症例は72歳の男性で, 17年前に左腎細胞癌にて左腎臓摘出術を受けた。下血を主訴として来院し, 血液検査にて著明な貧血を認めた。超音波検査, CT検査, MRI検査および血管造影検査にて膵鈎状突起に径6cm大の血流豊富な腫瘍を認めた。また上部消化管内視鏡検査では, 十二指腸下行部に腫瘍が存在し, 出血を認めた。以上から, 左腎細胞癌の膵転移巣が十二指腸に直接浸潤し, 同部からの消化管出血と術前診断して, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的には小型類円形の核と淡明な胞体を持った腫瘍細胞を認め, 17年前の腎細胞癌と一致したことより, 腎細胞癌の膵転移と診断した。術後経過は良好で, 術後7ヵ月現在, 再発所見は認めていない。
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