日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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43 巻, 3 号
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原著
  • 中筋 正人, 首藤 喬
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 3 号 p. 615-620
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    左側大腸穿孔は外科的ドレナージが成功しても敗血症性ショックに悪化することがあり,麻酔科医による術中の初期治療,とくに血圧維持の循環管理が重要である。左側大腸穿孔に対する緊急ハルトマン手術を受けた患者を対象に手術中に持続カテコラミン投与をした群15名と血圧の維持は輸液・輸血のみでカテコラミンを持続投与しなかった群17名に分けて手術中にカテコラミンを必要とする患者の術前危険因子を検討した。2群間で有意差がみられたASA physical status,術前白血球数,麻酔導入直後の血中乳酸値のうち独立危険因子は血中乳酸値であった。Receiver operating characteristicカーブから得られたcut off値は1.3mmol/L(感度0.824,特異度0.867)であった。麻酔科医はこの値を指標にして敗血症性ショックに進展する前にカテコラミンを開始すべきである。

特集:がん薬物療法中の腹部救急疾患・有害事象に対する対策と治療
  • 河合 桐男, 林 雅人, 廣田 玲, 西岡 真理子, 前園 知宏, 岡野 尚弘, 長島 文夫, 古瀬 純司
    原稿種別: 特集:がん薬物療法中の腹部救急疾患・有害事象に対する対策と治療
    2023 年 43 巻 3 号 p. 623-627
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    杏林大学医学部付属病院腫瘍内科では,年間で約500人の消化器癌を中心としたがん薬物療法を担当している。救急診療は時間帯と病態に応じて各診療科と連携している。2011年1月から2021年9月までの10年間に3,238人ががん薬物療法を受け,約半数の1,527人が緊急入院となっている。病態別では消化器関連が1,294例(85%)を占め,原病増悪関連968人,治療関連326人であった。消化器以外が233例(15%)であり,全22診療科の連携を要した。また治療関連での緊急入院では,原病増悪による緊急入院より3歳ほど若年であった。直近10年間でがん薬物療法の患者は増加しているが,がん薬物療法患者に占める緊急入院の割合は漸減傾向であり,その割合は2011年では80%であったが2021年では20%であった。適正ながん薬物療法や,院内外との連携向上などが緊急入院の漸減に寄与していると推察された。

  • ~コロナ禍が医療現場へもたらす負担~
    末永 光邦, 植竹 宏之
    原稿種別: 特集:がん薬物療法中の腹部救急疾患・有害事象に対する対策と治療
    2023 年 43 巻 3 号 p. 629-635
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    がん薬物療法中の消化器症状は比較的頻度の高い有害事象の1つである。とくに消化器がんではがん随伴症状との鑑別が重要である。本報告では当科がコロナ禍となってから経験した緊急・準緊急の手術ないし処置を要した消化器関連有害事象を認めた10症例における初期対応アプローチ,またコロナ禍の診療へもたらす弊害について考察した。10症例の内訳は腸閉塞3例,腸炎・下痢4例,感染2例,下血1例であった。薬剤との因果関係が否定できないものは5例で回復後は全例化学療法を再開した。残り5例は原疾患関連と診断し2例で手術が行われた。コロナ禍となり,COVID-19感染のスクリーニングが不可欠であることから,鑑別診断と初期対応にかなりの労力と時間を要している。重篤な有害事象への予防と迅速な対応のための外来診療における工夫が必要である。

  • 賀川 義規, 横野 良典, 岩瀬 和裕
    原稿種別: 特集:がん薬物療法中の腹部救急疾患・有害事象に対する対策と治療
    2023 年 43 巻 3 号 p. 637-640
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】切除不能進行再発大腸癌の化学療法中に血管新生阻害薬による消化管穿孔は致死的有害事象である。切除不能進行再発大腸癌の化学療法中に発症した消化管穿孔を検討したので報告する。【対象と方法】2020年1月から2022年2月に当センターにおいて切除不能進行再発大腸癌に対して化学療法を行った症例を対象とし,後方視的に消化管穿孔を調査した。【結果】対象症例は55例。年齢中央値63.5(36〜89)歳,性別は男/女 31/24。化学療法開始時のPSは0/1/2が44/9/2例。Grade 3以上の消化管穿孔は2例(3.6%)であり,1例は抗菌薬で保存的に軽快し,1例は手術により大網充填と洗浄ドレナージを行った。治療関連死亡は認めなかった。【結語】化学療法に伴う消化管穿孔を2例経験した。1例は保存的に治癒し,1例は手術が必要であった。

  • ─びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を中心に─
    齊木 祐輔, 神野 正敏, 新井 文子
    原稿種別: 特集:がん薬物療法中の腹部救急疾患・有害事象に対する対策と治療
    2023 年 43 巻 3 号 p. 641-646
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    消化管原発リンパ腫の頻度は高く,組織型はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:以下,DLBCL)が最多である。DLBCLは早い経過で進行し,消化管に病変を有する場合は発症時および化学療法後に穿孔や出血など重篤な消化管合併症をきたしうる。消化管原発DLBCLを中心に当院における症例データを検討し,文献的考察を交えて現状のレビューを行った。消化管原発DLBCLの予後はDLBCL全体のなかでは比較的良好であった。胃原発と比べて腸管原発,とくに小腸の場合は穿孔により注意が必要である。胃原発では切除は基本的に行わず,腸管原発の場合は,診断や穿孔率低減を目的に原発巣の切除を検討する。初回化学療法強度は,部位や深達度など患者個別で慎重に検討すべきと考える。

  • 佐久間 政宜, 高山 祐一, 高橋 崇真, 青山 広希, 細井 敬泰, 清板 和昭, 前田 敦行, 金岡 祐次
    原稿種別: 特集:がん薬物療法中の腹部救急疾患・有害事象に対する対策と治療
    2023 年 43 巻 3 号 p. 647-653
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Bevacizumab(以下,BV)投与中は消化管穿孔など特異的な副作用があり,手術治療においては合併症が多いと報告されている。【対象と方法】2009年4月から2022年12月までにBV投与中に急性腹症をきたした23例を対象に,患者背景,治療成績を検討した。【結果】原因は消化管穿孔13例(57%)と最多だった。緊急手術は12例に施行され,消化管穿孔症例はドレナージのみ,あるいは人工肛門造設術が施行された。術後合併症(Clavien-Dindo分類≧grade Ⅱ)は7例(54%)に認めた。消化管穿孔保存的治療4例中3例は発症50日以内に死亡したが,手術症例9例は全例軽快し,生存日数中央値は202日(70〜2,353日)だった。【結語】BV投与中の急性腹症は消化管穿孔が多く,手術症例は高率に合併症を認めた。消化管穿孔症例は耐術可能ならば手術で状態の改善が期待できる。

症例報告
  • 岡田 純一, 瀨尾 雄樹, 原 裕明, 西 雄介, 杉浦 清昭, 岸田 憲弘, 戸倉 英之, 高橋 孝行, 清水 和彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 655-658
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    患者は77歳,女性。S状結腸に大腸腫瘍を認め大腸内視鏡的粘膜下層剝離術(大腸endoscopic submucosal dissection:以下,大腸ESD)を施行された。ESD後2日目に腹痛を認め,CTでS状結腸周囲のフリーエアーと骨盤内に中等量の腹水の貯留を認めたため,当科コンサルトとなった。大腸ESDによるS状結腸穿孔および急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術が必要な病態であった。高度な冠動脈疾患が併存しており,創部を最小限にするために腹腔鏡下ハルトマン手術を施行した。術後合併症なく経過し,術前のactivities of daily livingを保ち退院となった。

  • 右田 一成, 山口 峻, 蒲原 行雄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 659-662
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は30代,男性。心窩部痛を主訴に近医受診し,急性胆囊炎の疑いで当科紹介となった。来院時,腹部超音波で腫大した胆囊を心窩部から左側に認め,CT・MRCPでは胆囊底部は肝左葉側に位置し,胆囊周囲の脂肪織濃度の上昇を認めた。門脈右枝は臍部から分岐しており右門脈臍部に発症した急性胆囊炎と診断,腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy:LC)を施行した。心窩部ポートを肝円索の左側から挿入し,胆囊底部からの剝離を先行した。炎症が高度であり,胆囊頸部レベルで胆囊亜全摘を行った。術後合併症は認めず,術後7日目に退院となった。右門脈臍部は内臓逆位を伴わずに胆囊が肝円索の左側に位置し,肝左葉下面に胆囊床を形成する先天的位置異常と定義されている。同症に発生した急性胆囊炎に対しては術前画像検査で胆囊の位置と胆道走行把握は重要だが,高度炎症例では困難な場合がありbailout surgeryの方針も念頭に置く必要がある。

  • 岡本 和浩, 山口 直哉, 米山 文彦, 木村 桂子, 加藤 祐一郎, 水谷 文俊, 寺境 宏介, 河野 弘
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 663-666
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は30歳台の男性で,3日前からの発熱と下腹部痛を主訴に救急外来を受診した。既往歴に特記事項はなく,7年前に消化管出血で精査されたが原因は不明であった。血液検査所見では炎症反応の上昇を認めた。造影CT検査では骨盤内で浮腫状の回腸に盲端管腔構造を認め,内腔には腸石と思われる高吸収域を認めた。Meckel憩室穿孔の診断で腹腔鏡補助下小腸切除を施行した。術中所見は骨盤底に浮腫上の回腸が落ち込みMeckel憩室を認めた。腸管外に認めた腸石を回収し,腹腔外で小腸切除を施行した。病理組織所見では憩室に異所性胃粘膜が確認され,腸石の成分検索では胆汁酸石であり真性腸石と診断した。異所性胃粘膜を伴うMeckel憩室で真性腸石が形成され穿孔に至り,腹腔鏡下手術を行った報告は極めてまれである。Meckel憩室に腸石を認めた際には,無症状であっても手術を検討すべきであると考えられた。

  • 瀬尾 信吾, 村尾 直樹, 橋本 龍慶, 桒田 亜希, 坂部 龍太郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 667-670
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は87歳,女性。3ヵ月前に,胆囊炎および胆囊周囲膿瘍に対して,経皮的穿刺ドレナージによる保存的加療歴があった。右季肋部痛を主訴に救急受診,腹部造影CT検査で十二指腸球部への胆石嵌頓が疑われた。上部消化管内視鏡検査を実施したところ,十二指腸球部には内腔を占拠する巨大胆石を認めたが,性状は比較的脆く,把持鉗子による内視鏡的砕石が可能であった。砕石後に肛門側の上十二指腸角の状態を確認したところ,高度の狭窄を認め,砕石のみでは十分な経口摂取は困難と考えられた。患者の全身状態からは耐術能に乏しいと考えられたため,内視鏡的に十二指腸のバルーン拡張を行った。内腔の拡張を確認し摂食を再開したが,消化管閉塞症状の再燃や胆管炎症状は現在まで認めていない。手術リスクの高いBouveret症候群において,本治療法は有効な治療法の1つと考えられた。

  • 葛谷 宙正, 藤幡 士郎, 栗本 昌明, 沢井 博純
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 671-674
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は88歳,女性。当院整形外科で,右大腿骨頸部骨折に対する観血的整復固定術を施行中に,キルシュナー鋼線が大腿骨および寛骨を貫通し,約20cm 腹腔内へと迷入した。Vital signに異常は認められなかったが,腹腔内臓器および大血管損傷などの可能性を考え,キルシュナー鋼線刺入状態で慎重にCTを施行した。画像上は右外腸骨静脈の損傷が疑われ,開腹時の所見はキルシュナー鋼線が右外腸骨静脈および小腸間膜を貫いていたが腹腔内の出血はなかった。右外腸骨静脈損傷部の中枢および末梢側をテーピングしてブルドック鉗子で血流を遮断のうえ,縫合閉鎖を行い閉腹した。その後に大腿骨頸部骨折手術を完遂し,手術を終了した。術後経過は良好で約1ヵ月後に退院となった。本症例では腹腔内出血や腸管損傷を認めなかったが,状況に応じてさまざまな異なる対応が必要となる可能性が考えられる。

  • 庄子 渉, 清水 喜徳, 渡邉 隆明, 刑部 洸, 木戸 知紀
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 675-678
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は54歳の男性で,約30年前にも直腸異物で手術歴がある。今回,自ら肛門より筒状の容器を挿入し,抜去困難となったため当院救急外来を受診した。用手的な抜去が困難であったため,全身麻酔下に手術を施行した。直腸異物口側端を起点に直腸が重積し,重積部に小腸が嵌頓していた。嵌頓していた小腸の血流は保たれていたため用手的に引き出し,切除は行わなかった。さらに,直腸前壁を切開し直腸内異物を除去した。異物は直径10cm×高さ10cmの円筒状のプラスチック瓶で底面が切り抜かれており,ここが肛門より口側にむかって挿入されていたため瓶内へ直腸壁が重積し陥入したものと思われた。直腸異物が原因で小腸が嵌頓した症例は非常にまれであり,直腸異物を診察する際には瓶状の異物で筒状になっている場合では口側直腸が重積し小腸嵌頓をきたす可能性を念頭に置き治療法を選択することが肝要と思われた。

  • 穂坂 美樹, 若林 正和, 柴田 耕暉, 小堀 秀一, 吉田 隼人, 堂本 佳典
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 679-682
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    19歳,男性。前日からの右側腹部痛・嘔吐を主訴に紹介受診した。腹部造影CTで被膜を有し,限局的に脂肪織濃度が上昇した大網を認め,大網梗塞が疑われ,診断および治療目的で腹腔鏡下手術を行った。大網に連なる一塊となった結節状腫瘤を認め,腹腔鏡下大網切除術を施行した。病理組織学的所見は変性と出血を呈する脂肪織で構成され,一部に壊死性変化を認め,大網梗塞に矛盾しない所見であった。経過は良好で術後2日目に退院した。大網梗塞はまれな疾患ではあるものの,右側腹部痛を呈する急性腹症の鑑別診断として念頭に置く必要がある。保存的加療が奏効することもあるが,早期診断および治療が可能であり,腹腔鏡下手術が有用な治療法の1つであると考えられた。

  • 小野 広夢, 東 孝泰, 岡田 良, 木暮 道彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 683-686
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,女性。心窩部痛を認め当院に救急搬送となった。胆石性胆囊炎・胆管炎の診断で消化器科に入院し,胆管ステントを留置されドレナージが施行された。胆管炎治療後,胆囊炎の手術適応に関し当科紹介となり,精査の結果,胆囊管が膵内で総胆管と合流する胆囊管低位合流と胆囊管内結石が判明した。胆囊摘出に際して胆道損傷を回避すべく胆管ステントを留置したまま術中胆囊管造影を行い,腹腔鏡下胆囊摘出術を副損傷なく施行した。遺残した胆囊管内結石は後日胆管ステント抜去時に内視鏡的に採石した。本症の報告は散見されるがいずれの症例でも手術の際に胆道損傷の回避が問題とされている.今回,われわれは損傷を回避する治療戦略として術中胆囊管造影を用いて胆囊管追求の範囲を決定し,術後に遺残結石の採石を内視鏡的に行うことで合併症を回避しつつ,腹腔鏡下手術を完遂し得た。文献的考察を加えて報告する。

  • 萩原 綾希子, 萩原 正弘
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 687-689
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    40歳台,女性。子宮頸癌に対し,化学療法を先行し手術による根治治療への移行を計画していたが,腫瘍の急速な増大を認め直腸浸潤もきたしたため双孔式横行結腸ストーマを造設した。2日後にストーマの著明な粘膜浮腫と色調不良を認め静脈還流障害と判断,筋膜の孔を広げ同部位にストーマを再造設した。その後腸管浮腫は改善し,放射線化学療法が開始されたがストーマ再造設後25日目から粘膜浮腫とストーマの突出が出現し,増悪傾向となった。用手的な還納は困難で強い疼痛が出現したため,疼痛緩和目的に緩和ケアチームが介入を開始した。依頼科と相談し,鎮痛と筋弛緩を行いながら浸透圧を利用した粘膜浮腫改善と還納を共同で計画した。硬膜外カテーテルを硬膜外腔に留置し,2%リドカイン5mLを硬膜外注入し,浮腫をきたした腸管粘膜にブドウ糖10gを散布した。その後腸管浮腫の改善が認められ,ストーマ脱を用手的に還納することができた。

  • 森 泰木, 吉留 博之, 安蒜 聡
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 691-694
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は48歳,男性。腹痛を主訴に近医を受診し,腸閉塞の疑いで当科に紹介となり,精査で胆石による腸閉塞と胆囊十二指腸瘻,総胆管結石を認めた。ERCPを施行し,総胆管結石を乳頭切開後にバルーン採石した。手術は開腹胆囊亜全摘術と幽門側胃切除術,B-Ⅱ再建を施行した。第3病日に嘔吐を認め,CTで輸入脚側の十二指腸が著明に拡張し,同時に総胆管の拡張を認めた。また,腹腔内に腹水貯留を認めたことから,胆汁性腹膜炎の診断で緊急手術を行った。原因としては後結腸経路で吻合した胃空腸吻合とBraun吻合が約90度捻れることによって腸閉塞となり,胆汁が逆流した病態と考えられた。Braun吻合を切離しRoux-en-Yで再建を行った。術後は一過性の腸管麻痺を認めたが,その他合併症は認めなかった。乳頭切開後では輸入脚のうっ滞により本症例のような予期せぬ胆管炎や胆汁漏などの合併症が起こり得ることが示唆された。

  • 栗正 誠也, 西村 哲郎, 溝端 康光
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 695-699
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    子宮筋腫の表在血管が破綻し,出血性ショックをきたした1例を経験した。症例は3経妊0出産の40歳女性であり,既往に未精査の子宮筋腫がある。来院前日に月経が発来,下腹部痛が増悪したため救急要請した。当院搬入時に血圧75/50mmHg,心拍数110/分とショック状態であり,下腹部の強い自発痛を認めた。急速輸液で循環動態は安定した。腹部CT検査で血性を疑う大量の腹水を認め,子宮から連続する巨大な腫瘤性病変を認めた。搬入時ショック状態であったことから試験開腹術を行ったところ,新生児頭大の子宮筋腫を認めた。筋腫は有茎性で漿膜下に存在し,その表在血管が破綻し出血していたため,筋腫核出術を施行した。以後の経過は良好で,術後8日目に退院した。女性の腹腔内出血をきたした急性腹症の鑑別には,まれであるが子宮筋腫の表在血管の破綻を考慮する必要がある。

  • 北山 淳一, 岩崎 安博
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 3 号 p. 701-704
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は90歳台の男性,頸部痛と体動困難で救急搬送されcrowned dens syndromeと診断した。腹部CTで遊離ガスを認めたが,腹部症状はなく特発性気腹症と診断し保存的に加療した。第7病日の上部消化管内視鏡検査では原因となるような所見を認めず,下部消化管内視鏡検査は同意が得られないため施行しなかった。退院して7ヵ月後に腹痛で救急搬送となった。CTでS状結腸拡張と壁内気腫を認め,遊離ガスや腹水も伴っていた。S状結腸軸捻転を疑ったが,腸管穿孔や壊死の可能性を否定できなかったため開腹手術を行った。腸管穿孔や壊死を認めず,捻転を解除し再発防止のためS状結腸を切除した。腹腔内遊離ガスに対して十分な原因検索を行うことなく特発性気腹症と診断することにより,将来的に緊急処置を要する病態に発展する可能性がある。

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