分整, 腹部に圧痛はなかった。腹部造影CT検査を施行したところ上行結腸内に造影剤が漏出しており, 当該部が出血部位と診断された。その後も下血が持続するため, 上行結腸憩室出血の術前診断で緊急手術を施行した。術中所見では上行結腸に多発する憩室があり右半結腸切除術を施行した。下部消化管出血では大腸内視鏡検査が出血源同定と出血に対する治療が同時に可能であることから第一選択とされているが問題点も少なくない。出血源同定と初期段階における治療方針の決定には腹部造影CTが第一選択になり得るものと考えられた。
  • 竹下 雅樹, 西村 元一, 佐々木 省三, 高村 博之, 萱原 正都, 太田 哲生
    2005 年 25 巻 7 号 p. 933-936
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性。失神発作で, 近医入院した。内視鏡, CTで膵頭部腫瘍の十二指腸浸潤による消化管出血が疑われた。入院後ショック状態となり, 当院に転院した。止血目的に血管造影を施行したところ, 右肝動脈の分枝である胆嚢動脈から十二指腸へ造影剤が流出しており, 出血部位と同定した。右肝動脈を塞栓止血し, 状態も安定した。2日後の内視鏡では十二指腸球部前壁にA2の潰瘍がある以外, とくに病変は指摘できず, 5日後に再検したCTでも膵頭部腫瘍は認められなかったため, 最終的に十二指腸潰瘍穿通による出血性ショックと診断した。患者は潰瘍の保存的治療後, 21日目に退院した。穿通性十二指腸潰瘍の大量出血を右肝動脈塞栓術で止血し得た1例を経験したので報告する。
  • 杉浦 元紀, 成田 洋, 伊藤 誠, 福井 拓治, 中村 善則, 廣川 高久
    2005 年 25 巻 7 号 p. 937-940
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 男性。主訴は右下腹部痛。右下腹部を中心とした腹部全体に, 圧痛と筋性防御, Blumberg徴候を認め, 腹部CTにて, 上行結腸周囲に腹腔内遊離ガス像を認めた。穿孔性腹膜炎の診断にて緊急手術を行ったところ, 上行結腸には炎症によると思われる硬化を広範囲に認め, 回盲弁より1cm口側の回腸腸間膜側に穿孔部位を認めた。よって上行結腸の一部を含む回盲部切除術を行った。摘出標本の病理組織学的所見より回腸の仮性憩室穿孔と確定診断された。
  • 大澤 英寿, 高橋 均, 坂田 育弘
    2005 年 25 巻 7 号 p. 941-945
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎からFournier's gangreneを合併したまれな症例を経験した。症例は68歳の男性, 穿孔性大腸憩室炎の診断により手術の目的で近医より当院救命救急センターに紹介入院となる。腹部CT検査にて回盲部周囲の後腹膜腔に遊離ガス像と脂肪織の炎症性肥厚を認めた。後腹膜穿孔をきたした壊疽性虫垂炎の術前診断で開腹手術 (術式は回盲部切除, 洗浄ドレナージ術) を施行した。術後第2病日より鼠径部から会陰部にかけて発赤・腫脹を認め, 陰嚢部皮膚が暗褐色に変色し, 術後第4病日に右陰嚢部を切開排膿ドレナージ, デブリドメントを施行した。Fournier's gangreneは死亡率40%と高く, 早期診断・治療が重要である。急性虫垂炎起因例は極めてまれであり, 文献的考察を加えた。
  • 鈴木 龍児, 加藤 拓見, 澤田 正志, 北村 道彦
    2005 年 25 巻 7 号 p. 947-950
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は28歳男性。以前より胃・十二指腸潰瘍で近医にて内服加療されていた。2004年8月30日早朝, 突然腹痛を自覚し近医受診し, バリウムにて上部消化管透視を施行された。腹痛が持続し腹膜刺激症状出現したため, 急性腹症にて翌8月31日当科紹介された。来院時, 39.0℃の発熱と腹部全体にわたる筋性防御を認めた。腹部単純X線写真・CT検査にて, 腹腔内遊離ガス像とバリウムの腹腔内への漏出を認め, 十二指腸潰瘍穿孔によるバリウム腹膜炎と診断し, 緊急手術を施行した。十二指腸球部前壁に穿孔を認め穿孔部を縫合閉鎖し, 腹腔内のバリウムを可及的に除去した。術後経過は良好で第13病日に退院した。バリウム腹膜炎の報告例は比較的少なく, 上部と下部の消化管穿孔に起因するものに分けられ, 前者の場合は死亡報告例も少なく予後は良好である。術後バリウムが腹腔内に残存する場合, 後期合併症として癒着性のイレウスに注意する必要がある。
  • 川崎 誠一
    2005 年 25 巻 7 号 p. 951-954
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性, 心窩部痛を自覚し, 次第に疹痛が増強するため来院。右下腹部に腹膜刺激症状を認めた。腹部CT検査にて上行結腸腹側に不整なfat densityの上昇域を認め, 急性腹症の診断で入院となった。保存的加療行うも軽快せず, 入院3病日, 腹部CT検査を再度施行したところ, 右側腹部に同様にfat densityの上昇とその増悪が認められた。経験ある放射線科医による大網捻転の診断で緊急開腹術を施行した。術中所見としては, 大網が捻転して腫瘤を形成しており, 上行結腸の腹膜垂と癒着していた。壊死部を含む腫瘤となった大網を近位部で切離して摘出した。消化器症状に乏しく, 腹痛に比べ発熱と白血球数増加の程度が軽い症例に対しては, 本症も考慮に入れ, 腹部CT検査を行う必要があると思われた。
  • 立澤 夏紀, 小橋 優子, 星川 嘉一, 中島 康雄, 新美 浩
    2005 年 25 巻 7 号 p. 955-958
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は34歳女性。出産後発熱が持続し, 産褥熱の診断で抗生剤投与されたが改善せず当院に紹介された。当院入院時の腹部CT, MRIにて両側卵巣奇形腫を認めた。左卵巣奇形腫は緊満感欠如, 壁のたるみ・くぼみなどがみられ, 腹膜炎を示唆する腹水貯留・腹膜肥厚も認められた。これらの所見から卵巣奇形腫破裂およびこれに伴う腹膜炎と診断し, 緊急開腹術が行われた。術中所見で術前診断に一致する所見が確認された。両側卵巣奇形腫核出術と腹腔内洗浄が施行され, 軽快・退院した。典型的な画像所見を呈し, 術前診断が可能だった卵巣奇形腫破裂の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 道免 寛充, 西山 徹, 竹林 徹郎, 近藤 哲
    2005 年 25 巻 7 号 p. 959-962
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は84歳女性。下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した。触診で筋性防御を, 腹部単純X線および腹部CTでfreeairを認め, 消化管穿孔による汎発性腹膜炎の疑いで緊急手術を施行した。開腹すると膿性腹水を認めたが, 腸管に明らかな穿孔部位はなかった。子宮が手拳大に腫大し, 底部後壁に直径2cmの穿孔部位を認め, 内腔が黒褐色となっていた。子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎と診断した。穿孔部周囲の子宮壁が菲薄化しており縫合閉鎖は困難と考えられたこと, 高齢であり悪性疾患も否定できなかったことから, 腹式単純子宮全摘術および両側付属器切除術を施行した。術後創感染を認めたが, 28日目に軽快退院した。子宮留膿腫は子宮頸管の狭窄や閉塞に細菌感染を併発することで, 子宮腔内に膿汁が貯留する病態であり, 高齢女性に好発する。子宮留膿腫が穿孔し, 汎発性腹膜炎をきたす症例はまれである。
  • 瓜園 泰之, 畑 倫明, 奥地 一夫, 中島 祥介
    2005 年 25 巻 7 号 p. 963-967
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    食道, 胃に腐食性の瘢痕性狭窄をきたした症例に対し, 胃空腸吻合・空腸瘻より逆行性内視鏡的ブジーを施行し, 経口摂取が可能となった1例を報告する。症例は68歳, 女性。塩素系洗剤を誤飲し, 誤飲後51日目頃より経口摂取が全く不能となった。食道, 胃に瘢痕性狭窄を認め, 食道狭窄に対して, ブジーにて拡張術を行っていたが, 幽門狭窄が高度であったため, 誤飲後105日目に胃空腸吻合術と空腸瘻を作成した。経口的に食道狭窄部の拡張が困難であったため, この空腸瘻から内視鏡を挿入し, ガイドワイヤーを狭窄部に通すことでブジーを誘導して拡張術を行い, 経口摂取が可能となった。
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