大腸ポリープはポリープ癌化説の支持を基に微小ポリープに対しても数多くの内視鏡切除が行われている。その中で, 通常内視鏡観察では腺腫と過形成性ポリープとの鑑別を困難とする病変も存在し, 不要な切除や生検が行われていることも事実である。
本研究の目的は, 大腸がん検診における内視鏡検査において, 腫瘍・非腫瘍性病変に対する拡大内視鏡観察の有用性を検討することである。
拡大内視鏡導入前の2001年1月から6月の6ヵ月間 (通常内視鏡観察のみ, 術者は通常内視鏡診断の熟練者2人) と導入後の2001年7月から12月の6ヵ月間 (拡大内視鏡と通常内視鏡を無作為に使用, 術者は拡大内視鏡診断を習得した1人) に当センターで大腸内視鏡検査を受けた全症例376人538病変を対象とした。検討1として, 拡大内視鏡導入前と導入後において内視鏡切除 (ホットバイオプシー) した病変における過形成性ポリープと腺腫の比率を比較検討した。次に, 上記の検討では, 内視鏡術者が比較群間で異なるため, 診断能に関して拡大内視鏡の診断能以外に, 術者間の診断能のバイアスが関与している可能性が考えれる。そこで, 検討2として拡大内視鏡導入後, 同一術者が通常内視鏡と拡大内視鏡を無作為に使用した成績において, 同様にホットバイオプシーした病変における過形成性ポリープと腺腫の比率を比較検討した。
検討1において, ホットバイオプシーをした病変に占める過形成性ポリープの割合は通常群 (21%) と拡大群 (7%) を比較すると有意に拡大群で低い値をとった (
p=0.0075) 。検討2においても同様にホットバイオプシーをした病変に占める過形成性ポリープの割合は通常群 (19%) と拡大群 (7%) を比較すると有意な傾向をもって拡大群で低い値をとった (
p=0.08) 。
拡大内視鏡観察は, 人間ドックにおける大腸内視鏡検査において, 腫瘍・非腫瘍性病変の鑑別に有用であることがわかった。
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